「不当利得」の版間の差分
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== 概説 ==
不当利得とは、法律上の原因なしに他人の財産又は労務により利益を受けている者(受益者という)から、これによって損失を被っている者に対して利得を返還させる制度である。
不当利得が適用される典型的な場面は、一度有効に成立したと思われた[[契約]]が無効であったり、[[取消|取り消され]]たりして﹁初めからなかったもの﹂とされた場合である。たとえば、カメラを5万円で買う契約を結び、買主は代金と引き換えに売主からカメラを受け取ったが、後になって買主が[[錯誤 (民法)|錯誤]]による契約の === 一般不当利得と特殊不当利得 ===
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返還義務の範囲は後述のように善意の受益者と悪意の受益者とでは異なるが︵善意の受益者に過失があった場合の扱いについては見解が分かれている︶、後述のように給付利得の場合にはこの区別は適合しにくい面があるとされる<ref name="uchida601">内田貴著 ﹃民法Ⅱ 第3版 債権各論﹄ 東京大学出版会、2011年2月、601頁</ref><ref name="oshima174-175">大島俊之・下村正明・久保宏之・青野博之著 ﹃プリメール民法4第2版﹄ 法律文化社︿αブックス﹀、2003年3月、174-175頁</ref>。<br /> 当事者双方に返還義務を生じる場合には両者は同時履行の関係に立つ(明文はない。533条類推適用)。<br />
なお、不当利得返還請求権は通常の債権と同様に「権利を行使できるようになった時から10年、権利を行使できることを知った時から5年」の[[消滅時効]]にかかる([[b:民法第166条|166条]])<ref>「 [
==== 善意の受益者の返還義務 ====
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「不法」とは公序良俗に反する場合を指す<ref>内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、615頁</ref>。
また、[[闇金融]]が貸し付けた金銭も、[[出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律]]︵出資法︶に違反する利息を収受するという犯罪行為を目的として交付された金銭にすぎないから、これも不法原因給付に当たる。よって闇金融は、出資法違反の利息を請求することができないのはもちろん︵[[貸金業法]]42条の2︶、貸金元本の返還請求もできない。さらに、借受けた者が闇金融に対して弁済をした場合にその弁済額を、[[不法行為]]を原因とした損害賠償請求により取り戻す事ができる。なお、この場合において従来、裁判所は、当該不法行為において借受者は貸金元本を受領しているのであるから、損害賠償請求額から貸金元本分を損益相殺または損益相殺類似の調整を行うことを認めていた。しかし最高裁判所は、借受者の弁済は不法原因給付により生じたものであるから、これを損害賠償請求額から損益相殺することは、民法708条の趣旨に反するものとして許されない旨と判示した︵最判平成20年6月10日民集62巻6号1488頁︶。 不法原因﹁給付﹂があったというためには給付は履行の余地を残さない終局的なものでなければならない<ref>内田貴著 ﹃民法Ⅱ 第3版 債権各論﹄ 東京大学出版会、2011年2月、617頁</ref>。たとえば愛人関係の存続を目的にした[[登記]]済[[不動産]]の贈与においては、[[引渡し]]を済ませたというだけでは足りず、登記名義までをも受贈者に移転しなければならない︵最判昭和46年10月28日民集25巻8号1069頁︶。これは(1)履行の中途での後戻りを認めることにより不法な行為を抑止するとともに、(2)受益者が逆に給付の完成を期すため国に助力を求めることを防止するためである。なお、未登記建物については引渡しにより終局的な給付が認められるので引渡しで足りる︵最大判昭和45年10月21日民集24巻11号1560頁︶。 163行目:
== 転用物訴権と騙取金弁済 ==
法律上の原因のない給付があった場合に、その受益が相手方のみならず実質的に第三者にも帰することになる場合がある。転用物訴権の問題と騙取金による弁済の問題がこれにあたり、その法的処理については議論がある。
=== 転用物訴権 ===
=== 騙取金弁済 ===
甲が、乙から金銭を騙し取りまたは横領し、その金銭で自己の債権者丙に対する債務を弁済した場合に、乙の丙に対する不当利得返還請求が認められるかの問題である。
これに関して、判例︵最高裁昭和49年9月26日民集28巻6号1243頁︶は、﹁'''社会通念上'''乙の金銭で丙の利益をはかったと認められるだけの連結がある場合には、なお不当利得の成立に必要な因果関係があるものと解すべきであり、また、丙が甲から右金銭を受領するにつき'''悪意又は重大な過失がある場合'''には、丙の右金銭の取得は、被騙取者又は被横領者たる乙に対する関係においては、法律上の原因がなく、不当利得となる﹂としている。 {{節スタブ}}
== 脚注 ==
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<references />
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*川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月
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[[Category:日本の不当利得法]]
[[Category:債権]]
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