関連記事
元「男の娘AV女優」大島薫が語る性と女装 【前編】
大島薫が引退直後に激白 史上初「男の娘AV女優」の胸中【後編】
そもそも意識は男性です
──女装をはじめられたきっかけは? 大島 はじめて女装をしたのは15歳の時です。普段は男性の格好で学校に通って、週末だけ親の目を盗んで女装してました。 もともと﹁男の娘﹂とか﹁女装男子﹂というジャンルの2次元作品を見るのは好きでしたが、自分でする気はなかったんです。10年前は﹁男の娘﹂ブームもまだきてないし、若い子で女装してる人もまだいなくて、年配の方ばっかりだったから。2次元から興味を持った自分からすると2次元と現実とのクオリティの差にガックリしちゃって。 でもある時、じゃあ自分がやろうと思い立ってはじめました。 ──女性用の洋服やメイクは、ご自分で買われていたんですか? 大島 いえ、中学生の僕には服を買うお金も置き場所もなかったので、女装趣味の人が集まるインターネット上の掲示板で場所を提供してくれるっていう心優しいおじさまと知り合って、会いに行きました。衣装も貸してくれました。女装をさせるのが好きな方だったんですね。それも1対1で。 高校に入ってバイトでお金に余裕が出てきたらウィッグやメイク道具を買い揃えて、女性用の下着もつけてました。当時は、見よう見まねのメイクだったので何かしっくりこなくて、オカマっぽくなるっていうか。毎日お化粧をするようになってからコツが分かってきました。 若い女装男子が当時は貴重だったこともあり、写真をネットにアップすると、みんなワーキャー言ってくれました︵笑︶。でも、実際に女装して外に出て誰かに会うみたいなことは、怖くてできなかったです。1人で家でこっそりやる趣味だったので。 ──今現在、女装をしていない日もあるんですか? 大島 ﹁女装をしていない﹂という表現も難しいですね。例えば今、髪の毛は地毛なんですけど、普通の男性だったら長いウィッグをかぶった時点で女装になるじゃないですか? でも僕の場合はノーメイクでも髪型はこうなので。 最近は、男性物の服もあえて着る時もあります。そもそも意識は男性なので、﹁女性になりたい﹂とか、﹁今、自分は女性だ﹂というような感覚はまったくないんです。僕のは﹁女装﹂じゃない。もう装ってはいないから
──女装で特に苦労していることはありますか? 大島 お手洗いですかね……。どっちに行ってもビックリされるっていう︵笑︶。 見た目がこうだから、男子トイレだと特に﹁え?﹂って反応をよくされるので、どっちに入ろうか迷いましたね……。両方に入ってた時期もあったんですけど、今は男性の方に入ってます。 女子トイレに入りはじめたきっかけが、男子トイレに入ったら怒られたから︵笑︶。 手を洗ってたおじさんが、僕が入った瞬間に﹁コラ、女の子が入って来ちゃダメだぞ!﹂って言ってきて。﹁へ?﹂と思って、﹁違うんですよ!﹂って弁解するその声も高いから、これはややこしいなと思って。 自分の性自認が男性ですから、女子トイレに入るのは、どうしても後ろめたい気持ちになってしまって。やっぱり自然な方に入るのがいいのかなって。 ──女装していて良かったなというエピソードは? 大島 女装についてだけで言うのであれば……生きやすくなったことですかね。 女装をはじめてから肉体的に男性と関係を持つこともあったんですけど、自分はいわゆる男性として男性を好きなゲイなんだろうか、と悩んでいたこともありました。 ゲイビデオに出ても、﹁なんで髪の毛を長くするの?﹂とか、﹁どうして高い声でしゃべるの?﹂とか聞かれるんですが、﹁別にそうなりたいわけじゃないんだよなあ﹂と。 その後、女性になりたい男性、いわゆるニューハーフ業界に身を置くこともあったんですけど、その時は﹁なんで女性ホルモンを打たないの?