デジタル大辞泉
「国際収支」の意味・読み・例文・類語
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こくさい‐しゅうし‥シウシ 【国際収支】
〘 名詞 〙 一国が国際取引に基づき一定期間(通常一年)に生じた財・サービス・資本の流れを貨幣の受け払いのかたちでとらえたもの。経常収支(貿易収支・貿易外収支 )と資本収支に大別される。[初出の実例]「第一次世界戦争中、わが国の国際収支は」(出典:湛山回想(1951)〈石橋湛山〉筆舌の歩み)
出典 精選版 日本国語大辞典 精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
国際収支 こくさいしゅうし balance of payments
一定期間内(1年、半年、1か月など)に自国の居住者と外国の居住者との間で行われたすべての経済取引を体系的に記録したもの。
[土屋六郎・前田拓生 2016年3月18日]
第 二 次 世 界 大 戦 前 は 、 そ の 形 式 や 作 成 方 法 が 国 に よ っ て 違 っ て い た た め 、 国 際 比 較 上 不 便 だ っ た の で 、 戦 後 は 国 際 通 貨 基 金 ︵ I M F ︶ が 統 一 基 準 と し て ﹁ 国 際 収 支 マ ニ ュ ア ル ﹂ B a l a n c e o f P a y m e n t s M a n u a l を 公 表 し 、 各 国 は こ れ に 準 拠 し て つ く る よ う に な っ た 。 ﹁ マ ニ ュ ア ル ﹂ は 戦 後 制 定 さ れ て か ら 、 国 際 経 済 の 実 態 の 推 移 に あ わ せ て 改 訂 さ れ て き た 。 そ れ に よ る と 、 国 際 収 支 表 に は ﹁ 原 表 ﹂ と 、 そ れ を 組 み 替 え て つ く ら れ た ﹁ 国 内 発 表 形 式 ﹂ が あ る が 、 一 般 に 公 表 さ れ る の は 後 者 で あ る 。 し た が っ て 、 以 下 後 者 に 関 し て 解 説 す る 。 た だ し 、 日 本 で は 2 0 1 4 年 ︵ 平 成 26 ︶ 1 月 の 取 引 計 上 分 か ら 大 幅 な 見 直 し が 行 わ れ た た め 、 ま ず は 新 旧 統 計 の 相 違 点 に つ い て 簡 単 に 触 れ た 後 、 新 統 計 の 主 要 項 目 に つ い て み て い く こ と に す る 。
﹇ 土 屋 六 郎 ・ 前 田 拓 生 2 0 1 6 年 3 月 18 日 ﹈
旧 国 際 収 支 統 計 は 経 常 収 支 と 資 本 収 支 に 大 別 さ れ 、 そ れ に 外 貨 準 備 増 減 と 誤 差 脱 漏 が 加 わ る も の で あ っ た が 、 新 し い 国 際 収 支 統 計 で は 経 常 収 支 と 資 本 移 転 等 収 支 、 金 融 収 支 に 大 別 さ れ 、 そ れ に 誤 差 脱 漏 が 加 わ る 形 に な っ て い る 。 こ こ で 経 常 収 支 は 貿 易 ・ サ ー ビ ス 収 支 と 第 一 次 所 得 収 支 、 第 二 次 所 得 収 支 に 区 分 さ れ る が 、 第 一 次 所 得 収 支 は 旧 統 計 の 所 得 収 支 、 第 二 次 所 得 収 支 は 旧 統 計 の 経 常 移 転 収 支 か ら 名 称 変 更 し た も の で あ る 。 ま た 、 資 本 移 転 等 収 支 は 旧 統 計 の 資 本 収 支 に 統 合 さ れ て い た そ の 他 資 本 収 支 で あ る が 、 新 統 計 で は 大 項 目 に 変 更 さ れ て い る 。 そ し て 、 旧 資 本 収 支 ︵ そ の 他 資 本 収 支 を 除 く ︶ は 外 貨 準 備 増 減 と 統 合 さ れ て 金 融 収 支 と な っ た 。
﹇ 前 田 拓 生 2 0 1 6 年 3 月 18 日 ﹈
財貨やサービスなど実物取引の記録であり、次の項目に分類される。
[前田拓生 2016年3月18日]
( 1 ) 貿 易 収 支 こ こ で は 一 般 商 品 お よ び 非 貨 幣 用 金 の 輸 出 入 に 加 え て 、 旧 統 計 で は サ ー ビ ス 収 支 に 計 上 さ れ て い た 仲 介 貿 易 商 品 加 工 の 取 引 も 含 ま れ る 。
