TPPのための交渉において、読売新聞が平成26年5月13日にTPP交渉、著作権保護期間﹁70年﹂で合意へと報じました。それに対して、青空文庫から、5月22日付そらもようにおいてあらためて反対を表明しました。︵NEVERまとめはこちら。︶
そのそらもようにおいて、﹁青空文庫では、この問題についてこの﹁そらもよう﹂や﹁aozorablog﹂で、積極的に意見発信をしていきたいと考えています。TPPや著作権保護期間延長についてのさらなる懸念、これまでの延長反対活動や資料のまとめ、私たちに今できることの提案、個人的な想いや意見など、掲示していければと思います。耕作員のみなさまや大勢の協力者・利用者のみなさまからも、公に表明したいご意見があれば、info@aozora.gr.jp までお寄せ頂けると幸いです。﹂と表明されているので、ときどき考えていたことを書かせていただきます。
︵以下の文章は、そのまま info@aozora.gr.jp に送付しました。︶
読売新聞報道以来、著作権保護期間が70年に延長されるのではないかとおびえながら、江戸川乱歩作品を入力してきました。あと1年半、2016年1月1日には公開できる!と頑張ってきたのに、ここで70年に延長されたら、それまでの分も含めてお蔵入りにせざるをえません。
江戸川乱歩氏がパブリックドメインに入れば、彼が産みだした明智小五郎や怪人二十面相、小林少年を団長とする少年探偵団の世界がフリーカルチャーにはいり、少年探偵団関連をまとめた全集が新たに出版されたり、魅力的な絵師の手でさまざまな怪人二十面相が描かれたり、あの世界を下敷きにした二次創作や新たな芸術作品が産みだされるはずです。それに、私が学校の図書室で読みあさったあの世界にふたたび出会えるのを楽しみにしているのです。電子書籍としても紙本でも新たな読者にあの世界をみせられる、それはとてもワクワクすることで、だからこそポチポチ入力していく地味で目がいたくなる作業に日々従事してきたのです。
ですが、ここで70年に延長されたら、フリーカルチャーのなかにあの世界が入るのは2036年まで先送りされます。あと20年待つのは耐えられません。
なので、青空文庫が、かつて検討されていた著作権保護期間延長の流れをくいとめたようなムーブメントをふたたび起こしてくれるのを期待しています。
ただ期待しているだけではなんの意味もないので、こんな﹁三本の矢﹂が放てないかなあと思ったものを書かせていただきます。
安部総理は一連の経済政策、通称アベノミクスによって、不景気にうちひしがれていた空気を反転させ、景気回復に持っていきました。それにならい、時期をずらした3つのアクションを起こし、大きな期待をもたらすことで、著作権保護期間延長をくいとめる力をつくれないでしょうか?
1.著作権保護期間の延長を行わないよう求める請願署名を再び集め、国会に提出する。
2007年から2008年にかけて青空文庫において著作権保護期間の延長をおこなわないようもとめる請願署名を集めていましたですよね。あれを再び集めるのです。まずはここから。意見表明するだけでもインターネット上では拡散してくれる人は多数いることでしょう。
2.青空文庫の一式をおさめたDVD-ROM付き冊子﹁青空文庫 全﹂を再び作成する。
﹁青空文庫 全﹂の作成は、一月や二月でできることではないですが、青空文庫の一式をおさめたDVD-ROMを作って希望者へ実費を負担してもらった上で配送してしまうところまでを実行しておけば、形あるものが手元にくるのでやはりうれしいです。
DVD-ROMのパッケージで1.の署名用紙を一緒におくれば一粒で二度おいしいはず。
3.2015年1月に、書店で﹁みんなのものになった文化フェア﹂を書店で実行する。
じつはこれが本命だったりしますが、実際にものを見せた方がインパクトが強いと思うのです。﹁著作権保護期間満了=パブリックドメインに入る﹂ということは、単に﹁青空文庫で公開できるようになる﹂ことだけを意味するのではなくて、その作品を新たに出版したり新たな絵師の表紙やさし絵で付加価値をつけたりすることで、お金儲けの種もふえるんだよーもちろん個人の生活も豊かになるよーということを、青空文庫を知らない人にも見せてやりたいのです。
パブリックドメインに入っている作品の紙本を集めて書店でフェアをすれば、本屋に行くような人へのアピールになるのではないでしょうか。というか、個人の善意の集積でどれだけ文化が豊かになったのか、私が見たいです。
吉川英治氏﹁三国志﹂﹁宮本武蔵﹂︵新潮文庫︶とか、インプレス社発行の青空文庫PODやNDL所蔵文庫PODとか、真珠書院のパール文庫とか、ヴィクトル・ユーゴー﹁レ・ミゼラブル﹂豊島与志雄訳とか﹁チベット旅行記﹂河口慧海著とか片岡義男氏の青空文庫公開済みの本とか…。
そのなかに2.の﹁青空文庫 全﹂を市販するか寄贈したものをならべるかしておくことで、青空文庫としての主張もきっちりつたえられることが期待できます。
時期的には1.署名集めが夏で、2.﹁青空文庫 全﹂の作成が秋、その間に出版社と書店と交渉して2015年1月に﹁みんなのものになった文化フェア﹂を実施。これでとぎれなく世論を喚起できると思うのです。
かつて山形浩生氏はローレンス・レッシグ著﹁FREE CULTURE﹂の翻訳あとがきにおいて﹁理論的にどうこう言う話をいくらしてもしょうがない。現実に著作権をやたらに引き延ばすと害があるんだ、ということを見せなきゃいけない﹂︵引用︶と書きました。それにならって今こそ﹁理論的にどうこう言う話をいくらしてもしょうがない。現実に著作権が切れることで利益があるんだ、ということを見せなきゃいけない﹂のだと思ったのです。
末筆ながら、青空文庫が今後も新しい共有作品を生み出していけるようお祈り申し上げます。