「ドン・カルロ」を編集中
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﹃'''ドン・カルロ'''﹄︵''Don Carlo''︶は、[[ジュゼッペ・ヴェルディ]]作曲による[[オペラ]]。[[パリ国立オペラ|パリ・オペラ座]]の依頼により、[[1865年]]から1866年にかけて作曲、全5幕のオペラとして[[1867年]]3月にオペラ座にて初演した︵フランス語では﹃ドン・カルロス﹄''Don Carlos''︶。
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﹃'''ドン・カルロ'''﹄︵''Don Carlo''︶は、[[ジュゼッペ・ヴェルディ]]作曲による[[オペラ]]。[[パリ国立オペラ|パリ・オペラ座]]の依頼により、[[1865年]]から1866年にかけて作曲、全5幕のオペラとして[[1867年]]3月にオペラ座にて初演した︵フランス語では﹃ドン・カルロス﹄''Don Carlos''︶。
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ヴェルディの23作目のオペラ(ヴェルディの創作期間の中では中期の作品に分類される)。原作は[[フリードリヒ・フォン・シラー]]作の[[戯曲]]『 |
ヴェルディの23作目のオペラ(ヴェルディの創作期間の中では中期の作品に分類される)。原作は[[フリードリヒ・フォン・シラー]]作の[[戯曲]]『スペイン王子ドン・カルロス』(1787年作)。 |
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== 内容 == |
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オリジナルはむろん[[フランス語]]だが、初演の同年6月、[[ロンドン]]で[[イタリア語]]による初演が行なわれて成功し、また同年10月には[[ボローニャ]]で[[イタリア]]初演となってこちらも成功。その後もたびたびイタリア語で上演され、その際ヴェルディも再三にわたって曲を改訂してより上質な上演を目指してきたため、現在ではイタリア語版﹃ドン・カルロ﹄の方が多く上演される。
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オリジナルはむろん[[フランス語]]だが、初演の同年6月、[[ロンドン]]で[[イタリア語]]による初演が行なわれて成功し、また同年10月には[[ボローニャ]]で[[イタリア]]初演となってこちらも成功。その後もたびたびイタリア語で上演され、その際ヴェルディも再三にわたって曲を改訂してより上質な上演を目指してきたため、現在ではイタリア語版﹃ドン・カルロ﹄の方が多く上演される。
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低声歌手の活躍する歌劇として知られ(題名役はテノールだが)、フィリッポやロドリーゴ、エボリには難曲ながら魅力的な |
低声歌手の活躍する歌劇として知られ(題名役はテノールだが)、フィリッポやロドリーゴ、エボリには難曲ながら魅力的なアリアや、深く内面を語る音楽が与えられていて、低声歌手たちの演唱の充実ぶりが上演全体の成否に大きく関わっており、それぞれの役はイタリア・オペラをレパートリーとする低声歌手にとって目標ともなる大役である。 |
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=== ドラマにおけるテーマ === |
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このオペラにおいては二つの公的な対立と幾つかの個人的葛藤によって構成されている。一つ目の対立は宗教界における[[旧教]]と[[ |
このオペラにおいては二つの公的な対立と幾つかの個人的葛藤によって構成されている。一つ目の対立は宗教界における[[旧教]]と[[新教]]の対立であり、スペインは[[カトリック教]]の有力な勢力であるのでフィリッポ2世と大審問官︵宗教裁判長︶がこれにあたる。一方、[[フランドル]]地方は新教徒が多く、ポーザ候ロドリーゴとドン・カルロがこちらの代表となる。この宗教対立は当時のフランスでは[[ジャコモ・マイアベーア|マイアベーア]]の﹃[[ユグノー教徒 (オペラ)|ユグノー教徒]]﹄、﹃{{仮リンク|預言者 (オペラ)|label=預言者|en|Le Prophète (opéra)}}﹄や[[ジャック・アレヴィ]]の﹃[[ユダヤの女]]﹄などで好んで採り上げられ、いずれもヒットしていた。二つ目の対立は政治権力︵フィリッポ2世︶と宗教権力︵宗教裁判長︶だが、当時の状況では後者の方が明らかに強かったことが分かる。個人的葛藤はカルロとエリザベッタの宿命的恋、エボリ公女の嫉妬、フィリッポ2世の妻との不仲、フィリッポ2世とエボリ公女の不倫、カルロとロドリーゴの友情である。こういった個人的葛藤が重々しく展開される。この点では﹃[[オテロ (ヴェルディ)|オテロ]]﹄と双璧だが、オテロでは彼個人の問題として進行するが、﹃ドン・カルロ﹄では主役たち全員が異なった対象と苦闘し、男性は英雄として挫折し、女性は愛のために身を滅ぼしていくのである。<ref>﹃最新名曲解説全集第19巻﹄P241を参照。</ref>
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== 初演当時の状況 == |
== 初演当時の状況 == |
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#:いわゆる“ナポリ版”。72年12月の[[サン・カルロ劇場]]([[ナポリ]])での上映に際して、以前にもヴェルディに協力したアントニオ・ギスランツォーニによって台本が改訂された。改訂されたのは第2幕のロドリーゴとフィリッポ、第5幕のエリザベッタとカルロそれぞれの二重唱などの場面。 |
#:いわゆる“ナポリ版”。72年12月の[[サン・カルロ劇場]]([[ナポリ]])での上映に際して、以前にもヴェルディに協力したアントニオ・ギスランツォーニによって台本が改訂された。改訂されたのは第2幕のロドリーゴとフィリッポ、第5幕のエリザベッタとカルロそれぞれの二重唱などの場面。 |
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#1884年イタリア語版(全4幕) |
#1884年イタリア語版(全4幕) |