( 2 ) サ ー ビ ス 収 支 サ ー ビ ス は 無 形 財 な の で 、 商 品 ︵ 有 形 財 ︶ 貿 易 が ﹁ 見 え る 貿 易 ﹂ v i s i b l e t r a d e と い わ れ る の に 対 し 、 ﹁ 見 え な い 貿 易 ﹂ i n v i s i b l e t r a d e と も よ ば れ る 。 経 済 の 国 際 化 に 伴 い サ ー ビ ス に 関 す る 取 引 は 急 速 に 拡 大 し 、 内 容 も 多 様 化 し て い る 。 当 該 収 支 の 項 目 に は 輸 送 ︵ 海 運 お よ び 空 輸 ︶ 、 旅 行 、 そ の 他 サ ー ビ ス ︵ 委 託 加 工 サ ー ビ ス お よ び 維 持 修 理 サ ー ビ ス 、 建 設 、 保 険 ・ 年 金 サ ー ビ ス 、 金 融 サ ー ビ ス 、 知 的 財 産 権 等 使 用 料 、 通 信 ・ コ ン ピ ュ ー タ ・ 情 報 サ ー ビ ス 、 そ の 他 業 務 サ ー ビ ス 、 個 人 ・ 文 化 ・ 娯 楽 サ ー ビ ス 、 公 的 サ ー ビ ス 等 ︶ が あ り 、 そ れ ぞ れ に つ い て 資 金 の 受 払 い が 計 上 さ れ て い る 。 な お 、 旧 統 計 で 貿 易 収 支 に 計 上 さ れ て い た 委 託 加 工 サ ー ビ ス お よ び 維 持 修 理 サ ー ビ ス は 、 新 統 計 で サ ー ビ ス 収 支 に 計 上 替 え と な っ た 。
﹇ 前 田 拓 生 2 0 1 6 年 3 月 18 日 ﹈
生 産 過 程 に 関 連 し た 所 得 お よ び 財 産 所 得 で 、 雇 用 者 報 酬 と 投 資 収 益 、 そ の 他 第 一 次 所 得 で 構 成 さ れ る 。 雇 用 者 報 酬 に は 非 居 住 者 が 運 航 す る 船 舶 や 航 空 機 で 働 い て い る 居 住 者 乗 務 員 が 受 け 取 る 給 与 な ど 自 国 以 外 で 稼 い だ 報 酬 が あ り 、 投 資 収 益 に は 金 融 資 産 提 供 の 対 価 で あ る 配 当 金 や 利 子 等 が 計 上 さ れ る 。
﹇ 前 田 拓 生 2 0 1 6 年 3 月 18 日 ﹈
賠償や贈与のように対価を伴わない一方的取引のうち、相手国の経常移転となるものが計上される。具体的には食料、医療品、衣料などの無償資金援助、外国人労働者の本国送金などである。ここで「移転」とは当事者の一方が経済的価値のあるもの(財貨、サービス、金融資産、非金融非生産資産)を無償で相手方に提供する取引をいう。
[前田拓生 2016年3月18日]
こ こ で は 資 本 移 転 と 非 金 融 非 生 産 資 産 の 取 得 処 分 を 計 上 し て い る 。
( 1 ) 資 本 移 転 資 産 ︵ 現 金 、 在 庫 を 除 く ︶ の 所 有 権 移 転 を 伴 う 移 転 や 投 資 贈 与 、 債 務 免 除 を 計 上 す る 。
( 2 ) 非 金 融 非 生 産 資 産 の 取 得 処 分 天 然 資 源 お よ び リ ー ス 、 排 出 権 や 移 籍 金 等 の ラ イ セ ン ス 、 マ ー ケ テ ィ ン グ 資 産 ︵ 商 標 権 等 ︶ の 取 引 を 計 上 す る 。
﹇ 前 田 拓 生 2 0 1 6 年 3 月 18 日 ﹈
経常収支が実物取引の記録であるのに対し、金融収支は貨幣的資本の取引が記録される。また経常収支では、勘定は受取りと支払いに仕訳されたが、金融収支では資産(本邦資本)と負債(外国資本)に分かれる(外貨準備に関してはその性格上資産のみ)。資産・負債はストックの概念である。これをフローである経常取引の受取り・支払いベースにあわせるために、一定期間内における増減分だけを計上する。たとえば、本邦資本の対外投資が行われた場合には、商品輸入に対して代金が支払われたのと同様に資金が流出するので、支払側にその金額が記帳される。なお、国際収支統計および対外資産負債残高 において旧統計では証券投資、金融派生商品、その他投資を公的・銀行・その他の3部門に分類していたが、新統計では中央銀行・一般政府・預金取扱機関・その他金融機関・その他(一般事業法人、個人等)の5部門に細分化された。金融収支は直接投資および証券投資、金融派生商品、その他投資、外貨準備に区分される。
[前田拓生 2016年3月18日]
直接投資とは収益目的だけでなく、相手企業の経営支配をも目的とするもので、投下資本の形態に応じて、株式資本および収益の再投資、負債性資本に区分される。
[前田拓生 2016年3月18日]
こ こ で は 証 券 の 取 引 の う ち 、 直 接 投 資 ︵ 前 述 ︶ や 外 貨 準 備 ︵ 後 述 ︶ に 該 当 し な い も の が 計 上 さ れ る 。 取 引 に お い て 非 居 住 者 発 行 証 券 の 場 合 は 資 産 と し て 、 居 住 者 発 行 証 券 の 場 合 に は 負 債 と し て 計 上 す る 。 証 券 種 類 に 応 じ て 資 産 と 負 債 は 株 式 ・ 投 資 フ ァ ン ド 持 分 と 債 券 に 区 分 さ れ る 。 株 式 ・ 投 資 フ ァ ン ド 持 分 は 株 式 と 投 資 フ ァ ン ド 持 分 に 、 債 券 は 中 長 期 債 と 短 期 債 に 区 分 す る 。
