ヒンドゥー暦
概要
編集原理
編集
インドの太陰太陽暦では、太陽の黄道上の位置をもとに決められる太陽月と、朔望月をもとに決められる太陰月・太陰日を使用する。
太陽月︵ラーシ︶は黄道十二宮と同様、黄道の上を太陽が30度動くごとに変化する。たとえば黄経が0度から30度までは白羊宮(Meṣa) にあたる[4]。太陽月の長さは29日から32日の間になる[5]。
太陰月︵マーサ︶は朔から望までを白分︵シュクラ・パクシャ︶、望から次の朔までを黒分︵クリシュナ・パクシャ︶と呼ぶ。ひとつの月を白分から始める方式をアマンタと呼び、主に南インドで用いられる。黒分から始まる方式をプールニマンタと呼び、主に北インドとオリッサ州で用いられる。プールニマンタの月はアマンタよりも半月早く始まる[6]。太陰月の名称は、最初の朔の属する太陽月によって決定される。たとえば太陽が双魚宮にあるときに朔が起きれば、その月はチャイトラ月になる。ひとつの太陽月に朔が2回起きる場合、最初の朔を含む月は余月︵アディカ・マーサ、英語版︶と呼ばれ、閏月に相当する[7]。また、まれではあるがひとつの太陽月に朔が一度も含まれない場合もあり、この場合はひとつ月がとばされる︵欠月︶[8]。
太陰日︵ティティ︶は月と太陽の黄経の差によって太陰月を30等分したものを言う。15日が白分、15日が黒分に属し、それぞれ1から15までの番号がついている。︵太陽︶日の名前は日の出時の太陰月、白分・黒分、太陰日の名称に従う。ある日が前日と同じ日付になる場合︵余日︶や、日付が1日とぶ場合︵欠日︶がある[9]。
年初を太陰月のどの月とするかは3種類があり、チャイトラ月︵グレゴリオ暦の3-4月︶から年が始まる方式がもっとも普通だが、アーシャーダ月︵6-7月︶から始まる方式やカールッティカ月︵10-11月︶から始まる方式もある[10]。月が黒分から始まる方式では年初がチャイトラ月の白分から始まるため、ひとつの月の途中から新しい年がはじまることになる[11]。
暦元
編集
暦元のとり方にもさまざまなものがあるが、現在はシャカ︵サカ︶紀元︵西暦78年︶とヴィクラマ紀元︵紀元前58年︶の2種類がもっともよく用いられる[12]。また、紀元を﹁0年﹂として満で数える方式と、﹁1年﹂として数えで数える場合の2種類がある[13]。
例えばヴィクラマ暦︵満︶2050年の開始は、
●チャイトラ月の黒分を年初とした場合、1993年3月9日
●チャイトラ月の白分を年初とした場合、1993年3月24日
●カールッティカ月の白分を年初とした場合、1993年11月14日
になる[14]。
月名称
編集サンスクリットの名称に従う。現代インド諸語では言語により名称が異なる。
1年を2ヶ月ずつの6季節に分けている。
太陽月名称 | 太陰月名称 | 季節 | グレゴリオ暦月 | 十二宮 |
Meṣa | Vaiśakha | Vasanta | 4-5月 | 白羊宮 |
Vṛṣabha | Jyaiṣṭha | Vasanta | 5-6月 | 金牛宮 |
Mithuna | Āṣāḍha | Grīṣma | 6-7月 | 双児宮 |
Karkaṭa | Śrāvaṇa | Grīṣma | 7-8月 | 巨蟹宮 |
Siṃha | Bhadra | Varṣa | 8-9月 | 獅子宮 |
Kanyā | Āśvina | Varṣa | 9-10月 | 処女宮 |
Tulā | Kārttika | Śarad | 10-11月 | 天秤宮 |
Vṛścika | Agrahāyaṇa | Śarad | 11-12月 | 天蠍宮 |
Dhanu | Pauṣa | Hemanta | 12-1月 | 人馬宮 |
Makara | Māgha | Hemanta | 1-2月 | 磨羯宮 |
Kumbha | Phālguna | Śiśira | 2-3月 | 宝瓶宮 |
Mīna | Caitra | Śiśira | 3-4月 | 双魚宮 |
脚注
編集- ^ Leow (2001) p.17
- ^ Leow (2001) pp.18-19
- ^ Leow (2001) p.20
- ^ Leow (2001) pp.32-33
- ^ Leow (2001) pp.24-25
- ^ Leow (2001) pp.35-53
- ^ Leow (2001) pp.37-38
- ^ Leow (2001) pp.38-40
- ^ Leow (2001) pp.40-45
- ^ Leow (2001) pp.36-37
- ^ Leow (2001) p.48
- ^ 矢野(1992) pp.168-169
- ^ 矢野(1992) pp.167-168
- ^ Leow (2001) pp.49-50
参考文献
編集- LEOW Choon Lian (2001) (pdf), Indian Calendars, Department of Mathematics, National University of Singapore
- 矢野道雄『占星術師たちのインド』中公新書、1992年。ISBN 4121010841。
外部リンク
編集- When.exe Ruby版 - 古今東西あらゆる文化および言語で用いられた暦日・暦法・時法・暦年代・暦注などにユニークな名前付けを行い、統一的に扱うことを目的としたフレームワーク。ヒンドゥー暦(インド太陰太陽暦)を含む暦の相互換算に対応。
- Helmer Aslaksen; Akshay Regulagedda, Regional Varieties of the Indian Calendars, Department of Mathematics, National University of Singapore
- Takashi SUGA『suchowan's UniWiki Calendar/When』 。(「インド/伝統的な暦」を参照)