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「大野治長」を編集中

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{{基礎情報 武士

{{基礎情報 武士

| 氏名 = 大野治長

| 氏名 = 大野治長

| 画像 =

| 画像 =Ōno Harunaga cropped from the siege of Osaka castle.jpg

| 画像サイズ =240px

| 画像サイズ =

| 画像説明 =

| 画像説明 = 大野治長像<ref>{{Cite web|和書|format=pdf |page=2 |url=http://www.history.museum.city.fukui.fukui.jp/tenji/kaisetsusheets/70.pdf |title=大坂の陣と越前勢|website= |publisher=[[福井市立郷土歴史博物館]]|accessdate=2022-01-20}}</ref><br/>（『[[大坂夏の陣図屏風]]』より抜粋）

| 時代 = [[安土桃山時代]] - [[江戸時代]]前期

| 時代 = [[安土桃山時代]] - [[江戸時代]]前期

| 生誕 = [[永禄]]12年（[[1569年]]）頃

| 生誕 = [[永禄]]12年（[[1569年]]）

| 死没 = [[慶長]]20年[[5月8日 (旧暦)|5月8日]]（[[1615年]][[6月4日]]）

| 死没 = [[慶長]]20年[[5月8日 (旧暦)|5月8日]]（[[1615年]][[6月4日]]）

| 改名 =

| 改名 = 治良{{sfn|大日本人名辞書刊行会|1926|p=615}}

| 別名 =

| 別名 = [[仮名 (通称)|通称]]：修理亮、修理大夫

| 戒名 = 節叟元忠禅定門

| 戒名 =

| 墓所 =

| 墓所 =

| 官位 = [[従五位|従五位下]][[修理職|修理大夫]]

| 官位 = [[従四位|従四位下]][[修理職|修理大夫]]

| 幕府 =

| 幕府 =

| 主君 = [[豊臣秀吉]]→[[豊臣秀頼|秀頼]]

| 主君 = [[豊臣秀吉]]→[[豊臣秀頼|秀頼]]

| 藩 =

| 藩 = [[摂津国]][[大坂藩]]

| 氏族 = [[大野氏]]

| 氏族 = [[大野氏]]

| 父母 = 父：[[大野定長]]（佐渡守）、母：[[大蔵卿局]]

| 父母 = 父：[[大野定長]]（道犬）、母：[[大蔵卿局]]

| 兄弟 = '''治長'''、[[大野治房|治房]]、[[大野治胤|治胤]]、[[大野治純|治純]]

| 兄弟 = '''治長'''、[[大野治房|治房]]、[[大野治胤|治胤]]、[[大野治純|治純]]

| 妻 =南陽院(妙心寺過去帳)

| 妻 = 南陽院{{efn|南陽院殿凉巌受招大禅定尼。﹃妙心寺雑華院過去帳﹄による大野修理内儀の法名。妙心寺雑華院には凉巌受招信女像の絵がある。}}

| 子 = [[大野治徳|治徳]]（長徳）、[[大野治安|治安]]（弥七郎）

| 子 = [[大野治徳|治徳]]（長徳）、[[大野治安|治安]]（弥十郎）

| 特記事項 =

| 特記事項 =

}}

}}

'''大野 治長'''︵おおの はるなが︶は、[[安土桃山時代]]から[[江戸時代]]前期にかけての[[武将]]、[[大名]]。[[豊臣氏]]の家臣。[[仮名 (通称)|通称]]は修理亮または修理大夫で、'''大野修理'''の名でも知られる。

'''大野 治長'''︵おおの はるなが︶は、[[安土桃山時代]]から[[江戸時代]]前期にかけての[[武将]]、[[大名]]。[[豊臣氏]]の家臣。[[官位]]は[[従四位|従四位下]][[修理職|修理大夫]]。[[知行]]15,000石。

兄弟に、[[大野治房|治房]]・[[大野治胤|治胤]]・[[大野治純|治純]]、子は[[大野治徳]]、治安︵弥十郎︶ほか。


[[書家|能書家]]であり{{sfn|高柳|松平|1981|p=62}}、[[古田重然]]︵織部︶に茶の湯を学んだ[[茶人]]でもあった{{sfn|小林|loc=p.310 , 清水昇﹁真田一族関係人物事典﹂}}{{sfn|阿部|1990|ref=sen|p=189}}。