﹇ 前 田 拓 生 2 0 1 6 年 3 月 18 日 ﹈
金 融 派 生 商 品 と は 、 ほ か の 金 融 商 品 や 指 数 、 商 品 に 連 動 す る 金 融 商 品 を い う 。 こ こ で は オ プ シ ョ ン の プ レ ミ ア ム ・ 売 買 差 損 益 お よ び 新 株 予 約 権 等 、 先 物 ・ 先 渡 取 引 の 売 買 差 損 益 、 通 貨 ス ワ ッ プ の 元 本 交 換 差 額 、 ス ワ ッ プ 取 引 の 金 利 ・ 配 当 金 ・ キ ャ ピ タ ル ・ ゲ イ ン 等 を 計 上 す る 。
﹇ 前 田 拓 生 2 0 1 6 年 3 月 18 日 ﹈
直 接 投 資 お よ び 証 券 投 資 、 金 融 派 生 商 品 ︵ そ れ ぞ れ 前 述 ︶ 、 外 貨 準 備 ︵ 後 述 ︶ の い ず れ に も 該 当 し な い 金 融 取 引 を 計 上 す る 。 こ こ で は 持 分 お よ び 現 ・ 預 金 、 貸 付 / 借 入 、 保 険 ・ 年 金 準 備 金 、 貿 易 信 用 ・ 前 払 、 そ の 他 資 産 / そ の 他 負 債 、 S D R ︵ 特 別 引 出 権 。 負 債 の み ︶ に 区 分 す る 。 な お 、 貸 付 / 借 入 お よ び 貿 易 信 用 ・ 前 払 、 そ の 他 資 産 / そ の 他 負 債 は 、 原 契 約 期 間 が 1 年 を 超 え る も の を 長 期 と し て 、 1 年 以 下 は 短 期 と し て 区 分 す る 。
﹇ 前 田 拓 生 2 0 1 6 年 3 月 18 日 ﹈
外貨準備とは通貨当局が為替(かわせ)相場の安定を図るための為替市場介入 を目的として、いつでも使用できる形で保有する資産をいう。具体的には当局が保有する貨幣用金、IMFのSDRやリザーブ・ポジション、外貨資産(現預金、有価証券)などである。ここでは外国為替特別会計や日本銀行が保有する資産で、外貨準備として保有されているものの増減を計上する。
[前田拓生 2016年3月18日]
国際収支は主として、その国の対外的な資金の受払い状況を明らかにする目的でつくられてきた。受取りが支払いよりも大きければ黒字、逆の場合は赤字である。では、黒字や赤字はどのようにして判定してきたかというと、第二次世界大戦後の一時期は外貨準備の変化に着目し、それが増加すれば黒字、減少すれば赤字である、と判定した。ちょうど家計の貯金が増えれば黒字、減れば赤字であるのと同じに考えた。ところが為替の自由化、金融の国際化などによって貯金に相当する取引が外貨準備増減だけではなくなり、民間金融機関の対外的な資金繰りも同じ機能をもつとされて範囲が拡大した。こうして通貨当局が保有する外貨準備の増減と、民間の為替銀行のもつ短期金融資産・負債の変化分を一括して金融勘定とし、その動向によって国際収支の総合的な状況をとらえる方法が採用された。しかし、この種の短期資金移動はきわめて活発となり、その目的も単に資金繰りだけではなく、金利差益や為替差益を目的とする取引が増大したことから、金融勘定で総合的収支尻(じり)を判定する方法は1996年(平成8)1月より廃止された。結局、国際収支のなかでは、経常収支や貿易・サービス収支の動向が重要性を増した。
[土屋六郎・前田拓生 2016年3月18日]
一 国 の 経 常 収 支 や 貿 易 収 支 の 不 均 衡 が 大 き く な る と 、 国 際 的 な 問 題 に な る 。 第 二 次 世 界 大 戦 後 、 日 本 の 貿 易 収 支 の 黒 字 が 巨 額 に な る と 、 ア メ リ カ を は じ め 貿 易 相 手 国 か ら は 不 正 な 競 争 を し て い る の で は な い か と 非 難 さ れ 、 し ば し ば 貿 易 摩 擦 を 引 き 起 こ し た 。 こ の よ う な 場 合 に は 、 収 支 を 調 整 す る こ と が 必 要 と な る が 、 そ れ に は 不 均 衡 の 原 因 を 究 明 し 、 そ れ に 応 じ た 対 策 を 講 じ な け れ ば な ら な い 。 貿 易 黒 字 の 原 因 が 国 際 競 争 力 が 強 す ぎ る こ と に あ る な ら ば 、 競 争 力 を 抑 え る 対 策 が 有 効 と な る 。 そ の 有 力 な 対 策 と し て 、 為 替 相 場 を 円 高 に 誘 導 さ せ る 方 法 が あ る 。 円 高 に な れ ば 、 一 般 に 輸 出 価 格 は 上 昇 す る の で 輸 出 は 抑 え ら れ 、 輸 入 価 格 は 下 落 す る の で 輸 入 は 増 え 、 貿 易 黒 字 は 減 少 す る 。 