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'''認知言語学'''は、[[人間]]の[[認知]]活動の一部としての[[言語]]を通して、人間と[[文化]]の本質を探究する[[言語学]]の一分野。認知意味論ともいう。
認知言語学は、生成言語学の統語論中心主義への反省から、カリフォルニア大学のレイコフらによって70年代に提唱された。生成言語学が無視したメタファーやレトリックなどの言語現象を、認知心理学のプロトタイプ理論によって読み解き、さらにその言語現象が生成文法のような機械的なメカニズムに起因するのでなく、人間の現象学的・民俗的な身体感覚に起因するとして体系的な記述を試みた。
現代言語学・哲学における意味論の伝統を独創的に発展させた認知言語学は、狭隘な客観主義的言語モデルの限界を指摘し、人間心理や身体・空間感覚に即した言語観に、現代思想的特色が見られる。
今後、認知科学の諸部門との理論・実証にわたる協調の成果が期待されるとともに、語学・コミュニケーション教育などへの応用も注目されるが、生成言語学側からは、﹁言語学ではなく脳科学﹂﹁哲学と言語学の混同﹂﹁客観性がなく、主観的で曖昧な記述に終始している﹂という批判も強い。 この両派の論争の背後には、言語学を近代科学として捉えるのか、或いは現代哲学の下に補足しようとするのか、の態度の違いがあり、必ずしも決定的な差異となっていないと思われる。 |
2003年11月8日 (土) 15:19時点における版
認知言語学は、人間の認知活動の一部としての言語を通して、人間と文化の本質を探究する言語学の一分野。認知意味論ともいう。 認知言語学は、生成言語学の統語論中心主義への反省から、カリフォルニア大学のレイコフらによって70年代に提唱された。生成言語学が無視したメタファーやレトリックなどの言語現象を、認知心理学のプロトタイプ理論によって読み解き、さらにその言語現象が生成文法のような機械的なメカニズムに起因するのでなく、人間の現象学的・民俗的な身体感覚に起因するとして体系的な記述を試みた。 現代言語学・哲学における意味論の伝統を独創的に発展させた認知言語学は、狭隘な客観主義的言語モデルの限界を指摘し、人間心理や身体・空間感覚に即した言語観に、現代思想的特色が見られる。 今後、認知科学の諸部門との理論・実証にわたる協調の成果が期待されるとともに、語学・コミュニケーション教育などへの応用も注目されるが、生成言語学側からは、﹁言語学ではなく脳科学﹂﹁哲学と言語学の混同﹂﹁客観性がなく、主観的で曖昧な記述に終始している﹂という批判も強い。 この両派の論争の背後には、言語学を近代科学として捉えるのか、或いは現代哲学の下に補足しようとするのか、の態度の違いがあり、必ずしも決定的な差異となっていないと思われる。