おとぎの世界旅行
1962年に公開された日本のアニメ映画
『おとぎの世界旅行』(おとぎのせかいりょこう)は、1960年に製作され、1962年8月25日に東宝系で公開された劇場用アニメ映画。東宝スコープ。上映時間は76分。
おとぎの世界旅行 | |
---|---|
監督 | 横山隆一 |
脚本 | 鈴木伸一、岡田英美子ほか |
製作 | 横山隆一 |
出演者 |
木下秀雄 辻村真人 上田敏也 徳川夢声 |
音楽 | 團伊玖磨 |
撮影 | 小松義幸 |
製作会社 | おとぎプロダクション |
配給 | 東宝 |
公開 | 1962年8月25日 |
上映時間 | 76分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
前作 | ひょうたんすずめ |
キャッチコピーは「マンガの旅は楽しいな おんぼろ車のヨサコイ号で世界をめぐる虹の夢!」
概要
編集
﹃ふくすけ﹄﹃ひょうたんすずめ﹄とヒットを続けたおとぎプロダクションは、決定版とも言うべき作品、それも長編アニメでは初となるオムニバス作品を企画、当初は﹃隆一おもちゃ箱﹄という仮題で、﹁フクちゃん﹂﹁王様こじき﹂﹁平ちゃんのゴルフ﹂﹁プンプン親爺﹂﹁ピックルちゃん﹂の短編5本のオムニバスとして企画された。そして配給元の東宝から撮影用シネスコレンズを貸与され、製作途中の﹁フクちゃん﹂﹁ピックルちゃん﹂を除く他の作品はワイドで作り直した。更に5本では短いという理由から、新たに2本の短編を追加。結局、タイトルも﹃おとぎの世界旅行﹂となり、﹁ロケット・フクちゃん﹂﹁ぴっくるちゃん﹂﹁竜巻に好かれた赤いシャツ﹂﹁へいちゃんのゴルフ﹂﹁勇敢な煙突号﹂﹁プンプンおやじ﹂﹁ベガー・キング﹂の7編と決定、上映時間も1時間35分の大作となった。
内容も一般的なセルアニメのほか、写真キャラをアニメートした作品、模型列車を駒撮りした作品とバラエティに富んだものとなり、声優には徳川夢声を特別出演、音楽には團伊玖磨と豪華なスタッフが勢揃いし、1960年暮れに完成した。
上映
編集
だが本作が東宝系で公開されたのは、1年半以上たった1962年8月25日、それも東宝創立30周年記念作品の一つである特撮映画﹃キングコング対ゴジラ﹄の1週上映延長に伴い、それまでの﹃私と私﹄︵監督‥杉江敏男、主演‥ザ・ピーナッツ︶に代わっての公開だった。しかも当時の東宝のプレスシートには、挿入される7本の短編と内容が紹介されているのにもかかわらず、公開直前になって﹁上映時間が長過ぎる﹂という理由だけで、7本の内﹁へいちゃんのゴルフ﹂﹁プンプンおやじ﹂がカットされてしまったのである。
力作だったにもかかわらず、﹁上映まで1年半﹂﹁怪獣映画との同時上映﹂﹁内容縮小﹂という憂き目に遭ったおとぎプロは、これをきっかけに﹃おとぎマンガカレンダー﹄といった、短編作品に専念せざるを得なくなる。
なお本項では、カットされた2短編についても述べる。
ストーリー
編集
ソーラン老人とオケサ青年の二人は、世界中の人々にアニメを見てもらうべく、蒸気自動車﹁ヨサコイ号﹂に乗って世界一周の旅に出かけた。そして途中で悪人に捕まっていたチョイナ少年を助けて、仲間に加え、ある郊外の村で﹁ロケット・フクちゃん﹂を上映した。やがて一行はアフリカに着くが、原住民に襲われ、酋長にフイルムの一部を食べられた。だが映画というものの意味が分かり、﹁ぴっくるちゃん﹂を上映すると、一行は命からがら逃げ出した。一行はイタリアに着くと、ベニスで﹁竜巻に好かれた赤いシャツ﹂を上映、やがてヨーロッパを巡回すると、ゴビ砂漠を旅し、万里の長城へ到着し、﹁へいちゃんのゴルフ﹂を上映、そして日本に着くと、﹁勇敢な煙突号﹂を上映した。次にアラスカの最大の劇場で﹁プンプンおやじ﹂を上映、最後の地・アメリカ大西部のゴーストタウンで﹁ベガー・キング﹂を上映、ところが観客が全て足の無い幽霊と分かって、あわてて逃げ出した。しかし世界一周は大成功、一行はカーニバルの花火に沸き立つ町にたどりついた。