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#:84年1月10日の[[ミラノ]]・[[スカラ座]]での上演にそなえ、大幅な改訂が行なわれた。バレエ音楽やそれまでの第1幕を全面カット(カルロのアリアのみが歌詞を変え、移調したうえで新しい第1幕に残された)して全4幕とし、また多くの場面の音楽を改訂、また台本もデュ・ロクルとアンジェロ・サナルディーニによって更なる改訂が行なわれた。内容的、音楽的に凝縮され密度の濃い版となったこともあり、特に1970年代以前はよく採用されていた(カラヤンなども好んで用いていた)。ヴェルディと関係の深いヨーロッパ有数の音楽出版社・ |
#:84年1月10日の[[ミラノ]]・[[スカラ座]]での上演にそなえ、大幅な改訂が行なわれた。バレエ音楽やそれまでの第1幕を全面カット(カルロのアリアのみが歌詞を変え、移調したうえで新しい第1幕に残された)して全4幕とし、また多くの場面の音楽を改訂、また台本もデュ・ロクルとアンジェロ・サナルディーニによって更なる改訂が行なわれた。内容的、音楽的に凝縮され密度の濃い版となったこともあり、特に1970年代以前はよく採用されていた(カラヤンなども好んで用いていた)。ヴェルディと関係の深いヨーロッパ有数の音楽出版社・リコルディ社から楽譜が出版されたため、“リコルディ4幕版”とも呼ばれる。 |
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#1886年イタリア語版(全5幕) |
#1886年イタリア語版(全5幕) |
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#:86年12月[[モデナ]]のテアトロ・コムナーレでの上演の際に改訂されたもの。以前カットされた第1幕を復活(カルロのアリアも戻された)させ、バレエ音楽なしの5幕仕立てとされた。音楽的には84年イタリア語版をほぼそのまま用いており、第1幕が戻って物語の流れが明確になっていることなどから、1970年代以降、多くの上演で採用されるようになった。“モデナ版”、また、この版の楽譜もリコルディ社から出たため、“リコルディ5幕版”とも呼ばれる。 |
#:86年12月[[モデナ]]のテアトロ・コムナーレでの上演の際に改訂されたもの。以前カットされた第1幕を復活(カルロのアリアも戻された)させ、バレエ音楽なしの5幕仕立てとされた。音楽的には84年イタリア語版をほぼそのまま用いており、第1幕が戻って物語の流れが明確になっていることなどから、1970年代以降、多くの上演で採用されるようになった。“モデナ版”、また、この版の楽譜もリコルディ社から出たため、“リコルディ5幕版”とも呼ばれる。 |
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==『ドン・カルロス』(フランス語版)の上演状況 == |
==『ドン・カルロス』(フランス語版)の上演状況 == |
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[[File:Don Carlos poster.png|thumb|1867年パリ初演時のポスター]] |
[[File:Don Carlos poster.png|thumb|1867年パリ初演時のポスター]] |
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イタリア語による上演が一般的だが、この作品の当初作曲家が意図したものはどのようなものなのかという芸術的興味は尽きるものではないであろう。特に作品が傑作であれば、尚更なのではないだろうか。このような背景もあり、時折フランス語による﹃ドン・カルロス﹄の上演が行われる。近年は特に19世紀のフランスにおいてイタリア人の作曲家がフランス語で作曲したグランド |
イタリア語による上演が一般的だが、この作品の当初作曲家が意図したものはどのようなものなのかという芸術的興味は尽きるものではないであろう。特に作品が傑作であれば、尚更なのではないだろうか。このような背景もあり、時折フランス語による﹃ドン・カルロス﹄の上演が行われる。近年は特に19世紀のフランスにおいてイタリア人の作曲家がフランス語で作曲したグランド・オペラの甦演や復活上演が目立ってきている。例えば、[[ジョアキーノ・ロッシーニ|ロッシーニ]]の﹃[[ウィリアム・テル (オペラ)|ギヨーム・テル]]﹄︵'' [[:fr: Guillaume Tell (opéra) | Guillaume Tell]]'', [[1829年]]︶や[[ガエターノ・ドニゼッティ|ドニゼッティ]]の﹃{{仮リンク|ラ・ファヴォリート|en| La favorite}}﹄︵''[[:fr: La favorite| La favorite]]'' [[1840年]]︶などが代表的だが、その中にはヴェルディの﹃[[シチリアの晩鐘 (ヴェルディ)|シチリアの晩鐘]]﹄も含まれている。また、[[ジャコモ・マイアベーア|マイアベーア]]や[[ジャック・アレヴィ|アレヴィ]]などのグランド・オペラの近年のリバイバルという側面とも同期していると見ることもできる。[[20世紀]]以降の重要な上演は次のような流れとなっている。
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*1973年にジョン・マシソンが[[BBCコンサート・オーケストラ]]を指揮して[[英国放送協会]]で放送し、CDも制作した。<ref |
*1973年にジョン・マシソンが[[BBCコンサート・オーケストラ]]を指揮して[[英国放送協会]]で放送し、CDも制作した。<ref>配役は録音・録画の項のリストを参照。</ref>これは初演リハーサル時にカットされてこれまで一度も演奏されたことがなかった音楽までを復活させたものであった。さらに、[[クラウディオ・アバド]]がモデナ初演の5幕版をフランス語に戻した版を使用して[[ミラノ・スカラ座管弦楽団]]を指揮してCDを制作した。<ref>配役は録音・録画の項のリストを参照。</ref>この版は同年、 [[サラ・コールドウェル]] の指揮する [[オペラ・カンパニー・オブ・ボストン]]によって上演された。 |
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*[[1986年]]には[[サンフランシスコ]]・オペラで[[ジョン・プリッチャード]]の指揮、{{仮リンク|ニール・シコフ|en|Neil Shicoff}}のドン・カルロス、 |
