大英帝国勲章
英国の騎士団勲章
大英帝国勲章︵だいえいていこくくんしょう、Order of the British Empire︶は、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国︵以下、﹁イギリス﹂または﹁英国﹂と表す︶の騎士団勲章 (Order)。"Order"は“勲章”と日本語訳されるヨーロッパの栄典で、元の意味は﹁騎士団﹂であり、等級は中世の騎士団の階級制度を模したものである。大英帝国勲章はイギリスの騎士団勲章の中では最も新しく、最も広範囲に与えられ、最も叙勲数の多い勲章である。
| 大英帝国勲章 Most Excellent Order of the British Empire | |
|---|---|
 大英帝国勲章ナイト・グランドクロス星章 | |
| イギリスの君主による栄典 | |
| 種別 | 騎士団勲章 |
| 標語 |
神と帝国のために For God and the Empire |
| 創設者 | ジョージ5世 |
| 資格 | イギリス国民、英連邦王国市民、またはイギリスのために重要な業績を上げた外国人。 |
| 主権者 | エリザベス2世 |
| グランドマスター | エディンバラ公フィリップ |
| 地位 |
ナイト / デイム・グランド・クロス (GBE) ナイト / デイム・コマンダー (KBE/DBE) コマンダー (CBE) オフィサー (OBE) メンバー (MBE) |
| 過去の地位 |
エンパイア・ギャラントリー・メダル 大英帝国メダル |
| 歴史・統計 | |
| 創立 | 1917年 |
| 階位 | |
| 上位席 | ロイヤル・ヴィクトリア勲章 |
| 下位席 | 階級により異なる |
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略綬（左：軍人用、右：文民用） | |
概要
1917年にイギリス国王ジョージ5世が創設した。それまでの勲章は貴族、軍人、役人、政治家が主な対象で、一般の市民に与えられることは少なかったため、功績の対象を経済人、文化人、芸能人、スポーツ選手や社会奉仕活動等と広範囲にした勲章を新たに創設したものである。勲爵士団、または勲章のランクとしてはそれぞれ同一クラスの勲章の中では最も順位が低いが、有名人が受章する事が多いため非常によく知られた存在である。
勲章のモットーは﹁神と帝国のために﹂(For God and the Empire) である。
勲章には次のランクがある。
(一)ナイト・グランド・クロス又はデイム・グランド・クロス︵大十字騎士 GBE︶
(二)ナイト・コマンダー又はデイム・コマンダー︵司令官騎士 KBE/DBE︶
(三)コマンダー︵司令官 CBE︶
(四)オフィサー︵将校 OBE︶
(五)メンバー︵団員 MBE︶
受章者は名前の後に、勲位を示す頭文字︵ポスト・ノミナル・レターズ︶を付すことが許される[1]︵例えば﹁Mr. John Smith﹂ならば﹁John Smith, CBE﹂︶。
名称に﹁ナイト﹂が含まれる上位の2つがいわゆる﹁ナイト爵﹂の一種で、英国籍を有していれば男性ならサー、女性ならデイムの敬称を許される。このようなことから、日本語メディアで︵日本人が︶﹁イギリス王室からサーの称号を授与﹂﹁ナイトに叙任﹂などと紹介されているものは、多くがこの大英帝国勲章のナイトのいずれかを与えられたケースであるか、Knight Bachelorという下級騎士団に叙されたケースである。
外国人への叙勲は通常外務大臣の推挙により、英国内に工場を持つ大企業の社長などが多く受章している[2]。外国人受章者は“Honorary”︵名誉︶を冠して呼ばれ、年2回の叙勲者リストには掲載されないが、名前の後に勲章の略称を記すことは許される[3]。
主な受章者
ナイト / デイム・グランド・クロス (GBE)
- エジンバラ公爵フィリップ（エリザベス2世王配）(1953) ※現グランドマスター
- 秩父宮妃勢津子 (1962)
- 初代トムソン・オブ・フリート男爵ロイ・トムソン（実業家、貴族）(1970)[4]
- 第3代ロスチャイルド男爵ヴィクター・ロスチャイルド（政治家、銀行家、貴族）(1975)[5]
- ジャック・マーシャル（ニュージーランド首相）(1975)
- 常陸宮正仁親王 (1975)
- 第4代ロスチャイルド男爵ジェコブ・ロスチャイルド（政治家、銀行家、貴族）(1998)[6]
- ジョージ・J・ミッチェル（アメリカの政治家、ウォルト・ディズニー・カンパニー会長）(1999)
- キング・オブ・ロスベリー男爵マーヴィン・キング（経済学者、一代貴族）(2011)[7]
- ヘイマン女男爵ヘレン・ヘイマン（一代貴族、貴族院議長）(2012)[8]
Category:大英帝国勲章ナイト・グランド・クロスも参照
ナイト・コマンダー/デイム・コマンダー (KBE/DBE)
