十字
幾何学図形
概要
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十字は最も古代から存在する、人類的とも言えるシンボルの1つであり、多くの地域で使用されている。特によく知られているキリスト教の十字架の他にも、四大要素のひとつを示すシンボル、占星術や天文学のシンボルのひとつ、方位を示すシンボルとしても用いられている。
キリスト教と十字
キリスト教において十字は、直接的︵表面的︶には﹁キリストの磔刑﹂を示しているが、その深い意味、キリスト教神学的な意味としては、﹁もともと天において神ヤハウェの近くにいて天地創造にもかかわわったイエス・キリストが、人類のためにわざわざ受肉してこの地上に現れてくださり、全人類の罪をあがなうために十字架にかかってくださった。そのお蔭でヤハウェと人類の関係が修復し、人々は来る日には復活し永遠のいのちを得る状態となった。﹂という、聖書に記されている一連のできごとや、その神学的な意味を表すためのシンボルである。
またパウロの哲学︵神学︶では﹁垂直線は神と人との関係。水平線は人々の間の関係。十字は両者のreconciliation 調和︵和解︶[1]。﹂という意味を持ち、その哲学を示すシンボルなどとしても使われている。多くのキリスト教の教派で聖職者や信徒たちが、︵ことあるごとに、身体の前、胸や顔の前あたりで︶指︵手︶を﹁十字﹂に動かすようになった︵日本語では﹁十字を切る﹂や﹁十字を描く﹂などと表現する︶。キリスト教はヨーロッパに広がり、ヨーロッパの王族︵の王権︶や貴族はキリスト教教会︵西ヨーロッパではカトリック、東欧やロシアではオルトドクス︶の権威とも結びついていたので十字は王族や貴族の紋章、家紋などにも使用されるようになった。またヨーロッパの他の国々でもキリスト教の信仰を示すために国旗に十字が埋め込まれた︵たとえば、デンマークの国旗、また北欧諸国の国旗に埋め込まれた十字︵スカンディナヴィア十字︶ 等々︶。また大航海時代のヨーロッパ人の世界進出によって世界中に広まり、キリスト教は世界で数十億人の信者を擁するに到ったので、ドミニカ共和国の国旗やトンガの国旗を含めて、多くのキリスト教国の国旗でも使用されるようになった。→キリスト教神学、十字の切り方、紋章、紋章学、クロス (紋章学)、#国旗の例
スイスでも︵十字が貴族の紋章に使われた結果、巡り巡って︶スイスの国旗に用いられるようにもなった。そして赤十字社は、その設立にスイスが縁があるため︵また、困っている人のためならば人種や国境を越えて手を差し伸べる、という人類愛、友愛、キリスト教的理念を暗黙裏に示すためにも︶十字の標章を用いることになった。
天体と十字
占星術や古い時代の天文学では、太陽のシンボルとして使われた。また1598年にペトルス・プランシウスによって星座群に﹁南十字座﹂が加えられ、その結果それ以降、実際の星座群の中にも十字がある、と見なされるようになった。
アジアと十字
アジア地域での十字について解説すると、中国の、晋の時代に十字をつけた餅を食して厄除けとする風習があった[2]。
日本に、その晋の餅の風習が伝えられると鎌倉時代に流行し、その餅のことを﹁十字﹂といったともされる[2]。
また日本では家紋に十字を埋め込んだものがある。→#家紋と十字
種類
編集以下は主な十字の例である。十字の持つ特定の意味でまとめたものではなく、十字の全ての種類でもない。名称やデザインは代表的なもので、詳細は各リンク先も参照。
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ラテン十字。短い横のアームが、長い縦のアームのやや上方で直角に交差する。
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ラテン十字の1種。アームの長さが等しくギリシャ十字と似ている。
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聖ペトロ十字または逆十字。ラテン十字を上下反転させた形。
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ケルト十字。ラテン十字と十字の交差部分を囲む輪から構成される。
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ケルト十字の1種。18世紀以降に図案化されたもの。
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コプト十字。初期のもの。
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長老派教会十字
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ロレーヌ十字。横のバーが2つある。古代のもので、横のバーの長さが等しい。
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総主教十字。ロレーヌ十字と極めて似ている。
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六端十字[3]。東方十字の1種。ラテン十字の下に、短い横のバーが斜めに交差する。
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アークエンジェルクロスの1種。
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アークエンジェルクロスの1種。
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アークエンジェルクロスの1種。
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ロマネスク様式の十字。
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クロス・クロスレット。アームの端が十字になっている。
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エルサレム十字。十字軍の十字としても知られている。
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松葉杖十字。エルサレム十字の元となった。
