デジタル大辞泉
「飛行機」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館 デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
ひこう‐きヒカウ‥ 【飛行機・飛行器】
(一) 〘 名 詞 〙 ( [ 英 語 ] a e r o p l a n e の 訳 語 ) 固 定 さ れ た 翼 に 働 く 揚 力 で 自 分 の 重 さ を さ さ え な が ら 、 プ ロ ペ ラ の 回 転 や 燃 焼 ガ ス の 噴 射 な ど の 推 進 装 置 で 飛 行 す る 乗 り 物 。 空 中 飛 行 機 。 航 空 機 。
(一) [ 初 出 の 実 例 ] ﹁ 空 中 の 征 服 は 飛 行 船 に よ り て 遂 げ ら る べ き か 、 或 は 飛 行 器 に よ り て 達 せ ら る べ き か ﹂ ( 出 典 ‥ 万 朝 報 ‐ 明 治 四 一 年 ︵ 1 9 0 8 ︶ 一 〇 月 三 日 )
出典 精選版 日本国語大辞典 精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
飛行機 ひこうき
人 が 乗 っ て 空 中 を 航 行 す る 乗 り 物 、 す な わ ち 航 空 機 a i r c r a f t の 一 種 。 ジ ェ ッ ト あ る い は プ ロ ペ ラ の 推 力 に よ っ て 前 進 し 、 そ の 際 、 翼 に 生 ず る 揚 力 で 自 分 の 重 量 を 支 え て 飛 ぶ も の の 総 称 で あ る 。 英 語 で a e r o p l a n e 、 ア メ リ カ 英 語 で a i r p l a n e 、 フ ラ ン ス 語 で a v i o n 、 ド イ ツ 語 で F l u g z e u g と い う 。
翼 に 揚 力 を 発 生 さ せ る た め に は 、 飛 行 機 が 空 気 中 を あ る 速 さ で 前 進 す る 必 要 が あ る 。 前 進 す る と 、 そ の 速 さ と 大 き さ が 等 し く 方 向 が 反 対 の 、 つ ま り 後 ろ 向 き の 風 が 翼 に 当 た り 、 翼 に 揚 力 を 発 生 す る 。 こ の 点 は グ ラ イ ダ ー も 同 様 で あ る 。 飛 行 機 や グ ラ イ ダ ー で 、 翼 が 重 量 ︵ 重 力 ︶ を 支 え る だ け の 揚 力 を 発 生 す る に は 、 あ る 限 界 ︵ こ の 限 界 を 最 小 速 度 と い う ︶ 以 上 の 速 さ で 前 進 す る こ と が 必 要 で あ り 、 そ れ 以 下 の 速 さ で は 飛 ぶ こ と が で き な い 。 も ち ろ ん ヘ リ コ プ タ ー の よ う な 空 中 停 止 は で き な い 。 ヘ リ コ プ タ ー の 回 転 翼 も 、 翼 に 揚 力 を 生 ず る 原 理 は 飛 行 機 や グ ラ イ ダ ー の 固 定 翼 と 同 じ で あ る が 、 回 転 翼 は 、 ヘ リ コ プ タ ー 自 身 が 空 中 で ど ん な 速 度 で 飛 ん で い て も 、 回 転 に よ っ て 翼 に 風 が 当 た る の で 揚 力 を 発 生 す る こ と が で き 、 機 の 重 量 を 支 え る こ と が で き る 。
同 じ 航 空 機 で も 、 気 球 、 飛 行 船 な ど 、 空 気 よ り 軽 い ガ ス を 入 れ た 袋 の 浮 力 で 重 量 を 支 え る も の ︵ 軽 航 空 機 ︶ は 、 こ の 浮 力 が 主 と し て ア ル キ メ デ ス の 原 理 に よ る 静 的 浮 力 で あ る と こ ろ か ら 、 前 進 速 度 を 必 要 と し な い 。 つ ま り 、 ど ん な に 遅 い 速 度 で も 飛 ぶ こ と が で き 、 最 小 速 度 が 存 在 し な い 。
こ の よ う に 飛 行 機 は 、 ヘ リ コ プ タ ー 、 飛 行 船 、 気 球 な ど と 違 い 、 最 小 速 度 以 下 の 遅 い 速 さ で は 飛 べ な い こ と 、 離 着 陸 に 地 上 滑 走 を 必 要 と す る こ と の 二 つ の 欠 点 を も っ て い る 。 そ の 反 面 、 揚 力 の わ り に 空 気 抵 抗 が き わ め て 小 さ い の で ス ピ ー ド を 出 し や す く 、 ま た 揚 力 が 速 度 の 2 乗 に 比 例 す る た め 、 高 速 機 で は 小 さ い 翼 面 積 で 大 き な 重 量 ︵ 重 力 ︶ を 支 え る こ と が で き る 。 こ の よ う な 長 所 が 欠 点 を 補 い 、 現 在 で は 飛 行 機 が 航 空 機 の 主 流 を 占 め て い る 。
1 9 9 5 年 末 現 在 、 世 界 中 ︵ 旧 ソ 連 諸 国 ・ 中 国 を 除 く ︶ の 登 録 さ れ て い る 民 間 航 空 機 の 数 は 、 飛 行 機 約 36 万 8 8 0 0 機 、 ヘ リ コ プ タ ー 約 2 万 3 4 0 0 機 、 飛 行 船 は ご く 少 数 、 ほ か に ス ポ ー ツ 用 の グ ラ イ ダ ー や 気 球 も あ る 。
﹇ 木 村 秀 政 ﹈
推進の方法、エンジンの数、着陸装置の形態、主翼の形式などの諸観点から分類ができる。
飛 行 機 は 推 進 装 置 に よ っ て 、 プ ロ ペ ラ 機 と ジ ェ ッ ト 機 と に 分 類 さ れ る 。
︹ 1 ︺ プ ロ ペ ラ 機 ︵ プ ロ ペ ラ 推 進 ︶ プ ロ ペ ラ 機 は 、 シ リ ン ダ ー の 中 を ピ ス ト ン が 往 復 し て ク ラ ン ク 軸 を 回 す ピ ス ト ン エ ン ジ ン で プ ロ ペ ラ を 駆 動 す る ピ ス ト ン 機 と 、 ガ ス タ ー ビ ン で プ ロ ペ ラ を 駆 動 す る タ ー ボ プ ロ ッ プ 機 に 分 類 さ れ る 。 タ ー ボ プ ロ ッ プ 機 の ガ ス タ ー ビ ン は 、 ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン の ガ ス タ ー ビ ン と ほ ぼ 同 じ 原 理 、 構 造 の も の で あ る 。
タ ー ボ プ ロ ッ プ は 、 ピ ス ト ン エ ン ジ ン に 比 べ て エ ン ジ ン の 馬 力 当 り の 重 量 が 半 分 以 下 で あ り 、 外 形 も 小 さ く 、 構 造 が 簡 単 で 振 動 が 少 な い と い う 数 々 の 利 点 を も っ て い る 。 こ の た め 、 1 9 0 3 年 以 来 た だ 一 つ の 飛 行 機 用 エ ン ジ ン と し て 使 わ れ て き た ピ ス ト ン エ ン ジ ン も 、 1 9 5 3 年 に イ ギ リ ス の ビ ッ カ ー ス ・ バ イ カ ウ ン ト 輸 送 機 が 世 界 最 初 の タ ー ボ プ ロ ッ プ 機 と し て 就 航 し て 以 来 し だ い に 姿 を 消 し 、 今 日 で は 5 0 0 馬 力 以 下 の ご く 小 馬 力 の も の を 除 い て 、 タ ー ボ プ ロ ッ プ 機 が プ ロ ペ ラ 機 の 主 流 に な っ て き た 。 日 本 で 第 二 次 世 界 大 戦 後 初 め て 開 発 さ れ た Y S - 1 1 輸 送 機 も タ ー ボ プ ロ ッ プ 機 で あ る 。
︹ 2 ︺ ジ ェ ッ ト 機 ︵ 噴 流 推 進 ︶ 今 日 の ジ ェ ッ ト 機 に 主 と し て 使 わ れ て い る タ ー ボ ジ ェ ッ ト は 、 ピ ス ト ン エ ン ジ ン な ど に 比 べ て 構 造 が き わ め て 簡 単 で 、 一 つ の 筒 の 中 に 、 前 か ら 順 に 圧 縮 機 、 燃 焼 器 、 タ ー ビ ン が 配 列 さ れ て い る 。 圧 縮 機 で 圧 縮 し た 空 気 を 燃 焼 器 に 導 き 、 こ れ に 燃 料 を 噴 射 し て 燃 焼 さ せ 、 高 圧 ・ 高 温 の ガ ス を 勢 い よ く 後 方 に 噴 射 し て 前 向 き の 推 力 を 得 る 。 こ の 際 噴 出 す る ガ ス の エ ネ ル ギ ー の 一 部 で タ ー ビ ン を 駆 動 し 、 こ の タ ー ビ ン で 圧 縮 機 を 駆 動 す る ︵ タ ー ボ プ ロ ッ プ の 場 合 、 プ ロ ペ ラ も タ ー ビ ン で 駆 動 さ れ る ︶ 。
現 在 で は タ ー ボ ジ ェ ッ ト の 圧 縮 機 の 前 方 に さ ら に フ ァ ン を 取 り 付 け 、 フ ァ ン で 圧 縮 し た 空 気 を 一 部 は そ の ま ま 後 方 に 噴 出 、 残 り は エ ン ジ ン 内 に 送 っ て さ ら に 圧 縮 、 燃 焼 さ せ て 後 方 に 噴 出 し 、 両 方 の 作 用 で 推 力 を 生 ず る タ ー ボ フ ァ ン が 輸 送 機 な ど で 広 く 使 わ れ る よ う に な っ た 。 タ ー ボ フ ァ ン で エ ン ジ ン 内 に 送 り 圧 縮 、 燃 焼 さ せ る 空 気 量 に 対 し 、 直 接 後 方 に 噴 出 さ せ る 空 気 量 の 比 を バ イ パ ス 比 と い う 。 1 9 6 0 ~ 1 9 6 1 年 ご ろ か ら 実 用 に な っ た 初 期 の タ ー ボ フ ァ ン は バ イ パ ス 比 1 . 0 ~ 1 . 5 で あ っ た が 、 ボ ー イ ン グ 7 4 7 な ど に つ い て い る 第 2 世 代 の タ ー ボ フ ァ ン は 、 5 . 0 ~ 6 . 0 の 高 バ イ パ ス 比 を も つ よ う に な っ た 。 高 バ イ パ ス 比 を 与 え る こ と に よ っ て 、 燃 料 消 費 率 と 騒 音 が 著 し く 低 下 す る 利 点 が あ る 。
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推 進 装 置 の 数 が 一 つ の も の を 単 発 、 以 下 二 つ の も の を 双 発 、 三 つ の も の を 三 発 、 四 つ の も の を 四 発 と い う 。 飛 行 中 に エ ン ジ ン の 一 つ が 停 止 し た よ う な 場 合 に は 、 一 般 に 多 発 機 の ほ う が 安 全 度 が 高 い 。 し た が っ て 、 洋 上 の 長 距 離 飛 行 に は 双 発 以 上 の 多 発 機 が よ り 安 全 で あ る 。
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飛 行 機 は 陸 上 か ら 発 着 で き る も の と 、 水 上 ︵ ま た は 氷 上 ︶ か ら 発 着 で き る も の と が あ り 、 前 者 を 陸 上 機 、 後 者 を 水 上 機 と い い 、 陸 上 か ら も 水 上 か ら も 発 着 で き る も の を 水 陸 両 用 機 と い う 。 降 着 装 置 は 、 陸 上 機 の 場 合 は 主 と し て 車 輪 、 水 上 機 の 場 合 は 主 と し て フ ロ ー ト が 使 わ れ る 。 飛 行 中 に お け る 車 輪 の 空 気 抵 抗 は き わ め て 大 き い の で 、 低 速 度 の 小 型 機 を 除 き 、 飛 行 中 は 翼 や 胴 体 の 内 部 に 引 き 込 ん で し ま う も の が 多 い 。 こ れ を 引 込 み 脚 ( き ゃ く ) と い い 、 性 能 の 大 幅 な 改 善 が 期 待 で き る 。
大 型 に な る ほ ど 車 輪 1 個 の 負 担 す る 地 面 荷 重 が 大 き く な る の で 、 車 輪 の 数 を 多 く す る 。 世 界 最 大 級 の 陸 上 機 ボ ー イ ン グ 7 4 7 ︵ 総 重 量 約 4 0 0 ト ン ︶ は 主 脚 が 左 右 各 2 本 ず つ あ り 、 各 脚 に そ れ ぞ れ 4 個 の 主 車 輪 を も つ ボ ギ ー 式 の 脚 組 み を 備 え る の で 、 合 計 16 個 の 車 輪 で 機 の 総 重 量 を 支 持 し て い る こ と に な る 。 こ の ほ か に 胴 体 前 端 に 2 個 の 前 輪 が つ い て い る 。
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以 前 は 主 翼 の 形 式 に よ っ て 、 飛 行 機 を 単 葉 機 と 複 葉 機 に 大 別 し て い た 。 し か し 、 飛 行 機 の 構 造 技 術 の 目 覚 ま し い 進 歩 に よ り 、 単 葉 が 複 葉 に 比 べ て 構 造 的 に 不 利 で 重 量 が 大 き く な る な ど の 問 題 点 が 克 服 さ れ た の で 、 今 日 で は 、 特 別 の も の を 除 い て 、 空 気 抵 抗 が 小 さ く 性 能 上 絶 対 有 利 な 単 葉 が 大 勢 を 占 め て い る 。 ま た 胴 体 が 主 翼 の 上 に の っ た 形 の 低 翼 単 葉 が 、 高 翼 単 葉 に 比 べ て 構 造 上 か ら も 性 能 上 か ら も 有 利 な 点 が 多 い の で 、 主 翼 形 式 の 主 流 に な っ て い る 。
普 通 の 単 葉 機 で は 主 翼 が 進 行 方 向 に 対 し て 前 方 に 、 水 平 ・ 垂 直 尾 翼 が 後 方 に 取 り 付 け ら れ て い る が 、 逆 に 水 平 尾 翼 に 相 当 す る も の を 主 翼 よ り 前 方 に つ け た 形 式 の も の も あ る 。 こ れ を カ ナ ー ル 型 ︵ フ ラ ン ス 語 で カ モ の 意 ︶ ま た は エ ン テ 型 ︵ ド イ ツ 語 で カ モ の 意 ︶ と い う 。 こ の よ う な 配 置 に す る と 、 機 の 安 定 性 、 操 縦 性 に 特 殊 な 性 格 を 与 え る こ と が で き 、 機 体 自 重 を 軽 く で き る ほ か 、 機 の 前 方 視 界 が 改 善 さ れ る な ど の 利 点 が あ る 。
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大 昔 か ら 、 人 間 が 鳥 の よ う に 翼 を つ け て 大 空 を 自 由 に 飛 び た い と い う 願 い を も っ て い た こ と は 、 ギ リ シ ア 神 話 の ダ イ ダ ロ ス 、 イ カ ロ ス 父 子 の 物 語 な ど に も よ く 表 れ て い る 。 そ し て 長 い 間 に 、 多 数 の 人 が 飛 行 機 の 試 作 を 行 っ た が 、 よ う や く 20 世 紀 に な っ て ア メ リ カ の ラ イ ト 兄 弟 が 成 功 す る ま で 、 す べ て 失 敗 に 終 わ っ た 。 し か し 、 18 世 紀 末 、 フ ラ ン ス の モ ン ゴ ル フ ィ エ 兄 弟 の つ く っ た 熱 空 気 入 り 気 球 で 、 と も か く 人 間 は 空 を 飛 ぶ こ と に は 成 功 し た 。
長 い 間 、 飛 行 機 が な か な か 成 功 し な か っ た の に は 、 二 つ の 理 由 が あ る 。 一 つ は 、 鳥 の 飛 び 方 を そ の ま ま ま ね て 、 羽 ば た き で 飛 ぶ の に こ だ わ っ た こ と 、 も う 一 つ は 、 19 世 紀 末 ま で 、 軽 く て 馬 力 の 強 い ガ ソ リ ン 機 関 が 実 用 に な ら な か っ た こ と で あ る 。 羽 ば た き 飛 行 の 原 理 を 調 べ て み る と 、 今 日 の 技 術 で も た い へ ん む ず か し い こ と が わ か る 。 つ ま り 鳥 は 羽 ば た き に よ っ て 、 揚 力 を 得 る と 同 時 に 推 進 力 も 得 て い る の で 、 機 構 も 運 動 も 非 常 に 複 雑 に な る の で あ る 。 揚 力 を 得 る に は 羽 ば た き し な い 固 定 翼 を 用 い 、 推 力 を 得 る に は 別 に プ ロ ペ ラ を 用 い た ほ う が は る か に 有 利 で あ る と い う こ と が や っ と わ か っ た の は 19 世 紀 末 で あ る 。 こ れ を グ ラ イ ダ ー に よ っ て 実 証 し た の が ド イ ツ の リ リ エ ン タ ー ル で あ っ た 。
リ リ エ ン タ ー ル は 、 1 8 9 1 年 、 固 定 翼 の グ ラ イ ダ ー を つ く り 、 そ れ に 乗 っ て 小 高 い 丘 か ら 滑 空 を す る こ と に 成 功 し た 。 彼 は こ の 実 験 を 繰 り 返 し 、 翼 の 空 気 力 学 的 特 性 や グ ラ イ ダ ー の つ り 合 い 、 安 定 、 操 縦 な ど の 諸 問 題 に 貴 重 な 知 識 を 得 た が 、 1 8 9 6 年 、 翼 の 失 速 が 原 因 で 墜 落 死 し た 。 し か し そ の 業 績 は 、 そ の 後 の 飛 行 機 の 発 展 の 基 礎 と な り 、 同 時 に 世 界 各 国 の 研 究 家 に 大 き な 刺 激 を 与 え た 。
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リ リ エ ン タ ー ル に 続 い て 各 国 で グ ラ イ ダ ー に よ る 研 究 が 盛 ん に 行 わ れ る よ う に な っ た が 、 な か で も ラ イ ト 兄 弟 は 1 9 0 0 年 か ら 1 9 0 2 年 に か け て 、 グ ラ イ ダ ー に よ る 飛 行 実 験 を 徹 底 的 に 行 い 、 あ わ せ て 自 分 で く ふ う し た 風 胴 に よ る 各 種 の 実 験 を 行 っ て 、 飛 行 機 の 飛 行 特 性 に 関 し て 先 人 の な し え な か っ た 領 域 ま で 開 拓 し た 。 こ の 豊 富 な 知 識 に 基 づ い て 設 計 製 作 し た 機 体 に 、 自 作 の 12 馬 力 ガ ソ リ ン エ ン ジ ン を つ け 、 1 9 0 3 年 12 月 17 日 、 ア メ リ カ の ノ ー ス ・ カ ロ ラ イ ナ 州 キ テ ィ ホ ー ク の 海 岸 で 、 つ い に 人 類 待 望 の 動 力 飛 行 に 成 功 し た 。 こ の 日 、 強 風 を つ い て 4 回 の 飛 行 が 行 わ れ 、 第 1 回 の 記 録 は 12 秒 、 36 メ ー ト ル で あ っ た が 、 最 後 に は 59 秒 、 2 6 0 メ ー ト ル に 達 し た 。 ラ イ ト 機 の 最 大 の 特 徴 は 、 撓 ( た わ ) み 翼 ︵ 今 日 の 補 助 翼 に か わ る も の ︶ 、 昇 降 舵 ( だ ) 、 方 向 舵 の 3 舵 に よ っ て 自 由 に 操 縦 が で き る こ と で 、 先 人 の グ ラ イ ダ ー が 人 間 の 体 重 を 移 動 し た り し て 操 縦 し て い た の に 比 べ 、 長 足 の 進 歩 で あ っ た 。
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アメリカより一歩出遅れたヨーロッパでは、1906年、パリのバガテルで、ブラジル人サントス・ドゥモンがヨーロッパ最初の飛行に成功した。このときの記録は21秒、220メートルで、これが世界最初の公認記録となった。続いてフランスを中心にイギリス、ドイツ、その他の諸国で次々に新しい飛行機が試作されるとともに、その記録も目覚ましく向上し、第一次世界大戦の起こった1914年の時点で、世界記録は時速204キロメートル、航続距離1021キロメートル、高度6120メートルに達した。この間、1909年には、フランスのブレリオが自作のブレリオⅪ型単葉機で初めてドーバー海峡を横断し、航空史上に金字塔を打ちたてた(距離38キロメートル、時間32分)。1910年代の初めには、航空活動の中心地はアメリカからフランスに移っていた。
[木村秀政]
日 本 は 欧 米 諸 国 に 著 し く 立 ち 後 れ 、 独 力 で 飛 行 機 の 研 究 を 進 め る 研 究 家 も 何 人 か い た が 、 ど れ も 成 功 せ ず 、 1 9 1 0 年 ︵ 明 治 43 ︶ 12 月 19 日 に な っ て 初 め て 、 陸 軍 の 徳 川 好 敏 ( よ し と し ) と 日 野 熊 蔵 ( く ま ぞ う ) が 、 そ れ ぞ れ フ ラ ン ス お よ び ド イ ツ か ら 輸 入 し た 飛 行 機 で 飛 行 に 成 功 し た 。 国 産 機 で 最 初 に 成 功 し た の は 奈 良 原 三 次 ( さ ん じ ) ︵ 1 8 7 7 ― 1 9 4 4 ︶ の 奈 良 原 式 2 号 機 で 、 1 9 1 1 年 5 月 5 日 に 初 め て 70 メ ー ト ル の 距 離 を 飛 ん だ 。
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1914年に第一次世界大戦が始まると、飛行機は早速戦場に駆り出され、最初は偵察、爆撃などの目的に使われたが、のちには敵機を撃墜するための戦闘機も現れた。大戦前の飛行機はただ飛ぶことが目的であったが、各種の異なった用途に使われるようになると、それぞれの目的に適した設計が要求され、専門の機種が必要になってきた。ここに初めて、偵察機、爆撃機、戦闘機など用途別の機種が誕生した。大戦は1918年まで続いたが、4年間にわたる大戦の厳しい試練によって飛行機はたくましく成長した。大戦直後の1920年末における世界記録、時速313キロメートル、航続距離1915キロメートル、高度1万0093メートルを前記の6年前の記録と比較してみると、この間の目覚ましい進歩がうかがわれる。
第一次世界大戦が終結すると、各国の航空開発への意欲は二つの方向に集中された。一つは定期航空輸送の開設、もう一つは未開拓空路への冒険的な挑戦である。飛行機によって、旅客、貨物、郵便物などを定期的に運送する定期航空は、すでに大戦の末期から各国でぼつぼつ行われていたが、1919年ごろから本格的なものとなり、1919年には乗客12人乗り、双発のファルマンF60ゴリアットのような本格的輸送機が早くも就航した。未開拓空路への挑戦も、大西洋、太平洋、北極などを舞台に華やかに繰り広げられた。なかでもアメリカのリンドバーグが1927年5月20~21日、スピリット・オブ・セントルイス号を操縦し、ニューヨーク ―パリ間5809キロメートルを33時間39分で無着陸横断した飛行は、航空史上もっとも華やかな記録とされている。しかし、当時は飛行機の進路を定めてゆくのに、今日のように電波を利用する航法技術が実用されておらず、飛行機の航続性能も目的に対してぎりぎりいっぱいであり、エンジンや機体の信頼性も今日に比べてはるかに低かった。そのために、華やかな英雄を生む反面、多くの悲壮な犠牲者を出した。
一方、日本の航空技術は、スタートで欧米諸国より数年立ち後れ、初めはもっぱら先進諸国の技術を導入、消化する方法でその発展を図ってきた。第一次世界大戦に日本は連合国側として参戦はしたものの、ヨーロッパの主戦場からはるかに離れていたためもあって、欧米諸国との格差は広がる一方であった。昭和初期になって国が航空技術の発展に力を入れ始め、多年外国から吸収、蓄積してきた技術がようやく開花し、1935年(昭和10)ごろから、欧米の水準と比べて見劣りのしない純国産機が次々に出現するようになった。1937年、飯沼正明(1912―1941)および塚越賢爾(つかごしけんじ)(1900―1943)が、東京―ロンドン間1万5357キロメートルを途中着陸時間を含めて94時間18分で翔破(しょうは)し国際記録を樹立した神風(かみかぜ)号、1938年藤田雄蔵(1898―1939)らによって1万1651キロメートルの周回航続世界記録を樹立した航研機などが、代表的な例といえる。
[木村秀政]
1930年から1935年にかけて、離着陸距離を短くするのに有効な主翼のフラップ、飛行中に着陸装置を翼や胴体の中に引っ込めて空気抵抗を小さくする引込み脚、飛行中ピッチを変えていろいろな飛行状態に適応できるようにした可変ピッチプロペラ 、エンジンの高空における出力の低下を減らすスーパーチャージャー 、アルミニウム合金 の薄板を使った軽くてじょうぶな応力外皮構造など、飛行機の性能や信頼性を向上するのにきわめて有効な各種の新しい装置や構造が一斉に実用化され、これらを組み合わせた近代的な低翼単葉形式が完成し、以後これが飛行機の標準的な形式となった。このような近代的な形式を取り入れた輸送機として代表的なものは、1935年に初飛行したアメリカのダグラスDC-3型である。1200馬力エンジン2基の双発で、乗員2人、乗客21人を乗せ、巡航速度毎時272キロメートルの性能をもっていた。DC-3型の特徴は、優れた性能もさることながら、その実用性、耐久性は無類で、第二次世界大戦中を通じて1万1000機も生産され、初飛行以来60年以上もたった今日、なお世界各地で飛んでいる。
[木村秀政]
1 9 3 9 年 か ら 1 9 4 5 年 に 至 る 第 二 次 世 界 大 戦 は 、 航 空 兵 力 の 優 劣 で 勝 敗 が 決 し た と い わ れ る ほ ど で 、 飛 行 機 は 各 種 の 用 途 で 大 活 躍 し た 。 と く に 第 一 次 世 界 大 戦 と 比 較 し て み る と 、 戦 闘 、 偵 察 、 攻 撃 、 爆 撃 な ど の 直 接 の 戦 闘 目 的 以 外 に 、 人 員 や 軍 需 物 資 の 輸 送 、 補 給 に 大 量 に 使 わ れ た 点 が 注 目 さ れ た 。
