「夏井睦」を編集中
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1996年のこと。[[褥瘡]](じょくそう、床ずれなど)の治療のために若い医師が、『ドレッシング』<ref name="ドレッシング">初版1995年、ISBN 4-89269-222-0。{{Cite book|和書|author=穴沢貞夫、倉本秋|title=ドレッシング―新しい創傷管理|edition=改訂版|publisher=へるす出版|date=2005|isbn=4-89269-499-1|page=}}</ref>という著書を手に、最新の方法であるドレッシング材([[創傷被覆材]])による湿潤環境を使った治療を行いたいと申し出た<ref name="ぜったいに"/>。その研修医による処置の経過を見ていたが、見違えるような改善ではなかった<ref name="ドクターズ・ファイル"/>。止血能力のあるアルギン酸塩のサンプルももらっていた<ref name="ぜったいに"/>。そこで夏井は、褥瘡ではなく怪我をした体力のある人にて実践すると、痛みもなく、早く治り、傷跡も残りにくいという結果が得られた<ref name="ドクターズ・ファイル"/>。夏井は『ドレッシング』を読み学び直し<ref name="巨大転換"/>、消毒が無意味だとも理論的に書かれていた<ref name="さらば消毒"/>。「[[褥創]]」に対する「開放性湿潤療法<ref>[https://web.archive.org/web/20040407020248/http://www.geocities.jp/pressure_ulcer/sub0.htm はじめに] WrapTherapy for pressure ulcers、2010年1月1日</ref>」は、[[内科]]医である[[鳥谷部俊一]]により、ほぼ同時期に考案された。夏井は日本形成外科学会の専門医の認定試験問題作成委員会を6年務め、火傷の知識は十分であるが、その従来の知識が通用しない新しい治療法であった<ref name="ぜったいに"/>。 |
1996年のこと。[[褥瘡]](じょくそう、床ずれなど)の治療のために若い医師が、『ドレッシング』<ref name="ドレッシング">初版1995年、ISBN 4-89269-222-0。{{Cite book|和書|author=穴沢貞夫、倉本秋|title=ドレッシング―新しい創傷管理|edition=改訂版|publisher=へるす出版|date=2005|isbn=4-89269-499-1|page=}}</ref>という著書を手に、最新の方法であるドレッシング材([[創傷被覆材]])による湿潤環境を使った治療を行いたいと申し出た<ref name="ぜったいに"/>。その研修医による処置の経過を見ていたが、見違えるような改善ではなかった<ref name="ドクターズ・ファイル"/>。止血能力のあるアルギン酸塩のサンプルももらっていた<ref name="ぜったいに"/>。そこで夏井は、褥瘡ではなく怪我をした体力のある人にて実践すると、痛みもなく、早く治り、傷跡も残りにくいという結果が得られた<ref name="ドクターズ・ファイル"/>。夏井は『ドレッシング』を読み学び直し<ref name="巨大転換"/>、消毒が無意味だとも理論的に書かれていた<ref name="さらば消毒"/>。「[[褥創]]」に対する「開放性湿潤療法<ref>[https://web.archive.org/web/20040407020248/http://www.geocities.jp/pressure_ulcer/sub0.htm はじめに] WrapTherapy for pressure ulcers、2010年1月1日</ref>」は、[[内科]]医である[[鳥谷部俊一]]により、ほぼ同時期に考案された。夏井は日本形成外科学会の専門医の認定試験問題作成委員会を6年務め、火傷の知識は十分であるが、その従来の知識が通用しない新しい治療法であった<ref name="ぜったいに"/>。 |
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1984年よりコンピューターを手に入れていた夏井は<ref name="ねりま">{{Cite web |
