RAMS規格
概要
編集RAMS規格一覧
編集RAMS規格は下記の3つの規格で構成される[2]。
- IEC 62278 (EN 50126)
- RAMS本体 (信頼性、アベイラビリティ、保全性、安全性(RAMS)の仕様と実証)について規定。下記にて解説する。
- IEC 62279 (EN 50128)
- 通信、信号及び処理システム及びソフトについて規定。
- IEC 62425 (EN 50129)
- 安全評価について、通信・信号及び処理システムの所定の要求事項に適合するよう、文書制定するよう要求。
解説
編集信頼性 (reliability) ●アイテム︵製品︶が所定の条件と所定の時間間隔で、要求された機能を実行できる確率 アベイラビリティ (availability) ●外部から必要な資源の供給を行われた場合に、要求機能を所定の時間内又は期間中に、所定の条件下で実行し得る状態を維持することができる製品の能力 保守性 (maintainability) ●所定の手順と資源を使って所定の条件下で保守を行う場合に、所定の条件下で使用されている製品を所定の時間内に保守することができる確率 安全性 (safety) ●許容できない危害が発生するリスクがないこと
この規格は、RAMS管理の手法を鉄道事業者および鉄道基盤産業に提供するものである。 所定の条件下におけるRAMSの条件を論証することがこの標準の基礎となっており、RAMS管理を通じて顧客︵ユーザー︶を満足させることが目的となる。 鉄道システムに対して起こり得るハザード︵障害、危険性︶を理論的に分析し、それに起因する事故に至る経過を解析し、それに伴うリスクを数値化することによって、そのシステムが製品のライフサイクルを通して、経済性と照らし合わせて許容されるリスク内に維持できることを論証する手法を規定している[3]。 RAMS規格は具体的な適用対象を制限していない。安全性に関するものは、地上設備や車両を含めた鉄道の構成要素となるシステムについて全てが適用対象となる[4]。
手法
編集発注者(鉄道事業車)から仕様書でRAMSの要求事項が規定された場合、鉄道車両メーカーは要求事項を満たすためのRAMS活動を展開することが求められる。
IEC 62278 (EN 50126)では、RAMSの要素の相関関係を下記のように示している[3]。
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| 安全性 |
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| アベイラビリティ |
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| 信頼性と保全性 |
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| 運用と保全 |
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故障の程度 | システム故障モード | 運用への影響 | 平均故障間隔 |
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深刻 | 完全な故障 | 運行不能 車両・インフラの破壊 |
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重大 | 重大な機能故障 | 緊急運行1 車両・インフラの損傷 |
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許容限界 | 重大でない機能故障 | 緊急運行2 車両の停止、ダイヤ混乱 |
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軽微 | 無視できる機能故障 | 通常運行 |
表中の平均故障間隔の単位は時間、年間またはkmで、影響レベルとの相関関係のすり合わせや具体的な数値については発注者と受注者の協議により決定される。
決定した信頼性目標を達成するため、アイテム(製品)に組み込まれるシステムの故障データの収集と整理を行い、故障がアイテムの稼働率に影響する構成要素(機器やシステム)を定量的な信頼性解析により特定し、信頼性や保守面での必要かつ有効な対策を具現化する。
鉄道システムのライフサイクルとは、
- 1, 構想(概念)
- 2, システムの定義と適用条件
- 3, リスク分析
- 4, システムの要求事項
- 5, システム要求事項の割当
- 6, 設計とRAMS計画の実行
- 7, 製造
- 8, 設置
- 9, システムの妥当性確認
- (安全性の受け入れとコミッショニングを含む)
- 10, システムの受け入れ
- 11, 運用と保全
- 12, 性能の監視
- 13, 改修と追加
- 14, 停止と処分
| 1, 構想(概念) |
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| 2, システムの定義と適用条件 |
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| 12, 性能の監視 |
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| 3, リスク分析 |
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| 11, 運用と保全 |
| 14, 停止と処分 |
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| 4, システムの要求事項 |
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| 10, システムの受け入れ |
| 13, 改修と追加 |
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| 5, システム要求事項の割当 |
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| 9, システムの妥当性確認 |
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| 6, 設計とRAMS計画の実行 |
| 8, 設置 |
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| 7, 製造 |
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の14段階に分けて示され、構想段階から役割を終えて処分されるまでの全期間としており[6]、EC 62278 (EN 50126)では、すべての段階において検証及び妥当性確認が求められている。
歴史的背景
編集出典
編集- ^ 「鉄道技術分野」における標準化戦略 - 経済産業省
- ^ 【鉄道】IRIS(国際鉄道産業標準)とRAMS(2):鉄道関連規格の動きとRAMS規格の一覧(LRQAジャパン)
- ^ a b 【鉄道】IRIS(国際鉄道産業標準)とRAMS(1):RAMSの特徴と概念(LRQAジャパン)
- ^ 列車制御・輸送管理と国際規格 - JR東日本
- ^ a b コラム IRIS(国際鉄道産業標準)とRAMS 第3回目:RAMSの長所と課題、及び実際の活動と業務 | 『VALUE EYES 明日を創る情報サイト』 - LRQA Japan - [リンク切れ] (アーカイブ)
- ^ http://www.jsa.or.jp/stdz/edu/pdf/b2/2_14.pdf のP.34より
- ^ 実践 鉄道RAMS P.4
- ^ 実践 鉄道RAMS P.5
- ^ 実践 鉄道RAMS P.6
参考文献
編集- 日本鉄道車輌工業会RAMS懇話会 編 『実践 鉄道RAMS 鉄道ビジネスの新しいシステム評価法』 (成山堂書店 ISBN 4-425-96111-0 )