大 戦 の 後 期 、 各 国 の 戦 闘 機 の な か に は 最 高 時 速 7 0 0 キ ロ メ ー ト ル を 超 え る も の が 現 れ た 。 飛 行 機 が こ の よ う な 高 速 で 飛 び 、 そ の プ ロ ペ ラ が 毎 分 千 数 百 回 転 で 回 る と 、 プ ロ ペ ラ の 翼 ( よ く ) の 空 気 を 切 る 速 さ が 、 翼 の 先 端 で は 音 速 付 近 に 到 達 す る 。 す る と 、 空 気 の 圧 縮 性 の 影 響 が 現 れ て プ ロ ペ ラ 翼 の 空 気 抵 抗 が 著 し く 大 き く な り 、 プ ロ ペ ラ 効 率 が 低 下 す る 。 高 速 機 で こ の よ う な 現 象 が お こ る こ と は 前 か ら 予 想 さ れ て お り 、 プ ロ ペ ラ 機 で 時 速 8 0 0 キ ロ メ ー ト ル を 超 す こ と は き わ め て 困 難 で あ ろ う と さ れ て い た 。 こ の 問 題 を 解 決 し て 、 飛 行 機 が さ ら に 高 速 で 飛 ぶ た め に は 、 ガ ス を 後 方 に 噴 き 出 し 、 そ の 反 動 で 前 向 き の 推 力 を 得 る 噴 流 推 進 を 用 い る ほ か な く 、 そ の よ う な 原 理 の エ ン ジ ン と し て 、 ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン と ロ ケ ッ ト エ ン ジ ン の 研 究 が 行 わ れ た 。 1 9 3 9 年 、 ド イ ツ で ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン を 装 備 し た ハ イ ン ケ ル H e 1 7 8 が 列 国 に 先 駆 け て 飛 行 に 成 功 し た 。 続 い て イ タ リ ア 、 イ ギ リ ス で も ジ ェ ッ ト 機 の 開 発 に 成 功 し た 。 大 戦 末 期 の 1 9 4 4 年 、 ド イ ツ の メ ッ サ ー シ ュ ミ ッ ト M e 2 6 2 、 イ ギ リ ス の グ ロ ス タ ー ・ ミ ー テ ィ ア な ど の ジ ェ ッ ト 戦 闘 機 が 初 め て 戦 線 に 姿 を 現 し 、 ジ ェ ッ ト 機 の 実 用 時 代 が 始 ま っ た 。
﹇ 木 村 秀 政 ﹈
1945年に第二次世界大戦が終わると、本格的なジェット化が始まった。ジェット機は、プロペラ機に比べてはるかに高速を出せるのが特徴なので、まずスピードに重点を置く戦闘機がジェット化され、続いて爆撃機、ついでその他の軍用機に及んだ。初期のジェットエンジンは燃料消費率が大きく、ジェット機は航続性能に難があったが、この分野で目覚ましい改良がなされるにつれて、民間輸送機にもついにジェット機が登場した。その先頭を切ったのは、1949年に初飛行し、1952年から定期航空に就航したイギリスのデ・ハビランド・コメットである。しかし、コメット機は1954年、設計上の欠陥から2機が相次いで高高度飛行中に胴体爆発事故を起こし、就航停止の不運にみまわれた。このため、本格的なジェット輸送機時代は、1958年イギリスのコメット4型とアメリカのボーイング707型の就航をもって始まりとする。ジェット輸送機の就航により、その巡航速度や乗客数はプロペラ輸送機の2倍内外となった。
プロペラ機からジェット機への変化ほどはでではないが、各種の油圧機器、電子機器などの発達に伴う飛行機運用の機械化、自動化も著しく進み、飛行機の性能や信頼性の進歩に大きく貢献した。たとえば、ジェット機は高空を飛んだほうがエンジンの効率がよいので、高空における低温、低圧、酸素不足から乗員・乗客を守るため、客室内の空気を与圧して循環させる、いわゆる与圧客室が一般化した。与圧客室は1935年ごろから研究が始められ、第二次世界大戦中はB-29のような高空を飛ぶ長距離爆撃機で実用化され、戦後に開発されたプロペラ輸送機にはこれを用いるものが多くなったが、ジェット輸送機に至って必要欠くことのできないものとなった。またジェット輸送機の性能および信頼性の向上に伴い、各種の電子装置を利用した航法装置の登場は、交通機関としての飛行機を、地上、海上の他の交通機関と対等あるいはそれ以上の位置にまで高めるのに成功した。
1947年、アメリカのイェーガーCharles E. Yeager(1923―2020)の操縦するベルX-1ロケット機が世界で初めて音速を突破した。飛行機の速度が音速(地上で毎時約1225キロメートル、成層圏で毎時約1060キロメートル)に近づくと、衝撃波の影響で空気抵抗が著しく増大するので、その壁を乗り越えて超音速で飛行するには技術的に多くの難問題を解決しなければならない。しかしこの壁もエンジンや空気力学の発達でついに突破され、1953年ごろにはジェット戦闘機が超音速で飛ぶようになり、2007年現在まで世界最高速の実用機であるアメリカのロッキードSR-71Aは時速3529.56キロメートル(音速の約3.3倍、すなわちマッハ3.3)の記録(1976年にマーク)を出している。現代では、戦闘機はもちろん、偵察機、爆撃機などの軍用機も超音速が普通になった。
民間ジェット輸送機の速度は、1958年以来マッハ0.7~0.85が保たれているが、これはこのあたりの速度が輸送機としてもっとも経済的、実用的なためである。一方、英仏両国で共同開発したコンコルド、ソ連のTu-144は、ともにマッハ2.0以上を出せる超音速輸送機SST(supersonic transport)で、Tu-144は1977年にソ連の国内線に就航、コンコルドは1976年定期航空路に就航した。しかし、Tu-144は燃費効率が悪く、故障も多く発生したため、翌78年には運航休止となった。コンコルドは無事故で運航を続けたが、2000年7月パリで離陸直後に墜落、乗客ら113人が死亡する事故をおこした。その後も運航が続けられたが、経済性の悪さなどから、2003年に運航を終了した。以後、マッハ1を超えるジェット輸送機はつくられていない。
飛行機の高速化と並んで大型化も進められ、推力20トンを超える強力なジェットエンジンの出現で、1972年には500人以上の旅客あるいは100トン以上の貨物を積んで、太平洋を無着陸で横断できるジャンボ機も実用化されるようになった。
[木村秀政]
1 9 4 5 年 ︵ 昭 和 20 ︶ 8 月 、 日 本 は 第 二 次 世 界 大 戦 に 敗 れ て 、 航 空 輸 送 、 航 空 ス ポ ー ツ 、 航 空 機 の 生 産 、 そ の 他 い っ さ い の 航 空 活 動 を 禁 止 さ れ た が 、 1 9 5 2 年 春 、 連 合 国 と の 間 の 講 和 条 約 が 発 効 し 、 日 本 の 航 空 活 動 は す べ て 自 由 に な っ た 。 し か し 、 初 期 の 自 衛 隊 の 機 材 は ア メ リ カ か ら の 貸 与 や ラ イ セ ン ス 生 産 が 主 で 、 国 産 機 は 少 な か っ た 。 1 9 5 1 年 10 月 、 国 内 線 の 航 空 輸 送 が 再 開 さ れ た が 、 こ れ に 使 う 輸 送 機 も ほ と ん ど が ア メ リ カ な ど か ら 輸 入 し た も の で 、 国 産 機 は ま っ た く な か っ た 。 1 9 5 8 年 、 戦 後 初 め て 国 産 輸 送 機 を 独 力 で 開 発 す る こ と に な り 、 開 発 の 中 心 と な っ た 輸 送 機 ︵ Y ︶ 設 計 ︵ S ︶ 研 究 協 会 の ロ ー マ 字 の 頭 文 字 を と っ て Y S - 1 1 型 と 名 づ け ら れ た 。 機 体 の 設 計 製 作 は 日 本 航 空 機 製 造 に よ っ て 行 わ れ 、 1 9 6 2 年 8 月 に 初 号 機 初 飛 行 、 1 9 6 5 年 4 月 か ら 国 内 線 に 就 航 し た 。 イ ギ リ ス 製 ロ ー ル ス ・ ロ イ ス 2 6 6 0 馬 力 タ ー ボ プ ロ ッ プ の 双 発 機 で 、 馬 力 の わ り に 乗 客 数 は 60 ~ 64 人 と 多 い こ と 、 離 着 陸 滑 走 距 離 が 1 2 0 0 メ ー ト ル 以 下 と 短 い こ と な ど か ら 、 経 済 的 な 短 ・ 中 距 離 輸 送 機 と し て 好 評 で 、 1 8 0 機 が 生 産 さ れ 、 海 外 へ も 多 数 輸 出 さ れ た 。
Y S - 1 1 に 次 ぐ プ ロ ジ ェ ク ト と し て は 、 ア メ リ カ の ボ ー イ ン グ 社 な ど と 共 同 ︵ ア メ リ カ 70 % 、 日 本 、 イ タ リ ア 各 15 % ︶ し た 、 第 4 世 代 ジ ェ ッ ト 機 と い わ れ る ボ ー イ ン グ 7 6 7 双 発 ジ ェ ッ ト 輸 送 機 ︵ 2 1 1 ~ 2 8 5 席 ︶ へ の 開 発 参 加 が あ る 。 同 機 は 1 9 8 2 年 以 来 、 世 界 各 地 の 定 期 航 空 路 に 就 航 し て い る 。 ま た 、 最 新 式 の タ ー ボ フ ァ ン エ ン ジ ン の 国 際 共 同 開 発 に つ い て も 、 日 本 は 23 % の シ ェ ア で ︵ ア メ リ カ 30 % 、 イ ギ リ ス 30 % 、 旧 西 ド イ ツ 11 % 、 イ タ リ ア 6 % ︶ 、 1 5 0 席 ク ラ ス の 民 間 航 空 機 用 タ ー ボ フ ァ ン V 2 5 0 0 の 開 発 に 参 加 し 、 1 9 8 8 年 に 型 式 ( か た し き ) 証 明 を 取 得 し た 。 同 エ ン ジ ン は ヨ ー ロ ッ パ の エ ア バ ス A 3 2 0 、 ア メ リ カ の マ ク ダ ネ ル ・ ダ グ ラ ス M D - 9 0 な ど の 輸 送 機 に 装 備 さ れ て 世 界 各 国 で 使 わ れ て い る 。 機 体 で は 7 6 7 に 続 き 、 よ り 大 型 の 双 発 ジ ェ ッ ト 輸 送 機 ボ ー イ ン グ 7 7 7 ︵ 3 0 5 ~ 4 0 0 席 ︶ の 開 発 に も 、 日 本 が 約 21 % の シ ェ ア で 参 加 し た 。 同 機 は 1 9 9 5 年 か ら 、 世 界 各 地 の 路 線 に 就 航 し て い る 。
一 方 、 1 9 7 7 年 以 来 、 科 学 技 術 庁 航 空 宇 宙 技 術 研 究 所 ︵ 現 宇 宙 航 空 研 究 開 発 機 構 ︶ が 、 川 崎 重 工 業 、 石 川 島 播 磨 ( は り ま ) 重 工 業 ︵ 現 I H I ︶ な ど の 国 内 民 間 企 業 の 協 力 を 得 て 開 発 を 続 け て き た フ ァ ン ジ ェ ッ ト S T O L ( エ ス ト ー ル ) 機 ︵ 短 距 離 離 着 陸 機 ︶ 飛 鳥 ( あ す か ) が 、 1 9 8 5 年 に 初 飛 行 し た 。 こ の 機 体 は 、 強 力 な 高 揚 力 装 置 の 威 力 に よ り 、 総 重 量 3 8 . 7 ト ン の 四 発 ジ ェ ッ ト 機 で あ る に も か か わ ら ず 、 離 陸 距 離 6 8 0 メ ー ト ル 、 着 陸 距 離 4 8 0 メ ー ト ル と い う 優 れ た S T O L 性 能 を も っ て い る 。 飛 鳥 は 、 い ま す ぐ 実 用 さ れ る 機 体 で は な く 、 将 来 い ろ い ろ な 機 種 へ の 応 用 が 望 ま れ る 技 術 の 研 究 機 で あ る 。
﹇ 木 村 秀 政 ﹈
飛 行 機 の 重 量 を 空 気 中 で 支 え る の は 翼 に 働 く 揚 力 で あ る 。
︹ 1 ︺ 翼 に 働 く 揚 力 翼 は 図 A の よ う な 断 面 を も ち 、 飛 行 機 が 空 気 中 を あ る 速 さ で 進 む と 、 そ の 速 さ に 等 し い 風 が 前 方 か ら 翼 に 当 た る 。 こ の 風 ︵ 空 気 の 流 れ ︶ は 、 湾 曲 度 の 大 き い 翼 上 面 を 通 過 す る と き は 流 速 が 増 し 、 湾 曲 の 小 さ い 翼 下 面 で は 流 速 が 減 る 。 ベ ル ヌ ー イ の 定 理 に よ る と 、 流 速 が 増 す と 圧 力 が 下 が り 、 流 速 が 減 る と 圧 力 が 上 が る 。 こ の た め 、 翼 上 面 の 圧 力 は 大 気 圧 よ り 小 さ く 、 つ ま り 負 圧 に な っ て 翼 を 吸 い 上 げ 、 下 面 の 圧 力 は 大 気 圧 よ り 大 き く 、 つ ま り 正 圧 に な っ て 翼 を 押 し 上 げ 、 両 方 の 作 用 が い っ し ょ に な っ て 上 向 き の 揚 力 と な る 。 飛 行 機 が 一 定 の 速 さ で 水 平 に 飛 ん で い る と き に は 、 翼 の 揚 力 が 機 の 重 量 ︵ 機 に 働 く 重 力 ︶ に 等 し く つ り 合 っ て い る 。 飛 行 機 の 重 量 を 翼 面 積 で 割 っ た 値 を 翼 面 荷 重 と い う が 、 こ れ は 翼 に 発 生 す る 1 平 方 メ ー ト ル 当 り の 揚 力 の 値 に ほ か な ら な い 。 翼 面 荷 重 の 値 は 軽 飛 行 機 で は 50 ~ 1 0 0 キ ロ グ ラ ム 毎 平 方 メ ー ト ル 程 度 だ が 、 ジ ェ ッ ト 輸 送 機 で は 3 0 0 ~ 7 5 0 キ ロ グ ラ ム 毎 平 方 メ ー ト ル 内 外 で あ る 。
︹ 2 ︺ 揚 力 と 迎 え 角 と の 関 係 翼 に 揚 力 を 発 生 さ せ る た め に は 、 飛 行 機 は あ る 速 さ で 空 気 中 を 前 進 し な け れ ば な ら な い 。 翼 に 働 く 揚 力 の 大 き さ は 速 さ の 2 乗 に 比 例 し 、 ま た 翼 の 気 流 に 対 す る 迎 え 角 が 大 き く な る ほ ど 、 揚 力 も ほ ぼ そ れ に 比 例 し て 大 き く な る 。 あ る 翼 が い ろ い ろ な 迎 え 角 で 空 気 中 を 飛 ぶ 場 合 の 速 さ と 揚 力 と の 関 係 を 図 B に 示 す 。 飛 行 機 は 揚 力 が 重 量 に 等 し く な っ た 状 態 で 水 平 飛 行 す る か ら 、 図 B の 例 で は 、 5 6 0 キ ロ メ ー ト ル 毎 時 で 飛 ぶ に は 翼 の 迎 え 角 を 3 度 に 保 ち 、 3 5 0 キ ロ メ ー ト ル 毎 時 で 飛 ぶ に は 翼 の 迎 え 角 を 9 度 に 保 つ 必 要 が あ る こ と が わ か る 。 一 般 的 に い え ば 、 速 く 飛 ぶ と き に は 迎 え 角 を 小 さ く し 、 遅 く 飛 ぶ と き に は 迎 え 角 を 大 き く す る わ け で 、 こ の よ う な 迎 え 角 の 調 整 は 、 昇 降 舵 ( だ ) ま た は 水 平 安 定 板 の 操 作 に よ っ て 行 わ れ る 。
︹ 3 ︺ 失 速 迎 え 角 を 大 き く す る と 揚 力 は ほ ぼ そ れ に 比 例 し て 大 き く な る が 、 迎 え 角 が あ る 限 度 を 超 す と 、 翼 上 面 の 流 れ が 表 面 か ら は が れ て 、 そ の 後 方 の 気 流 が 乱 れ る ︵ 図 C ︶ 。 そ し て 迎 え 角 が あ る 角 度 を 超 す と 、 そ れ 以 上 迎 え 角 を 増 し て も 揚 力 は か え っ て 減 少 し 、 し か も 気 流 の 乱 れ が 激 し く な っ て 、 翼 と し て の 働 き が 悪 く な る 。 こ の 状 態 を 失 速 と い う 。
迎 え 角 を 失 速 迎 え 角 以 上 に 大 き く し て も 揚 力 は 増 さ な い の で 、 失 速 迎 え 角 に 対 す る 速 さ ︵ こ れ を 失 速 速 度 と い う ︶ 以 下 で は 、 も は や 機 の 重 量 を 支 え る だ け の 揚 力 を 出 す こ と が で き な い 。 つ ま り 、 失 速 速 度 は 機 が 飛 び う る 最 小 速 度 で あ る 。 自 動 車 に し ろ 、 船 に し ろ 、 普 通 の 乗 り 物 は ど ん な に 遅 い 速 さ で も 走 れ る が 、 飛 行 機 は 最 小 速 度 以 下 で は 飛 ぶ こ と が で き な い 。 一 般 に 翼 面 荷 重 の 大 き い 飛 行 機 は 最 小 速 度 が 大 き く 、 翼 面 荷 重 の 小 さ い 飛 行 機 は 最 小 速 度 も 小 さ い 。
︹ 4 ︺ 高 揚 力 装 置 翼 の 揚 力 を 増 す 装 置 で 、 そ の 代 表 的 な も の が フ ラ ッ プ で あ り 、 今 日 の 飛 行 機 に は ほ と ん ど 例 外 な く 取 り 付 け ら れ て い る 。
フ ラ ッ プ を 下 げ る と 翼 断 面 の 湾 曲 度 が 増 し 、 大 き な 揚 力 を 得 ら れ る の で 、 低 い 速 度 で 機 の 重 量 を 支 え る こ と が で き る ︵ 図 D ︶ 。 し た が っ て 、 同 じ 翼 面 荷 重 で も 最 小 速 度 を 減 ら す こ と が で き る 。 逆 に 、 最 小 速 度 を 同 じ 値 に 抑 え る と 、 フ ラ ッ プ を 使 う こ と に よ り 、 翼 面 荷 重 を 大 き く で き る 。 フ ラ ッ プ を 下 げ た と き 、 翼 後 縁 と フ ラ ッ プ 前 縁 と の 間 に 隙 間 ( す き ま ) が 生 ず る よ う に し た も の を ス ロ ッ テ ッ ド フ ラ ッ プ と い い 、 フ ラ ッ プ 効 果 が 一 段 と 高 く な る 。 フ ラ ッ プ が い く つ か に 分 か れ 、 二 つ あ る い は 三 つ の 隙 間 が で き る も の も あ る 。 翼 の 後 縁 だ け で な く 、 前 縁 に も フ ラ ッ プ を つ け 、 前 縁 フ ラ ッ プ と 後 縁 フ ラ ッ プ と を 併 用 す る と 、 揚 力 を 増 す 効 果 は き わ め て 著 し い 。
﹇ 木 村 秀 政 ﹈
翼 に 揚 力 を 発 生 さ せ る た め 、 あ る 速 さ で 空 気 中 を 進 め ば 、 翼 ば か り で な く 、 飛 行 機 全 体 に 空 気 抵 抗 ︵ 抗 力 と も い う ︶ が 働 く 。
︹ 1 ︺ 抗 力 と 揚 抗 比 抗 力 の 値 は 、 揚 力 と 同 じ く 速 度 の 2 乗 に 比 例 す る 。 揚 力 と 抗 力 の 比 を 揚 抗 比 と い う 。 同 じ 迎 え 角 を 保 っ て 飛 ぶ 場 合 、 揚 力 も 抗 力 も 速 度 の 2 乗 に 比 例 す る か ら 、 揚 抗 比 は 迎 え 角 さ え 決 ま っ て い れ ば 、 速 度 と 無 関 係 に 一 定 で あ る 。 こ れ に 反 し 、 飛 行 船 で は 、 揚 力 は ガ ス 袋 の 静 浮 力 で あ る か ら 速 度 に 無 関 係 に 一 定 で あ り 、 抗 力 は 速 度 の 2 乗 に 比 例 し て 増 し て ゆ く 。 し た が っ て 、 飛 行 船 の 揚 抗 比 は 、 速 度 が 増 す に つ れ て し だ い に 低 下 す る 。 高 速 交 通 機 関 と し て 飛 行 船 が 落 後 し た の は こ の た め で あ る 。
︹ 2 ︺ 推 力 飛 行 機 が 前 進 す る に は 、 抗 力 に 打 ち 勝 つ た め 、 プ ロ ペ ラ や ジ ェ ッ ト な ど の 推 力 で 飛 行 機 を 押 し 進 め て や ら な け れ ば な ら な い 。 飛 行 機 が 水 平 定 常 飛 行 を し て い る と き に は 、 揚 力 が 重 力 と つ り 合 い 、 推 力 が 抗 力 と つ り 合 っ て い る ︵ 図 E ︶ 。 飛 行 機 に 働 く す べ て の 力 が つ り 合 っ て い る か ら 、 ニ ュ ー ト ン の 運 動 法 則 に よ り 、 そ の 状 態 を い つ ま で も 続 け て ゆ く の で あ る 。 速 度 が 速 く な る と 抗 力 が 増 す の で 、 エ ン ジ ン の ス ロ ッ ト ル レ バ ー ︵ 絞 り 弁 と も い い 、 自 動 車 の ア ク セ ル に 相 当 す る ︶ を 開 い て 推 力 を 増 し て や る 必 要 が あ る 。 し か し 、 迎 え 角 を そ の ま ま に し て お く と 、 揚 力 が 速 度 の 2 乗 に 比 例 し て 増 し て ゆ き 、 重 力 よ り 大 き く な っ て つ り 合 い が 保 て な く な る 。 し た が っ て 、 昇 降 舵 ま た は 水 平 安 定 板 を 操 作 し て 迎 え 角 を 減 ら し 、 揚 力 を 重 力 に 等 し く な る よ う に 加 減 し な け れ ば な ら な い 。 自 動 車 の 場 合 、 走 行 速 度 を 加 減 す る に は ア ク セ ル だ け を 操 作 す れ ば よ い が 、 飛 行 機 の 場 合 は 、 ス ロ ッ ト ル レ バ ー と 迎 え 角 を 加 減 す る た め の 操 縦 桿 ( か ん ) を 同 時 に 操 作 し な け れ ば な ら な い 。
﹇ 木 村 秀 政 ﹈
ど ん な 飛 行 機 も そ れ ぞ れ 最 小 速 度 が 決 ま っ て い て 、 そ の 速 度 以 下 で 飛 ぶ こ と は で き な い 。 し た が っ て 、 離 陸 す る と き は 、 停 止 状 態 か ら エ ン ジ ン の ス ロ ッ ト ル レ バ ー を 全 開 し て 滑 走 を 開 始 し 、 し だ い に 加 速 し て 離 陸 に 安 全 な 速 度 に 達 し た ら 、 機 首 を 引 き 起 こ し て 翼 の 迎 え 角 を 増 し 、 地 面 を 離 れ る 。 離 陸 に 安 全 な 速 度 は 、 普 通 、 最 小 速 度 の 1 . 1 5 ~ 1 . 2 倍 で あ る 。
翼 面 荷 重 の 大 き い 飛 行 機 は 、 一 般 に 最 小 速 度 ︵ 離 陸 速 度 ︶ が 大 き い の で 、 そ れ だ け 長 く 滑 走 し な け れ ば な ら な い 。 飛 行 機 が 滑 走 を 始 め た 地 点 か ら 、 地 面 を 離 れ 、 高 度 15 メ ー ト ル ︵ タ ー ビ ン 輸 送 機 で は 1 0 . 5 メ ー ト ル ︶ ま で 達 す る の に 必 要 な 距 離 を 離 陸 距 離 と い う ︵ 図 F ︶ 。
着 陸 の と き は 、 最 小 速 度 の 1 . 3 倍 ぐ ら い の 速 度 で 進 入 し て き て 、 機 首 を 引 き 起 こ し 、 減 速 し て 接 地 に 安 全 な 着 陸 速 度 で 接 地 す る 。 こ の 場 合 、 着 陸 速 度 は 当 然 、 最 小 速 度 よ り 大 き い こ と が 必 要 で あ り 、 普 通 は 最 小 速 度 の 1 . 1 ~ 1 . 2 倍 で あ る 。 接 地 し て か ら 、 車 輪 の ブ レ ー キ 、 翼 の ス ポ イ ラ ー 、 ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン の ス ラ ス ト リ バ ー サ ー ︵ 逆 推 力 装 置 ︶ な ど を 使 っ て 減 速 す る が 、 停 止 す る ま で に は あ る 距 離 を 滑 走 し な け れ ば な ら な い 。 離 陸 の 場 合 と は 反 対 に 、 高 度 15 メ ー ト ル を 通 過 し て か ら 、 接 地 、 地 上 滑 走 を し て 停 止 す る ま で の 距 離 を 着 陸 距 離 と い う 。 一 般 に 、 翼 面 荷 重 の 大 き い 飛 行 機 は 着 陸 距 離 が 長 い 。
﹇ 木 村 秀 政 ﹈
飛 行 機 に は 三 つ の 主 要 な 舵 ( か じ ) が つ い て い る 。 す な わ ち 、 昇 降 舵 、 補 助 翼 お よ び 方 向 舵 で あ る 。
︹ 1 ︺ 昇 降 舵 昇 降 舵 は 水 平 安 定 板 の 後 縁 に ヒ ン ジ ︵ 丁 番 ( ち ょ う つ が い ) ︶ で 取 り 付 け ら れ て お り 、 操 縦 席 で 操 縦 桿 を 手 前 に 引 く と 上 が り 、 押 す と 下 が る 。 昇 降 舵 が 上 が る と 、 水 平 尾 翼 に 下 向 き の 力 を 生 ず る の で 、 機 首 が 上 が り 、 翼 の 迎 え 角 が 大 き く な る 。 反 対 に 昇 降 舵 を 下 げ る と 、 翼 の 迎 え 角 が 小 さ く な る 。 操 縦 桿 を 手 前 に 引 き 、 翼 の 迎 え 角 を 大 き く す る の を 上 げ 舵 ( か じ ) 、 そ の 反 対 を 下 げ 舵 と い う ︵ 図 G - ( 1 ) ︶ 。
上 げ 舵 と い う こ と ば の 感 じ か ら い っ て 、 上 げ 舵 さ え と れ ば 飛 行 機 は い つ で も 上 昇 し て ゆ く よ う に 考 え が ち で あ る が 、 飛 行 機 が 上 昇 す る た め に は 、 余 裕 推 力 ︵ 同 じ 速 度 で 水 平 飛 行 を す る と き に 対 す る 推 力 の 余 裕 ︶ で 飛 行 機 を 引 っ 張 り 上 げ て や る 必 要 が あ る 。 余 裕 推 力 の あ る こ と が 、 上 昇 す る た め に 必 要 な 絶 対 条 件 な の で あ る 。