1984年よりコンピューターを手に入れていた夏井は<ref name="ねりま">{{Cite web|url=https://www.nerimakanko.jp/review/nerimabito/110.php|title=ねりま人#110 夏井睦さん|publisher=“ねりま大好き!”練馬観光協会|date=2015-12-01|accessdate=2016-03-17}}</ref>、1996年より﹁超絶技巧的ピアノ編曲の世界 体育会系ピアニズムの系譜﹂というホームページを作り、演奏会用パラフレーズの作品を解説するというマニアックなものであった<ref name="ぜったいに"/>。ホロヴィッツの編曲した作品を楽譜にするというプロジェクトを開始し、これを通じて﹁星条旗よ永遠なれ﹂の楽譜も手に入れた<ref name="ホロヴィッツ"/>。所有する楽譜の一覧を公開し欲する音楽家に無料で送り、するとお礼として貴重な楽譜が返されということを繰り返し、コレクションは増加していった<ref name="言葉は思想のみで">{{cite web |author= |title=思想は言葉のみで表現される 夏井睦|url=https://wwwbookscan.co.jp/interviewarticle/426/all#article_bottom |date= |publisher=BOOKSCAN |accessdate=2018-06-10}}</ref>。そこには﹁私蔵は死蔵﹂である﹁共有しよう﹂という思想が働いていた<ref name="言葉は思想のみで"/>。
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地方の学会で湿潤療法について発表するが、強い手ごたえは感じなかったため、その音楽サイトのエッセイに「傷は乾かしてはいけない」と書くようになり、2001年にはホームページ「新しい創傷治療」を立ち上げることになった<ref name="さらば消毒">『さらば消毒とガーゼ』</ref>。傷は消毒しない、乾かしてはいけないというのは、従来の方法の全否定であり、そして当時の状況では、従来の方法はあまりに多勢なため、ホームページを開設し賛同者を募った<ref name="医学界2003"/>。失敗も含めて全ノウハウの公開である<ref name="ぜったいに"/>。普遍的事実から理論を構築し、実際の医療行為が正しいのか思考実験するというが自身のスタイルだといい、これは自身の主張を文献によって裏付けるという医学界の主な手法ではないが、少数派であったためのそのような戦略を選んだ<ref name="医学界2003"/>。自説を裏付ける論文がなくても、医学の上位の学問である生物学から説明するということである<ref name="言葉は思想のみで"/>。しかし、それほど時も経ず、2003年5月に開催された日本皮膚科学会では治療経過を発表し<ref>{{cite news |和書|author=松村由利子|title=傷の手当、常識が変わる治療法 医療用の被覆材使う―早く傷も目立たず治癒 |date=2003-06-16 |newspaper=毎日新聞 |page=12面}}</ref>、2003年7月には医学書の出版社である[[医学書院]]から初の著作『これからの創傷治療』を出版することになる<ref name="医学界2003">{{cite news |和書|author=夏井睦 |title=『これから』のそれから |url=http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2004dir/n2567dir/n2567_05.htm#07 |date=2004-01-12 |newspaper=週刊医学界新聞 2567号 |accessdate=2018-06-10}}</ref>。 |
地方の学会で湿潤療法について発表するが、強い手ごたえは感じなかったため、その音楽サイトのエッセイに「傷は乾かしてはいけない」と書くようになり、2001年にはホームページ「新しい創傷治療」を立ち上げることになった<ref name="さらば消毒">『さらば消毒とガーゼ』</ref>。傷は消毒しない、乾かしてはいけないというのは、従来の方法の全否定であり、そして当時の状況では、従来の方法はあまりに多勢なため、ホームページを開設し賛同者を募った<ref name="医学界2003"/>。失敗も含めて全ノウハウの公開である<ref name="ぜったいに"/>。普遍的事実から理論を構築し、実際の医療行為が正しいのか思考実験するというが自身のスタイルだといい、これは自身の主張を文献によって裏付けるという医学界の主な手法ではないが、少数派であったためのそのような戦略を選んだ<ref name="医学界2003"/>。自説を裏付ける論文がなくても、医学の上位の学問である生物学から説明するということである<ref name="言葉は思想のみで"/>。しかし、それほど時も経ず、2003年5月に開催された日本皮膚科学会では治療経過を発表し<ref>{{cite news |和書|author=松村由利子|title=傷の手当、常識が変わる治療法 医療用の被覆材使う―早く傷も目立たず治癒 |date=2003-06-16 |newspaper=毎日新聞 |page=12面}}</ref>、2003年7月には医学書の出版社である[[医学書院]]から初の著作『これからの創傷治療』を出版することになる<ref name="医学界2003">{{cite news |和書|author=夏井睦 |title=『これから』のそれから |url=http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2004dir/n2567dir/n2567_05.htm#07 |date=2004-01-12 |newspaper=週刊医学界新聞 2567号 |accessdate=2018-06-10}}</ref>。 |