こ の よ う な 政 策 は 、 対 外 的 な 価 格 関 係 を 是 正 す る の が ね ら い で あ る の で 、 価 格 調 整 ︵ 支 出 転 換 ︶ 政 策 と い う 。 貿 易 黒 字 の 原 因 が 、 国 内 経 済 の 停 滞 に 基 づ く 場 合 も あ る 。 つ ま り 国 内 が 不 況 で あ る と 、 外 国 品 の 輸 入 は 伸 び ず 、 国 内 品 も 国 内 販 売 が 不 振 と な る た め 輸 出 へ 向 か う よ う に な り 、 貿 易 収 支 は 黒 字 傾 向 と な る 。 こ の 場 合 に は 、 金 融 ・ 財 政 政 策 に よ っ て 国 内 需 要 を 拡 大 さ せ る 対 策 が 必 要 と な る 。 こ の よ う に 内 需 を 調 整 す る こ と に よ っ て 、 輸 出 入 を 均 衡 に 導 く 政 策 を 需 要 ︵ 支 出 ︶ 調 整 政 策 と い う 。
﹇ 土 屋 六 郎 ・ 前 田 拓 生 2 0 1 6 年 3 月 18 日 ﹈
﹃ 東 京 銀 行 調 査 部 編 ﹃ 国 際 収 支 の 経 済 学 ﹄ ︵ 1 9 9 4 ・ 有 斐 閣 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 土 屋 六 郎 編 著 ﹃ 国 際 経 済 学 ﹄ ︵ 1 9 9 7 ・ 東 洋 経 済 新 報 社 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 菊 地 渉 ﹁ 国 際 収 支 関 連 統 計 の 見 直 し に つ い て ﹂ ︵ ﹃ フ ァ イ ナ ン ス ﹄ 平 成 25 年 11 月 号 所 収 ・ 2 0 1 3 ・ 財 務 省 ︶ ﹄
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) 日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
国際収支 (こくさいしゅうし)
目次 IMF方式国際収支表 経常勘定・資本勘定 各種の収支じり 各収支じりの意味 国際収支表の全面改訂
財 貨 ・ サ ー ビ ス , 資 本 な ど の 対 外 経 済 取 引 の 全 般 的 な 状 況 な い し は そ の 収 支 じ り , あ る い は そ れ ら を 総 括 的 に 記 録 し た 国 際 収 支 表 を 意 味 す る 。 財 貨 の 輸 出 入 の 状 況 を 記 録 す る も の に は ︿ 通 関 統 計 ﹀ ︿ 輸 出 信 用 状 接 受 高 ﹀ ︿ 輸 出 認 証 統 計 ﹀ ︿ 輸 入 承 認 届 出 統 計 ﹀ ︿ 大 手 13 商 社 輸 出 入 成 約 状 況 ﹀ な ど が あ る が ︵ ︿ 貿 易 統 計 ﹀ の 項 参 照 ︶ , 対 外 経 済 取 引 の 記 録 と し て 最 も 基 本 的 な も の が 国 際 収 支 表 で あ る 。
I M F 方 式 国 際 収 支 表
日 本 の 場 合 , 1 9 6 6 年 ま で は ︿ 外 国 為 替 統 計 ﹀ が 国 際 収 支 の 公 式 の 記 録 で あ っ た が , そ の 後 , 国 際 通 貨 基 金 ︵ I M F ︶ か ら 出 さ れ た ︽ 国 際 収 支 提 要 B a l a n c e o f P a y m e n t s M a n u a l ︾ に の っ と っ た ︿ I M F 方 式 国 際 収 支 表 ﹀ が 公 式 の 記 録 と な っ て い る 。 こ の 国 際 収 支 表 は , あ る 一 定 期 間 ︵ 最 小 単 位 1 ヵ 月 ︶ の 居 住 者 ︵ 国 籍 と か 国 境 に は 関 係 な く , 基 本 的 に は 自 国 に 経 済 活 動 の 本 拠 を 置 く 個 人 ・ 法 人 を 意 味 す る ︶ と 非 居 住 者 ︵ 自 国 企 業 の 海 外 支 店 , 事 業 所 , 出 張 所 , 自 国 に い る 外 国 の 軍 人 , 外 交 官 な ど を 含 む ︶ 間 の す べ て の 経 済 取 引 を 記 録 し た も の で あ る 。