﹂とか﹁タマ抜いちゃったほうがもっと女の子らしくなれるよ﹂と言われて、﹁いや、それがしたいわけでもないしなあ﹂という。 どっちでも生きづらい自分っていうのがいて、結局自分は何がしたいのかなって思った時に﹁ああ、女装がしたいんだ﹂って。でも、今は考えがもっと深くなっていって、自分の中では今はもう﹁女装﹂でもないかなって。 僕はよくネットに上半身を脱いだ写真をアップするんですけど、それって自分が男であることを押し出してるわけじゃないですか? 今はブラもつけてないし、ボクサーパンツを履いてるんですよ。 女装って﹁女を装う﹂って書くじゃないですか? そういう意味では、もう装ってはないです。自分が着たいものを手にとっていたらたまたま女物だったってだけの話で。﹃めぞん一刻﹄の五代くんみたいな人が好き︵笑︶
──ご自分の性認識である﹁男性﹂をより強く感じる時はありますか? 大島 ﹁男脳﹂だなって思うことはありますね。どうしても結論を求めちゃうというか。理論的に考えるし、感情をあんまり優先しないところがあって、男同士で飲みに行ったりとかすると﹁あ、やっぱり男なんだ﹂って言われることが結構あります︵笑︶。 ──男性にも魅力を感じるようになったきっかけは? 大島 これまでも肉体的な関係はありましたけど、最近は恋愛感情も感じられるようになりました。でも、女性とはお付き合いしたことあるんですけど、実は男性と付き合ったことはないんです。 やはり男性とすぐに付き合うというのはなかなかできなくて、女性だと力ずくでなにかされるってことは多分ないですが、男性だとそれができてしまうので、変な人について行きたくないというのもあり、飛び越えるハードルの差は感じます。 僕、男性だとちょっと弱い人が好きなんです。﹁俺様!﹂みたいな人じゃなくて、情けない人が頑張ってる姿みたいなのに、すごくキュンとくるものがあって。﹃めぞん一刻﹄の主人公の五代くんみたいな人が好きですね︵笑︶。 ──母性本能を感じる? 大島 母性というより、兄貴肌なんですかね。 ──これまでお付き合いされた女性は大島さんのそのままを受け入れていたんでしょうか? 大島 女装しながら付き合っていたのは、いままで1人だけです。ちょっとレズっ気のある子でした。それまでは男性の格好でお付き合いしていましたが、趣味で女装しているというのはみんな知ってはいました。もちろん中には嫌がる子もいて、概ね認めてはいるけど﹁私の前ではやめてね﹂って。 ──踏み込んだ質問ですが、女性・男性とのそれぞれとの初体験は? 大島 男性の方が早かったです。15歳の時にさっきもお話しした女物の服をくれたおじさまにそのまま……︵笑︶。女性の方は16歳の時で、彼女でした。 ──女性だと、どのような方に魅力を感じますか? 大島 自分が着たい服がどうしても女物になっちゃうので、それが似合う体型をしていることだったり、メイクしてる姿とか、顔立ちも自分の理想像なので、女性はみんな可愛く見えますね。性格的なことで言えば、おおらかな人がいいです。 ──やはり、女性側の気持ちもよくわかるんでしょうか? 大島 僕自身、女性の気持ちが完全にわかるかと言われれば、例えばメイクについての煩わしさとか理解できる部分はありますけど、やっぱり根は男性なので本質では違うなって思います。 ──大島さんの体感として﹁女装﹂に対して今と昔では世間の反応って変わりましたか? 大島 そんなには変わらないかもしれません。﹁実は男の娘なんですよ﹂ってバラしたりすると、﹁へぇ、そうなんだ。じゃあどっちが好きなの?﹂とか、それは10年前でも一緒の反応されると思うんですよね。他人からしたら自分とは関係ないことだし、よくわからない生き物だから、存在はハッキリさせたいけれども、別にそこまで興味もないっていう。時代によってというのはあまり感じません。 それよりも、自分に嘘をつかないことの方が大事で、女性になりたいわけでもないのにウケを狙って﹁そうなの女になりたいの〜﹂みたいなことをオネエ口調でいうっていうのは違うんじゃないかなってのは思いますね。男性が純粋に女装してるんだって誇示するためには、もう全部脱ぐしかないかなって。