- ジョナサン・アイブ（アップル上級副社長）(2006)
- ペギー・アシュクロフト（女優）(1956)
- 荒田俊雄（日本精工会長）(1997)
- 有吉義弥（日本郵船会長）
- ジュディス・アンダーソン（女優）(1960)
- ジュリー・アンドリュース（女優）(2000)
- 池田芳蔵（三井物産会長）(1981)
- アナ・ウィンター (2017)
- ヴィヴィアン・ウエストウッド（ファッションデザイナー）(2006)
- ジュリー・ウォルターズ（女優）(2017)
- 内田光子（ピアニスト）(2009)
- 大庭浩（川崎重工業社長）(1996)
- 岡田茂（三越社長）(1975)
- 海部俊樹（内閣総理大臣）(1975)
- グラディス・クーパー（女優）(1967)
- ビル・ゲイツ（マイクロソフト会長）(2004)
- ジョーン・コリンズ（女優）(2015)
- カルロス・ゴーン（ルノー取締役会長兼CEO (PDG)、日産自動車社長兼CEO）(2006)
- ジョーン・サザーランド（歌手）(1979)
- 佐波正一（東芝相談役）(1993)
- エリーザベト・シュヴァルツコップ（歌手）(1992)
- エルトン・ジョン (1998)
- スティング (2003)
- ギネス・ジョーンズ（歌手）(1986)
- クリスティン・スコット・トーマス（女優）(2015)
- スティーヴン・スピルバーグ（映画監督）(2001)[9]
- ケビン・スペイシー（俳優）(2015)
- マギー・スミス（女優）(1990)
- 関本忠弘（NEC会長）(1996） )
- 千野宜時（大和証券名誉会長）(1992)
- チャールズ・チャップリン（俳優）(1975)
- 張富士夫（トヨタ自動車会長）(2006)[3]
- エリザベス・テイラー（女優）(2000)
- キリ・テ・カナワ（歌手）(1982)
- オリヴィア・デ・ハヴィランド（女優）(2017)
- ダフニ・デュ・モーリエ（作家）(1969)
- ジュディ・デンチ（女優）(1988)
- 豊田章一郎（トヨタ自動車会長）(1995)
- 中西宏明（日立製作所会長）(2015)[10]
- アンナ・ニーグル（女優）(1969)
- 野津謙（日本サッカー協会会長）(1970)
- ザハ・ハディッド（建築家）(2012)
- 日枝久（フジ・メディア・ホールディングス会長）(2014)
- アルフレッド・ヒッチコック（映画監督）(1980)
- ウェンディ・ヒラー（女優）(1975)
- 平岩外四（東京電力会長）(1987)
- ダグラス・フェアバンクス・ジュニア（俳優）(1949)
- アルフレート・ブレンデル（ピアニスト）(1989)
- ジョーン・プロウライト（女優）(2004)
- ボブ・ホープ (1998)
- ボノ(2007)[11]
- シドニー・ポワチエ（俳優）(1974)
- ジョージ・マーティン (1996)
- 松尾泰一郎（丸紅相談役）(1996)
- 松下正治（松下電器産業会長）(1997)
- ヘレン・ミレン（女優）(2003)
- ロジャー・ムーア（俳優）(2003)
- 森稔（森ビル社長）(2009)[12]
- 盛田昭夫（ソニー会長）(1992)
- 山田忠孝（ビル&メリンダ・ゲイツ財団グローバル・ヘルス・プログラム総裁）(2007)
- マーガレット・ラザフォード（女優）(1967)
- アンジェラ・ランズベリー（女優）(2014)
- ダイアナ・リグ（女優）(1994)
- ヴェラ・リン（歌手）(1975)
- フェリシティ・ロット（歌手）(1996)
- フローラ・ロブソン（女優）(1960)
- 小野光太郎（元小野グループ代表）（2013）
- フランク・ウィリアムズ （ウィリアムズ・グランプリ・エンジニアリング代表）（1999）
- エマ・トンプソン（女優） (2018)
- ラルフ・ローレン[13] (ファッションデザイナー) (2019)
- オリビア・ニュートン＝ジョン（歌手）（2019年）
コマンダー(CBE)
- リチャード・アッテンボロー（映画監督）（1967）
- ローワン・アトキンソン（2013）
- 井村裕夫（科学技術振興機構 首席フェロー）（2006）[3]
- ブラッドリー・ウィギンス（2013）
- ケイト・ウィンスレット（女優）（2012）
- ジョン・ヴェレカー (第6代ゴート子爵)（1928）[14]
- デンホルム・エリオット（俳優）（1988）
- 大崎仁（人間文化研究機構特別顧問）（2000）
- 尾高忠明（指揮者）（1997）
- デボラ・カー（女優）（1998）
- グリア・ガースン（女優）（1993）
- 加藤隆一（東海銀行会長）（1996）
- ベネディクト・カンバーバッチ（2015）
- マイケル・ガンボン（俳優）（1990）
- アレック・ギネス（1955）
- 木村孟（大学評価・学位授与機構長）（2004）
- ペトゥラ・クラーク（歌手）（1998）