国 際 収 支 表 は , 現 金 出 納 帳 の よ う な も の で あ り , 複 式 簿 記 の 原 則 に 従 っ て 記 録 さ れ , 非 居 住 者 か ら の 外 貨 の 受 取 り を 伴 う 取 引 は 貸 方 に , 非 居 住 者 へ の 外 貨 の 支 払 を 伴 う 取 引 は 借 方 に 記 録 さ れ る と と も に , 外 貨 そ の も の に つ い て 受 取 り が 借 方 , 支 払 が 貸 方 に 記 録 さ れ る 。 す な わ ち , 財 貨 ・ サ ー ビ ス お よ び 収 益 ︵ 運 輸 , 旅 行 , 投 資 収 益 な ど ︶ の 輸 出 な い し 受 取 り , 移 転 取 引 ︵ 送 金 , 賠 償 , 無 償 経 済 協 力 な ど ︶ の 受 取 り , 資 本 ︵ 直 接 投 資 , 借 款 , 証 券 投 資 , 貿 易 信 用 な ど ︶ の 流 入 は 貸 方 に 記 録 さ れ , 財 貨 ・ サ ー ビ ス お よ び 収 益 の 輸 入 な い し 支 払 , 移 転 取 引 の 支 払 , 資 本 の 流 出 は 借 方 に 記 録 さ れ , そ れ ら の 代 金 と し て 受 け 取 る か 支 払 う か し た 外 貨 に つ い て は 前 者 が 借 方 , 後 者 が 貸 方 に 記 録 さ れ る の で , 全 体 と し て は 貸 方 と 借 方 が 必 ず 一 致 す る よ う に な っ て い る 。 対 外 経 済 取 引 に は 契 約 か ら 決 済 ま で か な り の 時 間 が か か り , ど の 時 点 で 国 際 収 支 表 に 記 録 す る か と い う 問 題 が 生 じ る が , こ れ に つ い て は 発 生 主 義 を と っ て い る 。 財 貨 の 輸 出 入 に つ い て は 契 約 ベ ー ス で と ら え た り , 信 用 状 ベ ー ス ︵ 信 用 状 の 開 設 時 ︶ で と ら え た り す る こ と も 考 え ら れ る が , こ こ で は 所 有 権 の 移 転 の 日 を と っ て お り , 日 本 の 場 合 , 通 関 時 点 を 所 有 権 の 移 転 時 と ほ ぼ み な し て い る 。 資 本 取 引 に つ い て は 対 外 債 権 ・ 債 務 の 増 減 の あ っ た 日 を 記 録 時 点 と し て い る 。 計 上 価 格 に つ い て は ︿ 取 引 価 格 ﹀ で 計 上 す る こ と を 原 則 と し て お り , ま た 財 貨 の 輸 出 入 は F O B ︵ F O B - C I F ︶ 建 て で 記 録 さ れ る 。 な お 通 関 統 計 は 輸 入 に つ い て は C I F 建 て と な っ て い る の で 修 正 を 必 要 と す る 。 国 際 収 支 表 は ド ル 建 て あ る い は 円 建 て で 記 録 さ れ る が , 対 外 経 済 取 引 は さ ま ざ ま な 通 貨 建 て で 行 わ れ る の で , 今 日 の よ う な 変 動 為 替 相 場 制 の 場 合 , そ の 換 算 の 仕 方 も 問 題 と な る 。
経 常 勘 定 ・ 資 本 勘 定
I M F 方 式 の 国 際 収 支 表 は , ︿ 原 表 ﹀ と い わ れ る も の と ︿ 国 内 発 表 形 式 ﹀ と い わ れ る も の と 二 つ あ る 。 後 者 が よ り 一 般 的 な も の で あ り , そ れ に 従 っ て 説 明 す る と , 国 際 収 支 表 に 記 録 さ れ る 対 外 経 済 取 引 は , ︿ も の ﹀ の 流 れ を 示 す 経 常 勘 定 ︵ 国 民 所 得 の 増 減 に 影 響 す る の で 所 得 勘 定 と も い う ︶ と ︿ か ね ﹀ の 流 れ を 示 す 資 本 勘 定 に 分 け ら れ る 。 経 常 勘 定 は , 財 貨 の 輸 出 入 , サ ー ビ ス お よ び 収 益 の 受 取 り ・ 支 払 , 移 転 取 引 の 受 取 り ・ 支 払 か ら な る 。 資 本 勘 定 は , 長 期 資 本 勘 定 , 短 期 資 本 勘 定 , 金 融 勘 定 に 分 け ら れ る 。 長 期 資 本 の 資 産 ︵ 本 邦 資 本 ︶ は , 直 接 投 資 , 延 払 信 用 , 借 款 ︵ 円 借 款 , バ ン ク ・ ロ ー ン , バ イ ヤ ー ズ ・ ク レ ジ ッ ト な ど の 貿 易 信 用 , 外 国 為 替 銀 行 ︵ 為 銀 ︶ が 海 外 企 業 な ど に 貸 し 付 け る 中 ・ 長 期 現 地 貸 付 け 等 ︶ , 証 券 投 資 ︵ 株 式 や 当 初 契 約 の 満 期 日 が 1 年 を 超 え る 証 券 に 対 す る 投 資 , 円 建 外 債 の 発 行 等 ︶ な ど か ら な る 。 長 期 資 本 の 負 債 ︵ 外 国 資 本 ︶ は , 直 接 投 資 , 延 払 信 用 , 借 款 ︵ 使 途 が 決 め ら れ て い な い 借 入 れ を 示 す イ ン パ ク ト ・ ロ ー ン , タ イ ド ・ ロ ー ン 等 ︶ , 証 券 投 資 ︵ 現 先 取 引 を 除 く ︶ , 外 債 発 行 な ど か ら な る 。 