*[[1986年]]には[[サンフランシスコ]]・オペラで[[ジョン・プリッチャード]]の指揮、{{仮リンク|ニール・シコフ|en|Neil Shicoff}}のドン・カルロス、ピラール・ローレンガーのエリザベートほかの配役で上演された<ref>http://archive.sfopera.com/reports/rptOpera-id517.pdf</ref>。 |
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*[[1996年]]には[[ロベルト・アラーニャ]]の(ドン・カルロス)、カリタ・マッティラ(エリザベート)、[[ |
*[[1996年]]には[[ロベルト・アラーニャ]]の(ドン・カルロス)、カリタ・マッティラ(エリザベート)、[[トーマス・ハンプソン]]の(ロドリーグ)、 [[ヴァルトラウト・マイアー]]の(エボリ公女)、[[ジョゼ・ヴァン・ダム]]、エリック・ハーフヴァーソンの(大審問官)、 [[アントニオ・パッパーノ]]の指揮にて[[パリ]] のシャトレ座にてリュック・ボンディの演出で上演された。<ref>詳細は録音・録画の項のリストを参照</ref>。 |
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*[[2004年]]6月には[[ベルトラン・ド・ビリー]]の指揮により[[ウィーン国立歌劇場]]にて初演時のカットを除いた完全全曲での上演が実現した<ref>https://www.wiener-staatsoper.at/spielplan-tickets/detail/event/85748-don-carlos-franz/</ref>。 |
*[[2004年]]6月には[[ベルトラン・ド・ビリー]]の指揮により[[ウィーン国立歌劇場]]にて初演時のカットを除いた完全全曲での上演が実現した<ref>https://www.wiener-staatsoper.at/spielplan-tickets/detail/event/85748-don-carlos-franz/</ref>。 |
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*[[2014年]] [[9月6日 ]]には日本でも演奏会形式にて5幕のパリ初演版を演奏し、日本初演を実現している。配役はドン・カルロスが[[佐野成宏]]、エリザベートが浜田理恵、フィリップ2世をカルロ・コロンバーラが歌い、ロドリーグが堀内康雄、エボリ公女が小山由美となっている。指揮は佐藤正浩、オーケストラはザ・オペラ・バンドで合唱が[[武蔵野音楽大学]]、会場は[[東京芸術劇場]]であった<ref>http://www.geigeki.jp/performance/concert038/ |
*[[2014年]] [[9月6日 ]]には日本でも演奏会形式にて5幕のパリ初演版を演奏し、日本初演を実現している。配役はドン・カルロスが[[佐野成宏]]、エリザベートが浜田理恵、フィリップ2世をカルロ・コロンバーラが歌い、ロドリーグが堀内康雄、エボリ公女が小山由美となっている。指揮は佐藤正浩、オーケストラはザ・オペラ・バンドで合唱が[[武蔵野音楽大学]]、会場は[[東京芸術劇場]]であった<ref>http://www.geigeki.jp/performance/concert038/</ref>。 |
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*[[2017年]]10月から11月には[[パリ・オペラ座]]にて[[フィリップ・ジョルダン]]の指揮、[[ヨナス・カウフマン]]のドン・カルロス、[[エリーナ・ガランチャ]](エボリ公女)、イルダール・アブドラザコフ(フィリップ2世) |
*[[2017年]]10月から11月には[[パリ・オペラ座]]にて[[フィリップ・ジョルダン]]の指揮、[[ヨナス・カウフマン]]のドン・カルロス、[[エリーナ・ガランチャ]](エボリ公女)、イルダール・アブドラザコフ(フィリップ2世)リュドヴィク・テジエ(ロドリーグ)、ソーニャ・ヨンチェヴァ(エリザベート)、ディミトリ・ベロセルスキ(大審問官)、演出がクシシトフ・ワリコフスキという布陣で上演し、話題を集めた<ref>https://www.operadeparis.fr/saison-17-18/opera/don-carlos</ref><ref>https://mainichi.jp/classic/articles/20171111/org/00m/200/002000d</ref><ref>https://www.operanews.com/Opera_News_Magazine/2017/10/Reviews/PARIS__Don_Carlo.html</ref>。 |
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*[[2018年]]3月から4月には[[リヨン国立オペラ]]にてダニエーレ・ルスティオーニの指揮、セルゲイ・ロマノフスキーのドン・カルロス、ミケーレ・ペルトゥージ(フィリップ2世) |
*[[2018年]]3月から4月には[[リヨン国立オペラ]]にてダニエーレ・ルスティオーニの指揮、セルゲイ・ロマノフスキーのドン・カルロス、ミケーレ・ペルトゥージ(フィリップ2世)ステファン・ ドゥグー(ロドリーグ)、サリー・マシューズ(エリザベート)、エヴ=モード・ユボー(エボリ公女)、ロベルト・スカンディウッツィ(大審問官)、パトリック・ボレール(修道士)、ジャンヌ・マンドシュ(ティボー)、ヤニク・ベルヌ(レルマ伯爵)、演出が[[クリストフ・オノレ]]という布陣で上演した<ref>https://www.opera-lyon.com/fr/20172018/opera/don-carlos </ref>。 |
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*2019年5月から6月には[[ハンブルク]]州立歌劇場でもピエール・ジョルジョ・モランディの指揮、ペーター・コンヴィチュニーの演出でフランス語による『ドン・カルロス』の上演を予定している<ref>https://www.staatsoper-hamburg.de/en/playing_schedule/play_cast.php?AuffNr=151348#pagenav </ref>。 |