反 対 に 飛 行 機 を 降 下 さ せ る に は 、 エ ン ジ ン の ス ロ ッ ト ル レ バ ー を 絞 り 、 推 力 を 減 ら し て や る 。 推 力 が 水 平 飛 行 に 必 要 な 値 よ り も 小 さ く な る と 、 機 は 水 平 飛 行 が で き な く な っ て 降 下 す る 。 急 降 下 爆 撃 機 な ど は 別 と し て 、 民 間 機 が 降 下 す る 場 合 は 、 速 度 を 落 と し た ほ う が 安 全 な の で 、 推 力 を 減 ら す と 同 時 に 上 げ 舵 を 引 き 、 翼 の 迎 え 角 を 大 き く す る の で あ る 。
上 げ 舵 、 下 げ 舵 は 、 翼 の 迎 え 角 を 大 き く し た り 小 さ く し た り す る 舵 で あ っ て 、 飛 行 機 の 上 昇 、 降 下 と は 直 接 結 び 付 か な い こ と に 注 意 す る 必 要 が あ る 。 上 げ 舵 あ る い は 下 げ 舵 を と っ た 結 果 、 飛 行 機 が 上 昇 す る か 降 下 す る か は 、 ス ロ ッ ト ル レ バ ー の 加 減 で 決 ま る の で あ る 。 昇 降 舵 の か わ り に 水 平 安 定 板 の 角 度 を 変 え て も 、 上 げ 舵 、 下 げ 舵 と 同 様 な 効 果 が 得 ら れ る 。
︹ 2 ︺ 補 助 翼 補 助 翼 は 、 左 右 の 主 翼 の 翼 端 部 後 縁 に ヒ ン ジ 付 け さ れ て い る 舵 面 で 、 左 右 ど ち ら か 一 方 を 上 げ る と 他 方 が 下 が る よ う に 連 結 さ れ て い る 。 左 の 補 助 翼 を 下 げ 右 を 上 げ た と す る と 、 左 の 翼 端 部 は 湾 曲 の 大 き な 断 面 に な る の で 揚 力 が 増 し 、 右 の 翼 端 部 は 揚 力 が 減 る の で 、 左 翼 を 上 げ 、 右 翼 を 下 げ る よ う な モ ー メ ン ト を 生 ず る 。 し た が っ て 、 補 助 翼 の 操 作 に よ っ て 機 を 左 右 に 傾 け る こ と が で き る し 、 傾 き か ら 回 復 さ せ る こ と も で き る 。
補 助 翼 の 操 作 に は 、 操 縦 桿 あ る い は 操 縦 ハ ン ド ル を 用 い 、 桿 を 右 に 倒 す か 、 ハ ン ド ル を 右 に 回 す と 、 機 を 右 に 傾 け る モ ー メ ン ト が 生 ず る 。
︹ 3 ︺ 方 向 舵 方 向 舵 は 、 垂 直 安 定 板 の 後 縁 に ヒ ン ジ 付 け さ れ て い る 。 方 向 舵 を 右 に 曲 げ る と 、 垂 直 尾 翼 に 左 向 き の 力 を 生 じ て 機 首 を 右 に 向 け 、 左 に 曲 げ れ ば 、 機 首 は 左 に 向 く 。 方 向 舵 は 普 通 、 足 で ペ ダ ル を 踏 ん で 操 作 す る 。 右 の ペ ダ ル を 踏 め ば 機 首 は 右 向 き 、 左 を 踏 め ば 左 向 き の モ ー メ ン ト が 生 ず る ︵ 図 G - ( 2 ) ︶ 。
︹ 4 ︺ 操 縦 法 操 縦 者 は 、 前 記 の 三 つ の 舵 と ス ロ ッ ト ル レ バ ー を 操 作 し 、 そ の 働 き の 組 合 せ で 飛 行 機 の 速 度 、 姿 勢 、 飛 行 状 態 な ど を 自 由 に 変 え る こ と が で き る 。 船 や 自 動 車 な ど に 比 べ て 、 飛 行 機 の 運 動 は 三 次 元 で 複 雑 に な る の で 、 舵 の 操 作 も よ り 複 雑 に な る 。 た と え ば 右 旋 回 の と き 、 船 は 舵 を 右 に 曲 げ る だ け で よ い が 、 飛 行 機 の 場 合 は 、 補 助 翼 に よ っ て 機 を 右 に 傾 け る と と も に 方 向 舵 を 右 に 曲 げ て 、 機 に 働 く 揚 力 、 重 力 、 遠 心 力 の モ ー メ ン ト が う ま く つ り 合 う よ う に し て や ら な け れ ば な ら な い ︵ 図 H ︶ 。 こ の つ り 合 い が う ま く 保 た れ な い と 、 機 は 旋 回 中 に 内 ま た は 外 に 横 滑 り す る 。 旋 回 半 径 を 小 さ く し よ う と す る と 遠 心 力 が 大 き く な る の で 、 こ れ に 対 抗 す る た め 機 の バ ン ク 角 ︵ 左 右 の 傾 き 角 ︶ を 大 き く し 、 揚 力 の 水 平 成 分 を 大 き く し て や る 必 要 が あ る 。 小 半 径 の 旋 回 を す る 軍 用 機 な ど で は 、 バ ン ク 角 を 60 ~ 90 度 近 く ま で と る こ と が あ る 。 こ れ を 垂 直 旋 回 と い う 。 急 激 な 旋 回 を す る 自 動 車 に 乗 っ て い る と 、 左 右 方 向 の 慣 性 力 を 感 じ て 不 愉 快 で あ る が 、 飛 行 機 の 場 合 、 ど ん な 急 旋 回 を 行 っ て も 、 バ ン ク 角 が 正 し け れ ば 遠 心 力 ︵ 慣 性 力 ︶ と 重 力 の 合 成 力 が 座 席 に 対 し て 垂 直 の 面 内 に あ る の で 、 乗 っ て い る 人 は 横 の 慣 性 力 を ま っ た く 感 じ な い 。
︹ 5 ︺ 水 平 尾 翼 お よ び 垂 直 尾 翼 飛 行 機 に 働 く 力 が つ り 合 っ た 状 態 で 飛 ん で い る と き 、 突 風 を 受 け る な ど し て そ の つ り 合 い が 破 れ た 場 合 、 操 縦 者 が そ の つ り 合 い を 回 復 す る 操 作 を 行 わ な い で も 、 飛 行 機 が 自 力 で も と の つ り 合 い の 状 態 に 戻 る こ と が 望 ま し い 。 こ の 性 質 を 飛 行 機 の 安 定 性 と い う 。 安 定 性 は 普 通 、 縦 ( た て ) 安 定 、 横 安 定 、 方 向 安 定 の 三 つ に 分 け て 考 え ら れ る 。
縦 安 定 を 受 け 持 つ の は 水 平 尾 翼 で あ る 。 た と え ば 、 あ る 迎 え 角 で 飛 ん で い た 飛 行 機 が 突 風 を 受 け 、 迎 え 角 が 大 き く な っ た と す る と 、 水 平 尾 翼 の 迎 え 角 も 増 す の で 、 水 平 尾 翼 に 上 向 き の 力 が 増 し 、 機 首 を 下 げ る よ う な モ ー メ ン ト が 働 い て 、 も と の 機 の 姿 勢 に 戻 す の で あ る 。 同 様 に 、 方 向 安 定 は 垂 直 尾 翼 の 受 け 持 ち で あ る 。 進 行 方 向 に 対 し 機 首 の 方 向 が 、 つ り 合 い の 状 態 か ら 左 ま た は 右 に 振 れ る と 、 垂 直 尾 翼 の 働 き で も と の つ り 合 い の 状 態 に 戻 ろ う と す る 。 こ の 働 き は 、 風 見 鶏 ( ど り ) が つ ね に 風 上 に 向 く の と 同 じ 働 き な の で 、 風 見 安 定 と も よ ば れ る 。
︹ 6 ︺ 翼 の 上 反 角 ( じ ょ う は ん か く ) 飛 行 機 の 横 の 傾 き は 、 主 と し て 翼 の 上 反 角 で 自 動 的 に 修 正 さ れ る ︵ 図 I ︶ 。 機 は 左 右 い ず れ か に 傾 く と 、 傾 い た 方 向 に 横 滑 り を 始 め る 。 翼 に 上 反 角 が あ れ ば 、 下 が っ た ほ う の 翼 は 横 か ら 風 を 受 け る こ と に な る の で 、 機 の 傾 き を 水 平 に 戻 そ う と す る モ ー メ ン ト が 働 く の で あ る 。 背 の 高 い 垂 直 尾 翼 も 横 安 定 に 寄 与 す る 。 機 が 左 ま た は 右 に 傾 き 、 そ の 方 向 に 滑 る と 、 垂 直 尾 翼 は 横 風 を 受 け 、 傾 き を 回 復 す る モ ー メ ン ト を 生 ず る の で あ る 。
﹇ 木 村 秀 政 ﹈
飛 行 機 の 一 般 的 な 各 部 名 称 は 図 J の と お り で あ る 。 エ ン ジ ン 、 燃 料 タ ン ク お よ び そ れ ら の 付 属 装 置 、 配 管 な ど を ま と め て 動 力 装 置 と い う 。 ま た 、 操 縦 装 置 、 計 器 類 、 航 法 通 信 装 置 、 電 気 系 統 、 油 圧 系 統 、 与 圧 装 置 な ど を ま と め て 装 備 と い う 。 飛 行 機 か ら 動 力 装 置 と 装 備 を 除 い た も の が 機 体 で 、 主 翼 、 胴 体 、 尾 翼 、 着 陸 装 置 な ど か ら な る 。
﹇ 木 村 秀 政 ﹈
機 体 は 、 い ろ い ろ な 状 態 で 飛 行 機 に か か る 荷 重 に 耐 え ら れ る よ う 、 じ ょ う ぶ で し か も 軽 量 の 構 造 の も の で な け れ ば な ら な い 。
︹ 1 ︺ 機 体 の 強 度 と 材 料 機 体 の 各 部 が ど れ だ け の 強 さ を 必 要 と す る か は 、 機 種 に よ っ て 異 な り 、 国 の 耐 空 性 基 準 に よ っ て 定 め ら れ て い る 。 輸 送 機 を 例 に と る と 、 引 き 起 こ し そ の 他 の 運 動 で 普 段 の 3 . 7 5 倍 の 荷 重 が か か っ て も 機 が 破 壊 し て は な ら な い と 決 め ら れ て い る が 、 曲 技 用 機 の 場 合 は 、 運 動 が 激 し い の で 、 こ の 荷 重 倍 数 が 9 . 0 倍 に な っ て い て 、 輸 送 機 よ り ず っ と じ ょ う ぶ に で き て い る 。 輸 送 機 も 曲 技 用 機 な み に 強 く す れ ば よ い と 考 え る か も し れ な い が 、 構 造 を じ ょ う ぶ に す る ほ ど 構 造 部 材 の 重 量 が か さ ん で 、 輸 送 機 と し て た い せ つ な 乗 客 、 貨 物 な ど の 搭 載 量 、 燃 料 な ど を 積 め る 量 が 減 っ て 、 性 能 の 悪 い も の に な っ て し ま う の で 、 合 理 的 に 輸 送 機 の 強 度 を 決 め て い る の で あ る 。
軽 く て じ ょ う ぶ な 機 体 の 構 造 方 式 で 現 在 広 く 使 わ れ て い る の は 、 ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 を 用 い た 応 力 外 皮 構 造 で あ る 。 こ れ は 、 ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 の 薄 板 で 外 形 を 形 成 し 、 そ の 内 面 に 強 度 部 材 や 補 強 材 を 取 り 付 け た 、 い わ ゆ る セ ミ モ ノ コ ッ ク 構 造 で あ る 。 最 近 の 高 速 機 、 大 型 機 な ど に は 、 そ の 一 部 に ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 の か わ り に 、 強 度 が 大 き く 耐 熱 性 で も 勝 る チ タ ン 合 金 を 使 う も の が 現 れ た 。 と く に マ ッ ハ 2 . 5 あ た り を 超 す 超 音 速 機 で は 、 空 力 加 熱 の 現 象 で 機 体 表 面 の 温 度 が 2 0 0 ℃ 以 上 に も な る の で 、 こ の 高 温 に 耐 え る よ う 機 体 全 体 を チ タ ン 合 金 で つ く る 必 要 が あ る 。 空 力 加 熱 と は 、 飛 行 機 が 高 速 で 空 気 中 を 飛 ぶ と き 、 空 気 と 機 体 と の 衝 突 お よ び 摩 擦 で 発 熱 す る 現 象 で 、 飛 行 機 が 成 層 圏 を 飛 ぶ 場 合 、 機 体 で い ち ば ん 高 熱 に な る 部 分 の 温 度 は 、 マ ッ ハ 2 で 1 1 7 ℃ 、 マ ッ ハ 2 . 5 で 2 1 5 ℃ 、 マ ッ ハ 3 で 3 3 3 ℃ 、 マ ッ ハ 4 で 6 3 7 ℃ 、 マ ッ ハ 5 で 1 0 2 7 ℃ と ど ん ど ん 高 く な っ て ゆ く 。 機 体 材 料 と し て 最 近 は 、 細 く て 強 い ボ ロ ン 繊 維 や 炭 素 繊 維 を エ ポ キ シ 樹 脂 な ど で 固 め た 複 合 材 料 も 脚 光 を 浴 び て き た 。
︹ 2 ︺ 後 退 翼 形 式 音 速 に ご く 近 い ︵ 遷 音 速 ︶ か 、 音 速 以 上 ︵ 超 音 速 ︶ の 高 速 領 域 で は 、 翼 の 上 面 や 下 面 に 発 生 す る 衝 撃 波 の 害 を 減 ら す た め 、 翼 に 後 退 角 を つ け る こ と が き わ め て 有 効 で あ る 。 後 退 角 の 値 は 速 度 ︵ マ ッ ハ 数 ︶ が 増 す ほ ど 大 き く な っ て お り 、 一 般 に 、 遷 音 速 機 で 35 度 以 下 、 マ ッ ハ 1 . 4 で 45 度 、 マ ッ ハ 2 で 60 度 ぐ ら い が 標 準 で あ る 。 後 退 角 の と く に 大 き い も の で は 、 後 縁 を 直 線 で 結 ん で 三 角 翼 に す る こ と が 多 い 。 S S T の コ ン コ ル ド で は 、 胴 体 へ の 付 け 根 の 後 退 角 が 75 度 に 達 す る 特 殊 の 三 角 翼 を 採 用 し て い る 。
後 退 角 の 大 き な 後 退 翼 は 、 高 速 時 に は 空 気 抵 抗 が 小 さ く て 有 利 で あ る が 、 低 速 時 に は 発 生 す る 揚 力 の 値 が 後 退 角 の な い 直 線 翼 に 比 べ て 低 く 不 利 で あ る 。 そ こ で 、 高 速 で 飛 ぶ と き は 後 退 翼 、 低 速 で 飛 ぶ と き は 直 線 翼 に 近 く な る よ う 、 飛 行 中 に 後 退 角 を 自 由 に 変 え ら れ る 可 変 後 退 翼 v a r i a b l e g e o m e t r y w i n g ︵ VG 翼 ︶ も 一 部 の 軍 用 機 で 使 わ れ て い る 。
︹ 3 ︺ 主 翼 主 翼 は 燃 料 タ ン ク や 引 込 み 脚 の 収 納 場 所 に も な っ て お り 、 翼 構 造 の 一 部 を 油 の 漏 れ な い 構 造 に し て そ の ま ま 燃 料 タ ン ク と し て 使 え る も の も あ る 。 こ れ を イ ン テ グ ラ ル タ ン ク と い う 。 主 翼 に は 、 フ ラ ッ プ や 補 助 翼 が つ い て い る ほ か 、 上 面 に ス ポ イ ラ ー ︵ 阻 害 板 ︶ の つ い た も の が あ る 。 ス ポ イ ラ ー を 立 て る と 、 そ の 後 方 の 気 流 が 乱 れ 、 翼 の 揚 力 が 減 る と と も に 空 気 抵 抗 が 著 し く 増 加 す る の で 、 着 陸 滑 走 の と き 機 を 減 速 す る ブ レ ー キ と し て 有 効 で あ る 。 ま た 機 の 滑 空 角 は 揚 力 と 抗 力 の 比 で 決 ま る の で 、 ス ポ イ ラ ー を 立 て て 揚 力 を 減 ら し 抗 力 を 増 す と 、 滑 空 角 す な わ ち 降 下 角 が 急 に な る の で 、 着 陸 進 入 の 場 合 な ど 、 降 下 角 を 加 減 す る の に 効 果 が あ る 。
︹ 4 ︺ 尾 翼 尾 翼 は 主 翼 と 同 様 の 構 造 で 、 機 を 操 縦 し た り 、 つ り 合 い や 安 定 を 保 つ 目 的 を も つ 。 普 通 は 水 平 尾 翼 と 垂 直 尾 翼 よ り な る が 、 水 平 尾 翼 に 30 度 程 度 の 上 反 角 を 与 え る と 垂 直 尾 翼 の 役 も 兼 ね さ せ る こ と が で き る 。 こ れ を V 型 尾 翼 あ る い は 蝶 ( ち ょ う ) 型 尾 翼 と い う 。
ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン を 胴 体 尾 部 に 装 備 す る い わ ゆ る リ ア エ ン ジ ン 型 で は 、 水 平 尾 翼 を 通 常 の 位 置 よ り 高 く す る 必 要 が あ り 、 ず っ と 高 く し て 垂 直 尾 翼 の 上 に T 形 に の せ た も の が 多 い 。 こ れ を T 型 尾 翼 と い う 。
︹ 5 ︺ 胴 体 胴 体 の 内 部 に は 、 操 縦 室 、 客 室 、 貨 物 室 な ど が 配 置 さ れ 、 ま た 各 種 装 備 品 の 収 納 場 所 に も な っ て い る 。
ジ ェ ッ ト 機 や タ ー ボ プ ロ ッ プ 機 は 、 一 般 に 空 気 密 度 の 小 さ い 高 空 で 高 性 能 を 発 揮 す る の で 、 酸 素 不 足 や 気 温 ・ 気 圧 の 急 激 な 変 化 か ら 乗 員 や 乗 客 の 身 体 を 守 る た め 、 胴 体 内 の 圧 力 を 高 め て 、 い わ ゆ る 与 圧 胴 体 に す る 必 要 が あ る 。 こ れ は 、 ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン か ら 直 接 高 圧 空 気 を 分 岐 す る か 、 別 の 圧 縮 機 で 空 気 を 圧 縮 す る か し て 得 ら れ た 外 気 よ り 圧 力 や 温 度 の 高 い 空 気 を 、 温 度 調 整 し た う え で 室 内 に 循 環 さ せ る も の で 、 ど ん な 高 度 を 飛 ん で い て も 室 内 の 気 圧 は 高 度 2 4 0 0 メ ー ト ル 相 当 の 値 を 下 ら ぬ よ う 調 節 さ れ て い る の が 普 通 で あ る 。
︹ 6 ︺ 着 陸 装 置 着 陸 装 置 は 車 輪 と 油 圧 緩 衝 装 置 ︵ オ レ オ ︶ と を 組 み 合 わ せ た 脚 ( き ゃ く ) か ら な り 、 機 の 重 心 か ら や や 後 方 に 2 組 な い し 4 組 の 主 脚 、 機 首 に 1 組 の 前 脚 を も つ 前 輪 型 と 、 機 の 重 心 よ り や や 前 方 に 主 脚 、 尾 部 に 尾 輪 を も つ 尾 輪 型 が あ る 。 今 日 で は 、 地 上 静 止 時 の 機 の 姿 勢 が 飛 行 時 と 大 差 な く 、 地 上 滑 走 中 の 安 定 が よ い な ど の 理 由 で 前 輪 型 が 多 い 。 飛 行 中 の 空 気 抵 抗 を 減 ら す た め 、 脚 を 翼 、 ナ セ ル 、 胴 体 な ど の 中 に 引 き 込 め ら れ る よ う に な っ て い る も の を 引 込 み 脚 と い う 。 主 脚 の 車 輪 に は ブ レ ー キ が つ い て い る 。
﹇ 木 村 秀 政 ﹈
ジェットエンジンの装備法は、初期にはかなりの種類があったが、今日では、民間機と軍用機でそれぞれ標準型ができた。民間ジェット機は双発以上が多く、エンジンをポッドに入れて主翼の下面に吊(つ)るか、胴体尾部の両側に取り付けるリアエンジン型が標準になった。リアエンジン型は、フランスのカラベル輸送機で初めて用いられた形式で、エンジン位置が高いので地上の異物を吸い込むおそれが少なく、エンジンから出た音の一部が翼に反射して地上に届かないため騒音が低く、翼の影響でエンジン吸い込み口の気流の方向の変化が少ないなどの利点がある。しかし、尾部に重量物が装着されるため機の前後のバランスがとりにくく、エンジンの整備がしにくいなどの欠点があり、今日では中・小型機に多く使われている。
軍用機では、単発はもちろん、双発でも二つのエンジンを左右あるいは上下に並べて胴体内に装着したものが多い。
[木村秀政]
飛 行 機 の 高 性 能 化 、 大 型 化 に 伴 っ て 、 近 代 的 な 飛 行 機 に は 各 種 の 装 備 品 が 積 載 さ れ て い る 。 価 格 の 点 か ら も 重 量 の 点 か ら も 、 飛 行 機 全 体 の な か で 装 備 品 の 占 め る 比 率 が 大 き く な っ て き た 。 つ ま り 、 以 前 は 人 間 の 感 覚 や 運 動 神 経 、 体 力 に 頼 っ て 飛 行 機 を 運 航 し て き た が 、 し だ い に 人 間 の 手 に 負 え な く な っ て 、 そ の 代 理 あ る い は 助 手 を つ と め る 装 備 品 が 必 要 に な っ て き た の で あ る 。
ま ず 、 飛 行 機 の 現 在 の 状 態 あ る い は 置 か れ て い る 環 境 に つ い て の 正 し い 情 報 を 乗 員 に 提 供 す る の が 、 計 器 類 、 航 法 装 置 、 通 信 装 置 で あ る 。 計 器 類 は 、 飛 行 機 の 速 度 、 高 度 、 上 昇 率 な ど の 性 能 、 飛 行 機 の 姿 勢 、 エ ン ジ ン 、 プ ロ ペ ラ の 状 態 な ど を 指 示 す る も の が 多 数 あ り 、 前 方 の 計 器 板 に 取 り 付 け ら れ て い る 。 航 法 装 置 は 、 地 上 の 各 種 の 施 設 や 人 工 衛 星 か ら 送 ら れ て く る 電 波 を 受 け た り 、 機 上 の レ ー ダ ー 、 ジ ャ イ ロ な ど を 使 っ て 機 の 現 在 位 置 、 方 位 、 対 地 速 度 な ど を 知 ら せ て く れ る 。 通 信 装 置 は 、 地 上 あ る い は 他 機 と の 交 信 を す る も の で 、 航 空 交 通 管 制 か ら の 指 示 や 気 象 通 報 な ど を 伝 達 す る 。
乗 員 は 、 各 装 置 か ら の 情 報 に 基 づ い て 、 飛 行 機 を 運 航 す る の で あ る が 、 最 近 の 飛 行 機 で は 三 舵 の 操 縦 、 脚 や フ ラ ッ プ の 上 げ 下 げ な ど 、 人 力 で は 無 理 な も の が 多 い の で 、 人 間 の 能 力 を 補 う も の と し て 、 油 圧 装 置 や 電 気 装 置 が 装 備 さ れ て い る 。 こ れ ら の 装 置 の 油 圧 ポ ン プ や 発 電 機 は 、 エ ン ジ ン の 補 機 駆 動 部 に よ っ て 駆 動 さ れ る 。 ま た 、 条 件 に よ っ て は 人 間 以 上 の 正 確 な 働 き を す る 自 動 操 縦 装 置 ︵ オ ー ト パ イ ロ ッ ト ︶ も 使 わ れ 、 人 間 の 能 力 を 補 う と 同 時 に 、 人 間 の 手 を 省 く 役 目 も す る 。
﹇ 木 村 秀 政 ﹈
飛行機のなかで輸送機は、以前に比べると大型のものが使われるようになった。これは世界的に、(1)航空旅客や航空貨物が年々増え続けてきたこと、(2)輸送機の運航経費のなかには、運航乗務員の費用などが大型機も小型機とほぼ同じですむものがあるので、大型機ほど乗客1人当り(あるいは貨物1トン当り)の運航経費が安くなる傾向があること、(3)とくに日本では、空港事情から運航便数が制限されているため、一度にできるだけ多くの乗客や貨物を運ぶ必要があること、などの理由による。また軍用機では、緊急時の大量輸送の要求や、戦車などの小型機では運べない兵器があることなどから大型化が進められた。以前は、その時代に巨人機とよばれていた輸送機はえてして非実用的であったが、今日の巨人機はエンジンや構造技術の進歩によって主力実用機としても成功していることが大きな進歩といえる。
いまの最新技術を利用すれば、ボーイング747などよりも優れた大型機をつくれそうに思えるが、実際に開発するには巨額の費用がかかり、それを経済的に回収できるかどうかが大きな問題になる。
一方、飛行機は、大型化とともに高速化も大きな課題の一つである。今日のジェット輸送機の多くは、マッハ0.8前後の速度で飛行するが、これは1950年代の初期のジェット輸送機とほとんど変わらない。その理由は、速度が音速に近づくと空気抵抗が急に増すので、そうなる手前の速度で飛ぶのがもっとも経済的だからである。次に経済的に飛べる速度は、一足飛びにマッハ2以上となる。この速度で飛行するSSTのように、長距離をずっと超音速で巡航するには、エンジンと機体の空力的な形を、超音速での燃料消費が少なくてすむようにくふうする必要がある。また材料も、空力加熱に耐えられるものでなければならない。
[木村秀政・久世紳二]
飛 行 機 の 公 害 は 離 着 陸 時 の 騒 音 が 主 で あ る が 、 ほ か に 超 音 速 飛 行 を す る と 、 ソ ニ ッ ク ブ ー ム を 発 生 す る 。 ま た 排 気 ガ ス の 規 制 も 行 わ れ て い る が 、 全 大 気 汚 染 に 占 め る 割 合 と し て は 小 さ い 。 今 後 S S T が 本 格 的 に 使 わ れ る 場 合 は 、 現 在 の 輸 送 機 よ り も 高 い 高 度 を 巡 航 す る の で 、 そ の 地 球 の オ ゾ ン 層 へ の 影 響 が 検 討 さ れ て い る 。 地 球 の 温 暖 化 に つ な が る CO 2 ︵ 二 酸 化 炭 素 ︶ の 排 出 を 削 減 す る こ と に 関 し て 、 航 空 機 も 新 型 ほ ど 輸 送 量 当 り の 燃 費 が 低 い こ と が 役 に た っ て い る が 、 さ ら に 液 体 水 素 な ど 他 の 燃 料 の 使 用 も 研 究 さ れ て い る 。