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従来からあった湿潤療法の基本概念<ref name="pmid8109679">{{cite journal |authors=Field FK, Kerstein MD |title=Overview of wound healing in a moist environment |journal=Am. J. Surg. |volume=167 |issue=1A |pages=2S–6S |date=January 1994 |pmid=8109679 |doi= |url=}}</ref>を発展させ理論構築し、実臨床に応用し普及させた。創傷被覆材は床ずれでは使用法はある程度確立されていたため<ref name="環ゲリラ">{{Cite journal |和書|author=|date=2014|title=湿潤療法のためのゲリラ戦|journal=環|issue=56|page=200-204}}</ref>、床ずれの治療用としてしか認識されておらず、メーカーも傷に使った例がないといい、患者の反応を見ながら治療法を確立していった<ref name="naid40016845143">{{Cite journal |和書|author1=夏井睦 |author2=堀口三恵子 |date=2009-10 |title=巻頭インタビュー 簡単!痛くない!早くキレイに治る!患者と一緒に進化させた﹁湿潤治療﹂ |journal=医道の日本 |volume=68 |issue=10 |pages=11-21 |naid=40016845143}}</ref>。治療法の確立までに10年かかったという<ref name="ドクターズ・ファイル"/>。また、いくつかの企業から、被覆材の製品化の提案が持ち掛けられ、実際の治療を見学しながら製品化された<ref name="naid40016845143"/>。一方で[[日本形成外科学会]]認定医からは、学会講演会において座長より恫喝を受けたため返上している<ref name=sengen>{{Cite web|publisher=夏井睦|title=﹁消毒とガーゼ﹂撲滅宣言 |url=http://www.wound-treatment.jp/sengen.htm |accessdate=2024-06}}</ref>。
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従来からあった湿潤療法の基本概念<ref name="pmid8109679">{{cite journal |authors=Field FK, Kerstein MD |title=Overview of wound healing in a moist environment |journal=Am. J. Surg. |volume=167 |issue=1A |pages=2S–6S |date=January 1994 |pmid=8109679 |doi= |url=}}</ref>を発展させ理論構築し、実臨床に応用し普及させた。創傷被覆材は床ずれでは使用法はある程度確立されていたため<ref name="環ゲリラ">{{Cite journal |和書|author=|date=2014|title=湿潤療法のためのゲリラ戦|journal=環|issue=56|page=200-204}}</ref>、床ずれの治療用としてしか認識されておらず、メーカーも傷に使った例がないといい、患者の反応を見ながら治療法を確立していった<ref name="naid40016845143">{{Cite journal |和書|author1=夏井睦 |author2=堀口三恵子 |date=2009-10 |title=巻頭インタビュー 簡単!痛くない!早くキレイに治る!患者と一緒に進化させた﹁湿潤治療﹂ |journal=医道の日本 |volume=68 |issue=10 |pages=11-21 |naid=40016845143}}</ref>。治療法の確立までに10年かかったという<ref name="ドクターズ・ファイル"/>。また、いくつかの企業から、被覆材の製品化の提案が持ち掛けられ、実際の治療を見学しながら製品化された<ref name="naid40016845143"/>。一方で[[日本形成外科学会]]認定医からは、学会講演会において座長より恫喝を受けたため返上している<ref name=sengen>{{Cite web|publisher=夏井睦|title=﹁消毒とガーゼ﹂撲滅宣言 |url=http://www.wound-treatment.jp/sengen.htm |accessdate=2024-06}}</ref>。
