イラク暫定政権

イラク暫定政権︵いらくざんていせいけん︶は、イラクにおけるサッダーム・フセイン政権の倒壊後占領統治を行った連合国暫定当局から主権を委譲され、選挙によって選出された本格的な民主政権が完成するまでの間、イラクを暫定的に統治する政権。2004年6月2日に成立し、6月28日に主権委譲を受けて正式に発足した。2005年1月までに選挙を実施して憲法策定を担当する移行政府を設立させるまでの半年間、イラクを統治する予定である。

首脳

大統領が元首となるがその役割は象徴的なものに留まり、実務は首相が総括する。

大統領、首相を始めとする閣僚のポストは、当初の国連案では党派色の弱いテクノクラート中心の人選が考えられていたが、最終的に連合国暫定当局のもとで一年近く統治の実務を担当してきたイラク統治評議会が自主的に選出した大統領、首相以下の閣僚を追認する形となった。大統領、首相は統治評議会のメンバー、またそれ以外の重要ポストも統治評議会の関係者によって埋められたので、親米的な人選であるとの批判もある。

●大統領
●ガーズィー・ヤーワル︵スンナ派・アラブ部族指導者︶

●副大統領
●イブラーヒーム・ジャアファリー・エシャイケル︵シーア派・イスラム系政党ダアワ党︶

●ロウシュ・ヌーリー・シャーウィース︵クルド人・クルド民主党︶

●首相
●イヤード・アッラーウィー︵シーア派・イラク国民合意︶

●副首相
●バルハム・サーレハ︵クルド人・クルド愛国者同盟︶

●外相
●ホーシュヤール・ズィバーリー︵クルド人・クルド民主党︶

暫定政権の主な出来事

●2004年5月28日　イラク統治評議会が暫定政権を選出。

●2004年6月2日　暫定政権発足。

●2004年6月28日　連合国暫定当局から主権を移譲。

●2004年6月29日　サッダーム・フセイン元大統領ら計12人の起訴を宣言。

●2004年7月1日　特別法廷でサッダーム・フセイン大統領らの訴追手続き開始。一方、イフサーン・カリーム金融監督局長が襲撃されて爆死し、高官としては主権委譲後初めての死者となった。

●2004年7月15日　7月に入ってからのテロ事件や高官の暗殺増加に対抗し、アッラウィー首相が情報機関を設立することを発表した。

●2004年7月17日　マリク・ドゥハーン・ハサン法相の車列を狙った自爆テロがあり、法相は暗殺を免れたが、警官など4人が死亡した。

●2004年7月28日　中部バクバで警察署を狙った大規模な爆弾テロ発生。主権委譲後で最大の68人が死亡した。事件を受け、31日に予定されていた国民会議を8月中旬に延期した。

●2004年8月　多国籍軍とサドル師のシーア派民兵の間で大規模な戦闘が勃発し、民兵ら数十名が死亡。

●2004年8月15日　国民会議がバグダッドで開催、千数百人が集まる。サドル師の民兵へ、政権や多国籍軍に対しての反抗を止めるよう呼びかけ。

●2004年8月19日　国連施設爆破事件から一年。

●2004年8月20日　サドル師に対して最後通牒。

予定

●2004年8月に国民会議を開催し、諮問評議会︵暫定政権の補佐︶を選出

●2005年1月までに選挙を実施、暫定国民議会を開催

●暫定国民議会は移行政府を選出

●移行政府は新憲法を製作

●2005年12月15日までに新憲法に基づいて再選挙を実施

●選出された議員による国民議会から政府を選出

●2005年12月末までに政府樹立、国連多国籍軍はこれを以って撤退