*2019年5月から6月には[[ハンブルク]]州立歌劇場でもピエール・ジョルジョ・モランディの指揮、ペーター・コンヴィチュニーの演出でフランス語による『ドン・カルロス』の上演を予定している<ref>https://www.staatsoper-hamburg.de/en/playing_schedule/play_cast.php?AuffNr=151348#pagenav </ref>。 |
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フランス語版﹃ドン・カルロス﹄は中規模以下の歌劇場には上演が難しいものと考えられる。しかし、このオペラの原初のスタイルは歴史的素材を扱った壮大なグランド |
フランス語版﹃ドン・カルロス﹄は中規模以下の歌劇場には上演が難しいものと考えられる。しかし、このオペラの原初のスタイルは歴史的素材を扱った壮大なグランド・オペラであるので、イタリア・オペラであることの他に、こうした側面もこの傑作の持つ多様な魅力と考えられるのではないだろうか。
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== 登場人物 == |
== 登場人物 == |
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! 人物<br/>(フランス語)!!人物<br/>(イタリア語)!! 声域!! 役 !! パリ初演時の配役<br/>(1867年3月11日) <br/>指揮:フランソワ<br/>・ジョルジュ=エンル!! ミラノ初演時の配役<br/>(1884年1月10日) <br/>指揮:<br/> [[フランコ・ファッチョ]] |
! 人物<br/>(フランス語)!!人物<br/>(イタリア語)!! 声域!! 役 !! パリ初演時の配役<br/>(1867年3月11日) <br/>指揮:フランソワ<br/>・ジョルジュ=エンル!! ミラノ初演時の配役<br/>(1884年1月10日) <br/>指揮:<br/> [[フランコ・ファッチョ]] |
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|フィリップ2世 ||フィリッポ2世 || [[バス (声域)|バス]] ||スペイン国王<br/> [[ |
|フィリップ2世 ||フィリッポ2世 || [[バス (声域)|バス]] ||スペイン国王<br/> [[フェリペ2世]]、<br/>ドン・カルロの父||ルイ=アンリ・オバン||アレッサンドロ・<br/>シルベストリ |
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|ドン・カルロス||ドン・カルロ|| [[テノール]] ||スペインの皇太子||ジャン・モレル || フランチェスコ<br/>・タマーニョ |
|ドン・カルロス||ドン・カルロ|| [[テノール]] ||スペインの皇太子||ジャン・モレル || フランチェスコ<br/>・タマーニョ |
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|ロドリーグ||ロドリーゴ|| [[バリトン]] ||ポーザ侯爵|| ジャン=バティスト<br/>・フォレ||ポール・レリ |
|ロドリーグ||ロドリーゴ|| [[バリトン]] ||ポーザ侯爵|| ジャン=バティスト<br/>・フォレ||ポール・レリ |
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| 大審問官||宗教裁判長|| [[バス (声域)|バス]]||カトリック教会の<br/>権力者|| ジョセフ・ダヴィド||フランチェスコ<br/>・ナヴァリーニ |
| 大審問官||宗教裁判長|| [[バス (声域)|バス]]||カトリック教会の<br/>最高権力者|| ジョセフ・ダヴィド||フランチェスコ<br/>・ナヴァリーニ |
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| エリザベート ||エリザベッタ ||[[ソプラノ]] ||フランスのヴァロワ<br/>王朝の次女||マリー・サス|| アビガイッレ・<br/>ブルスキ=キアッティ |
| エリザベート ||エリザベッタ ||[[ソプラノ]] ||フランスのヴァロワ<br/>王朝の次女||マリー・サス|| アビガイッレ・<br/>ブルスキ=キアッティ |
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'' [[フォンテンブロー]]の森'' |
'' [[フォンテンブロー]]の森'' |
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フォンテンブローの森の中、時節は冬。遠くに宮殿が見える。舞台右手に大きな岩があり避難所のようになっている。木こりたち、妻たち、子供たち 幾人かは伐り倒した樫の木を小さく切っている。彼らは合唱で﹁冬は長く、生活は厳しい、パンは高い、戦争は何時終わるのだ﹂と窮状を嘆いている。今日は王室の狩の日、舞台裏からの[[ファンファーレ]]と獲物を追って走り回る狩人達の叫び声と共にフランス王女エリザベートが現れる。狩人達は木こり達に獲物を与えると去っていく。この光景をスペインの皇太子ドン・カルロスが物影から窺っている。ドン・カルロスは身分を隠して、婚約者のエリザベートを一目みたいがために、この森に潜入したのだった。この時エリザベートは戦争で貧困に苦しむ民衆の姿を見る。カルロスはこの時初めて婚約者を見て、アリア﹁あの人を見て﹂を歌い愛情を吐露する。エリザベートの後を追っていると、妃の一行は道に迷ってしまう。角笛が夜を告げると、カルロスはエリザベート及び小姓のティボーと対面する。カルロスはスペインの大使の随員である名乗り、助けを申し出る。小姓のティボーが更なる助けを求めて立ち去ると二重唱﹁一体何をしているのですか﹂を歌う。エリザベートが自分の婚約者カルロス王子について執拗に質問をして行く内に感情が高ぶっていく。カルロスはついに王妃に王子の肖像を見せるや否や即座に彼こそが、王子そのものと分ったエリザベートは喜び、将来の夫に愛の告白をして、 |
