池田勝徳

池田 勝徳︵いけだ かつのり、1944年 - ︶は、日本の社会学者、作家・評論家。

来歴

1944年京都府に生まれ、1963年府立福知山高校卒業。当時は浪人での受験が多かったため、気軽に美術クラブに所属し、上京して受験年度の夏季講習に参加して、自己の才能・実力に落胆するとともに、そこで見聞きした受験生や浪人生からの﹁売れない画家﹂の悲惨な生活が、強烈で恐怖︵美術という特殊性もあろうが︶に覚え、急遽、他の途を選択することにした。美大受験とともに、日程的に受験可能な最低六大学をと探して、学費なども8割程度の法政大学を受験した。そして入学後知ったのが、そこは学生運動の拠点の一つであり、マル系の著名な学者︵ゼミの本田喜代治教授もその一人︶の多い大学ということに加えて、何より聞いたことのない新しい学問であった唯物論や弁証法等に夢中になった。しかし次第に学生運動が変貌、凶暴化していく中で︵晩年は教授自身も葛藤の︶、視点の異なるアメリカ社会学の重要性を教授され認識した。﹃ヒューマン・グループ﹄などを翻訳し、近在でいち早くアメリカ社会学に強い関心をみせていた日本大学大学院を紹介、勧められ、斎藤正二名誉教授を指導教授に、それまでの抽象的、哲学的な思考から、実証科学としての社会学への転向を図ることにした。高度経済成長後の人口増加や大学教育の大衆化で設立されたり、昨今のＩＴ化や実用化の中で短大、専門学校等を改称した大学とは異なり、当時は大学、まして100年もの長い歴史を持つ大学となると極めて少なく、そこには内部優先などの悪しき不文律があって、外部の者の就職は極めて難しかった。が、幸い博士課程単位修了と同時に奉職できた。本命の受験をせずに終わった後悔も、また誤った過信や自尊心から約10年間の学費、生活費の殆んどを﹁奨学金と学習塾の経営﹂で調達した自負心も止揚できていなかったが、奉職によりそれら全てを昇華しえた。特に在職中は自由な視点、展開による積極的なM.シーマン教授の紹介、批判が評価され、1988年～1989年には教授の招きで公費でカリフォルニア大学ロサンゼルス校︵UCLA)に、2004年～2005年はサバティカル制度により北京大学などへの留学もできた。また在職中は日本ペンクラブの会員として、数多くの学会誌への執筆や書籍を出版。特に﹁疎外、医療、福祉、ボランティア﹂のテーマで、何度も、長年に渡って、科学研究補助金による研究や文部省の出版助成金での出版の他、新たに﹁医療小説﹂のジャンルを提唱して﹃禁断の手﹄などを出版。またその他方で、日本学術会議協力学術研究団体・﹁日本教育福祉学会﹂創設での副代表、理事や日本大学社会学会理事、政令指定都市・相模原市の社会福祉審議会や高齢者福祉協議会の委員長・会長を歴任。2014年定年による大学退任後は、現在も出版社の顧問︵聴取・文責　木下︶。

主要 ==== 著書、共編著

●﹃疎外文献目録︵和・欧︶﹄桜楓社　1974年

●﹃勤労者における疎外の実証的研究﹄︵1981年度科研費による実績報告書︶日本大学

●﹃疎外論﹄ 多賀出版、1982年︵文部省の出版助成金による出版︶

●﹁死に直面した老人の社会的位置と消極的な医療に関する社会的意識について︵89－90年度科研費実績報告書︶﹂日本大学

●﹁末期疾患者への高度医療の適用と介護・ケアについての社会意識︵93年度科研費実績報告書︶﹂日本大学

●﹃21世紀高齢社会とボランティア活動﹄ ミネルヴァ書房 2004年︵文部省の出版助成金による出版︶

●﹃新時代の現代社会学﹄福村出版　2014年

●﹃社会学的アプローチ : 社会の諸相を把握する﹄ 新泉社、2005年

●﹃疎外論へのアプローチ﹄ ミネルヴァ書房、1991年

●﹃現代社会学の射程﹄ 日本評論社、2012年

●﹃社会学への道標﹄ 福村出版、2001年

●﹃老いのセクソロジー‥医療小説﹄京極司、青山社、1994年

●﹃禁断の手 : 医療小説﹄ 人間と歴史社、1986年

●﹃日本の創造力﹄ NHK出版 1993年

●﹃事典 近代日本の先駆者﹄ 日外アソーシェーツ　1995年

●﹃改訂版 わかりやすい自分史の手引き﹄翔雲社　2019年

●﹃丹波国・綾部藩︵山裏組︶池田城の一族・クランヒストリー﹄翔雲社　2022年

訳書

●﹃疎外の研究﹄M.シーマン、いなほ書房　1983年

●﹃疎外の意味について﹄M.シーマン、大学教育社、1977年

●﹃社会構造へのアプローチ﹄P.M.ブラウ、八千代出版、1982年

論文

●﹁高齢化社会における家族の変動と実態 (高齢化社会の実態調査とその対応策(共同研究)﹂﹃政経研究﹄︵15‐1︶1981年

●﹁21世紀の介護・ケア意識について‐日本とアメリカおよび中国の実態﹂﹃桜文論叢﹄︵56︶2003年

●﹁疎外についての一考察﹂﹃ソシオロジ﹄︵21‐3︶ 1976年

●﹁E.フロムの人間観と疎外﹂﹃社会学論叢﹄(55) 1972年

●﹁M.シーマンの疎外概念とその問題点﹂﹃社会学論叢﹄︵65︶1975年

●﹁疎外の分析方法と若干の問題‐M.シーマンを中心として﹂﹃日本大学人文科学研究所 研究紀要﹄︵19︶1977年

●﹁労働疎外についての意識研究‐M.シーマンの質問紙を用いて‐﹂﹃社会学評論﹄︵28‐4︶1978年

●﹁マルクス主義からの﹁疎外﹂と﹁自由﹂の一考察﹂﹃社会学論叢﹄︵52︶1971年

●﹁ホワイト・カラーの疎外意識﹂﹃社会学論叢﹄︵74︶1979年

●﹁社会調査における選択志向の安定性について﹂　﹃政経研究﹄︵9-2︶ 1982年

●﹁医療・医療技術の適用に対する日米の意識とその対応﹂﹃社会学論叢﹄︵108︶1990年

●﹁介護、ケア意識とその対応としてのボランティア活動﹂﹃桜文論叢﹄︵54︶

脚注