短 期 資 本 は , 信 用 供 与 が 1 年 以 下 の シ ッ パ ー ズ ・ ユ ー ザ ン ス や BC ユ ー ザ ン ス な ど の 貿 易 信 用 , 当 初 の 契 約 の 満 期 日 が 1 年 以 下 の 証 券 投 資 ︵ 現 先 取 引 を 含 む ︶ , 交 互 計 算 じ り な ど か ら な る 。 金 融 勘 定 は 公 的 部 門 と 為 銀 部 門 に 分 か れ , 前 者 に は 大 蔵 省 ・ 日 本 銀 行 が 保 有 す る 短 期 対 外 資 産 ・ 負 債 が 含 ま れ , 後 者 に は 為 銀 の そ れ が 含 ま れ る 。 公 的 部 門 の 資 産 は 外 貨 準 備 ︵ 金 , 外 貨 , S D R , ゴ ー ル ド ・ ト ラ ン シ ュ か ら な る ︶ が 主 た る も の で あ り , 負 債 は 国 際 金 融 機 関 や 外 国 中 央 銀 行 か ら 日 銀 へ の 預 け 金 , 非 居 住 者 に よ る 政 府 短 期 証 券 ︵ 短 期 国 債 ︶ の 購 入 な ど か ら な る 。 為 銀 部 門 に つ い て は , 資 産 は 外 国 銀 行 へ の 外 貨 預 け 金 , 輸 出 手 形 の 買 取 り , 対 外 短 期 貸 付 け な ど か ら な り , 負 債 は 外 貨 の 短 期 借 入 れ , 非 居 住 者 の 円 預 け 金 な ど か ら な る 。 た だ し , こ れ ら の 内 訳 が す べ て 公 表 さ れ て い る わ け で は な い 。
各 種 の 収 支 じ り
国 際 収 支 は こ れ ら の 項 目 の 一 つ 一 つ の 量 が 問 題 に さ れ る こ と は ま れ で , 国 際 収 支 の 赤 字 ・ 黒 字 と い う よ う に , そ の 収 支 じ り の 不 均 衡 が 問 題 に さ れ る こ と が 多 い 。 こ の 場 合 , さ ま ざ ま な 対 外 経 済 取 引 の ど こ に 線 を 引 き , 線 の 上 に ど ん な 項 目 を 置 き , 線 の 下 に ど ん な 項 目 を 置 く か で , 国 際 収 支 の 赤 字 ・ 黒 字 の 大 き さ は 異 な っ て く る 。 各 種 の 取 引 の う ち , 財 貨 の 輸 出 入 だ け の 収 支 じ り を 貿 易 収 支 と 呼 び , サ ー ビ ス お よ び 収 益 の 受 取 り ・ 支 払 の 収 支 じ り を 貿 易 外 収 支 と 呼 ん で い る 。 経 常 勘 定 の と こ ろ で 線 を 引 き 貿 易 収 支 に 貿 易 外 収 支 , 移 転 収 支 を 加 え た も の が 経 常 収 支 で あ る 。 資 本 勘 定 の う ち , 長 期 資 本 の 流 入 ・ 流 出 の 収 支 が 長 期 資 本 収 支 と 呼 ば れ , こ れ と 経 常 収 支 を 加 え た も の が 基 礎 収 支 で あ る 。 短 期 資 本 に つ い て は , 民 間 非 金 融 部 門 の 短 期 資 本 の 流 入 ・ 流 出 の 収 支 が 短 期 資 本 収 支 と 呼 ば れ , 基 礎 収 支 に こ れ と 統 計 作 成 上 生 じ た 誤 差 脱 漏 を 加 え た も の が 総 合 収 支 で あ る 。 こ の 総 合 収 支 の 裏 側 と な る の が 金 融 勘 定 で あ り , 総 合 収 支 と 金 融 勘 定 を 加 え た も の は つ ね に バ ラ ン ス し て い る 。 金 融 勘 定 は 総 合 収 支 の 不 均 衡 が ど の よ う に フ ァ イ ナ ン ス さ れ た か を 示 し て い る 。
日 本 の 国 際 収 支 の 特 徴 と し て は , 国 際 収 支 全 体 の 動 向 を 大 き く 左 右 す る 貿 易 取 引 に つ い て は 輸 出 が 重 化 学 工 業 製 品 , 輸 入 が 原 料 ・ 燃 料 に 偏 っ て い る 。 し た が っ て , 日 本 と あ る 国 な い し あ る 地 域 と の 貿 易 収 支 は 継 続 的 に 赤 字 か 黒 字 を 示 す 傾 向 を も っ て い る 。 貿 易 外 収 支 に つ い て は , 日 本 で は 運 輸 , 旅 行 , 手 数 料 の 赤 字 が 大 き く , 恒 常 的 に 赤 字 と な っ て い る 。 移 転 収 支 も , 政 府 関 係 の 支 払 が 大 き く , つ ね に 赤 字 で あ る 。 長 期 資 本 収 支 に つ い て も , 本 邦 資 本 の 流 出 が 外 国 資 本 の 流 入 よ り も 大 き く , ほ と ん ど 赤 字 基 調 と な っ て い る 。