フォンテンブローの森の中、時節は冬。遠くに宮殿が見える。舞台右手に大きな岩があり避難所のようになっている。木こりたち、妻たち、子供たち 幾人かは伐り倒した樫の木を小さく切っている。彼らは合唱で﹁冬は長く、生活は厳しい、パンは高い、戦争は何時終わるのだ﹂と窮状を嘆いている。今日は王室の狩の日、舞台裏からの[[ファンファーレ]]と獲物を追って走り回る狩人達の叫び声と共にフランス王女エリザベートが現れる。狩人達は木こり達に獲物を与えると去っていく。この光景をスペインの皇太子ドン・カルロスが物影から窺っている。ドン・カルロスは身分を隠して、婚約者のエリザベートを一目みたいがために、この森に潜入したのだった。この時エリザベートは戦争で貧困に苦しむ民衆の姿を見る。カルロスはこの時初めて婚約者を見て、アリア﹁あの人を見て﹂を歌い愛情を吐露する。エリザベートの後を追っていると、妃の一行は道に迷ってしまう。角笛が夜を告げると、カルロスはエリザベート及び小姓のティボーと対面する。カルロスはスペインの大使の随員である名乗り、助けを申し出る。小姓のティボーが更なる助けを求めて立ち去ると二重唱﹁一体何をしているのですか﹂を歌う。エリザベートが自分の婚約者カルロス王子について執拗に質問をして行く内に感情が高ぶっていく。カルロスはついに王妃に王子の肖像を見せるや否や即座に彼こそが、王子そのものと分ったエリザベートは喜び、将来の夫に愛の告白をして、カバレッタ風の二重唱﹁胸を刺すような激しい想いに﹂で激しく高揚する。この二人の歌う旋律は二人の愛の象徴として全編において回想される。この喜びもつかの間、突然祝砲が轟き渡り、愛を囁き合っている二人のところへ、小姓のティボーが伝令に来て、フランス王[[アンリ2世]]はエリザベートが王子ドン・カルロスの結婚相手ではなく、スペインのフィリップ2世の王妃に決定したと知らせる。これによりスペインとフランスとの戦争が終結し和平が実現することになると伝えたのだった。皇太子妃になるはずが王妃に変更されたので、エリザベートは驚愕し、悲嘆に暮れながらアリア﹁おお、祭りと歓喜の歌よ﹂を歌う。一方、舞台裏では歓喜の合唱が対置される。レルマ伯爵が現れ、結婚の承諾を求める。国家の決定には逆らうすべもない。人々の歓喜の祝福の合唱とは裏腹にエリザベートは落胆し、カルロスは自らの呪わしい運命に打ちひしがれるのだった。
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=== 第2幕 === |
=== 第2幕 === |
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==== 第1場 ==== |
==== 第1場 ==== |
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''サン・ジュスト修道院の回廊'' |
''サン・ジュスト修道院の回廊'' |
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[[ファイル:Don Carlos Spanien.jpg|thumb|若きドン・カルロス]] |
[[ファイル:Don Carlos Spanien.jpg|thumb|right=1.3|若きドン・カルロス]] |
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4本のホルンによる荘厳な導入部に舞台裏の合唱が歌うカール5世の葬送歌﹁カール5世、神聖なる皇帝は﹂が流れる。裏に墓があり、修道僧たちが祈りを捧げている。すると、祈っていた修道僧の1人が近づいて来て、カール5世は尊大さと愚かさの罪を犯したと呟く。どん底に落とされたカルロスが、心の安らぎを求めて入って来る。﹁息子よ、地上の悩みは、﹂と荘重に吟じる。この神聖な場所にも俗世の苦しみが押し寄せていることをカルロスに示唆するのだった。その声がカルロスに祖父カール5世を思い起こさせるのだった。すると宮廷での唯一の理解者で親友の、ポーザ侯爵ロドリーグがやって来る。虐げられている[[フランドル]]の民を救うため、気持ちを切り替えるようにとアリア﹁私はフランドルにいました﹂を歌い、カルロスを奮い立たせる。カルロスも﹁我が仲間、我が友よ﹂を熱く歌い、新しい道に歩踏み出す決心をする。フランドルは[[ |
4本のホルンによる荘厳な導入部に舞台裏の合唱が歌うカール5世の葬送歌﹁カール5世、神聖なる皇帝は﹂が流れる。裏に墓があり、修道僧たちが祈りを捧げている。すると、祈っていた修道僧の1人が近づいて来て、カール5世は尊大さと愚かさの罪を犯したと呟く。どん底に落とされたカルロスが、心の安らぎを求めて入って来る。﹁息子よ、地上の悩みは、﹂と荘重に吟じる。この神聖な場所にも俗世の苦しみが押し寄せていることをカルロスに示唆するのだった。その声がカルロスに祖父カール5世を思い起こさせるのだった。すると宮廷での唯一の理解者で親友の、ポーザ侯爵ロドリーグがやって来る。虐げられている[[フランドル]]の民を救うため、気持ちを切り替えるようにとアリア﹁私はフランドルにいました﹂を歌い、カルロスを奮い立たせる。カルロスも﹁我が仲間、我が友よ﹂を熱く歌い、新しい道に歩踏み出す決心をする。フランドルは[[新教徒]]が多いために、カトリック教のスペインは弾圧を続けていたのだった。父王の妃になってしまったエリザベートへの愛に苦しむ彼に罪深い恋を告白する。ロドリーグも﹁我が友よ﹂を返して歌い、戦いに加わることで愛の苦悩を忘れることを忠告する。2人は義兄弟の契りを結び、二重唱﹁神よ、あなたは我々の胸に﹂と誓い合う。その間に王フィリップ2世と王妃エリザベートが中庭を通り抜け、修道院へと入って行く。
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==== 第2場 ==== |
==== 第2場 ==== |
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''修道院の前庭'' |
''修道院の前庭'' |
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修道院に入ることを許されていない付き人の女官たちが修道院の前庭に集まっている。その中に、美しさが際立つエボリ公女の楽しそうな姿も見受けられる。エボリ公女の密かにカルロス王子を慕っている。女声合唱が﹁葉の生い茂った木の下で﹂を歌う。ここでマンドリンに合わせて、エボリ公女によって歌われる[[ムーア人]]の﹁ヴェールの歌﹂として有名な曲﹁妖精たち[[グラナダ]]の王様たちの宮殿で﹂︵﹁美しいサラセンの宮殿の庭に﹂︶は、装飾音符が多くカデンツァがある難曲。途中から小姓デバルトとの二重唱となり、女官たちの合唱も加わり華やかなコンチェルタートとなる。エリザベートが登場すると、女官たちも静まる。そこへロドリーグが、拝謁を求めて使いを伴って来る。彼はフランス王室の母君からの手紙と一緒に、こっそりとカルロスからの書状を添えて手渡す。その手紙にはロドリーグを信頼するようにと書かれている。ロドリーグはエボリ公女と宮廷風の挨拶と会話を交わしながら、エリザベートが手紙を読むのを待っている。