︹ 1 ︺ 騒 音 飛 行 機 の 発 生 す る 騒 音 の 源 は 主 と し て エ ン ジ ン で 、 プ ロ ペ ラ 機 時 代 に は そ れ ほ ど 問 題 に な ら ず 、 む し ろ 飛 行 機 の 魅 力 の 一 つ に 思 わ れ て い た 時 代 も あ る 。 そ れ が ジ ェ ッ ト 機 に な っ て 、 騒 音 が 急 に 問 題 に な っ て き た の は 、 ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン が 推 力 を 発 生 す る 機 構 そ の も の に よ る と い っ て よ い 。 ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン は ガ ス を 後 方 に 噴 出 し 、 そ の 反 動 で 推 力 を 発 生 す る が 、 こ の 場 合 、 と く に 初 期 の ジ ェ ッ ト 機 に 多 か っ た フ ァ ン の な い ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン で は 、 ガ ス の 噴 出 速 度 が き わ め て 大 き く 、 そ れ が 周 囲 の 空 気 と 混 じ り 合 う と き に 激 し い 空 気 の 乱 れ が お こ り 、 そ れ が ジ ェ ッ ト 騒 音 と な る 。
ジ ェ ッ ト 機 が 大 型 化 し 、 エ ン ジ ン の 出 力 エ ネ ル ギ ー が 増 大 す る と と も に 、 そ の 騒 音 も ま す ま す 大 き く な り 、 空 港 周 辺 に 公 害 を 及 ぼ す に 至 っ た 。 こ の た め 1 9 6 9 年 、 ア メ リ カ の F A A ︵ 連 邦 航 空 局 ︶ が 、 新 し く 開 発 す る 輸 送 機 に 対 し て 騒 音 の 最 低 基 準 を 決 め 、 こ れ を 満 足 し な け れ ば 型 式 ( か た し き ) 証 明 を 交 付 し な い こ と に し た 。 続 い て 1 9 7 1 年 、 国 際 民 間 航 空 機 関 ︵ I C A O ( イ カ オ ) ︶ も ほ と ん ど 同 じ 基 準 を 採 択 し た 。 さ ら に 1 9 7 7 年 に は 、 よ り 低 騒 音 を 要 求 す る 新 し い 騒 音 基 準 も で き て 、 そ の 後 世 界 中 で 新 た に 開 発 さ れ る 輸 送 機 は 、 こ の 基 準 以 下 の 騒 音 特 性 を も つ こ と に な っ た 。
ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン の 騒 音 は 、 排 気 ガ ス に よ る ジ ェ ッ ト 騒 音 と 、 タ ー ボ フ ァ ン か ら 出 る フ ァ ン 騒 音 が 主 で あ る 。 ジ ェ ッ ト 騒 音 を 低 減 す る 方 法 と し て は 、 ( 1 ) タ ー ボ フ ァ ン の バ イ パ ス 比 を で き る だ け 大 き く し 、 排 気 全 体 の 流 速 を 減 ら す 、 ( 2 ) エ ン ジ ン の 後 部 に 、 ジ ェ ッ ト 排 気 と フ ァ ン 後 流 を 混 ぜ る ミ キ サ ー を 取 り 付 け る 、 な ど が あ る 。 フ ァ ン 騒 音 を 低 く す る に は 、 ( 1 ) フ ァ ン の 動 翼 と 静 翼 と の 空 力 干 渉 を 減 ら す 、 ( 2 ) エ ン ジ ン の ダ ク ト 内 、 そ の 他 の 部 分 に 吸 音 材 を 取 り 付 け る 、 な ど が あ る 。 こ の よ う な 方 法 で 、 今 日 の 高 バ イ パ ス 比 の タ ー ボ フ ァ ン エ ン ジ ン 付 き の 輸 送 機 は 、 初 期 の ジ ェ ッ ト 輸 送 機 よ り 、 騒 音 が 20 デ シ ベ ル ほ ど も 低 く な っ て い る 。
地 上 に 及 ぼ す 騒 音 を 減 ら す た め に 、 離 陸 の 場 合 の 上 昇 角 や 着 陸 進 入 の 降 下 角 を 大 き く す る と 、 低 高 度 を 飛 ぶ こ と が 少 な く な る の で 、 地 上 の 騒 音 は そ れ だ け 低 く な る 。
︹ 2 ︺ ソ ニ ッ ク ブ ー ム 飛 行 機 が 音 速 以 上 の 速 さ で 飛 ぶ と 、 胴 体 先 端 、 主 翼 前 縁 な ど か ら 衝 撃 波 が 発 生 す る 。 衝 撃 波 は 空 気 の 圧 力 が 一 瞬 や や 上 昇 す る 波 で 、 地 上 に 到 達 す る と 爆 発 音 の よ う に 聞 こ え る 。 こ の 現 象 を ソ ニ ッ ク ブ ー ム と い う 。 そ の 圧 力 上 昇 が 大 き い 場 合 に は 、 建 物 の ガ ラ ス が 割 れ た り 、 そ の 他 い ろ い ろ の 害 を 及 ぼ す 。 一 般 に 、 圧 力 上 昇 が 0 . 5 / 1 0 0 0 気 圧 以 内 な ら ほ ぼ 問 題 は な い が 、 2 / 1 0 0 0 気 圧 を 超 え る と 被 害 が 大 き く な る 。 ソ ニ ッ ク ブ ー ム に よ る 被 害 を 減 少 す る に は 、 飛 行 高 度 を 高 め る の が も っ と も 有 効 な 手 段 で あ る 。 高 度 が 高 く な る ほ ど 、 飛 行 機 に 発 生 し た 衝 撃 波 は 空 気 中 を 伝 わ る 間 に 減 衰 し 、 地 上 に 達 す る こ ろ に は 勢 力 が 弱 ま っ て し ま う か ら で あ る 。
﹇ 木 村 秀 政 ・ 久 世 紳 二 ﹈
航 空 の 安 全 は 、 飛 行 機 自 身 の ほ か 、 そ れ を 扱 う 乗 員 、 地 上 で 支 援 す る 人 や 設 備 な ど 、 多 く の 協 力 に よ っ て 保 た れ る 。 う ち 飛 行 機 の 安 全 性 で は 、 ま ず 、 出 会 う 気 象 環 境 に 対 し て 、 機 体 の 強 度 を ほ と ん ど の 乱 気 流 に 耐 え う る よ う に し 、 落 雷 に 備 え て 機 体 各 部 の 電 気 的 な 接 続 を 完 全 に し 、 着 氷 に 対 し て 防 除 氷 装 置 を 備 え る な ど し て い る 。 飛 行 機 自 身 の 破 損 や 故 障 に 対 し て は 、 そ れ が お こ り に く い よ う に す る と と も に 、 も し 破 損 し た 場 合 で も 安 全 に 飛 行 が 続 け ら れ る よ う に 、 機 体 構 造 に フ ェ イ ル セ ー フ 性 や 損 傷 許 容 性 を も た せ た り 、 装 備 を 多 重 に し 、 故 障 す る と 自 動 的 に か わ り の 装 備 に 切 り 替 わ る よ う に し た り し て い る 。 ま た パ イ ロ ッ ト が 最 小 の 作 業 量 で 操 縦 で き る よ う に 、 目 や 手 を 動 か す の が な る べ く 少 な く て す む よ う に し 、 操 縦 席 回 り を 見 や す く 操 作 し や す い 設 計 に し て い る 。 機 の 上 昇 力 や 飛 行 性 は 、 片 方 の エ ン ジ ン が 停 止 し て も 安 全 に 飛 べ る よ う に 余 裕 を も た せ て い る 。 火 災 に 備 え て も 、 必 要 な 場 所 に 防 火 壁 や 火 災 探 知 警 報 装 置 、 消 火 装 置 を つ け 、 内 装 の 耐 火 性 を 高 め る な ど し て い る 。
ま た 事 故 後 の 安 全 に 対 し て は 、 客 席 を 非 常 着 陸 の と き 9 G ︵ 新 し い 輸 送 機 で は 1 6 G ︶ の 減 速 度 に も 耐 え ら れ る よ う に し 、 ま た 停 止 後 火 災 が 広 が ら な い う ち に 、 全 員 が 90 秒 以 内 に 脱 出 で き る よ う 、 非 常 脱 出 口 の 数 や 脱 出 用 ス ラ イ ド ︵ 自 動 膨 張 式 の 滑 り 台 ︶ 、 非 常 用 機 内 照 明 に 気 を 配 る な ど し て い る 。
こ の よ う な 飛 行 機 の 安 全 上 必 要 な こ と は 、 各 国 政 府 の 耐 空 性 基 準 に 定 め ら れ て い る 。 飛 行 機 を 開 発 し た 場 合 は 、 耐 空 性 基 準 に あ っ た 設 計 で あ る こ と を 、 い ろ い ろ な 試 験 や 計 算 で 証 明 し て 、 政 府 の 型 式 証 明 を 受 け な け れ ば な ら な い 。 ま た 一 機 一 機 に は 、 型 式 証 明 と 同 じ 安 全 性 が 保 た れ て い る と い う 政 府 の 耐 空 証 明 が 必 要 で 、 こ れ が な い と 飛 行 す る こ と が で き な い 。
耐 空 性 基 準 は と き ど き 改 正 さ れ 、 安 全 性 に 対 す る 要 求 が し だ い に 高 め ら れ て い て 、 新 し く 開 発 す る 飛 行 機 ほ ど 、 こ の 強 化 さ れ た 要 求 に あ わ せ る こ と に な っ て い る 。 ま た 必 要 な 場 合 に は 、 す で に 運 航 中 の 飛 行 機 に も 、 安 全 性 を 高 め る た め の 改 造 が 指 示 さ れ る 。
﹇ 木 村 秀 政 ・ 久 世 紳 二 ﹈
飛 行 機 は い ろ い ろ な 技 術 を 総 合 し て つ く ら れ る が 、 エ レ ク ト ロ ニ ク ス の 進 歩 に よ り 新 し い 技 術 が 開 発 、 導 入 さ れ て い る 。
︹ 1 ︺ C C V 飛 行 機 の 操 縦 装 置 は 、 操 縦 桿 ( か ん ) 、 方 向 舵 ( だ ) ペ ダ ル と 舵 面 と を 、 索 や ロ ッ ド で つ な げ て 人 力 で 直 接 動 か す 方 式 が 昔 か ら 使 わ れ て き た 。 飛 行 機 が 大 型 ・ 高 速 に な り 、 人 の 力 で は 舵 を 動 か す の が む ず か し く な る と 、 油 圧 を 使 っ た 機 力 操 縦 装 置 が 使 わ れ る よ う に な っ た 。 こ の 場 合 も 、 操 縦 桿 か ら 舵 面 の 油 圧 作 動 筒 の バ ル ブ ま で は 、 索 や ロ ッ ド で つ な い で 手 の 動 き を 伝 え て い た 。
し か し 近 年 、 電 子 技 術 が 進 歩 し て く る と 、 こ う し た 機 械 的 な 伝 達 よ り も 、 む し ろ 操 縦 桿 と 舵 面 の 作 動 筒 の バ ル ブ と を 電 線 で つ な い で 電 気 で 伝 達 し た ほ う が 、 確 実 で 便 利 と 考 え ら れ る よ う に な っ た 。 さ ら に こ の 場 合 は 、 人 と 舵 面 と の 間 に コ ン ピ ュ ー タ を 入 れ て 、 人 の 操 作 の 間 違 い を 修 正 し た り 、 そ の と き の 飛 行 状 態 に 応 じ た 最 適 な 操 縦 を さ せ た り す る こ と も で き る 。 こ の よ う な 電 線 と コ ン ピ ュ ー タ 経 由 の 操 縦 装 置 を フ ラ イ ・ バ イ ・ ワ イ ヤ f l y - b y - w i r e ︵ F B W ︶ と よ び 、 新 し い 飛 行 機 に 取 り 入 れ ら れ る よ う に な っ て き て い る 。
F B W 式 の 操 縦 装 置 は 、 コ ン ピ ュ ー タ で 舵 を 自 動 的 に 動 か し て 、 飛 行 機 の 安 全 性 を 増 し た り 、 機 体 の 構 造 に か か る 力 を 減 ら し た り す る こ と も で き る 。 こ う し た 舵 の 自 動 操 作 で 機 の 安 定 性 や 強 度 を 補 う 手 法 を 、 ア ク テ ィ ブ ・ コ ン ト ロ ー ル 技 術 a c t i v e c o n t r o l t e c h n o l o g y ︵ A C T ︶ と よ ん で い る 。 A C T を 使 う と 、 従 来 よ り 小 さ い 尾 翼 で 十 分 な 安 定 性 を 保 っ た り 、 弱 め の 機 体 構 造 で も 飛 行 中 に か か る 力 に 安 全 に 耐 え る こ と が で き る の で 、 機 の 空 気 抵 抗 や 重 量 を 減 ら す こ と が で き る 。 そ こ で 、 最 初 か ら A C T を 使 う こ と を 前 提 に 飛 行 機 全 体 を 設 計 す る と 、 ず っ と 軽 く 抵 抗 の 少 な い 機 体 に ま と め た り 、 こ れ ま で は 考 え ら れ な か っ た よ う な 飛 び 方 を さ せ る こ と も 可 能 で 、 こ う し た 設 計 の 飛 行 機 を C C V と よ ん で い る 。
︹ 2 ︺ S T O L ( エ ス ト ー ル ) と V T O L ( ブ イ ト ー ル ) S T O L 機 は 短 い 滑 走 路 で 離 着 陸 が で き る よ う に 、 V T O L 機 は 垂 直 離 着 陸 が で き る よ う に く ふ う さ れ た 飛 行 機 で あ る 。 小 型 ・ 低 速 の S T O L 機 は 、 各 種 実 用 さ れ て い る 。 し か し 、 本 格 的 な パ ワ ー ド ・ リ フ ト ︵ プ ロ ペ ラ の 後 流 や ジ ェ ッ ト 排 気 な ど 、 機 の 動 力 を 利 用 し て 揚 力 を 高 め る ︶ の 中 ・ 大 型 S T O L 機 は 、 こ れ ま で 試 作 機 は い ろ い ろ つ く ら れ た が 、 実 用 さ れ た の は 日 本 の 新 明 和 P S - 1 対 潜 飛 行 艇 と そ の 改 造 型 の U S - 1 救 難 機 ぐ ら い で あ っ た 。 だ が 1 9 8 0 年 代 中 期 に 、 ソ 連 ︵ ウ ク ラ イ ナ ︶ の ア ン ト ノ フ A n - 7 4 輸 送 機 が 実 運 用 を 開 始 し 、 ア メ リ カ で は 1 9 9 3 年 に 大 型 S T O L 輸 送 機 マ ク ダ ネ ル ・ ダ グ ラ ス C - 1 7 の 実 運 用 が 始 ま る な ど 、 軍 用 機 を 主 体 に し だ い に 用 途 が 広 ま り つ つ あ る 。 一 方 V T O L も 、 実 用 さ れ て い る の は イ ギ リ ス の B A e ハ リ ア ー 戦 闘 攻 撃 機 と 、 そ れ を ア メ リ カ で 生 産 し た マ ク ダ ネ ル ・ ダ グ ラ ス A V - 8 、 ソ 連 ︵ ロ シ ア ︶ の ヤ コ ブ レ フ Y a k - 3 6 戦 闘 機 だ け で あ っ た 。 し か し 近 年 、 新 し い S T O V L ( ス ト ー ブ ル ) ︵ 短 滑 走 離 陸 ・ 垂 直 着 陸 ︶ の 攻 撃 戦 闘 機 の 開 発 が 盛 ん に な っ て き て い る 。
︹ 3 ︺ 複 合 材 料 飛 行 機 は 、 1 9 3 0 年 ご ろ か ら ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 を 主 材 料 と し て き た 。 だ が 1 9 6 0 年 代 あ た り か ら 、 よ り 軽 く て 強 い 複 合 材 料 を 機 体 構 造 に 応 用 す る 研 究 が 始 ま り 、 木 材 、 金 属 に 続 く 第 三 の 主 材 料 と し て 注 目 さ れ て い る 。
航 空 機 用 の 複 合 材 料 と し て は 、 ま ず 1 9 4 0 年 代 か ら 、 ガ ラ ス 繊 維 を 合 成 樹 脂 で 固 め た F R P ︵ 繊 維 強 化 プ ラ ス チ ッ ク ︶ が 使 わ れ 始 め た 。 ガ ラ ス F R P は 、 い ま で も レ ド ー ム ︵ レ ー ダ ー ア ン テ ナ の 覆 い ︶ や 舵 面 な ど に 広 く 使 わ れ て い る 。 ガ ラ ス F R P は 、 軽 く て 強 い 反 面 、 力 が か か っ た と き の 変 形 が や や 大 き い の で 、 翼 や 胴 体 の 主 材 料 と し て は 、 グ ラ イ ダ ー や 軽 飛 行 機 を 除 け ば ほ と ん ど 使 わ れ て い な か っ た 。 し か し 、 1 9 6 0 年 ご ろ か ら 研 究 が 始 ま っ た 複 合 材 料 は 、 炭 素 繊 維 、 ボ ロ ン 繊 維 、 ア ラ ミ ド 繊 維 な ど を エ ポ キ シ 樹 脂 な ど で 固 め た も の で 、 こ れ ま で の 主 材 料 の ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 よ り 軽 く て 強 く 、 力 が か か っ た と き の 変 形 も 少 な い 。 機 体 構 造 に 使 う と 、 ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 よ り も 25 % 程 度 の 重 量 軽 減 が 見 込 め る の で 、 今 後 の 発 展 が 期 待 さ れ て い る 。 実 用 機 へ の 応 用 は 1 9 7 0 年 代 か ら で 、 ま ず F - 1 4 、 F - 1 5 、 F - 1 6 な ど の 戦 闘 機 の 尾 翼 に 使 わ れ 、 続 い て F - 1 8 な ど で は 主 翼 も 複 合 材 料 で つ く る よ う に な り 、 1 9 9 0 年 代 の F - 2 2 は 機 体 構 造 の 24 % が 複 合 材 で で き て い る 。 民 間 機 で も 1 9 8 0 年 代 に は 、 ボ ー イ ン グ 7 6 7 の 舵 面 、 エ ア バ ス A 3 2 0 の 尾 翼 な ど 、 構 造 へ の 応 用 範 囲 が 広 が り 、 1 9 9 0 年 代 の ボ ー イ ン グ 7 7 7 で は 機 体 構 造 の 約 10 % に 複 合 材 が 使 わ れ て い る 。 小 型 機 で は 全 複 合 材 の 機 体 も つ く ら れ て い る 。 ま た 繊 維 を エ ポ キ シ な ど の 合 成 樹 脂 で な く 、 ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 な ど の 金 属 の 中 に 並 べ た 金 属 複 合 材 も あ り 、 こ れ を 飛 行 機 に 応 用 す る 研 究 も 進 め ら れ て い る 。
︹ 4 ︺ 電 子 式 デ ィ ス プ レ ー 飛 行 機 の 操 縦 席 に は 多 く の 計 器 や 表 示 灯 が あ り 、 大 型 の 輸 送 機 な ど で は 、 と く に そ の 数 が 増 え て き た 。 こ れ は 飛 行 機 の 進 歩 の 象 徴 の よ う に い わ れ た こ と も あ っ た が 、 操 縦 士 が つ ね に 多 く の も の に 注 意 し て い な け れ ば な ら な い の は 、 安 全 上 も け っ し て よ い こ と で は な い 。 そ こ で 、 多 数 の 計 器 の か わ り に 数 個 の C R T ︵ ブ ラ ウ ン 管 ︶ に 置 き 換 え 、 こ れ に コ ン ピ ュ ー タ か ら の 画 像 や 文 字 を 出 さ せ る や り 方 が 増 え て き た 。
こ う し た 電 子 デ ィ ス プ レ ー 方 式 で は 、 飛 行 中 の そ の 時 々 の 状 況 に 応 じ て 、 操 縦 士 に 必 要 な 情 報 だ け を 選 ん で 表 示 す る こ と が で き る 。 当 面 関 係 の な い 情 報 は 出 さ ず に お く こ と が で き る の で 、 操 縦 士 は よ け い な 情 報 に 注 意 を そ ら さ れ る こ と が な く な り 、 よ り 安 全 な 操 縦 が で き る 。 ま た 、 表 示 の 方 法 も 従 来 の 電 気 ― 機 械 式 の 計 器 と 違 っ て 、 画 像 や 文 字 、 あ る い は い ま ま で の 計 器 と 同 様 な パ タ ー ン な ど 、 い ろ い ろ な 方 法 に 切 り 替 え る こ と も で き 、 状 況 に 応 じ た 最 適 な 表 示 を 用 い る こ と が で き る 。 ま た 運 航 の 各 場 合 に 必 要 な チ ェ ッ ク リ ス ト や 、 飛 行 機 に 異 常 が 生 じ た と き の 処 置 の マ ニ ュ ア ル な ど も 表 示 で き 、 操 縦 士 と コ ン ピ ュ ー タ と の 対 話 も 行 え る 。
さ ら に C R T に か わ っ て 、 各 種 の 平 型 の 電 子 式 デ ィ ス プ レ ー も 実 用 さ れ て い て 、 C R T よ り も 電 力 消 費 が 少 な く 、 軽 く 、 信 頼 性 も 高 く な る と さ れ て い る 。 こ う し た 計 器 板 の 電 子 化 に よ り 、 従 来 、 人 を 驚 か す ほ ど 多 数 の 計 器 や 表 示 灯 で 埋 ま っ て い た 操 縦 席 は 、 す っ き り し て 見 や す い も の に か わ っ て き た 。
ま た 操 縦 が F B W 方 式 の 場 合 は 、 長 年 親 し ま れ て き た 操 縦 桿 や ハ ン ド ル を 、 操 縦 士 の 力 や 手 首 の 動 き を 電 子 制 御 に 伝 え る 小 型 の レ バ ー に 置 き 換 え た 飛 行 機 ︵ サ イ ド ・ ス テ ィ ッ ク 方 式 ︶ も つ く ら れ る よ う に な っ た 。 こ う し た 自 動 化 を 進 め た 機 体 で は 、 人 間 の 操 作 と 自 動 操 作 と の 役 割 分 担 や 優 先 順 な ど を 、 ど の よ う に 設 定 す る か が 重 要 に な っ て い る 。
﹇ 木 村 秀 政 ・ 久 世 紳 二 ﹈
﹃ 木 村 秀 政 編 ﹃ 航 空 宇 宙 辞 典 ﹄ ︵ 1 9 8 3 ・ 地 人 書 館 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 日 本 航 空 宇 宙 学 会 編 ﹃ 航 空 宇 宙 工 学 便 覧 ﹄ ︵ 1 9 9 2 ・ 丸 善 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 航 空 情 報 編 ﹃ 航 空 用 語 事 典 ﹄ ︵ 1 9 8 1 ・ 酣 燈 社 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 日 本 航 空 広 報 室 編 ﹃ 最 新 ・ 航 空 実 用 事 典 ﹄ ︵ 1 9 7 8 ・ 朝 日 ソ ノ ラ マ ︶ ﹄ ▽ ﹃ 日 本 航 空 技 術 協 会 編 ﹃ 航 空 技 術 用 語 辞 典 ﹄ ︵ 1 9 9 2 ・ 日 本 航 空 技 術 協 会 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 別 冊 航 空 情 報 部 編 ﹃ 最 新 航 空 用 語 1 5 0 ﹄ ︵ 1 9 8 9 ・ 酣 燈 社 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 木 村 秀 政 監 修 ﹃ 万 有 ガ イ ド シ リ ー ズ 2 ~ 7 航 空 機 ﹄ ︵ 1 9 8 1 ~ 1 9 8 2 ・ 小 学 館 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 木 村 秀 政 監 修 ﹃ 航 空 学 入 門 ﹄ 上 下 ︵ 1 9 7 5 ・ 酣 燈 社 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 谷 一 郎 著 ﹃ 飛 行 の 原 理 ﹄ ︵ 岩 波 新 書 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 近 藤 次 郎 著 ﹃ 飛 行 機 は な ぜ 飛 ぶ か ﹄ ︵ 講 談 社 ・ ブ ル ー バ ッ ク ス ︶ ﹄ ▽ ﹃ 佐 貫 亦 男 著 ﹃ 設 計 か ら の 発 想 ﹄ ︵ 講 談 社 ・ ブ ル ー バ ッ ク ス ︶ ﹄ ▽ ﹃ 佐 貫 亦 男 著 ﹃ ジ ャ ン ボ ・ ジ ェ ッ ト は ど う 飛 ぶ か ― ― ボ ー イ ン グ 7 4 7 の メ カ ニ ズ ム を 楽 し む ﹄ ︵ 講 談 社 ・ ブ ル ー バ ッ ク ス ︶ ﹄ ▽ ﹃ 馬 場 敏 治 著 ﹃ 航 空 機 の 設 計 ― ― 航 空 学 再 入 門 ﹄ ︵ 1 9 8 0 ・ 槇 書 店 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 応 用 機 械 工 学 編 集 部 編 ﹃ 航 空 機 と 設 計 技 術 ﹄ ︵ 1 9 8 1 ・ 大 河 出 版 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 石 川 好 美 著 ﹃ フ ラ イ ト の 秘 密 ・ ト ラ ベ ル の 秘 訣 ﹄ ︵ 1 9 8 2 ・ 誠 文 堂 新 光 社 ︶ ﹄ ▽ ﹃ 別 冊 家 庭 画 報 ﹃ の り も の の し く み 大 図 鑑 ﹄ ︵ 1 9 9 3 ・ 世 界 文 化 社 ︶ ﹄
