フール・フォー・ザ・シティ
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﹃フール・フォー・ザ・シティ﹄︵FOOL for THE CITY、略称FFC︶は、永野護作の漫画であり、漫画家としての永野の処女作。角川書店発行のアニメ雑誌﹃月刊ニュータイプ﹄創刊号の1985年4月号から1年間連載されていた。単行本全1巻︵ニュータイプ100%コミックス︶。
タイトルの由来は1970年代に活躍したイギリスのロックバンドフォガットの曲﹁FOOL FOR THE CITY﹂であり、この曲自体も本作品の大きなキーポイントとなっている。
設定
20世紀末から21世紀初頭にかけて大戦争が勃発、世界は壊滅的な大打撃を被った。 かろうじて生き延びた人々は、持てる力を結集して統一国家﹁地球連邦﹂を形成した。連邦では人々は徹底した管理機構のもと、争いのない平和な生活が保障されていた。 しかしその一方、この連邦形成にあたり、連邦を統括するマザーコンピューター﹁ドウター(DOUGHTER)﹂と高官たちは、自分たちの政策に不利となる因子をすべて消去する策をとった。特に、国民を扇動する要因の強い芸術や宗教が弾圧され、それらの記録も一切消去され、数多くの文化が人々の心から忘れ去られていった。 弾圧から逃れた芸術家たちは、辺境の地で地下生活に入り、﹁禁制﹂とされた文化を子孫たちに託していった。そうした彼らは﹁サクセサー(SUCCESOR)﹂と呼ばれ、一部では神格化されるまでに至った。しかしその彼らも、次第に多くが狩られていった。 そして地球連邦形成から約120年後。人々は作られた世界の中、何の不安もなく、理想的で平和な生活を送っていた。だが、それと引き換えに人類の文化の発展は停止した。そして人々はもはや、自分たちに感動を与える芸術、演劇、絵画、文学、音楽、ロックミュージックを忘れ去っていた。作中世界での音楽文化
●ロックは全面禁止であり、ポップス、歌謡曲程度しか認可されていない。 ●楽器はすべて音色入力がデジタル信号となっており︵いわゆるPCM︶、楽器の名前も前世代から変化している。 ●ドラム → リズマー ●ギター → メロダー ●ベースギター → ビートリズマー ●ライブでは現代のように大音量スピーカーで音や歌を流すことはなく、観客はみな、イヤホンで音楽を聞く。あらすじ
西暦2185年。音楽バンド・スーパーノヴァのラスたちは、偶然にも最後のロック・サクセサーであるアラニア・シャンカールと出逢った。本物のロックに触れることができると喜ぶラスたちだが、彼女は心を閉ざし、ロックのことを心に封印していた。しかし後に、アラニアは音楽が人の心を動かす素晴しさを知り、ラスたちは本物のロックに触れる。そして、2世紀もの日々を隔て、再び人々の耳にロックの鼓動が響き渡る。登場人物
スーパーノヴァ
北米、ユーロー地区で最高の人気を持つ音楽バンド。 ラッセル・コール 主人公。ビートリズマー件ボーカル担当。通称ラス。アラニアがサクセサーたちの仇であるログナー暗殺を企てた際、それを食い止めたことが彼女との出逢いとなった。以来、自分の家へアラニアを居候させ、やがて恋仲となってゆく。21歳。 アラニア・シャンカール・アンダーソン 物語のヒロイン。ロック・サクセサーの最後の生き残り。北インド︵ネパール︶のカシミール出身。家族構成は両親と兄との4人家族だが父親と兄はメトロポールに殺されており、当初はその件もあってサクセサーとしての生き方に反感を抱いていたが、マコトから父親の話を聞いたことで音楽の本当の素晴しさを知る。マコトの死後スーパーノヴァにメインボーカルとして加入する。17歳。 エドワード・マコト・カネコ︵巻末英文記述より︶ メロダー件ボーカル担当で、ラスの親友。16歳の頃、本物のロッカー︵アラニアの父親︶の﹃FOOL FOR THE CITY﹄を聞き、いつか自分もそれを歌うことを夢見て音楽の道を選んだ。アラニアを通じ、夢だった﹃FOOL FOR THE CITY﹄のテープを遂に手に入れるが、直後のスケープゴートと語らってのツーリング中メトロポールの襲撃をうけ死亡。21歳。 イアン・マクドナルド メロダー担当。プレイボーイ。天才肌だが、それだけに身勝手な一面もあり、トラブルを起こすことも多い。20歳。名前の元ネタは、元キング・クリムゾン、元フォリナーのマルチプレイヤーで同姓同名のイアン・マクドナルド。 スティーブ・フリップス リズマー担当。スーパーノヴァのリーダー格。24歳。 サイモン・オフロード スーパーノヴァ結成に携わった人物で、現在はプロデューサーを務めている。32歳。 Mr.マクトミン レジスタンス組織の大物でアラニアの後見人。サイモンと意気投合し、アラニアの加わったスーパーノヴァを支援する。スケープゴウト
いわゆる暴走族。この時代の警官たちからは﹁ただ走るだけで何が面白いのか分からない連中﹂と見なされ、あまり相手にされていない。なお、この時代の乗物はほとんどが電動であり、彼らのバイクも例外ではない。 アニマル・ドーシー スケープゴウトのリーダー。唯一、旧式バイク︵現代の内燃機関式︶に乗っており、しかも愛車は世界にただ1台残ったハーレーである。ラスやマコトとも親しい。メトロポール
22世紀で最強権力を持つ情報管理局。 ファルク・U・ログナー ﹁機械は人間が操作する﹂という原則のもと、唯一ドウターに命令できる人物として、ドウター自身に作られた人間。そのことから﹁マシン・チャイルド﹂の通称で呼ばれる。事実上の世界最高権力者で、彼に対しては政治家や官僚たちも、誰1人口を挟むことはできない。自分を創ったドウターを母の意味で﹁ママ﹂と呼ぶ。23歳。 ソーニャ・カーリン ログナーの片腕である女性大尉。ログナーの本来の任務、そして彼の真の企みの双方に忠実に仕えている。一方、身分を隠してメトロポールに対するレジスタンスの協力者及び情報提供者としても務め、メトロポールの情報を彼らに提供するが、その彼らの動向をログナーに報告する役目も持つ。 ドウター 地球連邦を統括するマザー・コンピューター。人格を持ち、会話もできることからヒューマン・コンピューターとも呼ばれる。自ら創ったログナーを息子として﹁ファル﹂と呼ぶ。ログナー不在時には自らメトロポールに命令を下すこともある。機動ポリス
メトロポールのもとで働くロボット警察官。
ロウ・グライド
パトロール用。現代で言えば単なる巡査。会話も可能で、ラスが職務質問を受けるシーンがある。
スカウト・グライド
事件用。一般的な事件が起きた際に出動する。未登場。
ハンター・グライド
レジスタンス、テロリスト討伐用。未登場。
フレイム・グライド
同じくレジスタンス、テロリスト討伐用。火炎放射を武器とする。冒頭のロックコンサート破壊シーンで登場。
ベオ・グライド
最新型機動ポリス。殺人専門のロボットで、人間と見れば誰彼構わず射殺する。人間の警官たちですら、識別レーザーを出していないとこのベオに射殺されてしまう。そこから付いた通称は﹁デストロイド・コマンダー﹂。出動にはログナーの許可が必要だが、スケープゴウトを全滅させた際はドウターがメトロポール長官に直接出動を命じ、自らコントロールしていた。