牧神の午後への前奏曲
クロード・ドビュッシーが作曲した管弦楽曲
﹃牧神の午後への前奏曲﹄︵ぼくしんのごごへのぜんそうきょく、仏: Prélude à "L'après-midi d'un faune"︶は、フランスの作曲家クロード・ドビュッシーが1892年から1894年にかけて作曲した管弦楽作品であり、彼の出世作である。演奏時間は約10分。
概要
編集音楽・音声外部リンク | |
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Debussy:Prélude à l'après-midi d'un faune - アンドレス・オロスコ=エストラーダ指揮hr交響楽団による演奏。hr交響楽団公式YouTube。 | |
Debussy:Prélude à l'après-midi d'un faune - ミッコ・フランク指揮フランス放送フィルハーモニー管弦楽団による演奏。France Musique公式YouTube。 | |
Claude Debussy - Prélude à l'après-midi d'un Faune - ジョルジュ・プレートル指揮シュトゥットガルト放送交響楽団(現・南西ドイツ放送交響楽団)による演奏。EuroArts公式YouTube。 |
この曲はドビュッシーが敬慕していた詩人マラルメの﹃牧神の午後﹄︵半獣神の午後︶に感銘を受けて書かれた作品である。﹁夏の昼下がり、好色な牧神が昼寝のまどろみの中で官能的な夢想に耽る﹂という内容で、牧神の象徴である﹁パンの笛﹂をイメージする楽器としてフルートが重要な役割を担っている。牧神を示す主題はフルートソロの嬰ハ︵Cis=C#︶音から開始されるが、これは楽器の構造上非常に響きが悪いとされる音であり、なおかつ音域は華やかでない中音域である[1]。
しかし、ドビュッシーはこの欠点を逆手にとり、けだるい、ぼんやりとした独特な曲想を作り出すことに成功している。フランスの作曲家・指揮者ブーレーズは﹁﹃牧神﹄のフルートあるいは﹃雲﹄のイングリッシュホルン以後、音楽は今までとは違ったやり方で息づく[2]﹂と述べており、近代の作品で非常に重要な位置を占めるとされる。曲の終盤ではアンティークシンバルが効果的に使用されている。
この後、ドビュッシーは、歌曲集﹃ビリティスの3つの歌﹄︵1898年︶、無伴奏フルートのための﹃シランクス﹄︵1913年︶、ピアノ連弾曲﹃6つの古代碑銘﹄︵1914年︶などの作品で牧神をテーマにしている。
ポール・デュカスは、ドビュッシーの死後に追悼のために作曲したピアノ曲﹃牧神の遥かな嘆き﹄︵1920年︶において、本曲の冒頭を引用している。
初演
編集編成
編集バレエ化
編集詳細は「牧神の午後 (バレエ)」を参照
ヴァーツラフ・ニジンスキーの振り付けでバレエ・リュスにより1912年にバレエ振り付けを伴って 『牧神の午後』(L'après-midi d'un faune) の題名で上演。この時、曲の終盤でニジンスキー自身が自慰行為を露骨に再現した振り付けを行いスキャンダルとなる。このバレエ初演の振り付けはのちに復活上演されており、映像LDも商業流通している。
管弦楽以外の編曲
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●作曲者による2台ピアノ用編曲︵1895年出版︶、モーリス・ラヴェルによる連弾用編曲︵1910年出版︶がある。また、イギリス出身のピアニスト、レナード・ボーウィックによるピアノ独奏用編曲︵1914年出版︶も知られる。
●アルノルト・シェーンベルクが自身の主催した﹁私的演奏協会﹂の予約制室内楽演奏会で演奏するために10人編成に編曲した。
●冨田勲がアルバム﹃火の鳥﹄にシンセサイザーで多重録音した演奏を収めている。
●ギュスターヴ・サマズイユによるフルートとピアノ用の編曲︵1925年出版︶もある。
脚注
編集- ^ 「【新音楽鑑賞法】名曲に何を聞くか〜音楽理解のための分析的アプローチ〜」田村和紀夫著 音楽の友社 2004年 ISBN 4276101433
- ^ P.ブーレーズ、船山隆・笠羽映子訳『ブーレーズ音楽論 - 徒弟の覚書』晶文社、1982年、40ページ