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) 日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
飛行機 (ひこうき) aeroplane airplane
目次 飛行機の歴史 鳥の模倣からの脱却 ライト兄弟の成功 ライトを追い越したフランス勢 第1次世界大戦 高性能化への要求 プロペラからジェットへ ジェット機の時代 超音速飛行 性能と構造 飛行の原理 離陸および着陸と失速速度 翼面荷重と高揚力装置 推進装置 操縦装置 最大速度と巡航速度 上昇限度と与圧室 胴体 尾翼と安定性 降着装置 機体の構造と強度 装備 世界の航空宇宙工業 アメリカ ヨーロッパ カナダ
人 間 が 乗 っ て 空 気 の 中 を 飛 ぶ 乗 物 を 総 称 し て 航 空 機 と い い , そ の 中 で , ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン , プ ロ ペ ラ な ど の 推 進 装 置 の 力 で 前 進 し , そ の 際 , 固 定 翼 ︵ 回 転 し た り , 羽 ば た い た り す る こ と の な い 翼 ︶ に 生 ず る 動 的 な 上 向 き の 空 気 力 , す な わ ち 揚 力 に よ っ て 自 分 の 全 重 量 を 支 え て 飛 ぶ も の が 飛 行 機 で あ る 。 航 空 機 に は , 飛 行 機 の ほ か , 推 進 装 置 の な い グ ラ イ ダ ー , 回 転 翼 の 揚 力 を 利 用 す る ヘ リ コ プ タ ー , 空 気 よ り 軽 い ガ ス を い れ た 袋 に 働 く 空 気 の 静 浮 力 を 利 用 す る 気 球 , 飛 行 船 な ど い ろ い ろ の 種 類 が あ る 。 こ の 中 で 気 球 や 飛 行 船 は 原 理 が 簡 単 で 楽 に 作 れ る の で , 早 く も 1 7 8 3 年 に は フ ラ ン ス の モ ン ゴ ル フ ィ エ 兄 弟 の 気 球 で 人 類 最 初 の 飛 行 が 行 わ れ た 。 し か し 飛 行 機 は 原 理 的 に む ず か し く , 実 現 ま で に は い ろ い ろ の 問 題 を 解 決 し な け れ ば な ら な か っ た の で , そ れ よ り 1 2 0 年 も 遅 れ て , 1 9 0 3 年 に な っ て , や っ と ア メ リ カ の ラ イ ト 兄 弟 の 飛 行 機 が 人 類 最 初 の 動 力 飛 行 に 成 功 し た 。
し か し い っ た ん 道 が 開 け る と , 飛 行 機 の ほ う が 進 歩 が 速 か っ た 。 今 や 飛 行 機 は , 速 度 , 上 昇 力 , 搭 載 量 , 航 続 距 離 な ど の 性 能 や 実 用 性 な ど の 点 で は る か に 他 を 引 き 離 し , す べ て の 航 空 機 の 中 で 世 界 の 保 有 機 数 が も っ と も 多 く , 主 役 的 役 割 を 果 た し て い る 。 こ れ は 飛 行 機 が 他 の 航 空 機 に 比 べ て 原 理 的 に 優 れ て い る た め で あ る 。 気 球 や 飛 行 船 の 場 合 は , 浮 き 上 が る の に 利 用 し て い る の が 空 気 の 静 浮 力 で あ る た め , 発 生 で き る 浮 力 は 速 度 と 関 係 な く , 容 積 1 m 3 に つ い て 1 k g f あ ま り し か な い 。 こ れ に 反 し , 飛 行 機 の 翼 に 生 ず る 揚 力 は 速 度 と と も に 増 え る の で , 翼 面 積 1 m 2 の 出 せ る 揚 力 を ど ん ど ん 上 げ る こ と が で き た 。 例 え ば 1 9 0 3 年 の ラ イ ト フ ラ イ ヤ ー 機 の 翼 は 面 積 1 m 2 に つ き 7 k g f の 揚 力 し か 出 せ な か っ た が , 現 在 の ジ ャ ン ボ ジ ェ ッ ト ︵ ボ ー イ ン グ 7 4 7 ︶ の 翼 は 1 m 2 で 7 0 0 k g f あ ま り の 揚 力 が 出 せ る 。 こ の た め , 同 じ 重 量 に 対 し て 外 形 が コ ン パ ク ト に な り , 空 気 抵 抗 が 減 り , い ろ い ろ な 性 能 が よ く な る の で あ る 。
飛 行 機 の 歴 史
鳥 の 模 倣 か ら の 脱 却
鳥 が 大 空 を 自 由 に 飛 ん で い る よ う す を 見 て , 自 分 た ち も あ の よ う に 飛 ん で み た い と 願 い , ま た く ふ う す れ ば 飛 べ る か も 知 れ な い と 人 間 が 考 え 始 め た の は ず い ぶ ん 古 い こ と に 違 い な い 。 有 名 な イ カ ロ ス と ダ イ ダ ロ ス の ギ リ シ ア 伝 説 を は じ め , 多 く の 物 語 や 古 代 の 遺 跡 が そ れ を 証 明 し て い る 。 し か し 鳥 の 基 本 的 な 飛 び 方 で あ る 羽 ば た き 飛 行 は , 羽 ば た き と い う 一 つ の 動 作 で , 自 分 の 目 方 を 支 え る 上 向 き の 揚 力 を 出 す と 同 時 に 空 気 抵 抗 に う ち 勝 っ て 前 進 す る た め の 推 力 も 発 生 す る と い う , き わ め て 巧 妙 , 複 雑 な 原 理 か ら な っ て い る 。 こ れ を そ の ま ま 外 見 的 に 模 倣 し よ う と し た た め , 人 間 の 飛 行 の 夢 は な か な か 実 現 し な か っ た 。 科 学 技 術 の 分 野 で も 天 才 と い わ れ , ヘ リ コ プ タ ー や 羽 ば た き 機 の 研 究 に も 取 り 組 ん だ ダ ・ ビ ン チ で さ え , 人 間 の 飛 行 の 実 現 に 対 し て は , 何 の 貢 献 も し て い な い 。
鳥 の 羽 ば た き 飛 行 を 模 倣 す る と い う 長 い 間 の 迷 い か ら 覚 め て , 人 間 の 飛 行 の 可 能 性 へ 向 か っ て 第 一 歩 を 踏 み 出 し た の は , イ ギ リ ス の G . ケ ー リ ー で あ る と 考 え ら れ る 。 彼 は 揚 力 ・ 推 力 分 離 説 を 提 唱 し , 1 7 9 9 年 , 揚 力 を 発 生 す る 固 定 翼 と 推 力 を 発 生 す る 手 動 の フ ラ ッ パ ー ︵ 板 を ば た ば た さ せ る も の ︶ か ら な る 飛 行 機 の 設 計 を 発 表 し ︵ 図 1 - a ︶ , 1 8 0 9 年 に は , 翼 面 積 1 9 m 2 の 固 定 翼 と 尾 翼 を も っ た グ ラ イ ダ ー を 製 作 , 無 人 滑 空 試 験 に 成 功 し た 。
91 年 ド イ ツ の O . リ リ エ ン タ ー ル は , 固 定 翼 グ ラ イ ダ ー を 製 作 , 彼 自 身 が 操 縦 し て 滑 空 実 験 を 始 め た 。 失 速 事 故 で 墜 死 す る ま で に 2 0 0 0 回 の 実 験 を 行 い , 固 定 翼 の 空 力 特 性 に つ い て , 貴 重 な 資 料 を 残 し た 。 彼 に 続 い て 多 く の 研 究 家 が グ ラ イ ダ ー の 実 験 を 始 め た が , ア メ リ カ の シ ャ ヌ ー ト O c t a v e C h a n u t e ︵ 1 8 3 2 - 1 9 1 0 ︶ は , 自 然 界 に は 見 ら れ な い 複 葉 翼 の グ ラ イ ダ ー を 考 案 し た 。 複 葉 と は 主 翼 の 翼 面 積 を 2 枚 に 分 け て 上 下 に 配 置 す る 形 式 で , 単 葉 翼 に 比 べ て 全 体 が コ ン パ ク ト に ま と ま る 利 点 が あ り , そ の 後 の 飛 行 機 設 計 者 に 大 き な 影 響 を 与 え た 。 ︵ 図 1 - b ︶
ラ イ ト 兄 弟 の 成 功
︿ 固 定 翼 グ ラ イ ダ ー に よ る 滑 空 実 験 に よ り , 翼 の 空 力 特 性 や , 飛 行 中 の 安 定 性 や 操 縦 性 を 十 分 に 研 究 し て お き , こ れ に エ ン ジ ン と プ ロ ペ ラ か ら な る 推 進 装 置 を つ け て 飛 行 機 を 完 成 す る ﹀ 。 こ れ が そ の こ ろ の 研 究 者 の 考 え て い た 飛 行 機 完 成 へ の 道 程 で あ り , そ れ に 沿 っ て 世 界 最 初 の 飛 行 機 を 飛 行 さ せ る の に 成 功 し た の が ア メ リ カ の ラ イ ト 兄 弟 で あ る 。 こ う い う 時 代 に な っ て も , フ ラ ン ス の ア デ ー ル C l é m e n t A d e r ︵ 1 8 4 1 - 1 9 2 5 ︶ は グ ラ イ ダ ー 実 験 を ま っ た く 行 わ ず , い き な り 蒸 気 機 関 付 き の 飛 行 機 を 製 作 し て 1 8 9 0 年 と 97 年 に 実 験 を 行 っ た が , 滑 走 中 ジ ャ ン プ す る に と ど ま り , 飛 行 は で き な か っ た 。 し か し フ ラ ン ス で は , ア デ ー ル を 飛 行 機 の パ イ オ ニ ア と し て あ る 程 度 評 価 し て い る 。
ラ イ ト 兄 弟 は 19 世 紀 末 に 現 れ た 各 国 の 研 究 者 の 中 で も , 一 頭 地 を 抜 く す ば ら し い 人 物 で あ っ た 。 当 時 の 多 く の 研 究 者 が 試 行 錯 誤 的 に 仕 事 を 進 め て い っ た の と 対 照 的 に , 彼 ら は 飛 行 の 実 現 に 必 要 な 項 目 を 一 つ ず つ 実 験 的 に 解 明 し て 成 果 を 積 み 上 げ て い っ た 。 ま た , 他 の 研 究 者 が と に か く 地 面 を 離 れ る こ と だ け に 気 を と ら れ て い た の に 対 し , 彼 ら は , 飛 び 上 が っ た 後 の 飛 行 機 の 操 縦 性 や 安 定 性 に つ い て も , グ ラ イ ダ ー 実 験 で 十 分 研 究 を 積 ん で い た 。 推 進 装 置 に つ い て も , 家 業 で あ る 自 転 車 製 造 の 技 術 を 生 か し て , 軽 く て 馬 力 の あ る 12 馬 力 の ガ ソ リ ン エ ン ジ ン を 自 作 し た 。
こ う し て ラ イ ト 兄 弟 は , 自 作 第 1 号 飛 行 機 フ ラ イ ヤ ー 1 号 の 飛 行 に 十 分 自 信 を も っ て い た に 違 い な い 。 1 9 0 3 年 12 月 17 日 , ノ ー ス ・ カ ロ ラ イ ナ 州 キ テ ィ ホ ー ク で 行 わ れ た 第 1 回 の テ ス ト 飛 行 で は , 離 陸 す る と 思 わ れ る 地 点 に カ メ ラ を 三 脚 で 据 え つ け , シ ャ ッ タ ー を 押 す 人 員 を 待 機 さ せ て い た 。 か く し て 人 類 最 初 の 動 力 飛 行 と い う 世 紀 の 瞬 間 は み ご と に カ メ ラ に と ら え ら れ た ︵ 図 1 - c ︶ 。 た い へ ん な 自 信 と い わ な け れ ば な ら な い 。 こ の 日 , 合 計 4 回 の 飛 行 が 行 わ れ , 兄 弟 が 2 回 ず つ 飛 ん だ 。 最 高 記 録 は 兄 ウ ィ ル バ ー の 操 縦 し た 4 回 目 で , 時 間 59 秒 , 距 離 に し て 2 6 0 m で あ っ た 。
ラ イ ト を 追 い 越 し た フ ラ ン ス 勢
空 飛 ぶ 乗 物 に 関 し て は , 熱 気 球 ︵ 1 7 8 3 , モ ン ゴ ル フ ィ エ 兄 弟 ︶ , 水 素 気 球 ︵ 1 7 8 3 , シ ャ ル ル ︶ , 落 下 傘 ︵ 1 7 9 7 , ガ ル ヌ ラ ン ︶ , 飛 行 船 ︵ 1 8 5 2 , ジ フ ァ ー ル ︶ と “ 世 界 最 初 ” を 独 占 し て き た フ ラ ン ス も , 飛 行 機 に 関 し て は ラ イ ト 兄 弟 の ア メ リ カ に 後 れ を と っ て し ま っ た 。 フ ラ ン ス で 初 め て 飛 行 機 が 飛 ん だ の は 1 9 0 6 年 で , そ れ も パ リ 在 住 の ブ ラ ジ ル 人 , サ ン ト ス ・ デ ュ モ ン A l b e r t o S a n t o s D u m o n t ︵ 1 8 7 3 - 1 9 3 2 ︶ に よ る も の で あ っ た 。 し か し , フ ラ ン ス は 研 究 者 の 層 が 厚 く , 19 世 紀 末 か ら 多 く の 研 究 者 が 独 自 の 発 想 で 飛 行 機 の 研 究 に 取 り 組 ん で い た の で , そ の 研 究 成 果 が 1 9 0 8 年 こ ろ か ら 一 斉 に 開 花 し て , 性 能 の 優 れ た 飛 行 機 が 次 々 に 現 れ た 。 09 年 7 月 25 日 , L . ブ レ リ オ は 自 作 の Ⅺ 型 単 葉 機 ︵ 図 1 - d ︶ で 初 め て イ ギ リ ス 海 峡 を 横 断 し た ︵ 3 6 k m , 32 分 ︶ 。 こ の 偉 業 で ブ レ リ オ 機 の 声 価 が 高 ま り , 3 0 0 機 と い う 当 時 と し て は 考 え ら れ な い ほ ど の 大 量 注 文 を 受 け て ベ ス ト セ ラ ー に な っ た 。 そ の ほ か , フ ァ ル マ ン , ボ ア ザ ン , ア ン ト ア ネ ッ ト な ど の 優 秀 機 が 続 々 出 現 し て 新 記 録 を 樹 立 し た り , 競 技 会 で 優 勝 し た り し て , 10 年 こ ろ に は フ ラ ン ス は 完 全 に 先 進 国 ア メ リ カ を 抜 い て 飛 行 機 王 国 と な っ た 。
第 1 次 世 界 大 戦
1 9 1 4 年 7 月 , 第 1 次 世 界 大 戦 が 勃 発 し た 。 こ の 時 点 で 飛 行 機 の 世 界 記 録 を 見 る と , 速 度 2 0 3 . 9 k m / h , 高 度 6 1 2 0 m , 航 続 距 離 1 0 2 1 k m で す べ て フ ラ ン ス が 独 占 し て い た が , ラ イ ト 兄 弟 に よ る 初 飛 行 か ら わ ず か 10 年 の 間 に か な り の 水 準 に ま で 達 し て い た こ と が う か が わ れ る 。 世 界 の 航 空 先 進 国 は , 飛 行 機 の 軍 事 的 価 値 を 認 識 し , ア メ リ カ で は 1 9 0 9 年 ラ イ ト 複 葉 機 を 通 信 隊 に 配 属 さ せ , フ ラ ン ス , ド イ ツ , イ ギ リ ス な ど の 諸 国 は 10 年 か ら 12 年 に か け て 航 空 部 隊 を 発 足 さ せ た 。 し か し 特 別 に 軍 用 を 目 的 と し て 開 発 し た 飛 行 機 は な く , 形 式 か ら い っ て も 単 葉 , 複 葉 , 三 葉 , ト ラ ク タ ー 式 ︵ プ ロ ペ ラ が 機 首 に あ る も の ︶ , プ ッ シ ャ ー 式 ︵ プ ロ ペ ラ が 座 席 の 後 ろ に あ る も の ︶ な ど 種 々 雑 多 の 状 態 で あ っ た 。
飛 行 機 は こ う い う 状 態 で 戦 場 に か り 出 さ れ , 偵 察 , 爆 撃 , 攻 撃 , 戦 闘 な ど 種 々 な 任 務 に つ い た 。 そ の 結 果 , 一 つ の 機 種 で す べ て の 目 的 に 対 応 す る の は 無 理 で , 目 的 に 応 じ て 特 徴 を 生 か し た 単 能 機 が 要 求 さ れ る よ う に な っ た 。 つ ま り 戦 前 ま で は 飛 行 機 は す べ て ︿ 飛 ぶ た め の 機 関 ﹀ で あ っ た が , 戦 争 の 経 験 に よ っ て , 爆 撃 に 適 し た 爆 撃 機 , 戦 闘 に 適 し た 戦 闘 機 と い う よ う に 目 的 に よ っ て い ろ い ろ の 機 種 が で き た 。
ま た 機 体 の 形 式 か ら い う と , 単 葉 は 空 気 抵 抗 が 少 な く て ス ピ ー ド を 出 す に は 有 利 だ が , 複 葉 は 激 し い 運 動 に 耐 え る じ ょ う ぶ な 構 造 を 軽 く 作 る の に 有 利 で あ り , 両 者 の 得 失 を 比 較 検 討 す る と , 当 時 の 性 能 の レ ベ ル で は 総 合 的 に 複 葉 の ほ う が 有 利 だ と い う 結 論 に な っ て , し だ い に 形 式 の 淘 汰 が 行 わ れ , 大 戦 末 期 に は , 両 軍 の ほ と ん ど す べ て の 機 種 が 複 葉 , ト ラ ク タ ー 式 に 統 一 さ れ た 。 ま た 構 造 的 に は , ド イ ツ の ユ ン カ ー ス や ド ル ニ エ の よ う に ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 製 の 機 体 も 現 れ た が , 一 般 的 に は 当 時 の 性 能 , 大 き さ で は 木 製 の ほ う が 軽 く て 実 用 的 と い う 結 論 に な っ て , ほ と ん ど す べ て 木 製 構 造 に な っ た 。 こ れ よ り 四 半 世 紀 後 の 第 2 次 大 戦 で は 結 論 が ま っ た く 逆 に な っ て , 軍 用 機 の ほ と ん ど す べ て が 単 葉 , 金 属 製 に 統 一 さ れ た こ と と 比 較 す る と 興 味 深 い 。
第 1 次 大 戦 で , 飛 行 機 の 行 動 量 は 平 時 に 比 べ て け た 違 い に 増 し た の で , そ の 経 験 の 集 積 で 飛 行 機 は た く ま し く 成 長 し , 実 用 性 が 飛 躍 的 に 向 上 し た 。 し か し 飛 行 機 の 設 計 方 針 と し て は , 木 製 複 葉 と い う 保 守 的 な 線 に 固 ま っ て し ま っ た の で , 20 年 代 に 平 和 な 時 代 を 迎 え て も , な か な か そ こ か ら 脱 却 で き な か っ た 。 そ の 意 味 で 飛 行 機 発 達 史 上 , 20 年 代 , と く に そ の 前 半 は 暗 黒 時 代 で あ っ た と い っ て も よ い 。
高 性 能 化 へ の 要 求
第 1 次 大 戦 が 始 ま る ま で は , 飛 行 機 の 性 能 も 幼 稚 だ っ た の で , 大 戦 が 終 わ っ て み る と 世 界 中 の 空 が ほ と ん ど 未 開 拓 の ま ま 残 さ れ て い た 。 一 方 , 4 年 間 の 大 戦 の 試 練 で 飛 行 機 の 航 続 性 能 も 信 頼 性 も 大 幅 に 向 上 し て い た の で , 各 国 の 飛 行 家 た ち に よ っ て , 空 路 開 拓 へ の 挑 戦 が 盛 ん に 行 わ れ た 。 こ れ ら の 開 拓 飛 行 で は , 飛 行 機 の も つ 性 能 に 対 し て か な り 無 理 な 冒 険 的 な 企 画 が 多 か っ た の で , 成 功 す れ ば 無 名 の 飛 行 家 が 一 躍 空 の 英 雄 と た た え ら れ る 反 面 , 目 的 を 果 た さ ず 挫 折 す る も の も 多 か っ た 。 ア メ リ カ と ヨ ー ロ ッ パ の 間 に 横 た わ る 北 大 西 洋 横 断 飛 行 の 場 合 は , 1 9 1 9 年 か ら 30 年 ま で の 12 年 間 に , 挑 戦 61 回 に 対 し 成 功 は わ ず か に 17 回 , あ と は 離 陸 に 失 敗 す る か , 故 障 で 引 き 返 し た り , 不 時 着 す る か , 行 方 不 明 に な る か で あ っ た 。
新 空 路 に 対 す る 挑 戦 は , 第 1 次 大 戦 と 第 2 次 大 戦 の 間 続 き , 地 球 上 の ほ と ん ど す べ て の 部 分 が 開 拓 さ れ た 。 そ の う ち の お も な 飛 行 を 表 に 示 す 。 こ の よ う な 長 距 離 飛 行 を 行 う に は , 飛 行 機 の 航 続 性 能 の 向 上 が 要 求 さ れ る わ け だ が , 一 方 , 第 1 次 大 戦 直 後 か ら ヨ ー ロ ッ パ , ア メ リ カ を 中 心 に 本 格 的 に 開 始 さ れ た 定 期 航 空 輸 送 も し だ い に 発 展 し て き て , 輸 送 機 の 高 性 能 化 に 対 す る 要 求 が 強 く な っ て き た こ と に も よ る 。 と く に 国 土 の 広 い ア メ リ カ で は こ の 要 求 は 切 実 で , 1 9 2 0 年 代 の 終 り こ ろ か ら ノ ー ス ロ ッ プ , ロ ッ キ ー ド な ど ア メ リ カ の メ ー カ ー に よ っ て , 近 代 化 革 命 の の ろ し が 上 げ ら れ た の で あ る 。 こ れ は , 当 時 い ま だ に 幅 を き か し て い た 空 気 抵 抗 の 大 き い 複 葉 や 支 柱 付 き 高 翼 単 葉 か ら , 低 翼 片 持 翼 単 葉 へ , 固 定 脚 か ら 引 込 脚 へ , 木 製 や 金 属 の 骨 組 み に 羽 布 を 張 っ た 旧 式 な 構 造 か ら 薄 い ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 の 応 力 外 皮 構 造 へ と 思 い 切 っ た 改 革 を し , さ ら に 主 翼 フ ラ ッ プ , 過 給 機 付 き エ ン ジ ン , 可 変 ピ ッ チ プ ロ ペ ラ な ど の 近 代 装 備 を 加 え , 画 期 的 な 高 性 能 化 を は か ろ う と す る も の で あ っ た 。 1 9 3 0 年 代 半 ば に 就 航 し た ダ グ ラ ス D C 3 , ロ ッ キ ー ド ・ エ レ ク ト ラ , ボ ー イ ン グ 2 4 7 な ど の 輸 送 機 は そ の 代 表 的 な 例 ︵ 図 1 - e ︶ で , 長 い 間 2 0 0 k m / h 前 後 と 低 迷 を 続 け て い た 輸 送 機 の 巡 航 速 度 も こ の 近 代 化 で 一 躍 3 0 0 k m / h を 突 破 す る に 至 っ た の で あ る 。
プ ロ ペ ラ か ら ジ ェ ッ ト へ
1 9 3 9 年 9 月 , ド イ ツ 軍 が ポ ー ラ ン ド に 侵 攻 し , 第 2 次 大 戦 が 始 ま っ た 。 前 の 第 1 次 大 戦 で も 多 数 の 飛 行 機 が い ろ い ろ の 目 的 に 活 躍 し た が , 当 時 は 兵 器 と し て の 威 力 が ま だ ま だ 不 足 で , 陸 軍 , 海 軍 の 行 動 に 対 し て 補 助 的 な 役 割 を 果 た し た に す ぎ な か っ た 。 と こ ろ が 第 2 次 大 戦 で は , 飛 行 機 の 性 能 が 飛 躍 的 に 向 上 し て い た の で , 空 軍 の 優 劣 , 勝 敗 が 戦 局 の 帰 趨 を 決 定 す る ま で に な っ た 。 こ の た め 参 戦 国 は , 少 し で も 早 く 敵 に ま さ る 優 秀 機 を 開 発 , 生 産 し て 戦 場 に 送 る こ と に 全 力 を あ げ た か ら , 各 機 種 の 性 能 は 飛 躍 的 に 向 上 し た 。 各 機 種 の 中 で も っ と も 高 速 を 要 求 さ れ る 戦 闘 機 の 最 大 速 度 は 平 均 し て 6 0 0 k m / h 台 に 達 し , 大 戦 末 期 に は 7 0 0 k m / h を 超 す も の も 現 れ た 。
プ ロ ペ ラ 機 が こ の よ う な 高 速 で 飛 行 す る と , 高 速 で 回 転 し つ つ 高 速 で 前 進 す る プ ロ ペ ラ の 羽 根 の 先 端 部 は 音 速 に 近 づ き , プ ロ ペ ラ 効 率 の 急 激 な 低 下 を 招 く 。 こ の 見 地 か ら , プ ロ ペ ラ 機 に は 最 大 速 度 の 限 界 が あ る は ず で , 大 戦 末 期 の 戦 闘 機 は そ の 限 界 に 近 づ い て き た の で あ る 。
こ の 障 害 を 突 破 し て , よ り 高 速 を 求 め る な ら ば , ジ ェ ッ ト 機 に よ る よ り ほ か は な い 。 そ の 動 力 と な る ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン に つ い て は , す で に イ ギ リ ス の W . ホ イ ッ ト ル の 1 9 3 0 年 の 特 許 が あ る が , ド イ ツ や イ ギ リ ス の い く つ か の 会 社 が 自 社 の 企 画 と し て ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン の 開 発 に 着 手 し た の は 30 年 代 の 後 半 で あ っ た 。 そ の 結 果 , 39 年 8 月 24 日 に は ド イ ツ の ハ イ ン ケ ル H e 1 7 8 ︵ 図 1 - f ︶ が ジ ェ ッ ト 機 と し て 世 界 で 初 め て の 飛 行 に 成 功 し , 40 年 イ タ リ ア の カ プ ロ ニ ・ カ ン ピ ー ニ N 1 , 41 年 イ ギ リ ス の グ ロ ス タ ー E 2 8 / 3 9 と 続 い た 。