== 生涯 ==

== 生涯 ==

[[永禄]]12年︵[[1569年]]︶、[[丹後国]][[大宮町 (京都府)|大野]]︵現在の[[京丹後市]]︶で生まれた。父は[[豊臣秀吉]]の家臣であった[[大野定長]]、母は後に[[淀殿]]の[[乳母]]となる[[大蔵卿局]]であり、母の伝手により秀吉に約3,000石の[[馬廻]]衆として取り立てられた。[[天正]]17年︵1589年︶に父および母の功績により[[和泉国]]佐野︵現在の[[泉佐野市]]︶と[[丹後国]]大野合計1万石を道犬と共に与えられ、大野城を拠点として領国を運営した<ref>[https://www.city.kyotango.lg.jp/shisei/furusato/kyodo/chiiki/oomiya/documents/o_kutioonoh2602_2.pdf 豊臣家直轄領の大野村と大野城址 大野治長・道犬親子ゆかりの地] [[京丹後市]]</ref>。[[文禄]]3年︵1594年︶の[[伏見城]]の普請に携わっている。秀吉の[[文禄・慶長の役|朝鮮出兵]]に際しても従軍し、肥前[[名護屋城]]付近に陣を構え、一隊の将として役割を果たしている。

=== 不確かな前歴 ===

父は[[大野定長]]︵佐渡守︶で、母は[[大蔵卿局]]といい、[[浅井長政]]と[[お市の方]]の娘である[[淀殿]]の[[乳母]]となったので、淀殿とは乳母子︵めのとご︶の間柄になる。淀殿の生年には諸説ある<!--︵[[淀殿#人物像|別項を参照]]︶-->が、この経緯から考えれば、治長は同い年かそれに極めて近い年齢と考えられるので、最も有力なのは[[永禄]]12年︵[[1569年]]︶前後であろう。兄弟には、[[大野治房|治房]]︵主馬首︶、[[大野治胤|治胤]]︵道犬/道見︶、[[大野治純|治純]]︵壱岐守︶{{efn|ただし、治純は系図に名前がなく、しばしば治長と治房だけで大野兄弟、あるいは治長・治房・道犬で大野三兄弟などと呼ばれる。}}がいた。


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秀吉の死後は[[豊臣秀頼]]の側近として仕えたが、[[慶長]]4年︵[[1599年]]︶の[[徳川家康]]暗殺計画事件の[[首謀者]]の一人として罪を問われ、[[下総国]]に[[流罪]]とされる。翌慶長5年︵[[1600年]]︶の[[関ヶ原の戦い]]で東軍に参戦し、宇喜多隊の将、[[香地七郎右衛門|香地七郎左衛門]]を打ち取る武功を上げた事で罪を許され、戦後は家康の命で﹁[[豊臣氏|豊臣家]]への敵意なし﹂という家康の[[書簡]]をもって豊臣家への[[使者]]を務めた後、[[江戸]]に戻らずそのまま[[大坂]]に残った。

出生地には二説あるが、﹃尾張群書系図部集﹄は﹃尾張志﹄﹃張州雑志﹄などを根拠に、[[丹後国]][[中郡|丹後郡]][[大宮町 (京都府)|大野村]]{{efn|現在の[[京丹後市]]。}}で生まれたとする説の方を'''誤伝'''として{{efn|後述する所領が同じ大野城であるために出生地との取り違えが起こった。}}、[[尾張国]][[葉栗郡]]大野村{{efn|現在の[[愛知県]][[一宮市]]浅井町大野。}}で生まれた城主一族であるとしている<ref> {{Citation|和書|editor=加藤国光|title=尾張群書系図部集︵上︶|year= 1997|publisher= 続群書類従完成会|pages=165|isbn= 9784797105551}}</ref>。大野氏はもとは[[石清水八幡宮|石清水]][[神職|祠官]]︵しかん︶の家で、神職を失って[[美濃国]]に流れてきた[[大野治定]]︵伊賀守︶が、[[織田信長]]の命令で同地に[[大野城 (尾張国葉栗郡)|大野城]]を築いて居城とした。この治定は祖父にあたり、定長はその子で、大野城を継いだ[[大野治久|治久]]は定長の弟︵治長から見れば叔父︶にあたる。﹃南路志﹄によれば、尾張葉栗郡の同郷の[[毛利勝永]]とは従兄弟の関係にあったという。


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慶長19年︵[[1614年]]︶6月、[[片桐且元]]の弟である[[片桐貞隆]]と共に家康の口添えで5,000石を秀頼より加増され、その礼として貞隆と[[駿府]]にいる家康、次いで[[江戸]]の[[征夷大将軍|将軍]]・[[徳川秀忠]]を訪ねる。

