シン (メソポタミア神話)
解説
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シュメール人の都市ウルの主神でもあり、アッカド時代になるとメソポタミア諸王の王女がウルのナンナ女祭司に任じられるようになり[2]、また人名の一部としても用いられることが多くなっていった[3]。またウルと並んで、メソポタミア北部のハランもシンの祭儀の中心であった[3]。
メソポタミアにおいてシンは月を司り[4]、大地と大気の神としても信仰されていた[5]。月の規則正しく満ちては欠ける性質から﹁暦を司る神﹂とされ[4][5]、同時に、月は欠けてもまた満ちることに由来し、豊穣神としての側面を持ち合わせていたと考えられる[1]。
また、﹁暦の神﹂としてのシンは﹁遠い日々の運命を決める﹂力を持っていたとされ、彼の練る計画を知った神はいないとされる[5]。
シンボルは三日月で、三日月に似た角を持つ雄牛と深い結びつきを持つとされた[3]。
ナンナはエンリルの最初の子であり、母はエンリルの配偶神ニンリル。エンリルが強引にニンリルに迫り、身籠ったのがナンナだという。あるときナンナはニップルの都市神であるエンリルを訪ね、多くの供物を捧げ、ウルに恵みを授ける約束をもらっている[1]。
配偶神はニンガルで、彼女が当初はナンナの求婚を拒んだため、ナンナは地には農作物、森や川には鹿や魚など、多種多様の豊穣をもたらした。そのことでニンガルは、ウルでナンナと共に暮らすことを決めたという[5]。シュメールではナンナの子は太陽神ウトゥと金星神イナンナとされ[5]、アッカドではシンの子は太陽神シャマシュと金星神イシュタルとされた[3]。
脚注
編集参考文献
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●稲葉義明他﹃西洋神名事典﹄山北篤、新紀元社︿ファンタジー事典シリーズ﹀、1999年11月、113頁。ISBN 978-4-88317-342-6。
●グレイ, ジョン﹃オリエント神話﹄森雅子訳︵新装版︶、青土社︿シリーズ 世界の神話﹀、1993年9月。ISBN 978-4-7917-5259-1。
●コッテル, アーサー﹃世界神話辞典﹄左近司祥子、宮元啓一、瀬戸井厚子、伊藤克巳、山口拓夢、左近司彩子訳、柏書房、1993年9月。ISBN 978-4-7601-0922-7。
●高井啓介、辻田明子 著﹁ナンナ︵シン︶﹂、松村一男、平藤喜久子、山田仁史編 編﹃神の文化史事典﹄白水社、2013年2月、378-379頁。ISBN 978-4-560-08265-2。
●中田一郎﹁シン﹂﹃世界大百科事典﹄ 第14巻、加藤周一他編︵改訂新版︶、平凡社、2007年9月、212-213頁。ISBN 978-4-582-03400-4。
●前川和也﹁ウル﹂﹃世界大百科事典﹄ 第3巻、加藤周一他編︵改訂新版︶、平凡社、2007年9月、371頁。ISBN 978-4-582-03400-4。