神饌

日本の神社や神棚に供える供物
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神饌(しんせん)とは、日本神社神棚に供える供物のこと。御饌(みけ)あるいは御贄(みにえ)とも呼ばれる。

高千穂河原に奉げられる神饌

概要

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201518714調

2015年現在、特殊神饌の献供を行う神社は全国各地に存在するが、代表的な例として、以下のような神社、神饌が挙げられる。

  • 伊勢神宮 神嘗祭「由貴大御饌」 - 三重県伊勢市
  • 石清水八幡宮 石清水祭「供花神饌」 - 京都府八幡市
  • 賀茂別雷神社 賀茂祭 御阿礼神事(みあれしんじ) 「内陣神饌」「外陣神饌」「庭積神饌」 - 京都府京都市
  • 賀茂御祖神社 賀茂祭 御蔭神事 - 京都府京都市
  • 和布刈神社 和布刈神事(めかりしんじ)「福増(ふくそう)」「歯固(はがため)」「力餅(ちからのい)」 - 福岡県北九州市
  • 老杉神社 エトエト祭「行(おこない)」 - 滋賀県草津市
  • 北野天満宮 梅花祭「梅花御供」 - 京都市上京区
  • 美保神社 青柴垣神事 - 島根県松江市
  • 日吉大社 山王祭 「粟津の御供」 - 滋賀県大津市
  • 彌美神社 例大祭「御膳」 - 福井県三方郡美浜町
  • 率川神社 三枝祭 - 奈良県奈良市
  • 阿蘇神社 御田植神幸式 - 熊本県阿蘇市
  • 田出宇賀神社 熊野神社 田出宇賀神社の祇園祭と熊野神社の例大祭「七行器(ななほかい)」 - 福島県南会津町田島
  • 諏訪神社 例大祭 - 青森県三戸郡南部町
  • 談山神社 嘉吉祭 「百味の御食(ひゃくみのおんじき)」 - 奈良県桜井市
  • 香取神宮 大饗祭 「大饗祭神饌」 - 千葉県香取市
  • 銀鏡神社 例大祭 「オニエ」 - 宮崎県西都市
  • 春日大社 春日祭 「御棚神饌」「八種神饌(やくさのしんせん)」 - 奈良県奈良市
  • 加茂神社 毎年元旦「鰤分け神事」(射水市無形民俗文化財) - 富山県射水市
  • 白山比咩神社 例大祭 「特殊神饌」[注釈 1] - 石川県白山市

形式

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調製

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調殿殿調調調 調[1]188417[2]調[1]

御物

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一般生活に浸透した代表的な神饌には鏡餅がある[3]
香取神宮御田植祭に供えられた神饌(千葉県

誠心誠意を込めて、出来得る限りのことを尽くすという概念が根底にあるため[4]、季節や地域によって奉げられる内容は変化に富む。初物は神饌として神前へ奉納するまで食べないという風習が残る地域があることからも[5]、季節に応じて旬の食材などから御物を選び、それを奉げるといった考え方がうかがえる。

穀物

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宿[6][7][8][8]調[7][9]

特徴的食材

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[10][10]調[10]

[11]

[5]

[2][12][13][13]寿[14][15]

唐菓子

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調[16]調[16][16][16]3Y[16]



   

[17][17] 181411


 

[18]

5[18] [19][20][18][21] [22]

[23]

植物

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三枝祭に奉げられるササユリ
 
北野天満宮の紅梅と白梅

[24][25][26]

 

[27][28]

[29][30]1[31]

[32]椿鹿12[32]

調 4

献供される神饌の例

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賀茂別雷神社 内陣神饌

退[33]
葵桂[注釈 3] 御箸 船御飯[注釈 4] 船御餅[注釈 5] 雉子
大根 百合根 茄子 飛魚の干物 御菓子[注釈 6]
大蒜(にんにく) 檜皮粽(ひわだちまき) 狛御料[注釈 7] 御神酒
賀茂別雷神社 庭積神饌

庭積神饌は、内陣神饌や外陣神饌に対して賀茂祭に他所から来た神のために奉げられるとされる。こちらは朱塗りの唐櫃に納められ、それぞれの御物は「葉盤(ひらで)」と呼ばれる器に盛りつけられる[33]

干鮭 鯣(するめ) 打鰒 魣(かます 生貝
青苔 神馬草 和布(わかめ) 煎海鼠(いりこ)
鱓(ごまめ) 飛魚 煮染[注釈 8] 蕗(ふき 茗荷 薊(あざみ
石清水八幡宮