大蔵卿局および治長らは、[[小谷城]]以来、ずっと淀殿に付き従っていたと考えられるが、[[天正]]11年︵[[1583年]]︶の[[越前国|越前]][[福井城|北ノ庄城]]の落城後はその淀殿の所在すらよく分からず、大野一族がどのような顛末をたどったのかは不明である。一方で、この間、天正12年︵[[1584年]]︶の[[小牧・長久手の戦い]]の際に、本家の大野治久は[[豊臣秀吉]]に逆らって失領し、大野城を失っている。


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同年に豊臣氏の[[家老]]であった片桐且元が追放されると、豊臣家を主導する立場となる。その後、豊臣家内部では主戦派が主流となり、各地から[[浪人]]を召抱えて[[大坂の陣#大坂冬の陣|大坂冬の陣]]に至る。治長は豊臣方の中心の一人として籠城戦を指揮し、徳川方から和睦が持ちかけられると、[[織田長益|織田有楽斎]]と共に徳川方との交渉を行った。和睦の条件に従い次男[[大野治安|治安]]︵弥十郎︶を人質として家康に差し出しているが︵後に処刑︶、城内では和睦に反対する意見も多く、和睦後の4月9日に闇討ちに遭い負傷した。これは主戦派の弟・治房による襲撃とも言われる。

'''前歴は不詳'''といって差し支えなく、治長が秀吉の[[馬廻]]衆となった時期もよくわからないが、︵[[織田信雄]]、または[[佐治信方]]や[[織田長益]]のもとにいたらしい︶淀殿が秀吉の庇護下に入った時期に関係があると思われるので、淀殿が秀吉の側室となった天正16年︵[[1588年]]︶頃か、もしくはその少し前と推測される。


慶長20年（[[1615年]]）の[[大坂の陣#大坂夏の陣|大坂夏の陣]]では、[[紀伊]]の[[浅野長晟]]への攻撃に際し、家臣を紀伊へ潜入させ[[和歌山城]]を占領すべく一揆を扇動したが計画は失敗した（[[紀州一揆]]）<ref>『浅野考譜』</ref>。

[[天正]]17年︵[[1589年]]︶に父および母の功績により、[[蔵入地|太閤蔵入地]]から[[和泉国]]佐野︵現在の[[泉佐野市]]︶と[[丹後国]]大野に合計1万石を与えられ、[[大野城 (丹後国)|丹後大野城]]を拠点として領国を運営した<ref>{{Cite web|和書|format=PDF |date= |url=https://www.city.kyotango.lg.jp/material/files/group/13/o_kutioonoh2602_2.pdf|title=豊臣家直轄領の大野村と大野城址 大野治長・道犬親子ゆかりの地 |website=ふるさと わがまち わが地域|publisher=京丹後市|accessdate=2022-01-20}}</ref>。これは明らかに同年に淀殿が[[豊臣鶴松|鶴松]]を出産したことに関連する褒美ないし祝賀の加増であろう。


[[天王寺・岡山の戦い]]では、全軍の後詰として四天王寺北東の後方に布陣、秀頼の出馬を待っていたが、戦闘に参加することなく城内に撤退した。

=== 淀殿に近侍 ===

治長が確かな史料に登場するのは、天正19年︵[[1591年]]︶11月、秀吉の[[三河国]]吉良狩猟に随兵した頃からである{{sfn|高柳|松平|1981|p=62}}。



将軍・秀忠の娘で秀頼の[[正室]]であった[[千姫]]を使者とし、己の[[切腹]]を条件に秀頼母子の助命を願うがかなわず、秀頼とともに[[大坂城]]の山里曲輪で自害した。母親・大蔵卿局、長男の[[大野治徳|治徳]]も共に自害している。

[[文禄]]元年︵[[1592年]]︶、﹃松浦古事記﹄によれば[[文禄・慶長の役|文禄の役]]の際の[[肥前国|肥前]][[名護屋城]]の陣場の配置に﹁大野修理亮﹂の名があり<ref>{{Citation |和書|last=吉村|first=茂三郎|editor=吉村茂三郎|chapter=松浦古事記|year=1934|title= 松浦叢書 郷土史料|volume=第1|publisher=吉村茂三郎|url={{NDLDC|1214367/94}} 国立国会図書館デジタルコレクション|page=124}}</ref>、在陣していた。このとき、秀吉は小田原の陣の例にならって、淀殿や[[松の丸殿]]などの側室を連れていたことは興味深い点であり、まさにこの夏に淀殿は再び懐妊して、翌年に[[豊臣秀頼|拾]]を産んでいる。