手紙を読み不安に苛まれる王妃にロドリーグは、静かに[[カンタービレ]]のロマンス﹁我らの希望であるカルロス王子は﹂を歌い出し、カルロスが父に願いを聞き入れられず苦しみ新しい母に会いたがっていることを伝える。彼女は過去を思い出して悲しみに浸るのだが、傍らで聞いていたエボリ公女は、カルロスが自分への愛に苦しんでいると勝手に勘違いする。ロドリーグとエボリ公女が付き人たちと共に立ち去ると、王妃の前にカルロスが現れる。カルロスは王妃に自分をフランドルへ派遣するよう、王フィリップ2世に取り計らって欲しいと懇願し、二重唱﹁女王様のご温情を頂戴したく、﹂となる。しかし、ほどなく対話は愛の告白に変わる。エリザベートはアリア﹁私の足元で﹂歌い、彼女の愛情を伝える。我に返ったエリザベートはカルロスをさえぎり、二人が結ばれることは不可能だと言う。カルロスは芝生の上で気を失うが、やがて悲しみに打ちひしがれて立ち去り、ひとりになった王妃は泣き崩れ、神に助けを請う。突然王が姿をみせ、王妃から離れたかどで女官のアランベール伯爵夫人に明朝フランスへ帰るよう言い渡す。出発する女官に、エリザベートは優しい言葉で泣き出す婦人に別れの挨拶をする︵ロマンス﹁泣かないで、わたしの友よ﹂︶。王はロドリーグにその場に残るよう合図する。なぜ帰国後に一度も挨拶に来ないのかと質す。ロドリーグはフランドルの救い難いほどの状況を説明するが、王は冷酷にも政治による支配が必要だと答える。だがロドリーグは、それに明確に反対しフランドルには解放が必要であると率直に本音を口上する。王に追従するばかりの取り巻きの廷臣たちとは、心底誠実な彼の提言に驚くが、それでもロドリーグに対する信頼を抱く。一方で、大審問官の恐ろしい権力のことを思い出させ、大審問官には注意するようにと警告する。フィリップ2世は王妃と皇太子の仲が怪しいので、王妃への謁見の自由を与えるから、その仲を探るようにと命令する。ロドリーグは喜んで引き受け、二重唱﹁陛下、私はフランドルから参りました﹂で結ぶ。
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修道院に入ることを許されていない付き人の女官たちが修道院の前庭に集まっている。その中に、美しさが際立つエボリ公女の楽しそうな姿も見受けられる。エボリ公女の密かにカルロス王子を慕っている。女声合唱が﹁葉の生い茂った木の下で﹂を歌う。ここでマンドリンに合わせて、エボリ公女によって歌われる[[ムーア人]]の﹁ヴェールの歌﹂として有名な曲﹁妖精たち[[グラナダ]]の王様たちの宮殿で﹂︵﹁美しいサラセンの宮殿の庭に﹂︶は、装飾音符が多くカデンツァがある難曲。途中から小姓デバルトとの二重唱となり、女官たちの合唱も加わり華やかなコンチェルタートとなる。ロドリーゴに出会い、母親からの手紙を受け取るが、一緒にカルロの手紙もこっそり手渡される。その手紙にはロドリーゴを信頼するようにと書かれている。エリザベートが登場すると、女官たちも静まる。そこへロドリーグが、拝謁を求めて使いを伴って来る。彼はフランス王室の母君からの手紙と一緒に、こっそりとカルロスからの書状を添えて手渡す。その手紙にはロドリーグを信頼するようにと書かれている。ロドリーグはエボリ公女と宮廷風の挨拶と会話を交わしながら、エリザベートが手紙を読むのを待っている。手紙を読み不安に苛まれる王妃にロドリーグは、静かに[[カンタービレ]]のロマンス﹁我らの希望であるカルロス王子は﹂を歌い出し、カルロスが父に願いを聞き入れられず苦しみ新しい母に会いたがっていることを伝える。彼女は過去を思い出して悲しみに浸るのだが、傍らで聞いていたエボリ公女は、カルロスが自分への愛に苦しんでいると勝手に勘違いする。ロドリーグとエボリ公女が付き人たちと共に立ち去ると、王妃の前にカルロスが現れる。カルロスは王妃に自分をフランドルへ派遣するよう、王フィリップ2世に取り計らって欲しいと懇願し、二重唱﹁女王様のご温情を頂戴したく、﹂となる。しかし、ほどなく対話は愛の告白に変わる。エリザベートはアリア﹁私の足元で﹂歌い、彼女の愛情を伝える。我に返ったエリザベートはカルロスをさえぎり、二人が結ばれることは不可能だと言う。カルロスは芝生の上で気を失うが、やがて悲しみに打ちひしがれて立ち去り、ひとりになった王妃は泣き崩れ、神に助けを請う。突然王が姿をみせ、王妃から離れたかどで女官のアランベール伯爵夫人に明朝フランスへ帰るよう言い渡す。出発する女官に、エリザベートは優しい言葉で泣き出す婦人に別れの挨拶をする︵ロマンス﹁泣かないで、わたしの友よ﹂︶。王はロドリーグにその場に残るよう合図する。なぜ帰国後に一度も挨拶に来ないのかと質す。ロドリーグはフランドルの救い難いほどの状況を説明するが、王は冷酷にも政治による支配が必要だと答える。だがロドリーグは、それに明確に反対しフランドルには解放が必要であると率直に本音を口上する。王に追従するばかりの取り巻きの廷臣たちとは、心底誠実な彼の提言に驚くが、それでもロドリーグに対する信頼を抱く。一方で、大審問官の恐ろしい権力のことを思い出させ、大審問官には注意するようにと警告する。フィリップ2世は王妃と皇太子の仲が怪しいので、王妃への謁見の自由を与えるから、その仲を探るようにと命令する。ロドリーグは喜んで引き受け、二重唱﹁陛下、私はフランドルから参りました﹂で結ぶ。
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=== 第3幕 === |
=== 第3幕 === |
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''マドリードの王宮の王の書斎'' |
''マドリードの王宮の王の書斎'' |
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妃に一度も愛されたことがなく、今や息子にも裏切られた国王は、王として生きることの苦難について瞑想し、孤独にアリア﹁ひとり寂しく眠ろう﹂を歌い悲しみ吐露する。感情的な疎外感からの自己憐憫︵弦楽器による執拗な音型の繰り返しを伴い﹁彼女は私を愛したことがない﹂という激しい感情の発露で頂点に達する |
