入玉

将棋において、玉将または王将が敵陣まで進むこと
持将棋から転送)

[1][2][3]

概説

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【図1】


第31期竜王戦・6組ランキング戦
(2018年2月27日)
第420手[注 1] △8七歩成まで持将棋

中尾敏之 持駒:銀二 歩四


(後手:5×2 + 14 = 24点)
987654321 
       
     
     
       
       
        
   
        
       

84051344223742







0[4]

15[4]

11[4]

27[2]2424[3]

24
  • 一方の対局者の点数が24点未満であれば負け[4]
  • 一方の対局者の点数が31点以上であれば勝ち[注 4]
  • 点数が対局者両者ともに24点以上30点以下であれば無勝負(引き分け)=持将棋[4]

[5]

1使[6]

持将棋が成立した場合の対応

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公式戦において持将棋が成立した場合、タイトル戦以外の対局では通常、千日手と同様の規定に則り先手後手を入れ替えて指し直す。この場合に持将棋局や千日手局は単独では成立せず、指し直し局と合わせて1局とみなし、持将棋・千日手局と指し直し局を合わせた1局に対して勝敗が付くため、タイトル戦以外の対局での持将棋により、棋士の成績に引き分けが記録されることはない。

タイトル戦における持将棋

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1865232833293-552130[7]89[5][8]

0.52140[9]31[9]

2024141
タイトル戦における持将棋局
【タイトル棋戦 = 14例】
  1. 1947年03月20日: 06期名人戦 第3局 (▲塚田正夫 八段__ - △木村義雄 名人)
  2. 1958年06月04日: 第17期名人戦 第4局 (▲升田幸三 二冠__ - △大山康晴 名人)
  3. 1967年11月17日: 06期十段戦 第3局 (▲大山康晴 十段__ - △二上達也 八段)=大山2回目
  4. 1975年06月19日: 第34期名人戦 第7局 (▲大内延介 八段__ - △中原誠 名人)
  5. 1980年05月01日: 第38期名人戦 第3局 (▲米長邦雄 王位__ - △中原誠 名人)=中原2回目
  6. 1982年04月14日: 第40期名人戦 第1局 (▲加藤一二三 十段_ - △中原誠 名人)=中原3回目
  7. 1988年03月11日: 第13期棋王戦 第3局 (▲高橋道雄 棋王__ - △谷川浩司 王位)
  8. 1989年10月27日: 02期竜王戦 第2局 (▲羽生善治 六段__ - △島朗 竜王)
  9. 1991年10月25日: 04期竜王戦 第1局 (▲谷川浩司 竜王__ - △森下卓 六段)=谷川2回目
  10. 1992年12月21日: 第61期棋聖戦 第2局 (▲郷田真隆 王位__ - △谷川浩司 棋聖)=谷川3回目
  11. 2014年08月06日: 第55期王位戦 第3局 (▲羽生善治 王位__ - △木村一基 八段)=羽生2回目
  12. 2020年07月05日: 05期叡王戦 第2局 (▲豊島将之 竜王名人 - △永瀬拓矢 叡王)
  13. 2020年07月19日: 第05期叡王戦 第3局 (▲永瀬拓矢 叡王__ - △豊島将之 竜王名人)=永瀬2回目、豊島2回目
  14. 2024年02月04日: 第49期棋王戦 第1局 (▲藤井聡太 棋王__ - △伊藤匠 七段)
00※ 各対局者の通算記録には引き分けが記録。

【女流タイトル棋戦 = 1例】

00※ 持将棋の対局時点で加藤桃子は奨励会員の身分のため、伊藤沙恵の女流通算記録にのみ引き分けが記録。

アマチュア棋戦の「27点法」

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2727(=1)×9(=1)×8(=5)(=5)27272728

持将棋の種類

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合意による持将棋

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上述(両者の合意による「点数計算」と「持将棋」)のとおり、持将棋は対局者両者の合意によって成立する。玉将がまだ敵陣3段目以内に入っていない段階でも、その後の入玉が確実であり且つ対局者両者の合意があれば、入玉したものと見なして持将棋に至ることもある。2007年2月16日に行われた朝日オープン将棋選手権久保利明阿久津主税[10]では、久保玉が入玉、阿久津玉が自陣3段目にあり、駒数の点数は久保が大きく足りない状態であったが、阿久津の提案によって持将棋となった。

このタイミングでの持将棋の提案は早すぎるのではないかとして話題になった[11]が、対局中は常に局面をリードしており駒数でも有利であった阿久津側からの提案であったことと、持将棋のルールが合意によるものであることから問題にはならなかった。なお、持将棋指し直し局は阿久津が勝利している。

「入玉宣言法」による持将棋

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【図2】


プロ棋戦公式戦で初めて
「入玉宣言法」が行使された局面
(2022年7月18日)
【212手目△2四馬まで】
【記録上は「213手目▲宣言」まで】
▽後手:竹部さゆり 女流四段 (19点)
( 5点×2 + 1点×8 ) + ( 1点×1 )
( 盤面の全10枚の駒[王以外] ) + ( 持ち駒 )
※ 後手の入玉は120手目