各 収 支 じ り の 意 味
国 際 収 支 の い く つ か の 収 支 じ り の う ち , 貿 易 収 支 の 大 き さ , な か ん ず く あ る 国 , あ る 地 域 間 と の 貿 易 収 支 の 不 均 衡 が し ば し ば 問 題 に さ れ る が , マ ク ロ 経 済 学 的 に み れ ば 貿 易 収 支 の 大 き さ 自 体 , ま し て や あ る 国 , あ る 地 域 間 と の そ の 大 き さ は , 問 題 と さ れ る べ き も の で は な い 。 た だ し ミ ク ロ 的 に み れ ば , あ る 製 品 の あ る 地 域 へ の 集 中 豪 雨 的 輸 出 は , そ の 地 域 の 一 部 産 業 の 失 業 を 増 大 さ せ か ね な い の で , 注 意 を 要 す る 。 日 本 の 経 済 政 策 が 失 業 の 輸 出 政 策 で あ る と か 近 隣 窮 乏 化 政 策 で あ る と か い わ れ る と き に 問 題 に さ れ る 収 支 じ り は 経 常 収 支 で あ る 。 ま た 発 展 途 上 国 で し ば し ば 問 題 と な る 累 積 債 務 問 題 と の 関 係 で 問 題 と な る の も 経 常 収 支 の 大 き さ で あ る 。 国 際 収 支 の 各 種 の 収 支 じ り の 大 幅 な 不 均 衡 は , 為 替 レ ー ト の 変 動 を 通 し て イ ン フ レ を 悪 化 さ せ た り , 失 業 に 影 響 を 与 え た り し て 国 内 経 済 を お び や か し た り , ス ム ー ズ な 対 外 取 引 を 不 可 能 に し た り , 国 際 金 融 の 安 定 と 発 展 を 妨 げ た り す る の で 避 け な け れ ば な ら な い が , 国 際 収 支 の 均 衡 ・ 不 均 衡 は , こ れ ら す べ て の 収 支 を 対 外 資 産 ・ 負 債 の ス ト ッ ク 量 と し て 示 す ︿ 対 外 資 産 負 債 残 高 表 ﹀ ︵ 国 際 貸 借 表 ︶ を も 考 慮 に 入 れ て , 全 体 的 に 検 討 し て 判 断 す る 必 要 が あ る 。
ち な み に , 国 際 貸 借 b a l a n c e o f i n t e r n a t i o n a l i n d e b t e d n e s s と 国 際 収 支 の 違 い は , 前 者 が 一 時 点 に お け る 一 国 の 対 外 債 権 ・ 債 務 の 現 在 高 と し て と ら え る の に 対 し , 後 者 は 一 定 期 間 に つ い て と ら え る も の で あ る 点 に あ る 。
執 筆 者 ‥ 須 田 美 矢 子
国 際 収 支 表 の 全 面 改 訂
1 9 9 6 年 1 月 か ら 国 際 収 支 表 の 記 載 方 法 が I M F の 改 訂 マ ニ ュ ア ル ︵ 1 9 9 3 ︶ に の っ と っ て 全 面 改 訂 さ れ た 。 改 訂 の お も な 内 容 は 以 下 の よ う で あ る 。 ︵ 1 ︶ 貿 易 外 収 支 を 廃 し , 輸 送 , 旅 行 , 金 融 ・ 通 信 な ど の サ ー ビ ス 分 野 の 取 引 を ︿ サ ー ビ ス 収 支 ﹀ と し て 独 立 さ せ , 財 の 動 き を 示 す 貿 易 収 支 と 合 わ せ て ︿ 貿 易 ・ サ ー ビ ス 収 支 ﹀ を 新 設 し た 。 ︵ 2 ︶ 従 来 の 貿 易 外 収 支 か ら サ ー ビ ス 収 支 を 除 い た 分 を ︿ 所 得 収 支 ﹀ と し , 海 外 投 資 の 収 益 状 況 を 見 え や す く し た 。 ︵ 3 ︶ 期 間 1 年 を も っ て 区 分 し て い た 長 期 資 本 収 支 , 短 期 資 本 収 支 を 廃 し ︿ 投 資 収 支 ﹀ に 一 本 化 し た 。 こ の た め 従 来 の 基 礎 収 支 と 総 合 収 支 は な く な っ た 。 ︵ 4 ︶ 従 来 の 円 ・ ド ル 両 建 て の 表 示 を 廃 し , 円 建 て で の み 発 表 さ れ る よ う に な っ た 。
執 筆 者 ‥ 編 集 部
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」 改訂新版 世界大百科事典について 情報
国際収支【こくさいしゅうし】