し か し , ち ょ う ど 大 戦 中 で 各 国 と も 実 用 機 の 改 良 , 生 産 に 追 わ れ て い た の で , ジ ェ ッ ト 機 の 実 用 化 は お く れ , 大 戦 末 期 の 44 年 こ ろ に な っ て , ド イ ツ の メ ッ サ ー シ ュ ミ ッ ト M e 2 6 2 , イ ギ リ ス の グ ロ ス タ ー ・ ミ ー テ ィ ア な ど が 戦 線 に 現 れ た 。 こ れ ら は 最 大 速 度 8 5 0 ~ 9 0 0 k m / h と 断 然 プ ロ ペ ラ 機 を し の い だ が , 初 期 の タ ー ボ ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン は 燃 費 が き わ め て 悪 か っ た た め 航 続 時 間 が 短 く , 空 軍 で 主 力 の 座 を 占 め る ま で に は 至 ら な か っ た 。
そ れ に し て も , プ ロ ペ ラ 機 の 性 能 が 限 界 に 近 づ い た と き , タ イ ミ ン グ よ く ジ ェ ッ ト 機 が 出 現 し , こ の た め 飛 行 機 の 性 能 が , 図 2 の 変 遷 図 で も わ か る と お り , 停 迷 期 を 迎 え る こ と な く ど ん ど ん 発 展 し て い っ た こ と は , ま こ と に 興 味 深 い 。 し か も ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン の 研 究 は 各 国 政 府 の 先 見 性 に よ っ て 国 策 と し て 始 め ら れ た の で は な く , 個 人 の 研 究 者 の 発 想 や 民 間 企 業 の 企 画 に よ っ て ス タ ー ト し , あ る 程 度 成 果 が あ が っ た と こ ろ で , 政 府 が 本 腰 を 入 れ て 援 助 を 始 め た の で あ る 。
ジ ェ ッ ト 機 の 時 代
1 9 4 5 年 8 月 , 第 2 次 大 戦 が 終 了 す る と と も に , ジ ェ ッ ト 機 の 実 用 化 が 急 速 に 進 展 し た 。 初 め の う ち は ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン の 燃 費 が 著 し く 悪 く , 航 続 時 間 が 短 く な る の で , 速 度 や 上 昇 力 に 重 点 を お く 戦 闘 機 が ま ず ジ ェ ッ ト 化 さ れ , エ ン ジ ン の 燃 費 改 良 に つ れ て , 爆 撃 機 , 攻 撃 機 な ど の 機 種 に も ジ ェ ッ ト 化 が 及 び 始 め た 。 さ ら に 燃 費 が 改 善 さ れ , 経 済 的 な 運 航 が 見 込 ま れ る よ う に な っ て , ジ ェ ッ ト 輸 送 機 も 登 場 し た 。 そ の 第 1 号 は イ ギ リ ス の デ ハ ビ ラ ン ド ・ コ メ ッ ト 1 型 機 で 52 年 5 月 に 定 期 航 空 に 就 航 し た が , 与 圧 胴 体 の 外 板 の 疲 労 破 壊 で 空 中 爆 発 事 故 が 2 回 続 け て 起 こ り , 就 航 停 止 に な っ て し ま っ た 。 こ の た め , 58 年 10 月 , ア メ リ カ の ボ ー イ ン グ 7 0 7 , イ ギ リ ス の コ メ ッ ト 4 型 の 大 西 洋 横 断 空 路 就 航 が 本 格 的 な ジ ェ ッ ト 輸 送 時 代 の 幕 あ け と な っ た 。
続 い て 60 年 こ ろ ま た 一 つ の 革 新 が 起 こ る 。 タ ー ボ ジ ェ ッ ト に お け る タ ー ボ フ ァ ン 方 式 の 導 入 で あ る 。 60 年 こ ろ ま ず 出 現 し た タ ー ボ フ ァ ン は バ イ パ ス 比 0 . 5 ~ 1 . 0 程 度 で あ っ た が , 70 年 こ ろ か ら バ イ パ ス 比 5 . 0 以 上 の い わ ゆ る 高 バ イ パ ス 比 タ ー ボ フ ァ ン が 実 用 化 さ れ た 。 こ れ は , 高 バ イ パ ス 比 の 採 用 に よ り 推 進 効 率 が 向 上 し た う え に , エ ン ジ ン 本 体 の 熱 効 率 や 要 素 の 効 率 も 改 良 さ れ た の で , ス ト レ ー ト ジ ェ ッ ト は も ち ろ ん , 初 期 の 低 バ イ パ ス 比 タ ー ボ フ ァ ン に 比 べ て も , 著 し い 燃 費 や 騒 音 の 低 減 が 達 成 さ れ た 。 一 方 , こ れ ら の 高 バ イ パ ス 比 タ ー ボ フ ァ ン は 出 力 の う え で も 目 覚 ま し い 向 上 を 示 し , 離 昇 推 力 20 ~ 2 5 t と い う 強 力 な エ ン ジ ン が 生 産 さ れ る よ う に な っ た 。 こ れ に 伴 っ て , 従 来 の 輸 送 機 よ り 幅 の 広 い 胴 体 ︵ い わ ゆ る ワ イ ド ボ デ ィ ︶ を も っ た ボ ー イ ン グ 7 4 7 , マ ク ダ ネ ル ・ ダ グ ラ ス D C 1 0 , エ ア バ ス A 3 0 0 な ど の 大 型 輸 送 機 が 70 年 こ ろ か ら 次 々 と 就 航 し た 。 ジ ェ ッ ト 機 の 出 現 は , 飛 行 機 の ス ピ ー ド ア ッ プ だ け で な く , 大 型 化 を も 可 能 に し た の で あ る 。
超 音 速 飛 行
ジ ェ ッ ト 機 の 出 現 に よ り , す べ て の 機 種 に わ た っ て 飛 行 機 の ス ピ ー ド が 飛 躍 的 に 増 加 し た の は い う ま で も な い 。 と く に 軍 用 機 の 高 速 化 は 目 覚 ま し く , 各 国 の 第 一 線 戦 闘 機 は マ ッ ハ 2 . 0 ~ 2 . 5 の 高 速 に 到 達 し た 。 世 界 で い ち ば ん 速 い の は ロ ッ キ ー ド S R 7 1 A 偵 察 機 で 3 5 2 9 . 5 6 k m / h ︵ 約 マ ッ ハ 3 . 3 ︶ の 記 録 を も っ て い る 。
し か し 民 間 輸 送 機 は 経 済 性 の 見 地 か ら 一 般 に 音 速 の 少 し 手 前 の 8 0 0 ~ 9 5 0 k m / h ︵ マ ッ ハ 0 . 8 内 外 ︶ を 巡 航 速 度 と し て い る 。 こ れ は 初 期 の ボ ー イ ン グ 7 0 7 以 来 , 今 日 ま で 変 わ ら な い 。 将 来 と も こ の 速 度 範 囲 は 民 間 輸 送 機 に も っ と も 適 し た 速 度 と し て , 永 久 に 使 わ れ る で あ ろ う 。
民 間 輸 送 機 の 分 野 で も 超 音 速 輸 送 機 ︵ S S T ︶ と し て フ ラ ン ス と イ ギ リ ス で 共 同 開 発 し た コ ン コ ル ド が 1 9 7 6 年 以 降 就 航 し て い る 。 ふ つ う の 亜 音 速 輸 送 機 に 比 べ て 2 倍 以 上 の マ ッ ハ 2 . 0 の 巡 航 速 度 を も つ が , 客 席 が 約 1 0 0 内 外 と 少 な く , 航 続 距 離 も 6 0 0 0 k m と も の 足 り な い た め , 開 発 国 以 外 か ら の 注 文 が な く , わ ず か 16 機 で 生 産 を 打 ち 切 っ て し ま っ た 。 し か し 現 代 の 技 術 を も っ て す れ ば , さ ら に 高 速 で , 搭 載 量 も 航 続 距 離 も コ ン コ ル ド よ り は る か に 優 れ た 第 2 世 代 S S T の 開 発 は 可 能 で あ る 。 近 い 将 来 に 実 現 す る 可 能 性 が あ る 。
図 2 に 過 去 80 年 に わ た る 飛 行 機 の 速 度 , 高 度 , 航 続 距 離 の 世 界 記 録 の 変 遷 を 示 す 。 ジ ェ ッ ト 機 の 出 現 に よ り , 1 9 5 0 年 代 か ら 60 年 代 に か け て , 各 記 録 と も 目 覚 ま し い 進 歩 を 示 し て い る が , 70 年 に 入 る と 進 歩 の 度 合 が 鈍 化 し , 現 在 で は 性 能 的 に は ほ ぼ 実 用 上 の 限 界 に 達 し て い る よ う に 思 わ れ る 。 し た が っ て 飛 行 機 の 今 後 の 進 歩 は , 安 全 性 , 信 頼 性 , 快 適 性 , 経 済 性 な ど の 向 上 に 重 点 が お か れ る よ う に 思 わ れ る 。
性 能 と 構 造
飛 行 の 原 理
地 面 の 上 を 走 る 電 車 や 自 動 車 は , そ の 重 量 が 車 輪 に 働 く 上 向 き の 地 面 反 力 で 支 え ら れ て い る 。 ま た 水 の 上 を 走 る 船 は , そ の 重 量 が ア ル キ メ デ ス の 原 理 に 基 づ く 水 の 浮 力 で 支 え ら れ て い る 。 こ れ ら の 場 合 は , 支 え ら れ て い る と い う 事 実 が わ れ わ れ の 目 に 見 え る の で , 別 に 物 理 学 的 な 説 明 を 聞 か な い で も 直 観 的 に そ れ を 認 め る こ と が で き る 。 飛 行 機 の 場 合 は , そ の 重 量 , つ ま り そ れ に 働 く 重 力 が 揚 力 で 支 え ら れ て い る わ け だ が , 空 気 は 地 面 や 水 と 違 っ て 目 に 見 え な い の で , こ の 現 象 の 理 解 は 直 観 的 と い う わ け に は い か な い 。 だ か ら , 多 く の 人 間 や 貨 物 を 乗 せ た 何 百 t も あ る 金 属 の 塊 が ど う し て 空 を 飛 ぶ の か 不 思 議 で な ら な い と い う 疑 問 も 生 ま れ て く る の で あ ろ う 。
飛 行 機 を 支 え る 揚 力 は , 空 気 の 流 れ , い い 換 え る と 風 の 力 の 一 種 で あ る 。 風 と い う と , わ れ わ れ は す ぐ 自 然 の 風 を 連 想 す る が , 静 止 し た 物 体 に あ る 速 さ ︵ V ︶ の 風 が 当 た る 場 合 と , 物 体 が 同 じ 速 さ ︵ V ︶ で 静 止 し た 空 気 の 中 を 反 対 方 向 に 走 る 場 合 と は , 現 象 と し て は 同 じ で あ り , 風 の 力 の 生 じ 方 は 変 わ ら な い 。 こ れ は 自 転 車 で 走 っ て 見 れ ば す ぐ わ か る こ と で , 自 然 の 風 が ま っ た く な い と き で も , 5 m / s の 速 さ で 走 れ ば , 5 m / s の 風 が 進 行 方 向 と 反 対 の 前 方 か ら 身 体 に 当 た っ て く る 。 ジ ェ ッ ト 輸 送 機 が 2 7 0 m / s ︵ 9 7 0 k m / h ︶ と い う 速 さ で 静 止 し た 空 気 の 中 を 飛 べ ば , 2 7 0 m / s と い う も の す ご い 風 が 前 方 か ら 機 体 に 当 た っ て く る の で あ る 。 こ の 場 合 , 風 の 力 は 速 度 の 2 乗 に 比 例 し て 増 し て い く 。 風 速 50 ~ 6 0 m / s の 台 風 で す ら , 家 や 塀 を 倒 す 力 を も っ て い る の だ か ら , ジ ェ ッ ト 機 に 働 く 空 気 力 が ど ん な に 大 き い も の か 想 像 で き る だ ろ う 。 問 題 は 風 の 力 の 方 向 で あ る 。 ふ つ う の 物 体 は 空 気 の 流 れ の 中 に 置 か れ る と , 流 れ の 方 向 に 押 さ れ る 力 , つ ま り 空 気 抵 抗 を 受 け る 。 同 じ よ う に 飛 行 機 も 空 気 抵 抗 ︵ 抗 力 ︶ を 受 け る が , た だ 飛 行 機 が 一 般 の 物 体 と 違 う 点 は , そ の 翼 に 抗 力 と 同 時 に 流 れ に 直 角 上 向 き の 力 , す な わ ち 揚 力 を 生 ず る こ と で あ る 。
翼 に 揚 力 を 生 ず る 現 象 は , 原 理 的 に は 野 球 の ボ ー ル の カ ー ブ と 同 じ で あ る ︵ 図 3 - a ︶ 。 ボ ー ル を 投 げ る と き , 回 転 を 与 え て や る と , ボ ー ル の 表 面 近 く の 空 気 が ボ ー ル に く っ つ い て 回 転 を 始 め る 。 ボ ー ル が 前 進 す る た め に 前 方 か ら 当 た っ て く る 風 速 と 回 転 に よ る 流 速 と が 合 成 さ れ , ボ ー ル の 片 側 で は 流 速 が 増 し て 圧 力 が 下 が り , 反 対 の 側 で は 流 速 が 減 っ て 圧 力 が 上 が る ︵ ベ ル ヌ ー イ の 定 理 ︶ 。 そ の 圧 力 差 で ボ ー ル の 軌 道 を 曲 げ る 力 が 生 じ ︵ マ グ ヌ ス 効 果 ︶ , ボ ー ル は カ ー ブ す る の で あ る 。
翼 の 断 面 の 形 を 調 べ て み る と , 一 般 に 上 面 の ほ う が 湾 曲 度 が 大 き く , 下 面 の ほ う は 小 さ く な っ て お り , 気 流 方 向 に 対 し て い く ら か の 迎 え 角 ︵ 翼 断 面 の 基 準 線 と 飛 行 方 向 , つ ま り 流 れ の 方 向 と の な す 角 度 ︶ が つ い て い る 。 こ う い う 形 の 翼 が 空 気 中 を あ る 速 さ で 進 む と , 翼 の ま わ り に 図 3 - b に 示 す 方 向 に ぐ る ぐ る 回 る 流 れ ︵ 循 環 流 ︶ が 起 こ り , こ れ が 前 か ら 当 た る 風 速 と 合 成 さ れ て , 翼 上 面 の 圧 力 は 大 気 圧 よ り も 低 く ︵ 負 圧 ︶ , 翼 下 面 で は 大 気 圧 よ り も 高 く ︵ 正 圧 ︶ な る 。 そ の 結 果 , 翼 上 面 は 負 圧 に よ っ て 吸 い 上 げ ら れ , 下 面 は 正 圧 に よ っ て 押 し 上 げ ら れ , こ の 両 方 の 作 用 が い っ し ょ に な っ て 翼 に 揚 力 が 生 ず る の で あ る 。 た だ 翼 と 野 球 の ボ ー ル と 違 う と こ ろ は , ボ ー ル は 外 か ら 回 転 を 与 え て や ら な い と そ の ま わ り に 循 環 流 を 生 じ な い が , 翼 は 適 当 な 迎 え 角 を 保 っ て 空 気 中 を ま っ す ぐ 運 動 さ せ る だ け で そ の ま わ り に 循 環 流 を 生 じ , 揚 力 を 生 ず る と い う 性 質 を も っ て い る の で あ る 。
翼 の 揚 力 は , 同 じ 迎 え 角 で は 速 度 の 2 乗 に 比 例 し て 増 加 す る 。 ま た 同 じ 速 度 で は 迎 え 角 が 大 き く な る ほ ど 揚 力 は 増 加 す る 。 た だ し そ れ に は 限 界 が あ っ て , 迎 え 角 が あ る 大 き さ に 達 す る と , 翼 上 面 の 気 流 が 表 面 か ら は が れ て 渦 が で き , そ の 結 果 揚 力 が 著 し く 減 り 抗 力 が 急 激 に 増 し て 飛 行 が 困 難 に な る 。 こ の 状 態 を 失 速 s t a l l と い う 。 飛 行 機 が あ る 速 さ を 保 っ て 水 平 飛 行 を 続 け る た め に は , 揚 力 が 重 力 と つ り あ い , 推 進 装 置 の 推 力 が 飛 行 機 全 体 に 働 く 抗 力 と つ り あ っ て い な け れ ば な ら な い 。 こ の た め 高 速 で 飛 ぶ と き は 迎 え 角 を 小 さ く し , 低 速 で 飛 ぶ と き は 迎 え 角 を 大 き く し , 翼 の 揚 力 が 重 力 と つ り あ う よ う 調 節 し て や ら な け れ ば な ら な い 。 翼 の 迎 え 角 を ど ん ど ん 増 し て い け ば , 飛 行 機 の 速 度 を 下 げ て い け る わ け だ が , 迎 え 角 が あ る 限 界 に 達 す る と 失 速 状 態 に な る の で , そ れ 以 下 の 速 度 で は 揚 力 が 重 力 を 支 え ら れ な く な っ て し ま う 。 つ ま り 飛 行 機 に は 安 全 に 飛 行 で き る 速 度 の 最 小 限 度 が あ る わ け で , そ れ を 最 小 速 度 ま た は 失 速 速 度 と 呼 ん で い る 。 ジ ェ ッ ト 輸 送 機 の 最 小 速 度 は 一 般 に 2 0 0 ~ 2 5 0 k m / h で 新 幹 線 の 最 高 速 度 と 同 じ く ら い で あ る 。 地 上 や 水 上 の 乗 物 は も ち ろ ん の こ と , ヘ リ コ プ タ ー で も 飛 行 船 で も , ど ん な に 遅 い 速 度 で も 走 る こ と が で き る 。 こ れ に 反 し そ れ ぞ れ に 最 小 速 度 が 決 ま っ て い て , そ れ 以 下 の 速 度 で は 飛 ぶ こ と が で き な い の は , 飛 行 機 の も つ 致 命 的 な 欠 陥 と い え る 。
→ 翼
離 陸 お よ び 着 陸 と 失 速 速 度
飛 行 機 は 最 小 速 度 以 上 の 速 度 で な け れ ば 飛 ぶ こ と が で き な い の で , 離 陸 の 場 合 は , 静 止 の 状 態 か ら 離 陸 に 適 す る 速 度 ま で 加 速 す る た め に , 地 上 を 滑 走 す る 必 要 が あ る ︵ 垂 直 離 着 陸 機 は 除 く ︶ 。 ま た 着 陸 の と き も , 適 当 な 速 度 で 進 入 し て き て 接 地 し , 減 速 停 止 す る ま で に 地 上 滑 走 を し な け れ ば な ら な い 。 ど ち ら の 場 合 も , む ず か し い 操 作 な の で , 安 全 を 期 す る た め に 操 作 の し か た に い ろ い ろ の 規 定 が 設 け ら れ て い る 。 ジ ェ ッ ト 輸 送 機 の 場 合 を 例 に と っ て , ま ず 離 陸 の 場 合 を 説 明 す る と , 滑 走 路 端 か ら 滑 走 を 始 め , だ ん だ ん 加 速 し て V R ︵ ブ イ ア ー ル ︶ ︵ ロ ー テ ー シ ョ ン 速 度 r o t a t i o n s p e e d ︶ に 達 し た ら 機 首 を 引 き 起 こ す 。 機 は 地 面 を 離 れ な お も 加 速 し つ つ 高 度 35 フ ィ ー ト ︵ 1 0 . 7 m ︶ に 達 す る ま で に , V 2 ︵ ブ イ ツ ー ︶ ︵ 安 全 離 陸 速 度 t a k e - o f f s a f e t y s p e e d 。 機 種 に よ り 失 速 速 度 の 1 . 1 5 ~ 1 . 2 0 倍 と す る ︶ に 達 し て い な け れ ば な ら な い 。 V R は こ の 条 件 を 満 足 す る よ う に 決 め ら れ る の で あ る 。 輸 送 機 で は , 安 全 の た め に 離 陸 滑 走 中 に 一 つ の エ ン ジ ン が 停 止 し た 場 合 の こ と も 考 え ら れ て い て , も し あ ら か じ め 定 め ら れ た V 1 ︵ ブ イ ワ ン ︶ ︵ 臨 界 点 速 度 c r i t i c a l e n g i n e f a i l u r e s p e e d ︶ に 達 す る 前 に 1 エ ン ジ ン が 停 止 し た ら , 離 陸 を あ き ら め ブ レ ー キ を か け て 減 速 停 止 , V 1 を 超 え て か ら 1 エ ン ジ ン が 停 止 し た ら , 残 り の エ ン ジ ン で 離 陸 を 続 け る こ と に 定 め ら れ て い る 。 図 4 で , ︵ 1 ︶ ち ょ う ど V 1 で 1 エ ン ジ ン が 停 止 し た 場 合 に 離 陸 を 始 め て か ら 高 度 35 フ ィ ー ト に 達 す る ま で の 水 平 距 離 と , ︵ 2 ︶ 離 陸 を あ き ら め て 減 速 停 止 し た 場 合 の 水 平 距 離 , ︵ 3 ︶ 全 エ ン ジ ン が 作 動 し て い る と き , 離 陸 開 始 地 点 か ら 高 度 35 フ ィ ー ト に 達 す る ま で の 距 離 の 1 1 5 % の 三 つ の う ち , い ち ば ん 長 い も の を 離 陸 必 要 滑 走 路 長 と い い , こ の 値 は 利 用 で き る 滑 走 路 の 長 さ よ り 短 く な け れ ば な ら な い 。 着 陸 の 場 合 は , 滑 走 路 の 端 を 高 度 1 5 m で 通 過 す る と き の 着 陸 進 入 速 度 が 失 速 速 度 の 1 . 3 倍 に 規 定 さ れ て い る 。 そ こ を 通 過 し て か ら エ ン ジ ン を 絞 り , 機 首 の 引 起 し を 行 っ て 減 速 す る の で , 接 地 の と き は , 失 速 速 度 の 1 . 2 5 倍 く ら い に な る 。 高 度 1 5 m を 通 過 し て か ら 減 速 停 止 す る ま で の 水 平 距 離 を , 余 裕 を み て 1 . 6 7 倍 し た 距 離 を 着 陸 必 要 滑 走 路 長 と い う 。 こ れ も 利 用 で き る 滑 走 路 よ り 短 く な け れ ば な ら な い 。 こ の よ う に 離 陸 の 場 合 も 着 陸 の 場 合 も , そ の 性 能 は 失 速 速 度 に よ っ て 決 ま り , 失 速 速 度 の 小 さ い も の ほ ど , 加 速 あ る い は 減 速 の た め の 距 離 , し た が っ て 滑 走 路 長 が 短 く て す む こ と が わ か る 。
翼 面 荷 重 と 高 揚 力 装 置
飛 行 機 の 失 速 速 度 を 小 さ く す る に は ど う し た ら よ い か 。 第 1 に 飛 行 機 の 総 重 量 の わ り に 翼 面 積 を 大 き く し て 発 生 で き る 揚 力 を 増 す , つ ま り 総 重 量 を 翼 面 積 で 割 っ た 値 ︵ 翼 面 荷 重 ︶ を 小 さ く す れ ば よ い こ と は 直 観 的 に 理 解 さ れ る 。 し か し 翼 面 荷 重 を 小 さ く す る と , 同 じ 総 重 量 に 対 し て 機 体 の 外 形 が 大 き く な り , 空 気 抵 抗 も 増 え る し , 機 体 の 構 造 重 量 も 増 す の で , 速 度 や 航 続 性 能 の 点 で は 不 利 で あ る 。 そ う か と い っ て , あ ま り 離 着 陸 滑 走 路 長 が の び て も 困 る の で , 失 速 速 度 を 増 さ な い で , し か も 翼 面 荷 重 を 十 分 大 き く す る く ふ う が 必 要 に な る 。 そ こ で 考 え ら れ た の が 高 揚 力 装 置 で あ る 。 今 日 ふ つ う に 使 わ れ て い る 高 揚 力 装 置 は 主 翼 の 後 縁 に つ け た 後 縁 す き ま フ ラ ッ プ で あ る が , フ ラ ッ プ の 効 果 を さ ら に 強 く す る た め , 翼 の 前 縁 に 前 縁 す き ま フ ラ ッ プ を 併 用 し た も の も あ る ︵ 図 5 - a ︶ 。 こ の よ う な フ ラ ッ プ を 使 う と , 同 じ 翼 面 荷 重 で フ ラ ッ プ を 使 わ な い 場 合 に 比 べ て 失 速 速 度 を 減 ら す こ と が で き る し , ま た 失 速 速 度 を 同 じ に す れ ば , フ ラ ッ プ を 使 う こ と に よ り , 翼 面 荷 重 を 高 く す る こ と が で き る 。 こ の よ う な 高 揚 力 装 置 が 実 用 に な っ た の は 1 9 3 0 年 代 前 半 で , 設 計 者 は , 高 揚 力 装 置 の 働 き を 活 用 し , 思 い 切 っ て 翼 面 荷 重 を 高 め る こ と に よ り , 離 着 陸 滑 走 距 離 が の び る 心 配 な し に 速 度 や 航 続 性 能 を 著 し く 改 善 す る こ と が で き る よ う に な っ た の で あ る 。 し か し す き ま フ ラ ッ プ を 使 っ た 高 揚 力 装 置 は 性 能 的 に 限 界 に 達 し て お り , こ れ 以 上 の 効 果 を も つ も の と し て 動 力 を 利 用 し た 吹 出 し フ ラ ッ プ が 研 究 さ れ て い る 。 こ れ に は 翼 上 面 吹 出 式 ︵ U S B 。 u p p e r s u r f a c e b l o w i n g の 略 ︶ , 外 部 吹 出 し フ ラ ッ プ ︵ E B F 。 e x t e r n a l l y b l o w n f l a p の 略 ︶ , オ ー グ メ ン タ ー 翼 a u g u m e n t e r w i n g な ど の 種 類 が あ る ︵ 図 5 - b ︶ 。 翼 上 面 吹 出 式 は , ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン の 噴 流 を フ ラ ッ プ を 下 げ た 翼 の 上 面 に 吹 き 出 す と , 噴 流 が 曲 面 に 沿 っ て 下 向 き に 流 れ る と い う コ ア ン ダ 効 果 を 利 用 し た も の で , 噴 流 に 下 向 速 度 を 与 え る と い う 運 動 量 変 化 に よ っ て き わ め て 大 き な 揚 力 の 増 加 を 得 て い る 。 ま た 外 部 吹 出 し フ ラ ッ プ は , ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン の 噴 流 を 直 接 す き ま フ ラ ッ プ の 下 面 に ぶ つ け て 下 向 き に す る こ と に よ っ て 揚 力 の 増 加 を 得 る も の , オ ー グ メ ン タ ー 翼 は , エ ン ジ ン か ら 分 岐 し た 圧 縮 空 気 を , 二 重 の フ ラ ッ プ の 間 を 通 し て 下 向 き に 吹 き 出 す こ と に よ っ て 揚 力 の 増 加 を は か る も の で あ る 。 各 種 の 動 力 利 用 吹 出 し フ ラ ッ プ は す で に 実 用 段 階 に 近 い 。
