テレビ番組の主題歌としては、人気ドラマの主題歌などのほか、『鉄腕アトム』(1963~)から『ちびまる子ちゃん』(1990~)に至るまでのアニメ主題歌が圧倒的な人気を博している。1970年代の日本は経済基盤も整い、「もはや戦後ではない」といわれたが、松本零士(れいじ)(1938―2023)原作のテレビ・アニメ『宇宙戦艦ヤマト』(1974~)の主題歌は、日本人の使命感、ロマンを歌って戦中派の共感をも得た。しかし、ひたすら経済成長を目ざす風潮のなかで、主題歌の傾向はしだいに身近な日常生活や愛情、友情といった人間関係を歌うものが多くを占めるようになった。
1976年にロッキード事件が起きたが、同じ年に子ども向けテレビ番組「ひらけ!ポンキッキ」からコミカルなナンセンスソング『およげ!たいやきくん』の爆発的ヒット(シングル盤の売上げ400万枚超)が生まれたのは、社会の閉塞(へいそく)感を脱け出したい庶民の願望の表れであったともいえる。バブル経済崩壊後の1999年、NHKテレビの幼児向け番組「おかあさんといっしょ」の主題歌『だんご3兄弟』が、語呂(ごろ)あわせのような歌詞をタンゴのリズムにのせて、大人気を得たのも同じような例といえよう。
一方、1990年代以降、経済重視の結果がもたらした自然破壊への反省や、世界的な文化遺産を取り上げるテレビドキュメンタリー番組も増え、とくにTBSドキュメンタリー「神々の詩(うた)」のテーマ曲(姫神(ひめかみ)作曲)は静かなブームをよんだ。NHKドキュメンタリー番組「プロジェクトX」に提供された、中島みゆき(1952― )作詞・作曲によるテーマ曲『地上の星』も記録的なロングセラーとなった。
[小川乃倫子]
『浅井英雄著『映画音楽――ヒット主題歌の変遷』(1984・誠文堂新光社)』▽『遠藤憲昭編『流行歌と映画でみる昭和時代』(1986・国書刊行会)』▽『松尾羊一著『テレビは何をしてきたか――ブラウン管のなかの戦後風俗史』(1987・中央経済社)』▽『保田武宏著『銀座はやり歌 1925~1993』(1994・平凡社)』▽『200CD映画音楽編纂委員会編『200CD 映画音楽スコア・サントラを聴く』(1999・立風書房)』