デジタル大辞泉
「原形質」の意味・読み・例文・類語
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げんけい‐しつ【原形質】
(一)〘 名詞 〙
(二)① 生物の細胞の主要な部分を構成し、生命活動の本体とみなされる物質。外側は細胞膜につつまれ、大部分の生物では細胞質と核とに分化している。無色、半透明のコロイド状で、ゲルとゾルの可逆的変化を示す。︹医語類聚︵1872︶︺
(三)② その物が本来有している形質。
(一)[初出の実例]﹁原形質 右に歴挙したる三面延長形容等より運動性に至る諸形質の如く、物のある以上は必ず無くて叶はざるものを称して、原形質と云ふ﹂(出典‥教育学︵1882︶︿伊沢修二﹀二)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
原形質 (げんけいしつ)
protoplasm
生命に必要な代謝機能を営む,細胞のいわゆる生きた部分で,細胞質cytoplasmと核質nucleoplasmからなる。原形質は,細胞膜によって細胞外環境から隔離されるとはいえ,能動輸送によってエネルギー物質の取込み,代謝物質の排出を行い,恒常性を保ちながら,活発な生命活動を営んでいる。この用語が広く使われてきた背景には,当初の光学顕微鏡による観察からは,細胞の内容が詳しくわからず,比較的均質であると考えられていたという事情があった。その後,原形質は核膜によって囲まれた核質とその外側にある細胞質とに分けられ,さらに,電子顕微鏡による細胞像は,種々の細胞小器官やその他の膜構造・繊維構造などによって高度の組織化がなされており,絶えずダイナミックな変化が起こっていることを明らかにした。したがって,原形質の当初の意味は薄れ,単なる存在の場所の意味だけになっている。原形質の一般的な化学組成は水︵75~85%︶,タンパク質︵10~20%︶,脂質︵2~3%︶,RNA︵0.7%︶,DNA︵0.4%︶,その他の有機物︵0.4%︶,無機物︵1.5%︶である。物理的特性として,弾性・粘性があり,膨潤しやすく,流動複屈折を示すことがある。細胞の周縁に沿った原形質外質は粘性の高い原形質ゲル,内質は外質に比べて粘性の低い原形質ゾル状態にある。弾性・粘性は細胞内微細構造と関連があり,細胞内膜系や細胞骨格構造︵微細繊維・中間繊維・微小管など︶の分布によって影響される。とくに原形質流動は微細繊維の走行によって左右される。
生命の起源を探ることは,原形質形成の起源を探ることであり,A.I.オパーリンのコアセルベートやS.W.フォックスのプロテイノイドミクロスフェアはそれを説明しようとする仮説的モデルで,いずれも代謝活性に必要な触媒作用,生活物質の集積と成長などを行うものである。一方,最近の細胞工学的研究は,異なる種の細胞間で原形質の融合を行わせて雑種細胞をつくり,それを継代培養する技術,あるいは,核移植,クローン遺伝子の顕微注入などの技術を使って,遺伝情報発現の制御機構の解明を進めている。
→細胞
執筆者‥腰原 英利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
原形質
げんけいしつ
protoplasma
動物、植物の細胞を構成している物質のうち、生きている部分をいう。この語は、1840年にチェコの動物生理学者プルキンエが動物細胞について、1846年にドイツの植物学者H・V・モールが植物細胞について、その内容物をプロトプラズマprotoplasmaとよんだものの和訳である。しかし原形質を構成する各部分を分離して行う研究が進むにつれて、それらをまとめた原形質という表現の意義は少なくなり、原形質流動、原形質分離などを除いては、使用頻度が減りつつある。細胞の生きている部分︵原形質︶以外の部分は後形質といい、代表的なものは植物の細胞壁、色素、貯蔵物質、分泌顆粒(かりゅう)などである。原形質は水を分散媒とする多分散系で、分子分散系︵無機塩、低分子化合物の溶液︶、コロイド系︵高分子化合物︶、粗大分散系︵細胞小器官、不溶性物質︶の3系を含んでいる。原形質の85%は水であり、その他の化学組成はタンパク質約10%、核酸約1%、脂質約2%、無機物約1.5%などである。普通、細胞の周辺部の原形質は粘性の高い原形質ゲルで構成されているが、原形質ゾルとの間に可逆的な転換をする。このゾル‐ゲル転換はアメーバ運動、エンドサイトーシス︵細胞膜の流動による外界からの物質の取り込み作用の総称︶などの細胞運動に重要な働きをすると考えられ、これらの細胞運動や原形質流動にはアクトミオシン系の繊維構造が関係している。原形質ゲルは光学顕微鏡では透明、均質に見える。細胞内部の原形質はゾルで顆粒が多い。原形質の弾性、粘弾性、粘性、浸透圧、コロイド浸透圧などは細胞の物理的特性に重要な意味をもつ。
﹇大岡 宏﹈
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原形質【げんけいしつ】
細胞から細胞膜を除いた核質と細胞質を指す。水を分散媒としタンパク質,脂質,核酸,炭水化物,無機イオンなどが分散したコロイド系で,粘性,弾性を示す。真核生物では,ミトコンドリアなどの細胞小器官を含み,原形質流動がみられることが多い。
→関連項目液胞|後形質|細胞膜|発生
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原形質
げんけいしつ
protoplasm
細胞機能の基礎となっている物質で,あらゆる生活活動を行うので生活物質とも呼ばれる。大部分の生物では,原形質は細胞質と核とに分化している。原形質の一般的な化学組成は水 85~90%,蛋白質 (核蛋白質を含む) 7~10%,脂質1~1.5%,その他の有機物1~1.5%,無機イオン 1.5%である。原形質は水を分散媒とする多分散系で,ミトコンドリア,プラスチド,ゴルジ体などの粗大粒子が透明な形質内に分散する粗大分散系と,これらの基礎をつくるコロイド分散系ならびに分子分散系の3系を含む。原形質は粘性や弾性を有し,膨潤あるいは凝固しやすく,ゾル状態とゲル状態の間を転換する。また構造粘性,流動複屈折を示すことがある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の原形質の言及
【核】より
…細胞内にあって遺伝情報をになう最も基本的な構造。菌類や原生動物などの下等生物から高等動植物に至る真核細胞では,すべての[染色体]が核とよばれる球状構造の特殊な原形質(核質)の中にある。核は二重の膜構造(核膜)によって他の原形質(細胞質)から隔離された原形質成分であるが,細胞質への通路として核膜には多数の小孔(核膜孔)があいている。…
【細胞】より
…生命の基本的単位。細胞は細胞膜によって包まれた[原形質]で,原則として自己増殖ができ,生体の構造単位でもある。細胞についての最初の記載は,R.フックによってなされた(1665)とされているが,それはコルク組織の死んだ細胞のあとの細胞壁で囲まれた小さな部屋cellを観察したものであった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」