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2009年に新書の﹃傷はぜったい消毒するな﹄を出版する。序文に書かれているように、後半部分にて[[パラダイムシフト]]の概念を説明するなど、思想的な側面も含んでいる。Amazon.co.jpの新書文庫部門でも8月25日付けで第3位であった<ref name="売れる理由">{{ |
2009年に新書の﹃傷はぜったい消毒するな﹄を出版する。序文に書かれているように、後半部分にて[[パラダイムシフト]]の概念を説明するなど、思想的な側面も含んでいる。Amazon.co.jpの新書文庫部門でも8月25日付けで第3位であった<ref name="売れる理由">{{cite web |author=桑原恵美子 |title=書籍﹁傷はぜったい消毒するな﹂が売れる理由 |url=http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/hit/20090907/1028717/ |date=2009-09-10 |publisher=日経トレンディネット |accessdate=2018-06-10}}</ref>
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湿潤療法を携えて診療の拠点は、秋田県から、山形県、長野県へと移っていき、この長野では全国から患者も来るようになったが交通アクセスがよくなかったため茨城、東京へと拠点を移し<ref name="ドクターズ・ファイル"/>、2012年4月より東京の練馬光が丘病院の傷の治療センター科長となった<ref name="ねりま"/>。2017年60歳にして、ある外科医との出会いをきっかけに東京での開業へと至った<ref name="ドクターズ・ファイル"/>。
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湿潤療法を携えて診療の拠点は、秋田県から、山形県、長野県へと移っていき、この長野では全国から患者も来るようになったが交通アクセスがよくなかったため茨城、東京へと拠点を移し<ref name="ドクターズ・ファイル"/>、2012年4月より東京の練馬光が丘病院の傷の治療センター科長となった<ref name="ねりま"/>。2017年60歳にして、ある外科医との出会いをきっかけに東京での開業へと至った<ref name="ドクターズ・ファイル"/>。
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こうして2014年には自身の思想をまとめた『炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学』を出版する。この著作は、様々な地域の週間ランキングに名が載るようになった。『東京新聞』に掲載された2014年5月13日付のトーハン調べでは新書・ノンフィクションの第3位であった<ref>{{cite news |和書|title=13日トーハン調べ 新書・ノンフィクション |date=2014-05-17 |newspaper=東京新聞 |page=18面}}</ref>。 |
こうして2014年には自身の思想をまとめた『炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学』を出版する。この著作は、様々な地域の週間ランキングに名が載るようになった。『東京新聞』に掲載された2014年5月13日付のトーハン調べでは新書・ノンフィクションの第3位であった<ref>{{cite news |和書|title=13日トーハン調べ 新書・ノンフィクション |date=2014-05-17 |newspaper=東京新聞 |page=18面}}</ref>。 |
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後輩には患者を泣かせたらダメだと伝え、子供が笑って帰れるクリニックを心がけている<ref name="ドクターズ・ファイル">{{ |
後輩には患者を泣かせたらダメだと伝え、子供が笑って帰れるクリニックを心がけている<ref name="ドクターズ・ファイル">{{cite web |author= |title=夏井 睦院長の独自取材記事(なつい キズとやけどのクリニック) |url=https://doctorsfile.jp/h/185089/df/1/ |date=2017-10-16 |publisher=ドクターズ・ファイル |accessdate=2018-06-10}}</ref>。子供と話すのが好きで、クリニックにはおもちゃもあふれている<ref name="ドクターズ・ファイル"/><ref name="ねりま"/>。
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=== 開発に関与した創傷被覆材 === |
=== 開発に関与した創傷被覆材 === |