大項目主義と小項目主義
(小項目から転送)
大項目主義︵だいこうもくしゅぎ︶と小項目主義︵しょうこうもくしゅぎ︶とは、百科事典における、項目の排列とその構成の形式である。それぞれ大項目式、小項目式とも呼ばれる[1]。
概要[編集]
大項目主義は大きな︵上位の︶主題を見出し語として[2][3]、関連する事柄もその見出し語の下に包括的・系統的に解説した[1][2][3]、論文形式[1][2][4][5]のもので、それに対して、小さな主題の一つ一つを見出し語としたものが小項目主義である[6]。全ての事典が厳密にこの2種に分類されるわけではなく、実際には両者の中間的なものや折衷的なもの[7]︵中項目主義、折衷主義、折衷式、併用式︶もある。大項目主義による百科事典の例として初期の﹃ブリタニカ百科事典﹄が挙げられる[2]が、そのような本格的な大項目主義のものは日本にはなく[1]、大中小折衷のものが多い[1][8][5]。また、百科事典の歴史をみると、大項目主義から次第に小項目主義へと移っていく傾向がみられる[9]。両者の特徴[編集]
大項目主義による事典は、ある分野の知識を体系的に調べるのに便利な﹃読む事典﹄[1][2]であり、それゆえ児童用の百科事典、学習百科事典などに採用される[2]。論文形式であるため執筆者にとっては書きやすく[5]、編集者の主義主張が強く映し出される形式でもある[10]。しかし、読むのに時間がかかる[2]こと、充実した索引が必要となる[2][3][4][5]、などの欠点もある。 一方、小項目主義の事典は、索引に頼らずとも見出し語から調べることが容易[3]であり、素早く簡潔な事実を知ることができる[1]﹃引く事典﹄[1]である。小項目主義の短所としては、読者が体系的に把握しづらいため、関連項目との相互参照が必要となること[6][9]、項目間での記述の重複が多くなること[9]などがある。両者の境界[編集]
単純に項目数だけで大項目主義・小項目主義を定義することは難しい[1]が、佃実夫・稲村徹元編﹃辞典の辞典﹄では、大まかな目安として﹁5万項目﹂を両者の境界として挙げており[1]、彌吉光長﹃百科事典の整理学﹄も同じく﹁5万項目﹂としている[11]。﹃日本大百科全書﹄では、大項目主義を﹁数千から数万項目﹂、小項目主義を﹁十数万項目﹂としている[8]。一項目あたりの長さでは、大項目主義が短いものでも1ページ[1][5]から長いものでは40ページにも及ぶ[1]のに対し、小項目主義では30行前後ないし[1]それ以下である[5]。ブリタニカ百科事典[編集]
初期の﹃ブリタニカ百科事典﹄は大項目主義をとっていた[2]が、その第15版は﹁マクロペディア﹂︵大項目事典︶19巻と﹁マイクロペディア﹂︵小項目事典︶10巻、そして総論・手引きである﹁プロペディア﹂1巻からなる[12]。﹃ブリタニカ百科事典﹄の日本版である﹃ブリタニカ国際大百科事典﹄の第2版改訂︵1991年︶も、大項目事典20巻︵本文は縦2段組︶と小項目事典6巻︵横3段組︶から構成されている[13]。出典[編集]
(一)^ abcdefghijklm﹃辞典の辞典﹄、34頁。
(二)^ abcdefghi﹃最新図書館用語大辞典﹄、303頁。
(三)^ abcd﹃情報サービス概説﹄、183頁。
(四)^ ab﹃図書館情報学用語辞典﹄、143頁。
(五)^ abcdef﹃百科事典の整理学﹄、12頁。
(六)^ ab﹃最新図書館用語大辞典﹄、226頁。
(七)^ ﹃最新図書館用語大辞典﹄、328頁。
(八)^ ab﹃日本大百科全書﹄、19巻715頁。
(九)^ abc﹃図書館情報学用語辞典﹄、106頁。
(十)^ ﹃百科事典の整理学﹄、221頁。
(11)^ ﹃百科事典の整理学﹄、8頁。
(12)^ ブリタニカ・ジャパン - 1768 Encyclopedia Britannica Replica Set
(13)^ ﹃情報サービス概説﹄、185頁。
参考文献[編集]
- 佃実夫・稲村徹元編 『辞典の辞典』 文和書房、1975年。
- 図書館用語大辞典編集委員会 『最新図書館用語大辞典』 柏書房、2004年。ISBN 9784760124893
- 小田光宏編 『情報サービス概説』 日本図書館協会、1997年。ISBN 9784820497165
- 相賀徹夫編 『日本大百科全書』(19巻) 小学館、1988年。
- 日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編 『図書館情報学用語辞典』(第3版) 丸善、2007年。ISBN 9784621079287
- 彌吉光長 『百科事典の整理学』 竹内書店、1972年。