脳下垂体前葉
ヒトにおいて脳下垂体前葉︵英:pars distalis, anterior pituitary︶は脳下垂体のうち前部で、多くのホルモンの分泌を行っている内分泌器官である。視床下部でホルモンを作り軸索を通じて分泌する後葉と異なり、下垂体前葉のホルモンは前葉にある細胞で作られる。こうした細胞は、視床下部から下垂体門脈を通ってくる各種のホルモンにより刺激・抑制される。
脳下垂体前葉 | |
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左の色の濃い方が後 | |
ラテン語 | lobus anterior hypophyseos |
英語 | Anterior pituitary |
グレイの解剖学 | 書籍中の説明(英語) |
動脈 | 上下垂体動脈 |
静脈 | 下垂体静脈 |
前駆体 | 口腔粘膜 (ラトケ嚢) |
MeSH | Anterior+Pituitary+Gland |
由来
編集分泌
編集前葉は、腺上皮なのでここにある細胞自身がホルモンを産生している。前葉の細胞には染色の違いから酸好性細胞(acidophil)と塩基好性細胞(basophil)と色素嫌性細胞(chromophobe)の3つに分けることができる。染色性の違いは細胞が蓄えているホルモンの酸性・塩基性を反映している。酸好性細胞はペプチドホルモンを作り、塩基好性細胞は主に糖タンパク質ホルモンを作っていて、色素嫌性細胞はホルモンを出してしまった後の細胞などである。下垂体前葉で分泌される主なホルモンを以下に示す。
ホルモン | 英語名 | 略称 | 構造 | 染色性 | 作用器官 | 効果 |
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副腎皮質刺激ホルモン | Adrenocorticotropic hormone | ACTH | ポリペプチド | 好塩基性 | 副腎 | 糖質コルチコイドの分泌 |
β-エンドルフィン | Beta-endorphin | ポリペプチド | 好塩基性 | オピオイド受容体 | 痛覚の緩和 | |
甲状腺刺激ホルモン | Thyroid-stimulating hormone | TSH | 糖タンパク質 | 好塩基性 | 甲状腺 | 甲状腺ホルモンの分泌 |
卵胞刺激ホルモン | Follicle-stimulating hormone | FSH | 糖タンパク質 | 好塩基性 | 性腺 | 生殖系の調節 |
黄体形成ホルモン | Luteinizing hormone | LH, ICSH | 糖タンパク質 | 好塩基性 | 性腺 | 性ホルモンの分泌 |
成長ホルモン | Growth hormone | GH, STH | ポリペプチド | 好酸性 | 肝臓, 脂肪組織 | 成長の促進(主に肝臓でIGF-1を作らせることによる)と脂肪・炭水化物の代謝 |
プロラクチン | Prolactin | PRL | ポリペプチド | 好酸性 | 卵巣, 乳腺 | エストロゲンの分泌と乳汁の合成 |
︵卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンはまとめて性腺刺激ホルモンと総称される。︶
下垂体と血管走行
"2"が下垂体門脈
下垂体前葉には下垂体門脈系︵hypophyseal portal system︶という静脈性の門脈系がある。前葉でのホルモン分泌を促す放出ホルモン︵性腺刺激ホルモン放出ホルモンや成長ホルモン放出ホルモンなど︶や抑制する放出抑制ホルモン︵ソマトスタチンなど︶は視床下部の神経分泌細胞で作られた後、下垂体との境界付近の正中隆起にある一次毛細血管網に放出されるが、これらはいったん門脈に集められた後、前葉の中に再び二次毛細血管網として広がり特定の標的細胞のホルモン産生を調整する。この一方で後葉は神経分泌細胞が直接軸索を伸ばしてきている。
疾患
編集関連項目
編集参考文献
編集- A.L.Kierszenbaum、組織細胞生物学 ISBN 978-4-524-23676-3