妃に一度も愛されたことがなく、今や息子にも裏切られた国王は、王として生きることの苦難について瞑想し、孤独にアリア﹁ひとり寂しく眠ろう﹂を歌い悲しみ吐露する。感情的な疎外感からの自己憐憫︵弦楽器による執拗な音型の繰り返しを伴い﹁彼女は私を愛したことがない﹂という激しい感情の発露で頂点に達するアリオーソ︶から死についての暗澹たる瞑想を経て自からの権力についての再認識し、最後には感情の高揚で終結するアリアとなっている。そこへ盲目の大審問官があらわれ、二重唱﹁私は王の御前にいるのか﹂となり、皇太子を死刑に処するよう求める。そして大審問官は進歩的な理想主義を掲げるロドリーグこそ、本当の異端者だといいその命を要求する。だが王は忠実な家臣の命は差し上げられぬと答えるので、大審問官は怒って私は王でさえ裁判所に引き出すことが出来るのだと言って、そのまま僧院へ戻る。ここで二人のバス歌手︵政治権力と宗教権力の代表同士︶によって権力闘争が繰り広げられる。そこへ突然王妃エリザベートが来て、宝石箱のひとつがを盗まれたと駆け込んで来る。王妃の知らぬ間に、エボリ公女が王に渡していたのだが、その中にはカルロスの肖像画が仕舞われていた。王が宝石箱はここにあると言い、そこにカルロスの肖像が入っているのを示し、王妃の不倫を詰問する。彼女は決して自分は、汚れていないと反論するが、王は聞き入れようとはしない。彼女はその場に失神し、急を聞いてエボリとロドリーグが駆けつける。二人の介抱で王妃は意識を取り戻し、王はロドリーグを従えて退場する。するとエボリは王妃に、カルロスを愛する余りの嫉妬から、宝石箱を盗み出したと告白し、また国王に誘惑されて不倫の関係になったことも白状する。王妃はエボリ公女に、この国を離れるか、修道院へ行くように行って立ち去る。エボリは嫉妬と美貌の思い上がりから、こんな結果になったと、アリア﹁呪わしき美貌﹂を歌う。
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==== 第2場 ==== |
==== 第2場 ==== |
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|1983~1984 |
|1983~1984 |
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|[[プラシド・ドミンゴ]],<br> |
|[[プラシド・ドミンゴ]],<br>カーティア・リッチャレッリ,<br>[[レオ・ヌッチ]],<br>ルチア・ヴァレンティーニ=テッラーニ,<br>ルッジェーロ・ライモンディ,<br>[[ニコライ・ギャウロフ]],<br>ニキタ・ストロイェフ |
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|[[クラウディオ・アバド]],<br>[[ミラノ・スカラ座管弦楽団]] <br>ミラノ・スカラ座管合唱団 |
|[[クラウディオ・アバド]],<br>[[ミラノ・スカラ座管弦楽団]] <br>ミラノ・スカラ座管合唱団 |
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|CD: DG No:4791919 <br>モデナ初演の5幕版をフランス語に戻した版 |
|CD: DG No:4791919 <br>モデナ初演の5幕版をフランス語に戻した版 |
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|1996 |
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|[[ロベルト・アラーニャ]],<br>カリタ・マッティラ,<br>[[ |
|[[ロベルト・アラーニャ]],<br>カリタ・マッティラ,<br>[[トーマス・ハンプソン]],<br>[[ヴァルトラウト・マイアー]],<br>[[ジョゼ・ヴァン・ダム]],<br>エリック・ハーフヴァーソン,<br>チャバ・エリゼー |
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|[[アントニオ・パッパーノ]],<br>[[パリ管弦楽団]] <br>シャトレ座合唱団<br>演出:リュック・ボンディ |
|[[アントニオ・パッパーノ]],<br>[[パリ管弦楽団]] <br>シャトレ座合唱団<br>演出:リュック・ボンディ |
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|DVD: ワーナーミュージック・ジャパン<br>No:109181<br>CD: EMI Classics 7243 5 56152<br>ギュンターとペタッツォーニが<br>校訂した版を参考にしたもの |
|DVD: ワーナーミュージック・ジャパン<br>No:109181<br>CD: EMI Classics 7243 5 56152<br>ギュンターとペタッツォーニが<br>校訂した版を参考にしたもの |
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|2004 |
|2004 |
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|ラモン・ヴァルガス,<br>イアノ・タマール,<br>ボー・スコウフス,<br>ナディア・ミヒャエル,<br>アラステア・マイルズ,<br>サイモン・ヤン,<br>ダン・パウル・ドゥミトレスク |
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|[[ベルトラン・ド・ビリー]]<br>[[ウィーン国立歌劇場管弦楽団]]<br>[[ウィーン国立歌劇場]]合唱団 |
|[[ベルトラン・ド・ビリー]]<br>[[ウィーン国立歌劇場管弦楽団]]<br>[[ウィーン国立歌劇場]]合唱団 |
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| DVD: 日本コロムビア No:COBO6015 <br>演出:ペーター・コンヴィチュニー<br>5幕フランス語オリジナル版、1867年<br>CD:ORFEO DOR *CL* No:ORFEOR648054 |
| DVD: 日本コロムビア No:COBO6015 <br>演出:ペーター・コンヴィチュニー<br>5幕フランス語オリジナル版、1867年<br>CD:ORFEO DOR *CL* No:ORFEOR648054 |
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== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
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*『新グローヴ オペラ事典』 [[白水社]](ISBN 978-4560026632) |
*『新グローヴ オペラ事典』 [[白水社]](ISBN-13: 978-4560026632) |
