改訂新版 世界大百科事典 「リンナンコスキ」の意味・わかりやすい解説
リンナンコスキ
Johannes Linnankoski
生没年:1869-1913
フィンランドの作家。本名ペルトネンVihtori Peltonen。師範学校修了後,作家を志望した。聖書のカインとアベルに取材して善悪をテーマにした観念的戯曲︽永遠の闘争︾︵1903︶で文壇に登場した。次いで,青年いかだ師の奔放な恋愛と道徳的反省を描く︽真紅の花の歌︾︵1905︶がフィンランド版ドン・フアンと呼ばれ,この国で小説として最初のベストセラーとなった。この作品は社会的論議を呼び,その美文は文壇に影響を与えた。またフィンランド新ロマン主義の代表作品として評価され,19ヵ国語に訳された。しかし,今日では,社会啓蒙家としての自己反省を含む︽逃亡者たち︾︵1908︶が,人間的成長の苦悩を広く自然に描写した作品として評価が高く,この国の代表的古典となっている。国粋主義者としてスウェーデン系氏姓のフィンランド語化を唱え,約10万人のスウェーデン系住民がこれに呼応した。ほかに︽サムソンとデリラ︾︽イェフタの娘︾︵ともに1911︶,︽ヘイッキラ農家の争い︾︵1905︶などがある。
執筆者‥高橋 静男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報