短編作品の内容
編集ロケット・フクちゃん
編集- 脚本・動画:秦泉寺博、山本栄一/背景:中原健喜
- アラクマさんがロケットを作った。だがロケットはフクちゃんをさらって飛び、そして鯉のぼりの中にロケットが入って、鯉のぼりはフクちゃんと共に大空を飛んだ。
ぴっくるちゃん
編集
●脚本・動画‥町山みつひろ、甲藤征史/背景‥中原健喜
●カエルのぴっくるが先生カエルや仲間のカエルと共に、水中動物園に行った。だが猛魚が檻を破って大暴れ、ぴっくるは猛魚と戦い、皆を救出した。
●これと﹁ロケット・フクちゃん﹂はスタンダードで製作していたため、ワイドには作り直さず、上映時には両端にマスクを掛けて上映した。
竜巻に好かれた赤いシャツ
編集
●大海原から生まれたいたずら好きの竜巻は、漁師の赤いシャツが欲しくなり、強風を吹き付けて赤いシャツを手に入れた。やがて竜巻は日本に上陸して暴れるが、乱暴者の雲助竜巻がシャツをよこせと迫る。しかし富士山が大爆発、シャツだけが舞っていた。
●富士山付近のシーンには、葛飾北斎の﹁富嶽三十六景﹂の一枚﹁神奈川沖浪裏﹂を使用。
へいちゃんのゴルフ
編集
●脚本・動画‥岡田英美子
●へいちゃんがゴルフ場に行く。ヤスコちゃんがキャディ役。だがボールが池に落ちたり、カメが出てきたり…。
●﹁へいちゃん﹂とは横山隆一の四男・隆平︵製作当時小学一年生︶、﹁ヤスコちゃん﹂とは隆一の四女・泰子︵当時幼稚園児︶。この二人を写真に撮り、切り抜いてアニメートした作品。
勇敢な煙突号
編集
●蒸気機関車の﹁煙突号﹂は、明治時代より元気に働いていた。だが昭和になり、年老いて引退の時がやってくる。だが…。
●模型マニアの隆一が長年かかって集めた模型の汽車を、駒撮りでアニメートした。
●特別出演の徳川夢声は、このシーンのナレーションを担当。
プンプンおやじ
編集- 脚本・撮影:小松義幸
- プンプンおやじがギャングに撃たれて昇天、プンプンの魂は天国へ昇り、神様から保安官のバッジをもらい、ギャングを追跡。
ベガー・キング
編集- 脚本・背景・動画:鈴木伸一、山田幸弘
- 平和なこじき王国にロケットが堕ちて来た。宇宙の星をダイヤモンドだと思っていた王は、このロケットを改造し、宇宙へ飛び立った。
キャスト
編集スタッフ
編集- 製作:おとぎプロダクション、横山隆一
- 監督:横山隆一
- 監督助手:鈴木伸一
- 動画:鈴木伸一、町山充弘、秦泉寺博、山本栄一(現:瑛一)、甲藤征史、山田幸弘、滝口明治、斎藤博、島村幸重、岡田英美子
- 背景:中原健喜、鈴木伸一
- トレース:永田敏郎
- トレース・彩色:長井克子、関根スミ子、木村協子、玉井縫子、前田道子、佐藤松子、小山昭子、市原タイ子、太田喜美子、赤塚イシ子、塩野千鶴子、
- 撮影:小松義幸
- 録音:国島正男
- 音楽:團伊玖磨
備考
編集同時上映
編集参考文献
編集- 「日本アニメーション映画史」(洋泉社)98~101頁・266頁 1978年
関連項目
編集- ひょうたんすずめ(前作)