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黒十字の1種。アームが直線(バー)になっている(バルケンクロイツ、ドイツ語: Balkenkreuz)
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クロス・ポミー。バーの端が丸いノブの形をしている。
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クロス・フォウシェイ。アームの先端がフォークの形(V字)をしている。
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クロス・モーリン。アームの端が留め金の形をしており、端が2つに分岐して曲線を描いて戻っている。
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テンプル騎士団十字。
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カラトラバ騎士団十字。
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アンクまたは取っ手付き十字またはエジプト十字。上部の端が取っ手の形をしている。
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クロス・アンキー(碇十字)。アンカード・クロス、マリナーズ・クロスとも呼ばれる。
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マリアン・クロス。ラテン十字を右下の空白が大きくなるように縦木と横木をずらし、右下の空白に「M」と記した形状。
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葡萄十字。横木が、やや下へ垂れ下がっている。
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スカンディナヴィア十字。左側に交点が寄った横長の十字。スカンディナヴィア諸国の国旗でも使用されている。
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エチオピア十字の一例。様々な意匠のものがある。
紋章における十字は、他にも非常に多くのバリエーションがある。紋章の背景知識は紋章学を参照。有名なオンライン情報には A Glossary of Terms Used in Heraldry by James Parker (1894) があり、紋章における十字のバリエーションについて多くの情報が参照できる。
旗の例
編集詳細は「旗章学用語」および「w:gallery of flags with crosses」を参照
いくつかの旗は十字を含んでいる。
北欧のスカンディナヴィア諸国の全ての国の国旗は、スカンディナヴィア十字で知られている︵スウェーデンの国旗、アイスランドの国旗など︶。17世紀以降のスイスの国旗は同じ長さの線による正方形の十字を使用し、赤十字の標章の元となった。ヨーロッパ以外でも キリスト教徒の多い国が、国旗に十字を入れることがある(トンガの国旗、 ジャマイカの国旗など)。
また南半球の多くの国は、国旗に南十字星︵サザンクロス︶を使用している︵サモアの国旗 、ブラジルの国旗など︶。
国旗の例
編集国旗以外の例
編集家紋と十字
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十文字紋︵じゅうもんじもん︶は、漢字の﹁十﹂を図案化した家紋である。図案には﹁丸に十文字﹂﹁島津十文字﹂、﹁日置十文字﹂、﹁猪飼十文字﹂などがある。その形状から、久留子紋と混同されることが多く、また、島津氏が用いたとされる﹁丸に十字﹂は轡紋と混同されることがある。
鎌倉時代初期の、島津忠久の甲冑に記された﹁十文字﹂が現存では最古の例である。主に島津氏とその関係の氏族が用いた。フランシスコ・ザビエルが布教のために鹿児島に来た際、島津が﹁白い十字架﹂を使用していたことに驚いた、という記録がある[4]。
徳川幕府によるキリスト教の禁教令発布後は轡紋︵くつわもん︶、祇園守紋︵ぎおんまもりもん︶、桛紋︵かせぎもん︶、卍紋などとともに久留子紋の代用として用いられることがあった。[2]
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まるにじゅうもんじ
丸に十文字 -
まるにじゅうじ
丸に十字 -
まるにじゅうじ(まるにじゅうじくるす)
丸に十字(丸に十字久留子) -
しまづじゅうもんじ
島津十文字 -
かやのうちじゅうもんじ
榧の内十文字
脚注
編集参考文献
編集- Chevalier, Jean (1997). "The Penguin Dictionary of Symbols". Penguin ISBN 0140512543
- Koch, Rudolf (1955). The Book of Signs. Dover, NY. ISBN 0-486-20162-7.
- Drury, Nevill (1985). Dictionary of Mysticism and the Occult. Harper & Row ISBN 0060620935
- Webber, F. R. (1927, rev 1938). Church Symbolism: an explanation of the more important symbols of the Old and New Testament, the primitive, the mediaeval and the modern church. Cleveland, OH. OCLC 236708.
関連項目
編集外部リンク
編集- The Christian Cross of Jesus Christ: Symbols of Christianity, Images, Designs and representations of it as objects of devotion
- Seiyaku.com, all Crosses
- Lutheransonline.com, variations of Crosses - images and Mmeanings
- Nasrani.net, Indian Cross
- Freetattoodesigns.org, The Cross in Tattoo Art