──そもそもなぜAVに出演しようと思われたのでしょうか? 大島 ネットに引退文を出して﹁これから芸能活動をやって行きます﹂って宣言した時に、﹁有名になるためのステップアップにAVを使ったんだろう﹂というような批判をネットで目にしました。 けど、決してそういうことではなくて、AVへの出演は﹁大島薫﹂というアイコンを表現するために自然なアプローチだったと思っています。 女装するきっかけになった漫画とか同人イラストの2次元の﹁男の娘﹂が、そもそも﹁エロ﹂方面だったこともあり、﹁可愛い顔立ちにオチンチンがついてる﹂というそのギャップに魅力を感じました。 けれど、3次元で探してもそんな人はいないし、必然的に﹁じゃあ自分でやろう!﹂と、ニューハーフでもなく、紛れもない﹁男の娘﹂として表現したくてAV業界に入りました。 テレビでニューハーフタレントの方が﹁そんなこと言っても実は男なんでしょ〜?﹂とかって、もう完全に工事が済んでる人でもそういうイジられ方をする。このまま知名度をあげても、そういうイジられ方をするのならば、男性そのものが純粋に女装をしているんだって誇示するためには、もう全部脱ぐしかないかなって。 ネットの評価だと僕がパイオニアみたいに書かれてますけど、﹁男の娘﹂という言葉すらない時からもう﹁ニューハーフもの﹂というジャンルはありましたし、そういった創作物もたくさんありました。だから僕が一番最初っていうことでもないんですけどね。 ──ただ、大島さんの登場で、﹁女装男子﹂というジャンルの知名度が上がって、よりポップで身近なものになりましたよね。 大島 唯一、僕が切り開いたことがあるとしたら、大手のAVメーカーさんと専属契約を結んだ﹁男性﹂というのは史上初だったこと。ニューハーフの専属女優さんはいらっしゃったんですけど。 ﹁AV女優﹂と﹁AV男優﹂という職業にははっきり区別がついていて、事務所に所属して作品にもメイン出演者として映って、ギャラ的にも一定のものをもらってる人が﹁女優﹂というのは業界の共通認識としてあるので、僕が女性の引き立て役としての﹁男優﹂を名乗るのも違いましたし。自分のAVでヌいたことがないんです
──﹁大島薫のアイコン化﹂という野望は、AVへの出演で達成できましたか? 大島 アイコン化に関しては全然まだです。それはAV業界でちょっと有名になったところで達成されるものではないので、正直やり残したことはすごくあります。 2次元の男の娘をリアルに再現する﹁理想の男の娘の実現﹂とか……。正直言うと僕、自分のAVでヌいたことがないんです︵笑︶。 ──ほぉ! 大島 理想とする存在になれてない証拠だと思うんです、それが。 ──理想とする存在になれていたら、自分のAVでヌけるものなんですか? 大島 そうだと思います。じゃないと自分がやってきたことが間違ってたってことになると思うんで。少なくとも僕には再現できないものだったんだな〜っていうのが1つの答えです。 もともと﹁ニューハーフ﹂や﹁女装男子﹂のようなマニアックなジャンルっていうのは、売れないジャンルでした。制作費も抑えられて、それこそ女性の女優さんが出てる単体作品に比べると何分の1っていうお金しかかけてもらえなかったんですね。 そうやって経費を削減した作品は、当然クオリティが下がるじゃないですか? 一部のマニアは、それしかないから、それを買うことになるんです。一応ある一定の需要はあるから一定数は売れるため、作品もつくられ続ける。