- エリック・クラプトン（2004）
- マイケル・ケイン（俳優）（1992）
- 佐竹晃（三井造船常務）（2003）
- オリバー・サックス（2008）
- 佐々淳行（初代内閣安全保障室長）（1975）
- デレク・ジャコビ（俳優）（1985）
- デヴィッド・スーシェ（俳優）（2011）
- スティング（2003）
- キャサリン・ゼタ＝ジョーンズ（女優）（2010）
- 高橋康也（英文学者）（1993）
- ロジャー・ダルトリー
- レイ・デイヴィス
- 鳴戸道郎（富士通顧問）（2001）
- 蜷川幸雄（演出家）（2002）
- 根岸廣和（日本電産モーター基礎研究所顧問）（2003）
- アラン・パーカー（映画監督）（1995）
- ダーシー・バッセル （バレエダンサー）
- ジョン・ハート（俳優）（2004）
- リチャード・バートン（俳優）（1970）
- アレックス・ファーガソン
- コリン・ファース（俳優）（2011）
- キャスリーン・フェリア（歌手）（1953）
- 福光尚次（阪急百貨店会長）（1993）
- ケイト・ブッシュ（2013）
- ロバート・プラント（2009）
- クレア・ブルーム（女優）（2013）
- アラン・ベイツ（俳優）（1996）
- ロバート・ヘルプマン（バレエダンサー・俳優）（1964）
- ヘレナ・ボナム＝カーター（女優）（2012）
- アンソニー・ホプキンス（俳優）（1987）
- 堀威夫（ホリプロ会長）（2003）
- イアン・マッケラン（俳優）（1979）
- ナイジェル・マンセル（レーシングドライバー）（2012）
- ジョン・ミルズ（俳優）（1960）
- イヴォンヌ・ミントン（歌手）（1980）
- ブライアン・メイ（2005）
- 諸橋晋六（三菱商事前会長）（2001）
- 山本正（日本国際交流センター理事長）（1998）
- ピーター・ユスティノフ（俳優）（1975）
- クリストファー・リー（2001）
- マイケル・レッドグレイヴ（俳優）（1952）
- エドムンド・ド・ロスチャイルド（N・M・ロスチャイルド&サンズ頭取）（1997）[15]
- キウェテル・イジョフォー（俳優） (2015)
- トム・ハーディ（俳優） (2018)
オフィサー(OBE)
- 安西浩（東京ガス会長）（1982）
- ウィルバート・オードリー (1996)
- サイモン・ウィンチェスター（2006）
- サム・ウォーバートン(ラグビーウェールズ代表主将)(2018)
- ライアン・ギグス
- ジェーン・シーモア（女優）（2000）
- ジーン・シモンズ（女優）（2003）
- ジャッキー・スチュワート（F1ワールドチャンピオン）（1972）
- パトリック・スチュワート（俳優）（2001）
- アラン・ロイ・ダフォー（1935）
- エイドリアン・ニューウェイ（レーシングカー・デザイナー）（2012）
- 野田秀樹（劇作家・演出家）（2009）
- マーク・ノップラー（1999）
- ジェーン・バーキン（2001）
- ゲイリー・バーロウ （2012）
- 日高正博（フジロック主催者）（2004）
- ジミー・ペイジ（2005）
- デビッド・ベッカム（2003）
- クリスチャン・ホーナー（レッドブル・レーシング・チーム代表）（2013）
- ジム・マーシャル (マーシャル・アンプリフィケーションの創業者)[1]
- ユアン・マクレガー（2013）
- 松岡俊治（イギリス九州松下電器社長）（1987）
- カイリー・ミノーグ（2008）
- デーモン・アルバーン（2016）
- 宮井仁之助（四日市石油副社長）（1982）
- ヴァン・モリソン（1996） [16]
- 吉田忠雄（YKK社長）（1983）後にCBEも受章。
- 吉田都（バレリーナ、プリンシパル）（2007）
- ヒュー・ローリー（俳優）（2007）
- ジョー・コッカー(2007)
- エディ・レッドメイン（2015）
- J・K・ローリング
- ライオネル・ネイサン・ド・ロスチャイルド（1917）
- 輪座克彦（BBC Worldwide Japan）（2012）
- ジェームズ・ゴールウェイ（フルート奏者）(1979)
- キーラ・ナイトレイ（女優）(2018)
- エルヴィス・コステロ（歌手）(2020)
メンバー(MBE)
- アデル (歌手)（2013）
- エドワード・キャヴェンディッシュ (第10代デヴォンシャー公爵)[17]
- 真田広之（俳優）（2002）
- エド・シーラン（2017）
- リンゴ・スター（1965） ※2018年にKnight Bachelorを授与されナイトの称号を受ける
- 戸地功（2013）[18]
- C・W・ニコル（小説家）（2005）
- ジェンソン・バトン （レーシングドライバー）（2010）
- ハリー・ケイン（フットボールプレイヤー） (2019)
- ルイス・ハミルトン（レーシングドライバー）（2008）※王族以外での最年少受賞者
