ユミル
北欧神話の巨人
ユミル[1]︵古ノルド語: Ymir︶とは北欧神話﹃スノッリのエッダ﹄に出てくる原初の巨人。彼はまたアウルゲルミル︵古ノルド語: Aurgelmir、﹁耳障りにわめき叫ぶ者﹂︶とも呼ばれる[2]。なお﹁Ymir﹂の日本語表記には、他に、ユーミル[3]、ユミール[4]、イミル[5]などがある。
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オーディン・ヴィリ・ヴェーによるユミルの殺害︵ローランス・フレー リク画︶
土星の第19衛星ユミルのエポニムである。
﹃スノッリのエッダ﹄第一部﹃ギュルヴィたぶらかし﹄の語るところでは[6]、ユミルはギンヌンガガプの、ムスペルヘイムの熱で溶かされたニヴルヘイムの霜から、原初の牝牛アウズンブラとともに生まれ、この牝牛の乳を飲んで多くの子孫を産み、これが霜の巨人族となった[7]。
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アウズンブラの乳を飲むユミル。︵Nikolaj Abraham Abildgaard画。1790年︶
あるとき、最初に生まれた神ブーリの息子ボル︵ブル︶が、ユミルの一族である霜の巨人ボルソルンの娘ベストラと結婚し、オーディン、ヴィリ、ヴェーの三神が生まれた。巨人達は非常に乱暴で神々と常に対立していたが、巨人の王となっていたユミルはこの三神に倒された。この時、ユミルから流れ出た血により、ベルゲルミルとその妻以外の巨人は死んでしまった。
三神はユミルを解体し、血から海や川を、身体から大地を、骨から山を、歯と骨から岩石を、髪の毛から草花を、まつ毛からミズガルズを囲う防壁を、頭蓋骨から天を造り、ノルズリ、スズリ、アウストリ、ヴェストリに支えさせ、脳髄から雲を造り、残りの腐った体に湧いた蛆に人型と知性を与えて妖精に変えた[要出典]。
﹁ユミル﹂の名は、インド神話に登場するヤマ︵閻魔大王︶と同語源である[8]。H.R.エリス・ディヴィッドソンはその上で、彼の名を﹁混成物﹂﹁両性具有﹂と理解することができ、1人で男性と女性を生み出し得る存在と考えることができ、さらには人間と巨人の始祖ともみることができるとしている[9]。
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![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/82/Audhumla_by_Abildgaard.jpg/250px-Audhumla_by_Abildgaard.jpg)
脚注
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(一)^ ﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄、﹃北欧神話﹄︵デイヴィッドソン︶などにみられる表記。
(二)^ ﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄228頁。
(三)^ ﹃アスガルドの秘密 北欧神話冒険紀行﹄︵ヴァルター・ハンゼン著、東海大学出版会、2004年、ISBN 978-4-486-01640-3︶などにみられる表記。
(四)^ ﹃北欧神話と伝説﹄︵ヴィルヘルム・グレンベック著、山室静訳、新潮社、1971年、ISBN 978-4-10-502501-4︶などにみられる表記。
(五)^ ﹃北欧の神話伝説︵I︶﹄︵松村武雄編、名著普及会︿世界神話伝説大系29﹀、1980年改訂版、ISBN 978-4-89551-279-4︶などにみられる表記。
(六)^ ﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄228-230頁。
(七)^ 蔵持不三也﹃神話で訪ねる世界遺産﹄ナツメ社、2015年、68頁。ISBN 978-4-8163-5870-8。
(八)^ Julius Pokorny. Indogermanischer etymologisches Wörterbuch p.505.
(九)^ ﹃北欧神話﹄︵デイヴィッドソン︶236頁。
参考文献
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●H.R.エリス・デイヴィッドソン(en)﹃北欧神話﹄米原まり子、一井知子訳、青土社、1992年、ISBN 978-4-7917-5191-4。
●V.G.ネッケル他編﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。