でもそんなに売れもしないから制作費が削られるっていう悪循環ができあがっちゃってて。 あとは、出てる側のニューハーフさんや女装男子も、意識が低い人が多い。僕がすごく意識が高いというわけではないんですけど、見る側からの意見としてそうでした。 ニューハーフさんって最終的には女性になりたい人が多いんですよね。つまり、男性器をとってしまう。だから胸もあって男性器も付いてる姿って本人にとっては完成品じゃなく通過点にしか過ぎない。風俗店に勤めてる人も多いので、その宣伝だったり、手術費用を稼ぐためのバイト感覚の方もいて。 女装男子もそこは一緒で、女性になりたい人もいれば、男性に戻っていく人も多いわけで、どっちにしても女装している姿は通過点なんですよね。有名になりたいって子もあまりいないから、普通のAV女優さんに比べるとどうしても意識が低くなるのかなって。 ──女装が目的であった大島さんだからこそ、その完成度を追求されていたのですね。ちなみに﹁大島薫﹂というのは芸名ですか? 大島 芸名です。ゲイビデオに出ていた時は、名前もなくて。最初の撮影で、とりあえず名前がなきゃいけないから﹁薫﹂って監督さんがパッとつけてくれて。次に学園モノを撮った時に先生に呼び出されるシチュエーションで、先生と生徒だから苗字を呼ばなきゃいけなかったので、﹁じゃあ大島で﹂って言われて……で、﹁大島薫﹂が誕生しました︵笑︶。美術部の先生からもらった言葉
──ファンの方から﹁大島さんを見て好きな服を着ていいんだと思った﹂と言われたエピソードをブログで書かれていた通り、大島さんに救わている方は多いと思います。では、大島さんご自身が誰かに救われたというエピソードはありますか? 大島 救われたとはちょっと違うかもしれませんが、人生の中で印象的な言葉っていうのがあって、僕は高校時代、美術部に所属していて、芸大を目指して日本画をやってたんですね。そこでお世話になった顧問の先生から言われたことです。 コンクールに出展するからには賞を獲りたかったので、何か壮大なテーマの絵は描けないかと自分なりに考えて、その時は﹁滝から川が流れていて、そこに白い着物を着た女性がバーンって立ってて、その女性から血が流れている﹂という絵を描いたんです。 それを先生に見せに行ったら、﹁これは何の絵だ?﹂って聞かれて、﹁滝が流れているのが時間で、この流れている血が環境破壊をあらわしてるんです!﹂みたいなことを自慢げに答えたら、﹁もういい!もういい!﹂と呆れられて︵笑︶。 ﹁お前がどんなに壮大なテーマを掲げても、お前の手を離れた時点で、作品は観る人のものだから、その作品の意味をいくら考えても観る人が思ったことが正解なんだ﹂と言われたんです。その時はよく理解できなかったんですが、その言葉がずっと心に残ってて、それから作品をつくっていく時は、そういう意識が常にありました。 ブログの引退文にも書いた﹁僕を見て、様々なことを思う方がいます。良いことも、悪いことも。大切なのは、僕が正しく理解されることではなく、僕を見て、誰かが何かを考えるというプロセスです。﹂というのもそういうことですね。先生からいただいた言葉が何かしら自分の生き方のヒントになっています。 不思議なものですけど、AV女優時代、年配の記者さんに取材を受けたことがありまして。普通だいたい記者さんっていろいろ調べてくるんですけど、その方は﹁そもそも君は何なんだね?﹂っていう感じから入って、最初は﹁大丈夫かなこの人﹂と思ってたんですが、その記者さんは僕の半生を全部聞いてから﹁君はいま自分の人生を使って作品づくりをしてるんだね﹂とおっしゃって。そういうことかもしれないなと思いましたね。﹁男の娘AV女優﹂という肩書きを甘んじて受け止めてた