石清水八幡宮八幡市の男山山中に鎮座する社だが、奉げられる神饌には海産物の御物が多い。これは主祭神である八幡神が海の安全を守る綿津見の神であることによるとされる[34]

御飯 御箸 清酒 松魚(かつお) 魳(かます)
金海鼠(きんこ) 昆布 若布 鶏冠菜(とさかのり) 青海苔
三島海苔 紫海苔 海松 牛蒡 蓮根 白瓜
頭芋附小芋 鴨瓜 山葵 河骨 大根 兎餅
焼鳥 葡萄 榧(かや) 搗栗(かちぐり) 榊小枝 散米
塩湯
香取神宮大饗祭神饌

香取神宮の大饗祭で奉げられる神饌は、経津主大神がこの地を平定した際、この地にあった33柱の神々を大饗でもてなしたという伝承に従い、その神饌の量に特徴がある。巻行器(まきほかい)とは真薦(まこも)で米を包んだもので、16の巻行器、全部合わせて4斗になる。2012年現在では巻行器の数は16だが、明治時代までは33柱にあやかって33個、すなわち、総量8斗(800合)の巻行器が奉げられていた。

大御饌(巻行器) 十六台 御箸 二台 御盃 五枚 一台 御神酒 二樽一台 鴨羽盛 二台[注釈 9] 鳥羽盛 四台[注釈 10]
餅 一台 乾魚二十五尾 五台 撰切 一台[注釈 11] 鮭胞子二胞 一台 鮒 一台 鱠(なます) 一台
海菜 一台 柚子十五個 一台 塩水 一台

配膳

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左後方に一対の高坏がみえる
 
案とその上に乗せられた三方。三方の上にさらに乗せられた枡。

調[35]30[36][37]

[22][38][39][38]7姿[40]姿1741

西 

[41][42][40]

[43][44]殿[45]

直会

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[46][47] 2012[46]

 

[46]

512[46]

1123[46][48][46]

[46][47]

神仏習合の影響

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談山神社の嘉吉祭神饌
「百味の御食」
 

[49] 6787[50][50][51]9264[50]18692殿殿殿[52][53]

寿[49]90[49][49]

[54][54]

[55]

伊勢の神宮における神饌

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1350[56]804236156[56]18714[56]

日別朝夕大御饌祭

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外宮忌火屋殿

1500殿2()[57]殿6[57]125[57]5殿[57]使姿[58]殿[58]

(())[58][12][58]1212[58]

8493殿[58]殿[59]殿殿殿[59][59]8[59]退[59]40調41500[59]

神嘗祭で献供される神饌

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辛櫃を用いて運搬する様子
新嘗祭で倭姫宮(やまとひめのみや)に奉げられた神饌

[60][60][13]3[60]
日付 時間 場所 神事
10月15日 宵(22時) 豊受大神宮(外宮) 由貴夕大御饌
16日 暁(2時) 豊受大神宮(外宮) 由貴朝大御饌
16日 正午 豊受大神宮(外宮) 奉幣
16日 皇大神宮(内宮) 由貴夕大御饌
17日 皇大神宮(内宮) 由貴朝大御饌
17日 正午 皇大神宮(内宮) 奉幣

43[61]2調[61] 西[61][61]
献供される御物一覧
身取鰒 一連 玉貫鰒 三連 御塩 御水
御飯(おんいい) 三盛 御餅 三盛 伊勢海老 乾梭魚(かます) 乾栄螺(さざえ)
乾香魚 乾鰹 海参(きんこ) 野鳥 蓮根 乾鮫
乾鯥(むつ) 水鳥 昆布 紫海苔 大根
白酒(しろき) 黒酒(くろき) 醴酒(ひとよざけ) 清酒

125[62][62]

自給自足

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神宮の神事で用いられる御物の多くは氏子や職員の手によって作られ、自給自足が行われる。以下に記すものが神饌として奉げられる主要な作物などの調達方法である。

神田御田植初式
神宮神田

[63][64][63]32[63]調36[65]15

野菜・果物

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()[66][67]23020[66]西[66]
 
三重県鳥羽市国崎町の御料鰒調製所

[66]調[66] 2000[68][69]調5[68]竿[68]3453[70][71][71]1020325[72][71]1224[72][71]2010660鹿[71]

干鯛

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調[73][74]10[75][76]6154528123650721110188101250711016012125071101602[75]