﹃春日社司祐範記﹄は﹁大野修理沙汰して最後に切腹なり。手前の覚悟比類なし﹂と記している{{sfn|小林|loc=p.161 , [[小林計一郎]]﹁日本一の兵 真田幸村﹂}}。[[享年]]47。



子の弥十郎は、[[古田重然|古田織部]]の子・[[古田重広|重広]]の処刑日と同じ日の慶長20年︵1615年︶12月27日に、江戸下谷の開禅寺で[[速水守久]]の子・出来丸と共に処刑された。

文禄3年︵[[1594年]]︶の[[伏見城]]普請を分担{{sfn|高柳|松平|1981|p=62}}。当時、1万石の知行{{sfn|高柳|松平|1981|p=62}}。

[[慶長]]3年（[[1598年]]）、秀吉の死に際して遺物金子十五枚。慶長4年（[[1599年]]）、[[豊臣秀頼]]に伺候して、詰衆二番之組の筆頭<ref>{{Citation |和書|last=|first=|editor=参謀本部 |year =1911| title =日本戦史. 関原役文書|publisher =元真社|url={{NDLDC|771070/13}} 国立国会図書館デジタルコレクション}}</ref>として側近となった。


ところが、同年9月7日に[[重陽]]の賀のために大坂城へ登城した[[徳川家康]]に対して、[[五奉行]]の1人である[[増田長盛]]が家康暗殺計画事件があると密告。すでに金沢に帰国していた前田利長が首謀者で、[[浅野長政]]︵息子・[[浅野幸長|幸長]]の室が利家の娘︶・[[土方雄久]]・治長が語らって彼らの手で城内で家康を暗殺する企てがあるとした<ref>{{Citation|和書|last=笠谷|first=和比古|author-link=笠谷和比古|title= 関ヶ原合戦と大坂の陣 |year=2007|series=戦争の日本史, 17|publisher=吉川弘文館|pages=23-24|isbn=9784642063272}}</ref>。家康は身辺の警備を厳重にして祝賀を乗り切ると、大坂城西の丸に入り天守閣を造営して、自らが秀頼に並ぶ存在であることを誇示した。また、謀議者の摘発に乗り出し、10月2日治長は罪を問われて[[流罪]]とされ[[下総国]]の[[結城秀康]]のもとに預けられた{{sfn|高柳|松平|1981|p=62}}{{sfn|笠谷|2007|p=24}}。雄久も同罪として[[常陸国]]水戸の[[佐竹義宣 (右京大夫)|佐竹義宣]]のもとに預けられた<ref>史料綜覧11編913冊207頁.</ref>。

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慶長5年︵[[1600年]]︶7月24日、家康は雄久と治長に引見して罪をゆるした<ref>史料綜覧11編913冊236頁.</ref>。[[関ヶ原の戦い|関ヶ原の役]]では東軍に与して参戦して、本戦では先鋒である[[福島正則]]隊に属した。﹃関原軍記大成﹄によれば、宇喜多隊の鉄砲頭・香地七郎右衛門を打ち取る武功を挙げたという。戦後は家康の命で﹁[[豊臣氏|豊臣家]]への敵意なし﹂という家康の[[書簡]]をもって[[大坂城]]の豊臣家への[[使者]]を務めたのち、[[江戸]]には戻らずそのまま[[大坂]]に残った。

=== 大坂の役、和睦に尽力 ===
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慶長19年︵[[1614年]]︶6月22日、[[片桐且元]]の弟である[[片桐貞隆]]とともに、家康の口添えで5,000石を秀頼より加増された。その返礼のために貞隆と、家康のいる[[駿府]]、次いで[[江戸]]の[[征夷大将軍|将軍]]・[[徳川秀忠]]を訪ねた<ref>大日本史料12編14冊220頁.</ref>。

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同年に豊臣氏の[[家老]]であった片桐且元が追放されると、豊臣家を主導する立場となる。その後、豊臣家内部では主戦派が主流となり、各地から[[浪人]]を召し抱えて[[大坂の陣#大坂冬の陣|大坂冬の陣]]に至る。治長は渡辺糺とともに鬮取奉行となって豊臣方の中心の一人として籠城戦を指揮した<ref>{{Citation |和書| last =徳富| first =猪一郎 |author-link=| year =1946| series=近世日本国民史|volume=第12|title =家康時代 中巻 大阪役己篇|publisher =民友社|url={{NDLDC|1223807/165}} 国立国会図書館デジタルコレクション|pages=290-291}}</ref>。


