書名に入っている﹁ダークマター﹂と﹁恐竜絶滅﹂、どちらもなんてことない単語であるが、かけ離れた関係性の単語なだけに、とてつもなくうさんくさい!﹁ダークマターとブッダ﹂ぐらいに意味がわからない! なんてうさんくさい本なんだ! と一目見た時につい思ってしまった。
とはいえ著者は﹃ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く﹄など数々の著書/実績に加え、ハーバード大学の教授である理論物理学者リサ・ランドールである。きっとおもしろいはずだ。しかし……本当にだいじょうぶかぁ? と怪しみながら読んでみたのだが、これがたしかにおもしろい──そして、しっかりとしている。見事に﹁ダークマター﹂と﹁恐竜絶滅﹂という結びつきそうもない両者を結合し、そこにどのような背景が存在しているのかを丁寧に解説してみせる。
そもそも、研究上この﹁恐竜絶滅﹂は好奇心をぞんぶんに煽りたて、謎の追求に必要な駆動力を与えてくれるものの、疑問のコアに据えられてはいないのだ。彼女が最初に研究を開始するのは、もっと前段階の疑問に立脚しており、それはたとえば﹃流星物質と太陽系の力学、そして物理的なクレーター記録に周期性があるかどうかの問題﹄である。