御塩

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御塩汲入所

[77]76600[77][78]西[77][77][77]12[77][77]72[77]1[77]

()[77]2[79][80]45[80]

105殿殿[80]1205100[80][80]3200()[80]

土器

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調[75][81][75]使[82][82]
土器年間生産一覧
名称 特徴、用途 年間所要数
六寸土器 直径19センチ、高さ2センチ程の浅皿型の器。10枚盛の御餅、鰒、鯛、伊勢海老、鱒などを盛り付ける場合に用いられる。 2,250
四寸土器 直径12センチ、高さ2センチ程の浅型の器。御飯、5枚盛の御餅、蠣、鯉、鮒、海藻、野菜、果物、御塩などを盛り付ける場合に用いられる。 20,200
三寸土器 直径9センチ、高さ1センチ程の浅皿型の器。御飯、御塩の他、御盃台と組み合わせて白酒、黒酒、醴酒、清酒などを入れるために用いられる。 19,500
御盃台 9,000
御箸台 箸を載せる 2,020
御水椀 御水を入れる 2,050
御酒壺 2,300
大土堝 祭儀の際に手水を湛える 12

伝承と変化

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[83]調[63][84]18714使調[84]

調[14]40[85][86]

20128[87][15]

7調20123[88]調調[89]

脚注

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注釈

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(一)^ ()89647

(二)^ 

(三)^ 

(四)^ 

(五)^ 10

(六)^ 

(七)^ 

(八)^ 

(九)^ 

(十)^ 

(11)^ 

(12)^ 2

(13)^ 

(14)^ 

(15)^ 84302004

出典

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(一)^ ab  P.218

(二)^  P.72

(三)^  P.143

(四)^  P.77

(五)^ ab  P.2

(六)^   P.110

(七)^ ab P.10

(八)^ ab

(九)^  P.150

(十)^ abc  P.3

(11)^ 西. 20121216

(12)^  PP.163-164

(13)^ ab P.148

(14)^  P.206

(15)^  P.149

(16)^ abcde  P.11

(17)^ ab  P.12

(18)^ abc  P.13

(19)^   P.35

(20)^   P.345

(21)^  . 20121216

(22)^ ab P.143

(23)^   P.213

(24)^  P.166

(25)^   P.188

(26)^   P.189

(27)^   PP.188-189

(28)^ . 20121230

(29)^  P.91

(30)^   P.170

(31)^  P.94

(32)^ ab P.61

(33)^ ab PP.65-73

(34)^  P.60

(35)^   P.21

(36)^  P.203

(37)^   P.94

(38)^ ab P.175

(39)^   P.27

(40)^ ab  P.30

(41)^   P.31

(42)^   P.28

(43)^  P.139

(44)^  P.160

(45)^   P.18

(46)^ abcdefg P.232

(47)^ ab  P.112

(48)^  . 20121216

(49)^ abcd  P.14

(50)^ abc P.209

(51)^   P.230

(52)^  P.210

(53)^   P.231

(54)^ ab P.69

(55)^  P.29

(56)^ abc P.25

(57)^ abcd P.26

(58)^ abcdef P.27

(59)^ abcdef P.28

(60)^ abc P.29

(61)^ abcd P.30

(62)^ ab P.31

(63)^ abcd P.32

(64)^  . 20121215

(65)^  PP.32-33

(66)^ abcde P.33

(67)^  . 20121215

(68)^ abc P.34

(69)^  調. 20121215

(70)^  P.10

(71)^ abcde P.35

(72)^ ab P.11

(73)^  P.38

(74)^  調. 20121215

(75)^ abcd P.39

(76)^  P.38-39

(77)^ abcdefghij P.36

(78)^  殿. 20121215

(79)^  P.36-37

(80)^ abcdef P.37

(81)^  調. 20121215

(82)^ ab P.40

(83)^  PP.72-73

(84)^ ab P.221

(85)^  P.141

(86)^  P.184

(87)^  P.162

(88)^  P.135

(89)^  P.137

参考文献

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2011325ISBN 978-4-418-11202-9 

 20079ISBN 978-4-588-21401-1 

201112ISBN 9784642063784 

  19951030ISBN 4-04-851109-2 

 2006124ISBN 4-8163-4062-9 

 - 20035ISBN 4-87449-233-9 

関連文献

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  • 吉川雅章『談山神社の祭 嘉吉祭神饌「百味の御食」』綜文館、1995年1月27日。 

関連項目

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外部リンク

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