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*『ラルース世界音楽事典』 [[福武書店]]刊 |
*『ラルース世界音楽事典』 [[福武書店]]刊 |
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*『オペラ「ドン・カルロ」のスペイン史』西川 和子(著) [[彩流社]](ISBN 4779114837) |
*『オペラ「ドン・カルロ」のスペイン史』西川 和子(著) [[彩流社]](ISBN-10: 4779114837) |
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*『最新名曲解説全集第19巻』[[永竹由幸]]ほか (著),[[音楽之友社]] (ISBN 4276010195) |
*『最新名曲解説全集第19巻』[[永竹由幸]]ほか (著),[[音楽之友社]] (ISBN-10: 4276010195) |
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*『オペラ名曲百科 上 増補版 イタリア・フランス・スペイン・ブラジル編』[[永竹由幸]] (著),[[音楽之友社]](ISBN 4-276-00311-3) |
*『オペラ名曲百科 上 増補版 イタリア・フランス・スペイン・ブラジル編』[[永竹由幸]] (著),[[音楽之友社]](ISBN 4-276-00311-3) |
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*『オペラは手ごわい』岸 純信 (著) [[春秋社]] (ISBN 978-4393935811) |
*『オペラは手ごわい』岸 純信 (著) [[春秋社]] (ISBN-13: 978-4393935811) |
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*『ヴェルディとワーグナー』 荒井 秀直 (著) [[東京書籍]](ISBN 4487753422) |
*『ヴェルディとワーグナー』 荒井 秀直 (著) [[東京書籍]](ISBN-10: 4487753422) |
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*『黄金の翼=ジュゼッぺヴェルディ』[[加藤浩子]] (著) [[東京書籍]](ISBN 4487797098) |
*『黄金の翼=ジュゼッぺヴェルディ』[[加藤浩子]] (著) [[東京書籍]](ISBN-10: 4487797098) |
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== 脚注 == |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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* {{ |
* {{IMSLP|id=Verdi, Giuseppe}} |
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* [https://musopen.org/ja/music/1923-don-carlos/ Don Carlos] - 『[[Musopen]]』より |
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* [http://www.magazzini-sonori.it/esplora/giuseppe_verdi/carlo_verdi.aspx Don Carlo]{{it icon}} - 『Magazzini Sonori』より《[[フェルナンド・プレヴィターリ|プレヴィターリ]]指揮で1951年に収録された演奏音源を掲載(全4幕版を使用)》 |
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{{DEFAULTSORT:とんかるろ}} |
{{DEFAULTSORT:とんかるろ}} |
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[[Category:ヴェルディのオペラ]] |
[[Category:ヴェルディのオペラ]] |
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[[Category: |
[[Category:19世紀のオペラ]] |
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[[Category:フランス語のオペラ]] |
[[Category:フランス語のオペラ]] |
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[[Category: |
[[Category:戯曲を原作とするオペラ]] |
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[[Category:スペインを舞台とした作品]] |
[[Category:スペインを舞台とした作品]] |
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[[Category: |
[[Category:歴史を題材とした作品]] |
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[[Category: |
[[Category:王子を主人公にした物語]] |
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[[Category: |
[[Category:フリードリヒ・フォン・シラー]] |
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[[Category:王子を主人公とした舞台作品]] |
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[[Category:1867年の音楽]] |
[[Category:1867年の音楽]] |
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[[Category:フェリペ2世]] |