→ 高 揚 力 装 置
推 進 装 置
翼 に 揚 力 を 発 生 さ せ る に は , 空 気 抵 抗 に 打 ち 勝 っ て , 飛 行 機 に 必 要 な 速 度 を 与 え る 推 進 装 置 が 必 要 で あ る 。 推 進 装 置 と し て 現 在 実 用 さ れ て い る の は , ︵ 1 ︶ ピ ス ト ン 機 関 で プ ロ ペ ラ を 駆 動 し て 推 力 を 得 る 方 式 , ︵ 2 ︶ ガ ス タ ー ビ ン で プ ロ ペ ラ を 駆 動 す る 方 式 , す な わ ち タ ー ボ プ ロ ッ プ , ︵ 3 ︶ ガ ス タ ー ビ ン で つ く っ た 高 温 高 圧 の ガ ス を 後 方 に 噴 出 し , そ の 反 動 で 推 力 を 得 る 方 式 , す な わ ち タ ー ボ ジ ェ ッ ト の 三 つ の 形 式 で あ る 。 現 在 広 く 使 わ れ て い る タ ー ボ フ ァ ン は タ ー ボ ジ ェ ッ ト の 変 形 で , ふ つ う の タ ー ボ ジ ェ ッ ト に フ ァ ン を 追 加 し た も の で あ る 。 フ ァ ン で 圧 縮 し た 空 気 の 一 部 を エ ン ジ ン 本 体 に 送 り , 圧 縮 , 燃 焼 , タ ー ビ ン 駆 動 の 行 程 を 経 て 後 方 に 噴 出 す る と と も に , 残 り の 空 気 は フ ァ ン か ら 直 接 後 方 に 噴 出 し て 推 力 を 得 て い る 。 タ ー ボ フ ァ ン に 対 し タ ー ボ ジ ェ ッ ト を ス ト レ ー ト ジ ェ ッ ト と い う 。 こ の ほ か ラ ム ジ ェ ッ ト , ロ ケ ッ ト な ど も 航 空 機 用 推 進 装 置 と し て 使 わ れ る こ と が あ る 。
飛 行 機 は そ の 推 進 装 置 に よ っ て , ピ ス ト ン エ ン ジ ン や タ ー ボ プ ロ ッ プ エ ン ジ ン で プ ロ ペ ラ を 駆 動 す る プ ロ ペ ラ 機 , ス ト レ ー ト ジ ェ ッ ト や タ ー ボ フ ァ ン な ど の い わ ゆ る ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン を 利 用 し て 推 力 を 得 る ジ ェ ッ ト 機 に 大 別 さ れ る 。 ま た タ ー ボ プ ロ ッ プ , タ ー ボ ジ ェ ッ ト , タ ー ボ フ ァ ン な ど の ガ ス タ ー ビ ン 推 進 装 置 を も つ 飛 行 機 を 総 称 し て タ ー ビ ン 機 と い う こ と も あ る 。
プ ロ ペ ラ 機 と ジ ェ ッ ト 機 を 比 べ て み る と , 前 者 は 後 者 に 比 べ て 大 き な 欠 点 を も っ て い る 。 プ ロ ペ ラ の 羽 根 は 高 速 で 回 転 し な が ら 空 気 中 を 前 進 し て い る の で , と く に 羽 根 の 翼 端 に 近 い 部 分 は , 空 気 に 対 し て き わ め て 大 き な 相 対 速 度 を も っ て い る 。 こ の 相 対 速 度 が だ ん だ ん 大 き く な っ て 音 速 に 近 づ く と , 空 気 の 圧 縮 性 の 影 響 が 現 れ て き て , プ ロ ペ ラ の 効 率 が 著 し く 低 下 す る 。 し た が っ て プ ロ ペ ラ 機 が 効 率 よ く 飛 行 で き る の は , マ ッ ハ 0 . 7 ︵ 音 速 の 0 . 7 倍 , 例 え ば 高 度 6 0 0 0 m で 約 8 0 0 k m / h ︶ 程 度 の 速 度 ま で で あ る 。 こ れ に 対 し て ジ ェ ッ ト 機 に は こ の よ う な 制 限 は な い 。 ま た プ ロ ペ ラ の 吸 収 馬 力 ︵ プ ロ ペ ラ が エ ン ジ ン か ら 吸 収 す る 馬 力 ︶ を 増 す に は , 直 径 を 大 き く す る 必 要 が あ り , 現 在 最 大 の プ ロ ペ ラ 機 , ソ 連 の ア ン ト ノ フ A n 2 2 輸 送 機 の 1 万 5 0 0 0 馬 力 エ ン ジ ン の プ ロ ペ ラ は , 8 枚 羽 根 で 直 径 6 . 2 m に 達 し て い る が , こ の あ た り が 実 用 上 の 限 界 と さ れ て い る 。 つ ま り プ ロ ペ ラ 機 で は プ ロ ペ ラ の 吸 収 馬 力 の 実 用 上 の 限 界 か ら , 機 体 の 大 き さ に も 限 界 が 生 ず る が , こ れ に 対 し て ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン に は 出 力 に 対 す る 実 用 上 の 限 界 は な く , し た が っ て ジ ェ ッ ト 機 で は , ボ ー イ ン グ 7 4 7 ︵ 総 重 量 3 7 2 t ︶ よ り さ ら に 機 体 を 大 型 化 す る こ と も 可 能 で あ る 。 さ ら に 一 定 の 燃 料 を 消 費 し て 飛 べ る 距 離 , つ ま り 燃 料 の 経 済 性 で も , 現 在 で は ジ ェ ッ ト 機 の ほ う が 優 れ た 性 能 を も つ よ う に な り , 航 続 性 能 も 勝 っ て い る 。 た だ プ ロ ペ ラ 機 は 低 速 時 の 効 率 が い い の で , 離 陸 滑 走 距 離 が 短 い と い う 長 所 が あ る 。 以 上 の よ う な 比 較 か ら , ジ ェ ッ ト 機 の 優 位 は 明 ら か で あ り , こ の た め 大 型 機 か ら 中 型 機 , 小 型 機 と し だ い に 使 用 範 囲 が 広 く な り , 将 来 は プ ロ ペ ラ 機 は ご く 限 ら れ た 用 途 だ け の も の と な ろ う 。
飛 行 機 に は , 推 進 装 置 の 数 に よ っ て , プ ロ ペ ラ 機 , ジ ェ ッ ト 機 と も , 推 進 装 置 が 1 組 つ い た 単 発 機 , 2 組 つ い た 双 発 機 , 以 下 3 発 機 , 4 発 機 な ど の 種 類 が あ る 。 ま れ に は 6 発 機 と か 8 発 機 と か い う も の も あ る が , あ ま り エ ン ジ ン の 数 が 多 い と 取 扱 い が 不 便 で , 維 持 費 も 高 く な る の で 実 用 的 で な い 。 単 発 機 は 手 軽 で 使 い や す い の で , 軽 飛 行 機 な ど に 多 く 使 わ れ る が , エ ン ジ ン が 故 障 な ど で 止 ま っ た 場 合 は ど う す る こ と も で き な い 。 そ こ で 輸 送 機 は じ め 各 種 の 実 用 機 の 多 く は , 双 発 以 上 に す る の が ふ つ う で あ る 。 現 代 の 双 発 機 , 3 発 機 , 4 発 機 は , プ ロ ペ ラ 機 で も ジ ェ ッ ト 機 で も , 一 般 に エ ン ジ ン の う ち の 一 つ が 止 ま っ て も , 残 り の エ ン ジ ン だ け を 使 っ て , 水 平 飛 行 は も ち ろ ん , 離 陸 や 上 昇 ま で で き る よ う に な っ て い る 。
航 空 エ ン ジ ン に 使 う 燃 料 は , ピ ス ト ン エ ン ジ ン で は ガ ソ リ ン , タ ー ボ プ ロ ッ プ や タ ー ボ ジ ェ ッ ト で は ガ ソ リ ン , ケ ロ シ ン を 含 む ジ ェ ッ ト 燃 料 が 使 わ れ る 。 燃 料 は 主 と し て 主 翼 あ る い は 胴 体 内 の 燃 料 タ ン ク に 収 め ら れ て い る が , 軍 用 機 な ど で は , 航 続 性 能 を 増 す た め に , さ ら に 流 線 形 の タ ン ク に 入 れ て 翼 の 下 な ど に 懸 吊 す る こ と も あ る 。
→ ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン → プ ロ ペ ラ
操 縦 装 置
飛 行 機 は 飛 行 中 や 地 上 滑 走 中 に 速 度 や 姿 勢 や 飛 行 経 路 な ど を 自 由 に 変 え る た め に , 3 種 類 の 舵 , す な わ ち 昇 降 舵 , 補 助 翼 , 方 向 舵 を も っ て い る ︵ 図 6 - a ︶ 。 昇 降 舵 は 水 平 安 定 板 の 後 縁 に ヒ ン ジ ︵ 蝶 番 ︶ で 取 り 付 け ら れ , 操 縦 席 で 操 縦 桿 ︵ か ん ︶ を 手 前 に 引 く と 後 縁 が 上 が り , 押 す と 下 が る よ う に な っ て い る 。 昇 降 舵 後 縁 を 上 に 上 げ る と , 水 平 尾 翼 に 下 向 き の 力 が 生 じ , 機 は 重 心 の ま わ り に 機 首 を 上 げ , そ の 結 果 , 翼 の 迎 え 角 が 増 す ︵ 図 6 - b ︶ 。 こ れ を 上 げ 舵 と い う 。 反 対 に 昇 降 舵 後 縁 を 下 げ る と , 機 首 を 下 げ , そ の 結 果 翼 の 迎 え 角 が 減 る ︵ 図 6 - c ︶ 。 こ れ を 下 げ 舵 と い う 。
前 述 し た よ う に , 飛 行 機 が あ る 速 さ で 水 平 飛 行 を 続 け る た め に は , 翼 の 揚 力 と 重 力 が つ り あ う と 同 時 に , プ ロ ペ ラ あ る い は ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン の 推 力 が 飛 行 機 の 抗 力 と つ り あ っ て い る こ と も 必 要 で あ る 。 こ の た め 操 縦 者 は 操 縦 桿 で 昇 降 舵 を 操 作 し て 翼 の 迎 え 角 を 加 減 し て 揚 力 と 重 力 と の つ り あ い を と り , 同 時 に エ ン ジ ン の ス ロ ッ ト ル レ バ ー ︵ 絞 り 弁 と も い う 。 自 動 車 の ア ク セ ル に 相 当 す る ︶ を 操 作 し て 推 力 を 加 減 し , 抗 力 に 等 し く な る よ う に し な け れ ば な ら な い 。 上 昇 , 下 降 に も , 水 平 飛 行 の 場 合 と 同 じ よ う に 昇 降 舵 操 作 と 同 時 に ス ロ ッ ト ル の 操 作 が 必 要 で , 与 え ら れ た 速 度 に 対 し , 水 平 飛 行 に 必 要 な 推 力 よ り 大 き な 推 力 を 与 え る と , そ の 余 裕 推 力 で 機 は 上 昇 し , 推 力 が 不 足 す れ ば 機 は 下 降 す る 。 飛 行 機 が 着 陸 進 入 し て 高 度 を 下 げ て い く と き は , 下 げ 舵 で な く 上 げ 舵 を と る の が ふ つ う で あ る 。 上 げ 舵 に す る と 水 平 飛 行 に 必 要 な 揚 力 を 得 る 速 度 を 下 げ る こ と が で き , 着 陸 に 安 全 だ か ら で , こ の と き ス ロ ッ ト ル を 絞 っ て 推 力 を 減 ら す と , 機 は 上 げ 舵 を と っ て い る に も か か わ ら ず 推 力 不 足 で 降 下 す る 。 上 げ 舵 は 上 昇 す る た め の 舵 で は な く て , 迎 え 角 を 大 き く し て 速 度 を 遅 く す る の に 用 い る 舵 , 反 対 に 下 げ 舵 は 迎 え 角 を 小 さ く し て 速 度 を 速 く す る の に 用 い る 舵 で あ る 。 一 般 に 上 昇 の と き は 上 げ 舵 を と る が , こ れ は 速 度 を 遅 く し た ほ う が 上 昇 に 必 要 な 馬 力 が 少 な く て す む た め で , 上 昇 の と き に は そ の 馬 力 を 出 す た め に ス ロ ッ ト ル 弁 を 開 い て や ら な け れ ば な ら な い 。
補 助 翼 は 主 翼 の 左 右 の 翼 端 の 後 縁 に ヒ ン ジ づ け さ れ て い る 。 補 助 翼 は ふ つ う フ ラ ッ プ と 並 ん で そ の 外 側 に つ い て い て , フ ラ ッ プ が 左 右 同 時 に 同 じ 角 度 で 下 が る の に 対 し , 補 助 翼 は 一 方 を 上 げ る と , 他 方 は 下 が る よ う に な っ て い る 。 い ま 左 の 補 助 翼 を 下 げ 右 の 補 助 翼 を 上 げ る と , 左 翼 は 揚 力 が 増 し , 右 翼 は 揚 力 が 減 る の で , 機 を 右 に 傾 け る よ う な モ ー メ ン ト が 働 く ︵ 図 6 - d ︶ 。 し た が っ て 補 助 翼 の 操 作 に よ っ て 機 を 左 あ る い は 右 に 傾 け る こ と も で き る し , 左 右 の 傾 き を な お し て 水 平 に も ど す こ と も で き る 。 補 助 翼 の 操 縦 は , 昇 降 舵 と 共 通 の 操 縦 桿 を 左 右 に 倒 す か , 操 縦 桿 の 上 に つ い た ハ ン ド ル を 左 か 右 に ま わ す こ と で 行 わ れ る 。
方 向 舵 は 垂 直 安 定 板 の 後 縁 に ヒ ン ジ づ け さ れ て い る 。 操 縦 席 の 左 の ペ ダ ル を 踏 む と , 方 向 舵 後 縁 が 左 に 動 き , 垂 直 尾 翼 に 右 向 き の 力 を 生 ず る の で , 機 首 を 左 に 向 け よ う と す る モ ー メ ン ト が 生 ず る ︵ 図 6 - e ︶ 。 ま た 右 の ペ ダ ル を 踏 め ば 機 首 は 右 に 向 く ︵ 図 6 - f ︶ 。
飛 行 機 の 方 向 舵 は 船 の 舵 と 同 じ 働 き を す る が , 左 右 ど ち ら か に 旋 回 す る 場 合 , 船 で は 方 向 舵 に 相 当 す る 舵 を 操 作 す る だ け で よ い が , 飛 行 機 の 場 合 は , 補 助 翼 と 方 向 舵 を う ま く 使 い , 旋 回 の 中 心 の ほ う へ 機 を 傾 け , 図 7 の よ う に 旋 回 で 生 ず る 遠 心 力 と 揚 力 と 重 力 が つ り あ う よ う に し な け れ ば な ら な い 。 こ の よ う な 正 し い 旋 回 を す る と , 機 は 横 滑 り す る こ と な く , 遠 心 力 と 重 力 と の 合 力 が 機 体 に 対 し て 機 の 上 下 軸 方 向 に 一 致 す る の で , 自 動 車 や 船 の 旋 回 の 場 合 の よ う に 身 体 が 旋 回 の 外 側 の ほ う に 倒 さ れ る 慣 性 力 を ま っ た く 生 じ な い 。 旋 回 半 径 を 小 さ く し よ う と す る と , 遠 心 力 が 大 き く な る の で 機 の バ ン ク 角 ︵ 左 右 の 傾 角 ︶ を 大 き く し て 力 の つ り あ い を 保 つ 必 要 が あ る 。 軍 用 機 や 曲 技 機 で , と く に 小 半 径 の 旋 回 を す る た め , バ ン ク 角 を 90 度 近 く ま で と る こ と が あ る 。 こ れ を 垂 直 旋 回 と い う 。
現 在 の 飛 行 機 で は , 以 上 の 三 つ の 舵 の ほ か に , ス ポ イ ラ ー を つ け た も の が あ る 。 ス ポ イ ラ ー は 翼 の 上 面 , 後 縁 フ ラ ッ プ の 前 の 部 分 に あ り , こ れ を 垣 根 の よ う に 立 て る と 翼 上 面 の 気 流 が 激 し く 乱 れ て 揚 力 が 減 り 抗 力 が 増 え る 。 飛 行 機 あ る い は グ ラ イ ダ ー が 動 力 を 使 わ な い で 滑 空 す る と き , そ の 滑 空 比 ︵ 下 が る 高 度 H に 対 し て 進 む 水 平 距 離 S が 何 倍 に な る か を 表 す 。 す な わ ち S / H ︶ は 飛 行 機 あ る い は グ ラ イ ダ ー の 揚 抗 比 ︵ 揚 力 と 抗 力 と の 比 ︶ に 等 し い 。 し た が っ て ス ポ イ ラ ー を 立 て て , 揚 力 が 減 り , 抗 力 が 増 せ ば , 揚 抗 比 , し た が っ て 滑 空 比 が 小 さ く な り , 降 下 角 が 大 き く な る 。 す な わ ち , ス ポ イ ラ ー の 操 作 で 滑 空 角 を 加 減 す る こ と が で き る 。 ま た 地 面 に 降 り て か ら ス ポ イ ラ ー を 立 て る と , ま だ ス ピ ー ド が あ っ て も , 揚 力 が 減 る の で 機 の 重 量 が 地 面 に か か り , 車 輪 ブ レ ー キ の 効 き が 増 す と い う 利 点 も あ る 。
以 上 の 三 つ の 舵 , ス ポ イ ラ ー , フ ラ ッ プ な ど は 操 縦 席 に あ る 操 縦 桿 , ペ ダ ル , レ バ ー な ど と 操 縦 索 , あ る い は て こ な ど で 機 械 的 に 連 結 さ れ , 操 縦 者 の 意 の ま ま に 動 か す こ と が で き る 。 し か し 飛 行 機 が 高 速 化 , 大 型 化 す る に 伴 い , 舵 な ど を 作 動 す る の に 要 す る 力 が 大 き く な り , 人 力 だ け で は む り に な っ て き た 。 そ こ で 各 舵 な ど に 油 圧 の 作 動 筒 ︵ ア ク チ ュ エ ー タ ー ︶ を つ け , そ れ を 操 縦 席 と 機 械 的 に 連 結 し て 操 作 で き る よ う に な っ て い る 。 ま た 最 近 は 油 圧 作 動 筒 の 代 り に 電 動 機 を 取 り 付 け , こ れ を 操 縦 席 と 電 気 的 に 連 結 し , 操 縦 者 が 電 気 信 号 を 送 れ ば そ れ に 対 応 し て 舵 が 動 く と い う シ ス テ ム も あ る 。 こ れ を フ ラ イ ・ バ イ ・ ワ イ ヤ f l y - b y - w i r e と い う 。
→ 舵
最 大 速 度 と 巡 航 速 度
飛 行 機 は , 昇 降 舵 を 操 作 し て 迎 え 角 を 変 え , ス ロ ッ ト ル レ バ ー を 操 作 し て 推 力 を 加 減 す る こ と に よ り , 任 意 の 速 度 で 水 平 飛 行 が で き る よ う に な っ て い る 。 し か し だ ん だ ん 速 度 を 増 し て い く と 抗 力 が 増 大 し て く る 一 方 , エ ン ジ ン の 出 せ る 推 力 に は 限 り が あ る の で , 水 平 速 度 に も 限 界 が あ っ て , そ れ 以 上 は 速 度 が 出 せ な い 。 そ の 限 界 の 速 度 を 最 大 速 度 と い う 。 つ ま り 飛 行 機 に は 最 小 速 度 と 最 大 速 度 が あ っ て , そ の 範 囲 な ら , 自 由 に 水 平 飛 行 が で き る の で あ る 。 現 在 一 般 に 使 わ れ て い る 飛 行 機 の 最 大 速 度 は , 音 速 よ り も 遅 く , 亜 音 速 機 と い わ れ て い る 。 亜 音 速 機 で は 一 般 に 最 大 速 度 が 最 小 速 度 の 3 ~ 4 倍 で あ る 。
音 速 は 大 気 温 度 で 変 わ り , 標 準 大 気 で は 高 度 0 で 1 2 2 5 k m / h , 高 度 1 万 1 0 0 0 m 以 上 ︵ 成 層 圏 ︶ で 1 0 6 2 k m / h で あ る 。 音 速 に 対 す る 速 度 の 比 を マ ッ ハ 数 と い う 。 飛 行 機 の 速 さ が 音 速 に 近 づ く と , マ ッ ハ 0 . 8 と か 0 . 9 あ た り で 抗 力 が 急 に 大 き く な る の で , そ こ を 超 え て 音 速 以 上 ︵ 超 音 速 ︶ で 飛 ぶ に は , 強 力 な エ ン ジ ン が 必 要 で あ り , 機 体 の 設 計 に も 超 音 速 時 の 抗 力 を 減 ら す た め に い ろ い ろ の く ふ う が 必 要 で あ る 。 こ の よ う な 音 速 を 超 え る こ と の む ず か し さ を 形 容 し て 音 の 壁 と い う こ と ば も あ る 。 軍 用 機 の 中 で と く に 高 速 を 要 求 さ れ る 戦 闘 機 , 爆 撃 機 , 偵 察 機 な ど に は 超 音 速 機 が 多 い 。 超 音 速 機 の 中 に は ロ ッ キ ー ド S R 7 1 A 偵 察 機 の よ う に , マ ッ ハ 3 を 超 す も の も あ る が , 一 般 に 戦 闘 機 の 最 高 速 度 は マ ッ ハ 2 . 0 ~ 2 . 5 で あ る 。 民 間 機 で は フ ラ ン ス と イ ギ リ ス が 共 同 で 開 発 し た コ ン コ ル ド が た だ 一 つ の 超 音 速 機 で , 巡 航 速 度 は マ ッ ハ 2 . 0 で あ る 。 コ ン コ ル ド の よ う な 超 音 速 輸 送 機 を S S T と い う 。 現 在 S S T が あ ま り 使 わ れ な い の は , 亜 音 速 機 に 比 べ て , 航 続 性 能 , 搭 載 量 , 経 済 性 , 騒 音 な ど で 評 価 が 劣 る た め で あ る 。
超 音 速 機 は も ち ろ ん だ が , 音 速 に 近 い 高 亜 音 速 ︵ マ ッ ハ 0 . 8 ~ 0 . 9 ︶ で 飛 ぶ 場 合 に も , 抗 力 の 低 減 に 特 別 の 配 慮 が 必 要 で あ る 。 と く に 重 要 な の は 主 翼 の 平 面 形 で , 後 退 角 θ を つ け る の が ふ つ う で あ る ︵ 図 8 ︶ 。 機 の 前 進 に よ っ て 翼 に 当 た る 流 速 V の う ち , 翼 面 上 の 風 圧 を 決 め る の は , 前 縁 に 直 角 の 成 分 V c o s θ で あ る 。 後 退 角 θ が 大 き く な る ほ ど V c o s θ は 小 さ く , そ れ だ け 衝 撃 波 の 発 生 が 遅 れ る の で あ る 。 し た が っ て 高 速 の も の ほ ど 後 退 角 を 大 き く す る の が 有 利 で , 後 退 角 は 高 亜 音 速 機 で 35 度 以 下 , マ ッ ハ 1 . 4 程 度 の 飛 行 機 で 45 度 , マ ッ ハ 2 . 0 で 60 度 く ら い が 標 準 で あ る 。 後 退 角 の と く に 大 き い も の で は , 後 縁 を 直 線 で 結 ん で 三 角 翼 に す る こ と が 多 い 。
後 退 角 の 大 き な 後 退 翼 は , 高 速 時 に は 抗 力 が 小 さ く て 有 利 で あ る が , 低 速 時 に は 出 せ る 揚 力 の 値 が 後 退 角 の な い 直 線 翼 に 比 べ て 低 く 不 利 で あ る 。 そ こ で 高 速 で 飛 ぶ と き に は 後 退 翼 , 低 速 で 飛 ぶ と き に は 直 線 翼 に 近 く な る よ う , 飛 行 中 後 退 角 を 自 由 に 変 え ら れ る 可 変 後 退 翼 v a r i a b l e g e o m e t r y w i n g ︵ 略 し て VG 翼 ︶ が 一 部 の 高 性 能 多 用 途 軍 用 機 で 使 わ れ て い る 。