- ジョージ・ハリスン（1965）
- コリン・マクレー（ラリードライバー）
- ポール・マッカートニー（1965） ※1996年にKnight Bachelorを授与されナイトの称号を受ける
- ジョン・レノン（1965）※1969年、生前に自らの意志で返納
- ジョナサン・レイ（オートバイレーサー）（2017）
- ジョン・ロウ（ダーツプレイヤー）（2019）
脚注
(一)^ London Gazette: no. 56878. p. 3351-3355. 14 March 2003. Supplement No.1.
(二)^ 君塚 p 269-271
(三)^ abc﹃英国の名誉勲章﹄駐日英国大使館公式サイト
(四)^ "No. 44999". The London Gazette (Supplement) (英語). 30 December 1969. 2014年1月19日閲覧。
(五)^ Lundy, Darryl. “Nathaniel Mayer Victor Rothschild, 3rd Baron Rothschild” (英語). thepeerage.com. 2014年1月19日閲覧。
(六)^ Lundy, Darryl. “Nathaniel Charles Jacob Rothschild, 4th Baron Rothschild” (英語). thepeerage.com. 2014年1月19日閲覧。
(七)^ "No. 59808". The London Gazette (Supplement) (英語). 11 June 2011.
(八)^ "No. 60009". The London Gazette (Supplement) (英語). 31 December 2011.
(九)^ “Spielberg receives Royal honour” (英語). BBC News. (2001年1月30日) 2014年1月19日閲覧。
(十)^ 日立製作所 ニュースリリース
(11)^ “U2のボノ、ナイトの称号を授与される - アイルランド”. AFPBB News. (2007年3月29日)
(12)^ 森ビル社長 森 稔‥英国より名誉大英勲章KBEを受章
(13)^ FASHIONSNAP.COM (2019年6月20日). “アメリカ人デザイナー初、ラルフ・ローレンが英国の名誉ナイト勲章を受章”. FASHIONSNAP.COM [ファッションスナップ・ドットコム]. 2019年6月24日閲覧。
(14)^ Lundy, Darryl. “Field Marshal John Standish Surtees Prendergast Vereker, 6th Viscount Gort, V.C.” (英語). thepeerage.com. 2015年8月16日閲覧。
(15)^ Lundy, Darryl. “Edmund Leopold de Rothschild” (英語). thepeerage.com. 2014年1月19日閲覧。
(16)^ Kleid, Beth (1996年6月17日). “Arts and entertainment reports from The Times, national and international news services and the nation's press.”. Los Angeles Times. 2016年1月20日閲覧。
(17)^ Lundy, Darryl. “Edward William Spencer Cavendish, 10th Duke of Devonshire” (英語). thepeerage.com. 2015年9月1日閲覧。
(18)^ 戸地 功氏に名誉大英勲章MBE
参考資料
書籍
●Duckers, Peter (2009). British Military Medals - A Guide for the Collector and Family Historian. South Yorkshire: Pen & Sword Books Ltd. ISBN 978-1-84415-960-4
●小川賢治﹃勲章の社会学﹄晃洋書房、2009年3月。ISBN 978-4-7710-2039-9。
●君塚直隆﹃女王陛下のブルーリボン-ガーター勲章とイギリス外交-﹄NTT出版、2004年。ISBN 4757140738。
●Ailsby, Christopher (1989). Allied Combat Medals of World War II vol.1 : Britain, the Commonwealth and Western European Nations. Avon: Haynes Publishing Group. ISBN 978-0-85059-927-5