徳川方から和睦が持ちかけられると、12月8日から12日、[[織田長益|織田有楽斎]]とともに治長は徳川方の[[本多正純]]および[[後藤光次]]との交渉を行った<ref>大日本史料12編16冊777頁, 820頁.</ref>。淀殿が江戸に人質に行くこと、豊臣家の浪人衆への俸禄のため加増すること、大坂城本丸のみを残して二丸三丸を壊すことなどの双方の提案をまとめて和議を成立をさせると、有楽斎と治長は和睦の保証として人質を出すことになり、治長は次男[[大野治安|治安]]︵弥七郎︶を家康に差し出している{{efn|治安は戦後に処刑された。}}<ref>大日本史料12編16冊898頁, 12編17冊15頁, 12編17冊39頁.</ref>。

しかし城内では和睦に反対する意見も多かった。和睦後の4月9日夜、治長は大坂城の楼門で闇討ちに遭い、護衛2名が死傷し、本人も一刀を浴びて負傷した{{efn|『森家先代実録』『松原自休手録』『大坂御陣覚書』『長澤聞書』『土佐国編年紀事略』による<ref>大日本史料12編18冊108-110頁.</ref>。}}。これは主戦派の弟・治房による襲撃ともいわれるが、襲撃犯は治房の家臣・成田勘兵衛の手下（大和の小走組の今倉孫次郎）とされ、成田は襲撃に失敗すると自宅を放火して自殺し、逃げた手下は片桐邸や長宗我部邸に逃げ込み、一部は[[長宗我部盛親]]が捕らえたという{{efn|『松原自休手録』『大坂御陣覚書』『長澤聞書』『土佐国編年紀事略』による<ref>大日本史料12編18冊109-110頁.</ref>。}}{{sfn|大日本人名辞書刊行会|1926|p=615}}。


慶長20年︵[[1615年]]︶の[[大坂の陣#大坂夏の陣|大坂夏の陣]]では、出撃する諸将に対して初め治長は大坂城本丸の守備を預かった{{sfn|笠谷|2007|p=245}}。4月28日、[[紀伊]][[和歌山城]]の[[浅野長晟]]への攻撃を前にして、治長は家臣の北村善大夫、大野弥五左衛門を紀伊へ潜入させて一揆を扇動したが計画は失敗した<ref>大日本史料12編18冊397頁.</ref>。5月6日、誉田合戦では治長は後詰めを指揮して、膠着状態になった後、豊臣諸隊と撤収した{{sfn|笠谷|2007|p=256}}。7日、天王寺口の戦いでは、全軍の後詰として四天王寺北東の後方、毘沙門池の南に布陣した{{sfn|笠谷|2007|p=268}}。通説では秀頼の出馬を待っていたとされる。{{main|紀州一揆|道明寺の戦い|天王寺・岡山の戦い}}


総崩れとなって敗戦した後、茶臼山から撤退してきた治長は重傷を負っており、出馬して討死するという秀頼を[[速水守久]]が諌めたので、本丸へ引き上げて立て籠もることになった{{sfn|笠谷|2007|p=278}}。治長は最後の策として、独断で将軍・秀忠の娘で秀頼の[[正室]]であった[[千姫]]を脱出させ、彼女を使者として家康と秀忠に秀頼母子の助命を嘆願させようとした{{sfn|笠谷|2007|p=279}}<ref>大日本史料12編19冊980頁.</ref>。翌8日、徳川方では審議があり、家康は孫の願いにためらいを見せたが、秀忠は千姫が秀頼とともに自害しなかったことに激怒して、秀頼母子の助命嘆願を拒否した{{sfn|笠谷|2007|p=280}}。一縷の望みが絶たれると、治長らは秀頼とともに[[大坂城]]の山里曲輪で自害した。母親・大蔵卿局、長男の[[大野治徳|治徳]]も共に自害している。[[享年]]47。﹃春日社司祐範記﹄は﹁大野修理沙汰して最後に切腹なり。手前の覚悟比類なし﹂と記している{{sfn|小林|loc=p.161 , 小林計一郎﹁日本一の兵 真田幸村﹂}}。