──﹁男の娘AV女優﹂という肩書きに対して思うところは? 大島 AVで﹁ニューハーフ﹂と言えば胸もオチンチンもある人なので、区別しなきゃいけなかったんです。だから、﹁男の娘AV女優﹂という肩書きを甘んじて受け止めてたっていう部分は多少あります。 最初は﹁男の娘﹂に憧れてはじめたことですけど、今は、﹁本来の自分﹂という意味で、﹁男﹂とか﹁女﹂ではなく﹁大島薫﹂になれてるかなっていう気はしてます。 ──AVに出演して得たものと、失ったものはありますか? 大島 得たものという表現に当てはまるかわからないですけど、もっと欲が出てきました。 AVでの表現も、もっとやりたいことがたくさんありましたし……自分の脚本で作品をつくったりしたことはあったんですけど、監督として、他の男の娘を自分が撮るっていうこともやってみたかったです。 技術的なことを言えば、それなりにプロとしてやってきたつもりではありますが、長年トップを張ってきた人に比べれば﹁女優力﹂もなければ、逆に女性と絡む時もトップ男優さんのようにうまく男性役をこなすっていうこともできてないし、もっともっとやりたいことはあったんですけど……。 でも、﹁大島薫のアイコン化﹂というのが最大の目的なので、それと天秤にかけた時に、AVは辞めざるを得なかったというのはあります。 そういう欲も、AVをやってみないと生まれなかったものです。﹁AVってこんな感じだろう﹂と語ってるうちは絶対に得られなかったものだし、今後の自分の糧になるんじゃないかなって思ってます。 失ったものは……特にないですね︵笑︶。友達にも普通に言ってますしね。実はジェンダーのことについて話すのはあんまり好きじゃない
──ニューハーフ、トランスジェンダー、クロスドレッサー︵異性装者︶など、さまざまなカテゴリーがありますが、大島さんは以前﹁どれもしっくりこない﹂とおっしゃっていました。やはり自分をカテゴライズされたくないという思いはありますか? 大島 そういったカテゴライズについては自分の中でも考えるところはあります。でも実はジェンダーのことについて話すのはあんまり好きじゃないんですよ。 それこそ﹁みんなに訴えかけよう!﹂なんて全くなくて……それも僕を見て他人が判断すればいいことだと思うので。 トランスジェンダーといっても、MtX︵男性の体に生まれ、Xジェンダーの認識がある人︶、FtX︵女性の体に生まれ、Xジェンダーの認識がある人︶とかいろいろありますからね。 ※Xジェンダー…出生時に割り当てられた女性・男性の性別のいずれでもないという性別の立場をとる人々 カテゴリーができることによって救われた人もたくさんいると思うんです。それこそ一昔前みたいに同性愛を苦にして自殺する人も減ったでしょうし、誰にも言えず引きこもって1人で悩むこともネットの発達で少しは解消されたと思います。でも、カテゴリーを分けることによって、無理矢理そこに自分をあてはめようと努力しちゃうんじゃないかなって思うところもあります。﹁自分らしくありのままに生きる﹂、﹁他人はその人自身で捉えてあげる﹂
──既存のカテゴリーに当てはめて考えると、より窮屈になる? 大島 僕がゲイじゃないかニューハーフじゃないかと悩んでた時も、既存のカテゴリーにしか自分を当てはめて考えられなくなっていたと思います。でも、﹁ゲイ﹂、﹁レズビアン﹂、﹁ニューハーフ﹂とか、そこに﹁MtF﹂︵女性化を目指す男性︶だったり﹁FtM﹂︵男性化を目指す女性︶だったりという性同一性障害のカテゴリーも加わってきたり……。 ずっと思ってたことがあるんですけど、四つ角があるから四角、五つになったら五角形というように角をたくさんつくっていくと、どんどん丸になるんですよね。細分化されたカテゴリーもそんなイメージで、垣根がなくなってだんだんフラットになっていくんじゃないかって。