バイオコークス
概要
編集特徴
編集冷間圧縮強度が高い(60-100MPa)
編集溶解炉等に銑鉄と一緒に投入する際に圧破されない強度(石炭コークス20MPaが基準)が必要とされるが、バイオコークスは従来のバイオマス燃料(ペレット燃料では数MPa程度)にはない高冷間圧縮強度を有している[1]。
安定性
編集高温環境下でも長時間緩慢燃焼が可能
編集従来のバイオマス燃料と比較して高温環境下でも長時間緩慢燃焼が可能であり、自動車部品メーカ所有のキューポラ炉等において、石炭コークスの代替燃料として使用可能なことを実証している[1]。
ゼロエミッション燃料(重量収率100%)
編集原料保有エネルギーを100%有効利用
編集原料中の揮発成分の揮散がないので原料が保有するエネルギーを100%有効に利用できる[4]。
比重が大きい
編集原料となる乾燥植物(比重0.2~0.3)、ペレット燃料(0.6~0.7)と比べバイオコークスの見掛け比重は1.2~1.4であり、原料と比べ5~6分の1のサイズまで容積を圧縮することができる。
バイオコークス(杉) | 石炭コークス | 石炭 | 木炭 | ペレット(杉) | |
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総発熱量(kcal/kg) | 4200 | 7000 | 8000 | 6640~7525 | 4200 |
冷間強度(MPa) | 50-100 | 20 | - | - | 5~10 |
見掛け比重 | 1.2~1.4 | 0.7 | 0.8 | 0.07~1.2 | 0.6~0.7 |
水分(%) | 3~10 | ほぼ0 | 7~10 | 5~11 | 3~10 |
炭素分(%) | 約50 | 80~90 | 55~74 | 70~80 | 約50 |
揮発分(%) | 30~40 | 5以下 | 18~37 | 8.7~24.5 | 30~40 |
気孔率(%) | ほぼ0 | 30~40 | - | 約40 | - |
製法
編集- 材料となる植物試料を1~3ミリ程度の大きさに粉砕し、水分を5~15%程度に調整する
- 装置のシリンダーに充填し、20MPaで圧縮する(直径16cmの場合で16トン)
- 圧縮を続けながら180℃まで約40分間加熱する
- 常温まで冷却する
実証試験
編集実用化、工業化へ向け複数のプロジェクトが試みられている。
パームヤシによるバイオコークス製造
編集バイオコークスを活用したハウス加温栽培
編集杉間伐材を活用したコジェネレーション利用
編集除染廃棄物の減量化の試み
編集商業生産プラント
編集大阪府森林組合は、森林整備に伴い発生する間伐材などの木質バイオマスを原料に、バイオコークスを製造する拠点「大阪府森林組合高槻バイオコークス加工場」(大阪府高槻市中畑)を建設した。世界で初の商用(実用)のバイオコークス製造プラントとなる。2011年6月中を目途に操業を開始する。2011年度中は試行操業として、設備や製品の実証・検証を兼ねてバイオコークスを製造。本格的な商用操業は、2012年4月(2012年度)からとなる予定である[9]。
実用化へ向けたコスト試算
編集経済産業省によって日産10t規模でバイオコークスを製造した場合の主だった用途における採算性の試算が行われている[10]。このレポートによると製糖工場や飲料工場の製造かすを原料としてバイオコークスを製造する場合、原料輸送費や粉砕費用が省けるため高い採算性を見込むことが可能だが、一方でごみ焼却炉やハウス栽培農家では原料輸送費や粉砕、乾燥費用がかさみ採算を確保することが難しいことが読み取れる。なお北海道の泥炭を乾燥やバイオコークス製造の熱源として用いる場合、採算性がかなり向上すると見られている。