コックリさん
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コックリさん︵狐狗狸さん︶とは、西洋の﹁テーブル・ターニング︵Table turning︶﹂[1]に起源を持つ日本の占いの一種[2]。机に乗せた人の手がひとりでに動く現象は心霊現象だと古くから信じられて来ているが、科学的な見方では意識に関係なく体が動くオートマティスムの一種と見られている。
概要
日本では通常、数人で狐の霊を呼び出す行為︵交霊術︶と信じられており、そのため狐狗狸さんともいわれる。机の上に﹁はい、いいえ、分からない、数字、五十音表﹂を記入した紙を置き、その紙の上に硬貨︵主に十円硬貨︶を置いて参加者全員の人差し指を添えていく。全員が力を抜いて﹁コックリさん、コックリさん、おいでください。﹂と呼びかけると硬貨が動く。 森田正馬︵森田療法で有名︶は参加者が霊に憑依されたと自己暗示︵自己催眠、 祈祷性精神病 と命名︶に罹るとの見方を示した。また複数人に同様な症状がおきる感応精神病︵フォリアドゥ、フランス語‥folie a deux︶の発生もよく知られる。コックリさんと呼ばず“エンジェルさん”などと呼びかえるバリエーションも存在する、コレも同じ効果だと言われている。起源と普及
その起源は明確ではないが、レオナルド・ダ・ヴィンチが自著において﹁テーブル・ターニング﹂と同種の現象に言及しているので、15世紀のヨーロッパでは既に行われていたとも推測される[2]。 西洋で流行した﹁テーブル・ターニング﹂とは、数人がテーブルを囲み、手を乗せる。やがてテーブルがひとりでに傾いたり、移動したりする。出席者の中の霊能力がある人を霊媒として介し、あの世の霊の意志が表明されると考えられた。また、霊の働きでアルファベットなどを記したウィジャボードと呼ばれる板の文字を指差すことにより、霊のとの会話を行うという試みがなされた[2]。 日本においては、1884年︵明治17年︶に伊豆半島沖に漂着したアメリカの船員が自国で大流行していた﹁テーブル・ターニング﹂を地元の住民に見せたことを切っ掛けに日本でも流行するようになったという[2]。当時の日本にはテーブルが普及していなかったので、代わりにお櫃︵ひつ︶を3本の竹で支える形のものを作って行なった[2]。お櫃を用いた机が﹁こっくり、こっくりと傾く﹂様子から“こっくり”や“こっくりさん”と呼ぶようになり、やがて“こっくり”に﹁狐︵きつね︶﹂、﹁狗︵いぬ︶﹂、﹁狸︵たぬき︶﹂の文字を当て﹁狐狗狸﹂と書くようになったという[2]。1970年代にはつのだじろうの漫画﹁うしろの百太郎﹂の作中でコックリさんが紹介され、少年少女を中心としたブームになったこともある。現象の解釈
コックリさんの起源である﹁テーブル・ターニング﹂については、大流行していた1800年代から著名な科学者たちが、その現象の解明に取り組んだ。1853年にはプロイセン王国︵現‥ドイツ︶の数学者、カール・フリードリヒ・ガウスやイギリスの科学者、マイケル・ファラデーが実験的検討を試みた[2]。霊が原因説
硬貨が動くのは狐の霊、または低級な“自然霊”の憑依によるもの[3]と信じられて来た。また、“焼け死んだ子供の霊”によるものと言う説もある。 途中で手を硬貨から離した者や、コックリさんに﹁コックリさん、ありがとうございました。お離れ下さい。﹂と言ったのに対してコックリさんがその場から動かなかった場合は、全員取り憑かれてしまうと言われている。なお、使われたコインはいつまでも持っていると不幸になると言われている。また、基本的に使った紙は燃やさなければならないとされている。なお、一人でコックリさんをやると、その人が豹変したり、自殺する例もあるという。また、﹁こっくりさん﹂をやっていると、強烈な異臭がしてくることもあるという。 その場合は、すぐに換気をしなければならない。 コックリさんの呪いを解く方法として額に五つ星を書くと呪いが消えると言われている。潜在意識説
参加者の潜在意識︵予期意向︶が反映され、無自覚に指が硬貨を動かすという説。マイケル・ファラデーや井上圓了、フランスの化学者、M・シュブルールなどはこの説をとった。筋肉疲労説
現在では、硬貨に指を添える体勢を取り続ける際にどうしても僅かに腕が動いてしまうことも有力な説となっている。︵同じ姿勢を取り続けると、あっという間に筋肉が疲労する︶それらの力が集中しコインが動くと、今度は動いた方向へ力を入れて動かそうとする意識が完全に働くというものである。参考文献
- 井上圓了 『妖怪玄談 狐狗狸のこと』(仮説社 1978年6月 復刻第二版発行)ISBN 9784773500141
脚注
- ^ 「テーブル・タッピン(Table tapping)」、「テーブル・ムービング(Table moving)」、「テーブル・トーキング(Table talking)」などとも呼ばれる
- ^ a b c d e f g 安斎育郎 『霊はあるか』(講談社 2002年9月20日)
- ^ 江原啓之 『人はなぜ生まれいかに生きるのか』(ハート出版 1995年1月21日)
関連項目
- テーブル・ターニング - Table-turning(コックリさんに似た西洋の降霊術)