それで、のちのち﹁どんなカテゴリーかじゃなくて、結局その人自身がどうかってことだよね﹂と気づく。その過程段階に入ってる時代なのかなって。 ──言葉がイメージを縛っているんでしょうか? ﹁ゲイだから髪の毛短くするんだ﹂とか﹁ひげを生やすんだ﹂とか﹁オネエ口調で喋るんだ﹂ではなくて、﹁あの人はゲイで、かつオネエ口調で話すタイプの人だ﹂という感じに解釈すべきなんじゃないかなと思います。 昔の﹁女装子﹂だって本来なら女装癖なだけなのに、﹁女装するんだから綺麗にならなきゃ! じゃあ女性ホルモン打たなきゃ﹂と考えるのはあまりに短絡的というか、そこは別にみんなと一緒にしなくていいじゃんって。﹁自分らしくありのままに生きる﹂、﹁他人はその人自身で捉えてあげる﹂っていう世の中になればいいなと思いますね。 僕を見てくれた答えがそうなってくれるといいなという気持ちではいます。それでも僕を﹁男だ﹂﹁女だ﹂﹁オカマだ﹂というふうに区別したい人がいるなら、それはそれでいいんじゃないかな。 なにかしら自分が発信していけば、それを受け取った人が何か考える。それが批判的な意見であっても拒否反応であっても、そこに何かが生まれることがその人生に影響を与えることになると思うので。否定的な発言からまた意見が生まれるわけだし、こうしてくださいって人に強制するものではないと思います。遠い島国のおじいちゃんまで知ってるような存在になりたい
──一方で、﹁男の娘﹂といったカテゴライズによってそれが一般化している節もありますが、今の世の中は﹁性﹂に関して寛容になっていると思いますか? 大島 昔に比べてSEXとかの話を公の場で語れる人が増えたというのは生活していて思うことですが、マスメディアは逆で、昔は深夜番組とかだとお茶の間にも女性の胸が普通に放送されていたのに、今は一切禁止になってますよね。すごくスポンサー至上主義というか。しょうがないことなんですけどね。 じゃあ刺激を求めてる人はどこに行くかといったら、ネット番組やネットメディアになっちゃうわけで、そこのズレがなんとかならないのかなっていうのはすごく思います。 ──マスメディアも奔放になるべきだと? 大島 やり方はいろいろあると思います。もちろん子供が帰ってきてTVでおっぱい出てたら、それは問題なわけで、もちろん配慮すべき点ですが、全チャンネルを有料化にしちゃうとかして、みんなが好きな番組を視聴できる選択肢を持てるようにしたらいいんじゃないかなとか……。それは僕が考えることじゃないですけどね。 ──かなり踏み込んだ質問に答えていただきありがとうございます。それでは最後に、今後の展望についてお聞かせください。 大島 タレント活動に力を入れていきたいです。もともとお笑い芸人の方と舞台に立ってトークとかもしていたので、これからどんどんやっていきたい。あと、意図していなかったのですが、なんだかんだコラムなどの執筆のお仕事も来ていて、のちに本も出せれば嬉しいです。オリジナルTシャツもつくったりしてます。︵大島薫通販特設所 http://kaoruoshima.theshop.jp/︶ テレビでもラジオでもなんでもいいですけど、自分の名前を広めることはやっていきたいです。できるなら遠い島国のおじいちゃんまで知ってるような存在になりたいですね。関連リンク
大島薫
純粋な男性でありながら、男の娘として大手AVメーカーと専属契約をした元AV女優。
現在はタレントとして活動中。
ヴィレッジヴァンガード、シンデレラバスト専用下着ブランド「feast by GOMI HAYAKAWA」ではモデルとしても抜擢。
GAP原宿フラッグシップ店の「OUT IN JAPAN」プロジェクトにおいて、多くの著名人と並び、男の娘として大々的に紹介された。
作家としての執筆活動も熱心に行っている。
0件のコメント