== 人物 ==

== 人物 ==

* 茶の湯を[[古田重然]]（織部）に学んだ茶人でもある{{sfn|小林|loc=p.310 , 清水昇「真田一族関係人物事典」}}。

* 茶の湯を[[古田重然]]（織部）に学んだ茶人でもある{{sfn|小林|loc=p.310 , 清水昇「真田一族関係人物事典」}}。

* [[真田信繁]]とは秀吉の馬廻りを務める旧知の間柄で、大坂の陣で信繁を招いたのも治長だったとされる{{sfn|藤本|2016|p={{要ページ番号|date=2022年1月}}}}。信繁に兵力を預けて、指揮を執らせたことを考えると愚かな人物であったとは思えないと評価されている{{sfn|藤本|2016|p={{要ページ番号|date=2022年1月}}}}。治長が憎まれ役になったのも、家康に逆らった豊臣家の首脳であったため江戸時代に悪役に仕立てられたといえる{{sfn|藤本|2016|p={{要ページ番号|date=2022年1月}}}}。

* [[真田信繁]]とは秀吉の馬廻りを務める旧知の間柄で、大坂の陣で信繁を招いたのも治長だったとされる{{sfn|藤本}}。信繁に兵力を預けて、指揮を執らせた事を考えると愚かな人物であったとは思えないと評価されている{{sfn|藤本}}。治長が憎まれ役になったのも、家康に逆らった豊臣家の首脳であったため江戸時代に悪役に仕立てられたといえる{{sfn|藤本}}。


== 淀殿との密通の噂 ==

== 淀殿との密通 ==

[[江戸時代]]初期より、治長は[[淀殿]]と[[密通]]していたと噂があり、いくつかの書物に記されている。

当時より、治長は[[淀殿]]と[[密通]]していたと噂があった。

{{Cquote3|

{{Cquote3|

一、[[豊臣秀頼|おひろい]]様之御局をハ[[大蔵卿局|大蔵卿]]と之申し、其の子ニ'''大野修理'''と申し御前の能き人に候、おひろい様之[[淀殿|御袋]]様と共に密通之事に候か、共ニ相果てるべし之催にて候処に、彼の修理を[[宇喜多秀家|宇喜多]]が拘し置き候、共に相果てるに申し候、高野江逃れ候共に申し候よしに候、（後略）、|4=慶長四年十月一日付[[内藤元家]]宛[[内藤隆春]]書状}}

一、[[豊臣秀頼|おひろい]]様之御局をハ[[大蔵卿局|大蔵卿]]と之申し、其の子ニ'''大野修理'''と申し御前の能き人に候、おひろい様之[[淀殿|御袋]]様と共に密通之事に候か、共ニ相果てるべし之催にて候処に、彼の修理を[[宇喜多秀家|宇喜多]]が拘し置き候、共に相果てるに申し候、高野江逃れ候共に申し候よしに候、（後略）、|4=慶長四年十月一日付[[内藤元家]]宛[[内藤隆春]]書状}}

同様の記述は『[[多聞院日記]]』や[[姜沆]]による『看羊録』にもある。江戸時代の『明良洪範』では秀頼は秀吉の実子ではなく治長と淀殿の子と記している。


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== 登場する作品 ==

似たような噂の記述は﹃[[多聞院日記]]﹄にもあり、あながち虚言とも言い難いが、噂話に尾ひれが付いたような記述がある書物が少なくなく、[[姜沆]]による﹃看羊録﹄では、秀吉の遺命によって家康が淀殿を娶ろうとしたが、治長の子を宿していた淀殿が拒否したとまで書いている{{efn|ただし、﹃看羊録﹄は家康による朝鮮出兵の再開を明言するなど、奇妙な噂話が多く収録されており、話の出所には疑問符が付く。そういった噂が当時あった程度の信憑性しかない。}}。江戸時代の﹃明良洪範﹄では、秀頼は秀吉の実子ではなく治長と淀殿の子と記しているが、同様に淀殿は[[歌舞伎]][[役者]]の[[名古屋山三郎]]という美男を寵愛して不義を働いていたとも書いており、[[桑田忠親]]はこれらの風説は﹁悪口を書けば書くほど歓迎された江戸時代﹂<ref>{{Citation |和書|last=桑田|first=忠親|editor=|chapter=淀君|year =1979|title=戦国の女性|volumes=第7|series=桑田忠親著作集|publisher=秋田書店|page=281}}{{ASIN|B000J8BBR4}}</ref>の劇作者によるものに過ぎず、﹁人口に膾炙した﹂と書いている<ref>{{Citation |和書|last=桑田|first=忠親|author-link=桑田忠親|year =1985|title=淀君|series=人物叢書 新装版|publisher=吉川弘文館|isbn=4642050043|page=164}}</ref>。<!--{{see also|淀殿#人物#不義の噂について}}-->