(後手)持駒:香

 
987654321 
        
    
    
       
        
        
     
        
       

【図3】


コンピュータ将棋で初めて
「入玉宣言法」が行使された局面
(2015年5月4日)
【209手目▲5三成桂まで】
【記録上は「210手目△宣言」まで】
▽後手:Selene (37点)
( 5点×3 + 1点×7 ) + ( 1点×15 )
( 敵陣3段目以内の10枚の駒 ) + ( 持ち駒 )
※ 後手の入玉は124手目

(後手)持駒:銀 桂 香二 歩十一

 
987654321 
       
        
    
       
        
       
     
    
      

50019932013101[12]2019101[13]

500(
「入玉宣言法」の適用条件
  • 宣言する者の玉が入玉している(敵陣3段目以内に入っている)。
  • 宣言する者の敵陣3段目以内にいる駒は、玉を除いて10枚以上である。
  • 宣言する者の玉に王手がかかっていない
  • 宣言する者の「敵陣3段目以内にいる自分の側の駒」と「持ち駒」を対象として、
    前述の「点数計算」を行なったとき、点数が24点以上ある。
    • 「入玉宣言法」での「点数計算」では、「合意による持将棋」の場合とは異なり、
      「敵陣3段目以内に入っていない盤上の駒」を計算対象から除く
  • 対局手数が500手未満である(500手以降の場合は「別の規定(後述)が適用される)。

上記の条件を満たしていた場合に、

宣言した者の「点数」が
  • 31点以上であれば宣言した者が勝ち
  • 24点以上30点以下であれば持将棋(引き分け)



使202271816[14][15]8

21222132[16][17]101735[6]



272827[18]

500手指了による持将棋

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2019101[13]500500500

500501500500

500

50031620182274201

コンピュータ将棋

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2000使

2010201525Selene10153727[19]3[20]20164ponanza1

2727242427[21]2728272424-30

トライルール

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公式なルールではないが、一部の将棋クラブではトライルールを採用するところもある。トライルールとは、初期配置の相手玉の位置(先手なら5一、後手なら5九)に相手の駒が利いていないとき、その位置に自分の玉を進めるとトライとなり、その場で勝ちとなるルールである。

トライルールの歴史

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トライルールの初出は『近代将棋』1983年11月号でプロ棋士武者野勝巳が、読者投稿の入玉規定の改善案として2案を紹介した記事のうちの1案[注 7]であり、「持将棋“トライ”勝利案」という名称がつけられている。

また『将棋世界』1996年8月号でプロ棋士の先崎学が、前述の記事とは独立に(あるいは知らず知らずのうちに影響を受けて)自著のコラム上で発表したものであり(後に『世界は右に回る 将棋指しの優雅な日々』に収録)、「トライルール」という名称もそのときに使用された。

その他

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20139186125162203[22]

11[23]

20149[24]



脚注

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注釈

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(一)^ 2017

(二)^ 55121214

(三)^ 2727

(四)^ 543124

(五)^ 5221303343-4134

(六)^ 使133530133550030

(七)^ 355

出典

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(一)^ "". . 2023430

(二)^ "".  . 2023430

(三)^ "". . 2023430

(四)^ abcde"". . 2023430

(五)^ "".  . 2023430

(六)^ 42 2019972020329

(七)^ . . 202076

(八)^ 22221228 - Yahoo!. Yahoo! . 202076

(九)^ ab  52 #2 .  (2020718). 20201010

(十)^ asahi.com 25 3 - 

(11)^ 200711825

(12)^ . . 20165132017124

(13)^ ab. . 2019102

(14)^  , (2022-07-18), 2022-07-19, https://web.archive.org/web/20220718155839/https://mainichi.jp/articles/20220718/k00/00m/040/271000c 2022719 

(15)^ 500|  | ABEMA TIMES, (2022-04-20), 2022-07-20, https://web.archive.org/web/20220720134029/https://times.abema.tv/articles/-/10032167 2022720 

(16)^ @mynavi_shogi (2022720). "". 2022720XTwitter2022720 

(17)^   | , (2022-08-28), 2022-08-28, https://web.archive.org/web/20220828045229/https://mainichi.jp/articles/20220827/k00/00m/040/083000c 2022828 

(18)^ Q&A. . 2017124

(19)^  2022112710http://www2.computer-shogi.org/wcsc33/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E5%B0%86%E6%A3%8B%E9%81%B8%E6%89%8B%E6%A8%A9%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB-221127.pdf2023430 

(20)^ Selene

(21)^  1 -  - Yahoo!202425https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2f18cd8cb59a3f2fdb8862d76a02592cc220f2f4 

(22)^ 2013918  2   61 

(23)^  .  . 2021121202354

(24)^ . . 202367

関連項目

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  • 千日手
  • チェス - エンドゲーム(終盤)になるとキングは他の駒をサポートするため相手陣地へ向かうのが一般的。
  • 間宮純一 - 上記のとおり入玉した玉を詰ませるのが困難であることから、序盤から入玉を狙って指す戦法を常用し「久夢流」と称した。