イサク
聖書の登場人物
概要
編集出生・幼少期
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神はアブラハムの子孫が星の数のようになると預言したが、アブラハムの妻サラは不妊の女であり、子を産まぬまま年老いて、二人とも諦め、そばめの子が約束の子であると考えていた。しかしある時神はアブラハムへの契約を再確認すると同時に、そばめの子ではなくサラから産まれる子供が跡取りであると知らせた。アブラハムはひれ伏したものの心の中ではあり得ないと笑い、1年後に再び告げられた際はサラも百歳のアブラハムと九十歳の自分との間に子供が出来るはずはないだろうと隠れて笑う。だが神は出来ると断言し、2人が笑ったことからその子の名をイサク︵笑う、イツハーク︶と名づけよと言った[1][2]。その言葉のとおりサラから子供が生まれ、アブラハムは神が言われたとおりイサクと名づける[3]。それからしばらく後、神はアブラハムの信仰を試そうとしてイサクを焼き尽くすささげものとして供えるよう求めた[4]。アブラハムはこれに従った。イサクも直前になって自分が犠牲であることを悟ったが抗わなかった。アブラハムがまさに息子を屠ろうとした時、神はアブラハムの信仰の確かさを知ってこれを止めた︵イサクの燔祭︶。
神はアブラハムを祝福して言った。
あなたの子孫を天の星のように、海辺の砂のように増やそう。︵中略︶地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。 — ﹃創世記﹄22:17~18
子孫・死去
編集イサクとイシュマエル
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イサクが生まれる前、出産をあきらめていたサラは、エジプト人奴隷のハガルによってアブラハムにイシュマエルをもうけさせていた。ところが、ハガルは増長して主人のサラを軽視するようになり、サラの腹から生まれたイサクをイシュマエルがからかっている光景をサラが目にしたことから、サラはアブラハムに母子を追い出すよう迫る。アブラハムは神の﹁心配せず妻の言う通りにせよ︵取意︶﹂とのお告げを受けてこの母子を追い出す。母子は放浪のあげく、泉を見つけて安堵する。この系列はイシュマエル人としてヘブライ人︵ユダヤ人︶とは別の民族になったとして、旧約にも登場する︵ヨセフをエジプトへ連行したのもイシュマエル人の隊商である︶。のちに、アラブ人はこのイシュマエルを祖とするイシュマエル人の子孫と称し、アラブ人が開いたイスラム教ではイサクよりもイシュマエルが重視される。
ヘブライズムを前面に押し出す作曲家の一人であるスティーヴ・ライヒはこの物語の神学的問題をパレスチナ問題と絡ませて﹁ザ・ケイヴ﹂というビデオ・オペラにしている。この物語はしばしば﹁ユダヤとアラブの宿命の対決﹂の起点として持ち出されるが、あくまで神話的な伝承に過ぎず、ユダヤ人・ユダヤ教徒とアラブ人・イスラム教徒が常に対立していたわけではないことにも注意すべきである。
脚注
編集- ^ 創世記(口語訳)#17:19
- ^ “創世記(口語訳) - Wikisource”. ja.wikisource.org. 2021年1月29日閲覧。
- ^ 創世記(口語訳)#21:3
- ^ 創世記(口語訳)#22:2