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== 関連書籍 ==

<!-- 参照されていない -->

* 中西豪「真説 大野治長」『歴史群像』128号、2014年12月号（学研パブリッシング、2014年）

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== 関連作品 ==

<!--[[Wikipedia:関連作品]]より「記事の対象が、大きな役割を担っているわけではない作品」を追加しないで下さい。基本は主役・準主役までです。製作者から発信されている扱いやストーリーにおける役割の大きさによっては、主要レギュラー、キーパーソンや主人公のパートナーやライバル・主要な仇であり登場回数の多い作品。あるいは記事主題人物の一般イメージに大きな影響のあったと見做されている作品になります。-->

;映画

* 『[[真田風雲録]]』（1963年、東映）演：[[佐藤慶]]

* 『[[真田幸村の謀略]]』（1979年、東映） - 演：[[戸浦六宏]]

* 『[[茶々 天涯の貴妃]]』（2007年、東映） - 演：[[近藤公園]]

* 『[[真田十勇士 (マキノノゾミ)#映画|真田十勇士]]』（2016年、松竹） - 演：[[奥田達士]]

;テレビドラマ

;テレビドラマ

* [[大河ドラマ]]（NHK）

* 『[[風神の門]]』（1980年、NHK）演：[[伊丹十三]]

* 『[[おんな太閤記]]』（1981年、NHK[[大河ドラマ]]）演：[[坂東正之助]]

** 『[[おんな太閤記]]』（1981年）演：[[坂東正之助]]

* 『[[徳川家康 (NHK大河ドラマ)|徳川家康]]』（1983年、NHK大河ドラマ）演：[[谷隼人]]

** 『[[徳川家康 (NHK大河ドラマ)|徳川家康]]』（1983年）演：[[谷隼人]]

* 『[[真田太平記 (テレビドラマ)|真田太平記]]』（1985年、NHK[[大河ドラマ#新大型時代劇|新大型時代劇]]）演：[[細川俊之]]

** 『[[独眼竜政宗 (NHK大河ドラマ)|独眼竜政宗]]』（1987年）演：[[榎木孝明]]

* 『[[独眼竜政宗 (NHK大河ドラマ)|独眼竜政宗]]』（1987年、NHK大河ドラマ）演：[[榎木孝明]]

** 『[[春日局 (NHK大河ドラマ)|春日局]]』（1989年）演：[[大和田獏]]

* 『[[春日局 (NHK大河ドラマ)|春日局]]』（1989年、NHK大河ドラマ）演：[[大和田獏]]

** 『[[葵 徳川三代]]』（2000年）演：[[保阪尚希]]

* 『[[葵 徳川三代]]』（2000年、NHK大河ドラマ）演：[[保阪尚希]]

** 『[[武蔵 MUSASHI]]』（2003年）演：[[近藤正臣]]

* 『[[武蔵 MUSASHI]]』（2003年、NHK大河ドラマ）演：[[近藤正臣]]

** 『[[江〜姫たちの戦国〜]]』（2011年）演：[[武田真治]]

* 『[[江〜姫たちの戦国〜]]』（2011年、NHK大河ドラマ）演：[[武田真治]]

** 『[[真田丸 (NHK大河ドラマ)|真田丸]]』（2016年）演：[[今井朋彦]]

* 『[[真田丸 (NHK大河ドラマ)|真田丸]]』（2016年、NHK大河ドラマ）演：[[今井朋彦]]

* 『[[真田太平記 (テレビドラマ)|真田太平記]]』（NHK [[大河ドラマ#新大型時代劇|新大型時代劇]]、1985年）演：[[細川俊之]]

* 『[[どうする家康]]』（2023年、NHK大河ドラマ）演：[[玉山鉄二]]


== 脚注 ==

== 脚注 ==

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<references />

=== 注釈 ===

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=== 出典 ===

{{reflist|2}}


==参考文献==

== 参考文献 ==
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* {{Cite book|和書|author = [[小林計一郎]] 編 |year = 2015 |title = 決定版 真田幸村と真田一族のすべて |publisher = KADOKAWA |ref = {{SfnRef|小林}}}}