一国の国際取引から生じた外国への支払と,外国からの受取との経済取引を,一定期間(通常1年)にわたって集計したもの。国際収支全体の合計額は必ず均衡をとってゼロとなる。国際収支統計は,国際収支統計マニュアル(IMFマニュアル)が改正されたことに伴い,1996年1月から抜本的な改訂による新統計に移行した。新統計では,経常収支・資本収支・外貨準備増減・誤差漏洩の主要分類に区分される。 経常収支は(1)貿易・サービス収支,(2)所得収支,(3)経常移転収支から構成され,(1)貿易収支は商品の輸出入から,サービス収支は旅行・通信・建設・情報・特許権等使用料など11項目についての輸出入からなる。(2)所得収支は,雇用者報酬や投資収益(金利・配当)から,日本から海外に支払う雇用者報酬と投資収益を差し引いたもの。(3)経常移転収支は,国際機関への拠出金,無償資金援助,労働者の送金からなる。経常収支は,財・サービスの輸出はプラスで,輸入はマイナスで計上する。なお(1)と(2)の合計が経常海外余剰で,GNP統計の外需に対応する。 一方資本収支は(1)直接投資収支,(2)資本移転収支から構成される。(1)直接投資収支は,直接投資・証券投資などからなり,(2)資本移転収支は資本形成のための無償資金援助・特許権の処分や取得などからなる。また,国際収支統計は,以前は米ドル建てを中心として公表されていたが,新統計では円建てのみの公表に変更している。なお,四半期ごとに前々四半期の確定版が発表されるこの統計は,大蔵省から委託された日本銀行国際局が作成するもの。 →関連項目IMF |金利政策 |国際金融 |三角貿易 |貿易 |貿易外収支
出典 株式会社平凡社 百科事典マイペディアについて 情報
知恵蔵
「国際収支」の解説
国際収支
国際収支とは、一定期間内の一国全体の対外経済取引を要約して示したものであり、経常収支(current balance)と資本収支(balance of capital account)に大別される。経常収支はさらに、商品の輸出入を示す貿易収支(trade balance)、運賃、保険料、旅行などのサービス収支、送金など対価を伴わない取引である移転収支、投資収益など所得収支、に分けられる。日本の国際収支構造は大きな変遷を遂げてきた。1950〜60年代前半には、景気の上昇のたびに国際収支が赤字となり景気拡大の制約要因となっていた。60年代後半には、貿易収支、経常収支の黒字基調と資本収支の赤字基調が定着したものの、70年代には石油価格の高騰によって経常収支は大幅な赤字に転じた。80年代に入ると、経常収支は大幅な黒字になると同時に、世界最大の資本供給国(資本収支は赤字)として国際経済に登場するようになる。なお、2005年には、初めて所得収支の黒字幅が貿易黒字を上回った。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」 知恵蔵について 情報
国際収支 こくさいしゅうし International balance of payments
国境を越える財やサービス,資金の流れを体系的に示すもの。財・サービスの輸出入取引を示す経常勘定と,資本の取引を示す資本勘定に大別される。さらに前者の収支 (経常収支) は,(1) 財貨の輸出入の差額を示す「貿易収支」,(2) サービスの輸出入および利子所得の差額を示す「貿易外収支」,(3) 対価を伴わない送金,贈与などの差額を示す「移転収支」に分れる。また後者の収支 (資本収支) は,(1) 取引期間が1年をこえる「長期資本収支」,(2) 1年未満の「短期資本収支」に分れる。経常収支と資本収支の合計を総合収支といい,そのギャップは金融勘定 (外国為替銀行勘定と外貨準備増減) によって調整される。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
国際収支
国際収支は1年間の国際取引の受け取りと支払いの勘定の記録である。国際収支は大きく経常収支と資本収支で大別できます。経常収支(貿易・サービス収支、所得収支、経常移転収支)、資本収支(投資収支)。
出典 (株)外為どっとコム FX用語集について 情報
国際収支
ある国が一定期間(通常1年)に行った経済取引を総合して集計したもの.
出典 朝倉書店 栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の 国際収支の言及
【国際収支理論】より
…さまざまな経済主体が一定期間中に行うすべての国際経済取引の結果,一国全体として対外決済上の地位がどのように変化するかを分析し,そのマクロ経済政策上の含意を明らかにするための理論。[固定為替相場制]のもとでは,為替相場の安定を維持するために通貨当局は[国際収支]の赤字・黒字によって生じる対外決済手段の需給のアンバランスを埋めなければならない。また[変動為替相場制]のもとでは,国際収支の赤字・黒字は為替相場の変動と密接な関係がある。…
※「国際収支」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」