* {{Citation |和書|last=|first=|editor=大日本人名辞書刊行会|year =1926|volume=上|title =大日本人名辞書|publisher =大日本人名辞書刊行会|url={{NDLDC|1879491/313}} 国立国会図書館デジタルコレクション|chapter=大野治長|page=615}}
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* {{Cite journal |和書|author = 中西豪 |title = 真説 大野治長 |date = 2014 |journal = 歴史群像 |publisher = 学研パブリッシング |volume = |issue = 128号 }}

* {{Citation |和書|editor1-last=阿部|editor1-first=猛|editor2-last=西村|editor2-first=圭子|editor1-link=阿部猛|year=1990|edition=コンパクト|title =戦国人名事典|publisher=新人物往来社|isbn=4404017529|ref=sen|page=189}}

* {{Cite journal |和書|author = 藤本正行 |authorlink = 藤本正行 |title = 真田丸ノート |date = 2016 |journal = [[中世城郭研究]] |publisher = 中世城郭研究会|volume = |issue = 30号 |ref = {{SfnRef|藤本}}}}

* {{Citation |和書| last1=高柳|first1=光寿 | last2=松平 | first2=年一 |year =1981| title =戦国人名辞典|publisher =吉川弘文館|page=62}}
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* {{Citation|和書|editor = [[小林計一郎]] |year = 2015 |title = 決定版 真田幸村と真田一族のすべて |publisher = [[KADOKAWA]] |ref = {{SfnRef|小林}}|isbn=9784046011428}}
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* {{Cite journal|和書|author = 藤本正行|authorlink = 藤本正行 |title = 真田丸ノート |date = 2016 |journal = [[中世城郭研究]] |publisher = [[中世城郭研究会]]|volume = |issue = 30号 |ref = {{SfnRef|藤本}}}}


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== 関連項目 ==
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{{DEFAULTSORT:おおの はるなか}}

* [[紀州一揆]]
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[[Category:戦国武将]]

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[[Category:尾張国の人物]]

== 外部リンク ==
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[[Category:大坂の役の人物]]

* [http://www.pref.kyoto.jp/select200/historical02.html 京都の自然200選 大野城趾(大野神社)]

[[Category:切腹した人物]]

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{{デフォルトソート:おおの はるなか}}

[[Category:織豊政権の大名]]

[[Category:織豊政権の大名]]

[[Category:1560年代生]]

[[Category:江戸時代の武士]]
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[[Category:丹後国の人物]]
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[[Category:切腹した人物]]
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[[Category:1569年生]]

[[Category:1615年没]]

[[Category:1615年没]]

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ギリシャ文字: Ά ά Έ έ Ή ή Ί ί Ό ό Ύ ύ Ώ ώ   Α α Β β Γ γ Δ δ   Ε ε Ζ ζ Η η Θ θ   Ι ι Κ κ Λ λ Μ μ   Ν ν Ξ ξ Ο ο Π π   Ρ ρ Σ σ ς Τ τ Υ υ   Φ φ Χ χ Ψ ψ Ω ω   {{Polytonic|}}
キリル文字: А а Б б В в Г г   Ґ ґ Ѓ ѓ Д д Ђ ђ   Е е Ё ё Є є Ж ж   З з Ѕ ѕ И и І і   Ї ї Й й Ј ј К к   Ќ ќ Л л Љ љ М м   Н н Њ њ О о П п   Р р С с Т т Ћ ћ   У у Ў ў Ф ф Х х   Ц ц Ч ч Џ џ Ш ш   Щ щ Ъ ъ Ы ы Ь ь   Э э Ю ю Я я   ́
国際音声記号: t̪ d̪ ʈ ɖ ɟ ɡ ɢ ʡ ʔ   ɸ β θ ð ʃ ʒ ɕ ʑ ʂ ʐ ç ʝ ɣ χ ʁ ħ ʕ ʜ ʢ ɦ   ɱ ɳ ɲ ŋ ɴ   ʋ ɹ ɻ ɰ   ʙ ⱱ ʀ ɾ ɽ   ɫ ɬ ɮ ɺ ɭ ʎ ʟ   ɥ ʍ ɧ   ʼ   ɓ ɗ ʄ ɠ ʛ   ʘ ǀ ǃ ǂ ǁ   ɨ ʉ ɯ   ɪ ʏ ʊ   ø ɘ ɵ ɤ   ə ɚ   ɛ œ ɜ ɝ ɞ ʌ ɔ   æ   ɐ ɶ ɑ ɒ   ʰ ʱ ʷ ʲ ˠ ˤ ⁿ ˡ   ˈ ˌ ː ˑ ̪   {{IPA|}}

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