高 亜 音 速 機 や 超 音 速 機 で は 翼 型 の 選 定 も 重 要 で , い ろ い ろ な 研 究 が な さ れ て い る 。 高 亜 音 速 ジ ェ ッ ト 輸 送 機 用 の 翼 型 と し て 広 く 使 わ れ る よ う に な っ た ス ー パ ー ク リ テ ィ カ ル 翼 s u p e r c r i t i c a l w i n g と 呼 ば れ る 翼 型 も そ の 一 つ で あ る 。 こ れ は , 理 論 的 に 翼 面 上 の 風 圧 分 布 を 計 算 し , 高 亜 音 速 で 翼 面 に 衝 撃 波 が 発 生 し て 抗 力 が 急 激 に 増 す マ ッ ハ 数 を で き る だ け 遅 ら せ る ︵ 高 く す る ︶ よ う く ふ う し た も の で あ る 。 例 え ば 図 9 の よ う に 同 じ 厚 さ の 翼 で 比 較 す る と , ふ つ う の 翼 型 で は 抗 力 が 急 増 す る 臨 界 マ ッ ハ 数 が 0 . 8 2 な の に , ス ー パ ー ク リ テ ィ カ ル 翼 で は 0 . 8 9 と な る 。 も し 臨 界 マ ッ ハ 数 を 同 じ に す る と , ス ー パ ー ク リ テ ィ カ ル 翼 で は , ず っ と 翼 型 の 厚 い も の が 使 え る 。 こ れ ま で 高 亜 音 速 機 で は 高 速 時 の 抗 力 を 減 ら す た め , で き る だ け 薄 い 翼 型 を 使 う 傾 向 が あ っ た が , ス ー パ ー ク リ テ ィ カ ル 翼 の 導 入 で , も っ と 厚 い 翼 が 使 え れ ば , 構 造 的 に も じ ょ う ぶ に な っ て 有 利 だ し , 燃 料 を 入 れ る 容 積 も 増 え る 。 あ る い は 構 造 上 の 有 利 さ を 利 用 し て , 翼 の ア ス ペ ク ト 比 を 大 き く し て , つ ま り 細 長 い 翼 に し て 航 続 性 能 を 改 善 す る こ と も で き る の で あ る 。
飛 行 機 は 最 大 速 度 と 失 速 速 度 ︵ 最 小 速 度 ︶ と の 間 で , 目 的 に 応 じ て 任 意 の 速 度 を 選 ん で 飛 ぶ こ と が で き る 。 し か し 最 大 速 度 は , エ ン ジ ン を 全 開 ま た は そ れ に 準 ず る 状 態 に し て 得 ら れ る の で , エ ン ジ ン の 耐 久 性 か ら 考 え て も , こ う い う 状 態 を そ う 長 く は 続 け ら れ な い 。 ま た 失 速 速 度 に 近 づ き す ぎ て も 危 険 で あ る 。 そ こ で 飛 行 機 は , 最 大 と 最 小 の 中 間 で , 燃 料 消 費 の 点 か ら も な る べ く 経 済 的 な 速 度 を 選 ん で 飛 ぶ の が ふ つ う で あ る 。 こ れ が 巡 航 速 度 で あ る 。 巡 航 速 度 は 飛 行 の 目 的 や い ろ い ろ な 条 件 に 対 応 し て , か な り 広 い 範 囲 で 自 由 に 選 ぶ こ と が で き る 。 輸 送 機 の 場 合 は , 長 い 距 離 を 安 全 確 実 に , ま た 経 済 的 に 飛 行 す る こ と が 要 求 さ れ る の で , 巡 航 速 度 の 選 び 方 は と く に 重 要 で あ る 。 輸 送 機 が あ る 高 度 を あ る 重 量 で 飛 ぶ と き , そ の 航 続 率 ︵ 燃 料 1 k g で 飛 べ る 距 離 ︶ は 図 10 の よ う に 速 度 に よ っ て 変 化 す る 。 曲 線 上 の E 点 に 相 当 す る 速 度 で 飛 べ ば い ち ば ん 経 済 的 だ が , こ こ で は 一 般 に 速 度 が 遅 す ぎ て 時 間 も か か る し , 風 の 影 響 も 受 け や す い の で , 航 続 率 が 最 大 値 の 9 9 % に な る 点 L を も っ と も 経 済 的 な 巡 航 速 度 と し , 長 距 離 巡 航 速 度 と い う 。 ふ つ う は い ろ い ろ の 条 件 を 考 え て , こ れ よ り 速 い 速 度 を 選 ぶ か , あ ま り 最 大 巡 航 速 度 ︵ エ ン ジ ン の 耐 久 性 や 機 体 の 強 度 な ど を 考 慮 し て 許 さ れ る 最 大 の 巡 航 速 度 ︶ M に 近 づ く と , 航 続 率 が 低 下 し て 不 経 済 に な る こ と が こ の 曲 線 で も 示 さ れ て い る 。
→ 超 音 速 飛 行
上 昇 限 度 と 与 圧 室
飛 行 機 は 速 度 だ け で な く , 高 度 に つ い て も 飛 べ る 範 囲 が 決 ま っ て い る 。 高 度 を と る ほ ど 空 気 密 度 が 減 る の で , 抗 力 が 減 り ス ピ ー ド が 出 し や す く な る 。 し か し そ の 反 面 , 高 空 に い く に つ れ , 空 気 の 密 度 の 低 下 と と も に エ ン ジ ン の 出 力 も 低 下 し て く る 。 そ の 結 果 , あ る 高 度 以 上 で は , 推 進 装 置 の 出 せ る 推 力 が 抗 力 を 下 回 り , 水 平 飛 行 が で き な く な り , 飛 行 機 は そ れ 以 上 上 昇 で き な く な る 。 こ の 高 度 を 上 昇 限 度 と い う 。 上 昇 限 度 の こ れ ま で の 最 高 記 録 ︵ 定 常 飛 行 が で き た も の 。 1 9 9 5 年 末 現 在 ︶ は ア メ リ カ の ロ ッ キ ー ド S R 7 1 A の 2 万 5 9 2 9 m で あ る 。
飛 行 機 は 地 上 と 上 昇 限 度 の 間 で , い ろ い ろ な 条 件 か ら み て 最 適 の 高 度 を 選 ん で 飛 ぶ 。 今 日 の タ ー ビ ン 輸 送 機 は 長 距 離 路 線 の 場 合 , 1 万 m 内 外 の 高 度 を 巡 航 し , 近 距 離 路 線 で も , 6 0 0 0 m 内 外 と い う よ う な か な り の 高 空 を 巡 航 す る 。 こ れ は , タ ー ビ ン 輸 送 機 は 高 空 に い く ほ ど 燃 料 消 費 量 が 減 っ て 航 続 率 が 大 き く な り , ま た 気 象 的 に も 安 定 し て い る か ら で あ る 。
し か し こ の よ う な 高 空 を 飛 ん で い る と , 気 圧 が 下 が り 酸 素 量 が 減 る の で , 乗 っ て い る 人 間 が い わ ゆ る 高 山 病 に か か る 心 配 が あ る 。 そ こ で , 今 日 で は 高 空 を 飛 行 す る 飛 行 機 で は , 乗 員 室 , 客 室 , 貨 物 室 な ど を 空 気 の も れ な い 気 密 構 造 に し , そ の 中 に 外 気 よ り 圧 力 の 高 い 室 空 気 を 循 環 さ せ る 与 圧 室 が 装 備 さ れ て い る 。 民 間 輸 送 機 は , 機 が ど ん な 高 空 を 飛 ん で い よ う と , 室 内 の 気 圧 は 高 度 2 4 0 0 m 相 当 の 気 圧 以 上 に 保 た れ て い る 。 ま た 室 内 圧 力 の 変 化 率 は あ ま り 大 き い と 耳 が 痛 く な る な ど の 不 快 感 を 与 え る の で , 高 度 に 換 算 し て 90 ~ 1 5 0 m / m i n 程 度 に 調 整 さ れ て い る 。 与 圧 の 空 気 源 と し て は , プ ロ ペ ラ 機 で は キ ャ ビ ン ス ー パ ー チ ャ ー ジ ャ ー と い う 特 殊 な 圧 縮 機 を エ ン ジ ン で 駆 動 す る が , ジ ェ ッ ト 機 で は ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン の 圧 縮 機 か ら 直 接 空 気 を 抽 出 し て 客 室 に 送 る よ う に な っ て い る 。 こ の 場 合 , 空 気 は 適 当 な 室 温 に な る よ う 温 度 調 整 が な さ れ て い る 。 客 室 に は 空 気 を 外 に 流 す バ ル ブ が つ い て い て , そ の 開 閉 で 換 気 量 を 調 整 す る 。 民 間 輸 送 機 で は , 乗 客 1 人 当 り 最 小 0 . 2 8 3 m 3 / m i n の 換 気 量 が 規 定 さ れ て い る 。
→ 与 圧 胴 体
胴 体
胴 体 は 飛 行 機 の 中 枢 を な す 部 分 で , 乗 員 室 , 客 室 , 貨 物 室 , 各 種 の 装 備 ︵ 電 気 系 統 , 油 圧 系 統 , 空 気 系 統 , 電 子 装 置 な ど ︶ を 収 容 し , か つ 主 翼 , 尾 翼 , 操 縦 装 置 , 推 進 装 置 , 着 陸 装 置 な ど の 部 分 を ま と め て , 飛 行 機 と し て の 機 能 を 発 揮 さ せ る 役 目 を す る 。 そ の 長 さ や 直 径 は 機 の 特 性 に 応 じ て 定 め ら れ る が , 最 近 輸 送 機 の 大 型 化 に 伴 い , 客 室 の 幅 を 増 す た め , 胴 体 直 径 を と く に 大 き く し た 機 体 が 現 れ て い る 。 こ れ を 広 胴 型 機 ︵ ワ イ ド ボ デ ィ 機 ︶ と い い , そ の は し り は 1 9 7 0 年 に 就 航 を 始 め た ボ ー イ ン グ 7 4 7 で あ る 。 従 来 の 輸 送 機 ︵ 広 胴 型 機 に 対 し て 狭 胴 型 機 , あ る い は 標 準 型 機 と い う ︶ の 客 室 は , 幅 3 . 0 ~ 3 . 8 m で , こ れ は 鉄 道 車 両 や 大 型 バ ス な ど 地 上 交 通 機 関 の そ れ と 同 程 度 で , 中 央 の 通 路 を は さ ん で そ の 両 側 に 2 ~ 3 並 列 の 座 席 を 配 置 す る の が ふ つ う で あ っ た 。 こ の よ う な 客 室 配 置 は , 標 準 型 式 と し て 今 後 も 広 く 使 わ れ る と 思 わ れ る が , 2 0 0 席 以 上 の 大 型 機 に 標 準 胴 体 を 用 い る と , 胴 体 が 長 く な り す ぎ て 不 便 な の で , 客 室 幅 を 5 . 0 ~ 6 . 5 m く ら い に し , 2 列 の 通 路 を は さ ん で 3 - 4 - 3 列 , 2 - 5 - 2 列 な ど の 座 席 配 置 を す る 広 胴 型 胴 体 が 実 現 し た の で あ る 。 客 席 配 置 の 融 通 性 , 居 住 性 の 向 上 な ど か ら み て , こ の 広 胴 型 は 最 近 に お け る 飛 行 機 の 目 だ っ た 進 歩 の 一 つ と い え よ う ︵ 図 11 ︶ 。 貨 物 機 と し た 場 合 , 広 胴 型 で あ れ ば , 床 上 に 船 や 鉄 道 輸 送 に 使 わ れ る 標 準 コ ン テ ナ ー を そ の ま ま 収 容 で き る 利 点 が あ る 。
ボ ー イ ン グ 7 4 7 で は 胴 体 前 方 の 一 部 が 2 階 客 室 に な っ て い て , い ろ い ろ な 用 途 に 利 用 さ れ て い る が , こ の 2 階 部 分 を も う 少 し 延 長 し て , 2 階 だ け で 69 席 の 座 席 ︵ エ コ ノ ミ ー ク ラ ス ︶ を 配 置 し た 型 が 1 9 8 3 年 に 就 航 , 将 来 は 2 階 部 を 垂 直 尾 翼 の と こ ろ ま で 延 長 す る こ と に よ り , 現 在 の 3 5 0 ~ 5 0 0 席 か ら 6 0 0 ~ 8 0 0 席 に 発 展 で き る 可 能 性 が あ る 。
尾 翼 と 安 定 性
飛 行 機 は , 主 翼 , 推 進 装 置 , 操 縦 装 置 の 働 き に よ り , あ る 範 囲 内 で 任 意 の 高 度 を 任 意 の 速 度 で 飛 ぶ こ と が で き る 。 こ の 場 合 , 飛 行 機 に 働 く い ろ い ろ な 力 は , 互 い に つ り あ っ て 定 常 状 態 に な っ て い る の が ふ つ う で あ る 。 し か し , も し 突 風 を 受 け る な ど の 外 乱 に よ っ て つ り あ い が 破 れ た と き , 飛 行 機 が 自 分 の 力 で 元 の 状 態 に 戻 る こ と が で き る こ と が 望 ま し い 。 こ の 性 質 が 安 定 性 で あ る 。
一 般 に 飛 行 機 の 尾 翼 は 水 平 尾 翼 と 垂 直 尾 翼 に 分 か れ て い る 。 水 平 尾 翼 ︵ 水 平 安 定 板 と 昇 降 舵 か ら な る ︶ は 縦 方 向 の 安 定 ︵ 縦 安 定 ︶ を 保 つ の が 役 目 で あ る 。 定 常 状 態 に あ っ た 飛 行 機 が 何 か の 原 因 で 機 首 を 上 げ 迎 え 角 が 大 き く な る と , 水 平 尾 翼 も 迎 え 角 が 増 し , 水 平 尾 翼 に は 上 向 き の 空 気 力 ︵ 揚 力 ︶ が 生 ず る 。 水 平 尾 翼 の 位 置 は 重 心 か ら ず っ と 後 方 に あ る の で , こ の 揚 力 が , 重 心 の ま わ り に 機 首 を 下 げ る モ ー メ ン ト を 生 じ , 主 翼 の 迎 え 角 を 自 動 的 に 元 に 戻 す ︵ 図 1 2 - a ︶ 。 機 首 を 下 げ た 場 合 は 水 平 尾 翼 に 下 向 き の 揚 力 が 働 き , こ れ に よ っ て 重 心 の ま わ り に は 機 首 を 上 げ る モ ー メ ン ト が 生 ず る 。
垂 直 尾 翼 は 方 向 の 安 定 ︵ 方 向 安 定 ︶ を 保 つ も の で あ る が , そ の 原 理 は 水 平 尾 翼 と 同 様 で あ る 。 す な わ ち , 何 か の 原 因 で 機 首 が 右 を 向 く と , 垂 直 尾 翼 が 左 側 か ら 風 を 受 け , 重 心 ま わ り に 機 首 を 戻 そ う と す る モ ー メ ン ト を 生 じ , 機 の 向 き を 元 に 戻 す ︵ 図 1 2 - b ︶ 。 こ の 働 き は 屋 根 の 上 に よ く 見 か け た 風 見 鶏 と 同 じ な の で , 風 見 安 定 と も い う 。
飛 行 機 が 横 に 傾 い た 場 合 の 安 定 は 上 の 二 つ と よ う す が 違 う 。 図 1 2 - c の よ う に , も し 機 が 左 に 傾 く と , 機 は 左 の ほ う に 横 滑 り を 始 め , 風 が 右 か ら 当 た る よ う に な る 。 前 か ら 見 て , 翼 が 翼 端 に 向 か っ て し だ い に 上 が っ て い る 場 合 , 主 翼 基 準 面 と 水 平 面 と の な す 角 を 上 反 角 d i h e d r a l a n g l e と い う が , 図 の よ う に 主 翼 に 上 反 角 が つ い て い る と , 左 翼 の 迎 え 角 , し た が っ て そ の 揚 力 が 右 翼 よ り 大 き く な り , 横 の 傾 き を 元 に 戻 す モ ー メ ン ト が 生 ず る 。 こ れ が 横 安 定 で あ る 。 こ の た め , ふ つ う は 主 翼 に 上 反 角 を つ け る が , 主 翼 が 胴 体 の 上 に つ い て い る 高 翼 型 で は , 主 翼 と 胴 体 と の 相 互 の 働 き で 横 安 定 が 強 く な る の で , 低 翼 の 場 合 よ り 上 反 角 を 少 な く す る 。 上 反 角 の な い 高 翼 も あ る 。 後 退 角 を も っ た 翼 で は , 横 に 傾 い て 横 滑 り を す る と , 左 右 の 翼 で 風 の 当 た り 方 が 違 い , 傾 い た 側 の 翼 の ほ う が 揚 力 が 大 き く な り , 上 反 角 を つ け た の と 同 じ 横 安 定 効 果 を 生 ず る 。 こ の た め 後 退 角 を も っ た 高 速 機 で は 一 般 に 上 反 角 は 0 , と き に は マ イ ナ ス ︵ 下 反 角 ︶ の も の さ え あ る 。
降 着 装 置
一 般 の 飛 行 機 で は , 離 着 陸 に 地 上 滑 走 が 必 要 な の で , 車 輪 と 油 圧 緩 衝 装 置 ︵ オ レ オ ︶ の つ い た 着 陸 装 置 ︵ 脚 ︶ を も っ て い る 。 脚 の 配 置 は , 重 心 の す ぐ 後 方 に 主 脚 , 機 首 に 前 脚 を も つ 三 脚 式 ︵ 前 輪 式 ︶ 着 陸 装 置 が 多 く , 重 心 の す ぐ 前 に 主 脚 , 尾 部 に 尾 輪 を も つ 尾 輪 式 着 陸 装 置 は あ ま り 用 い ら れ な く な っ た 。 三 脚 式 は 地 上 静 止 時 , 地 上 滑 走 時 , 水 平 飛 行 時 に 胴 体 の 姿 勢 が あ ま り 変 わ ら な い と い う 利 点 が あ り , ま た 地 上 滑 走 中 の 安 定 が よ く , 急 に く る り と 機 首 を 振 る グ ラ ウ ン ド ル ー プ の 傾 向 も な い 。 車 輪 1 個 の 負 担 で き る 重 量 に は 限 界 が あ る の で , 機 の 総 重 量 が 大 き く な る に つ れ , 荷 重 を 分 担 す る た め 車 輪 の 数 も 多 く す る 必 要 が あ る 。 ボ ー イ ン グ 7 4 7 で は 車 輪 4 個 を も つ 主 脚 が 4 本 左 右 に 並 び , 計 16 個 の 車 輪 が 主 脚 に つ い て い る 。 着 陸 装 置 は 飛 行 中 に は 無 用 な の で , ナ セ ル ︵ エ ン ジ ン 装 着 部 ︶ や 主 翼 内 に 引 っ 込 め て 空 気 抵 抗 の 減 少 を は か っ て い る 。 こ れ を 引 込 脚 と い い , 出 し 入 れ の 操 作 に は 油 圧 ま た は 電 動 機 を 利 用 し て い る 。
こ の よ う な 陸 上 機 に 対 し て , 水 上 で 離 発 着 す る た め に , 車 輪 の 代 り に フ ロ ー ト を つ け た も の を フ ロ ー ト 水 上 機 , 胴 体 部 に 浮 力 を も た せ て 艇 体 と し た も の を 飛 行 艇 と い う 。 か つ て 1 9 3 0 年 代 に 太 平 洋 や 大 西 洋 の 洋 上 長 距 離 輸 送 に 飛 行 艇 が 華 や か な 活 動 を し た こ と が あ っ た 。 こ れ は , 飛 行 艇 は 海 上 を 滑 走 す る の で 滑 走 路 の 長 さ に 制 限 が な く , 燃 料 を 多 量 に 積 ん で 高 翼 面 荷 重 に し て も 離 水 で き る こ と , 洋 上 で エ ン ジ ン の 故 障 な ど の た め 不 時 着 し て も 長 時 間 水 上 に 浮 か ん で い ら れ る こ と , 水 上 基 地 の 建 設 が 陸 上 に 滑 走 路 を つ く る よ り 容 易 な こ と な ど の 理 由 に よ る も の で あ っ た が , 現 在 で は 技 術 の 進 歩 に よ り , 陸 上 機 で も 安 全 に 長 距 離 の 洋 上 飛 行 が で き る よ う に な っ た の で , 空 気 抵 抗 や 構 造 重 量 が 大 き く , 地 上 の 取 扱 い で も 不 利 を 免 れ な い 飛 行 艇 は , ご く 限 ら れ た 用 途 に の み 使 用 さ れ る よ う に な っ た 。 ま た 一 つ の 機 体 で 陸 上 用 と 水 上 用 と 両 方 の 降 着 装 置 を も つ も の を 水 陸 両 用 機 と い う 。
機 体 の 構 造 と 強 度
飛 行 機 を 構 成 す る 主 翼 , 胴 体 , 尾 翼 , 降 着 装 置 な ど の 機 体 部 分 は , そ れ ぞ れ の 部 分 が 十 分 な 機 能 を 果 た せ る よ う , じ ょ う ぶ で し か も 軽 量 に で き て お り , そ の う え 長 期 間 の 使 用 に 耐 え な け れ ば な ら な い 。 と く に 重 量 を 軽 く す る 要 求 は , 他 の 乗 物 に 比 べ て は る か に き び し く , こ の た め 新 し い 材 料 や 工 作 法 を ど ん ど ん と り 入 れ て 改 良 を は か っ て い る 。
主 翼 , 胴 体 , 尾 翼 の 標 準 的 構 造 は 軽 合 金 の 骨 組 み に 軽 合 金 の 外 板 を 張 っ た 全 金 属 製 構 造 で あ る 。 外 板 は 単 に 飛 行 機 の 外 形 を 保 持 す る だ け で な く , 骨 組 み と 一 体 に な っ て , 機 体 に か か る 曲 げ と か ね じ り と か の 荷 重 を 負 担 す る の が ふ つ う で あ る 。 こ の た め 外 板 の 局 部 的 変 形 を 防 ぐ た め , そ の 内 側 に 縦 通 材 な ど の 補 強 材 が 取 り 付 け ら れ て い る 。
軽 合 金 と し て は , 多 年 ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 が 主 用 さ れ て い る が , 最 近 は チ タ ン 合 金 が , 4 0 0 ℃ 近 く ま で の 中 温 域 で 強 度 低 下 が な く 十 分 な 耐 熱 性 が あ る こ と , 比 重 は 4 . 5 で ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 と 鋼 と の 中 間 で あ る が , 強 度 重 量 比 は こ れ ら の 材 料 中 で も っ と も 優 れ て い る こ と , 疲 労 , 応 力 腐 食 な ど に 強 く , 耐 食 性 も 優 れ て い る こ と な ど の 長 所 を も つ の で , 耐 熱 材 と し て だ け で な く , 高 応 力 部 材 に も 使 わ れ , 機 体 の 軽 量 化 に 寄 与 し て い る 。 例 え ば 最 近 の マ ク ダ ネ ル ・ ダ グ ラ ス F 1 5 戦 闘 機 で は , チ タ ン の 使 用 量 が 全 構 造 重 量 の 2 5 % に 達 し て い る 。 ま た 最 近 で は , 各 種 の 繊 維 強 化 プ ラ ス チ ッ ク ︵ F R P ︶ が 機 体 の 構 造 材 料 と し て も 使 わ れ 始 め た 。 こ れ は 各 種 の 有 機 繊 維 を エ ポ キ シ 樹 脂 な ど の 媒 体 で 固 め た 複 合 材 料 で あ る 。 こ の う ち ガ ラ ス 繊 維 複 合 材 は , レ ー ダ ー 電 波 の 透 過 性 を も つ 材 料 と し て レ ド ー ム ︵ レ ー ダ ー ア ン テ ナ の カ バ ー ︶ な ど に 古 く か ら 使 わ れ て き た が , 剛 性 が 足 り な い た め 強 度 部 材 に は 使 え な か っ た 。 と こ ろ が , 炭 素 , ア ラ ミ ド な ど の 繊 維 を 使 っ た 複 合 材 は , 比 重 の わ り に 強 度 や 剛 性 が 従 来 の 航 空 機 用 金 属 材 料 を し の ぐ も の が 多 く , こ れ を 適 所 に 利 用 す る こ と に よ り , 機 体 構 造 重 量 の 大 幅 な 軽 減 が 期 待 で き る 。 図 13 は 最 近 の 輸 送 機 の 使 用 例 で , 今 の と こ ろ 舵 面 , フ ィ レ ッ ト , カ ウ リ ン グ , 床 板 , 脚 扉 な ど の 二 次 構 造 に 限 ら れ て い る が , 今 後 実 用 環 境 下 で の 特 性 が さ ら に 究 明 さ れ , ま た 使 用 経 験 が 蓄 積 さ れ る に 従 い , そ の 使 用 範 囲 が 広 ま り , 重 要 な 強 度 部 材 に も 及 ぶ も の と 予 想 さ れ て い る 。
→ 航 空 機 材 料
装 備
飛 行 機 の 高 性 能 化 , 大 型 化 に 伴 い , 近 代 的 飛 行 機 で は 各 種 の 装 備 が 充 実 し , 価 格 の 点 か ら も 重 要 度 の 点 か ら も 飛 行 機 全 体 の 中 で 装 備 の 占 め る 比 率 が 大 き く な っ て き た 。 つ ま り か つ て は も っ ぱ ら 人 間 の 感 覚 や 運 動 神 経 や 体 力 な ど に 頼 っ て 飛 行 機 を 運 航 し て い た が , だ ん だ ん 人 間 の 手 に 負 え な く な っ て , そ の 代 理 あ る い は 助 手 を つ と め る 装 備 品 が 必 要 に な っ て き た の で あ る 。
ま ず 飛 行 機 の 現 在 の 状 態 , あ る い は お か れ て い る 環 境 に つ い て の 正 し い 情 報 を 乗 員 に 提 供 す る 装 置 と し て , 計 器 類 , 航 法 装 置 , 通 信 装 置 が あ る 。 計 器 類 に は , 飛 行 機 の 速 度 , 高 度 , 上 昇 率 , 飛 行 機 の 姿 勢 , エ ン ジ ン , プ ロ ペ ラ の 状 態 な ど を 指 示 す る も の が 多 数 あ り , こ れ ら は 操 縦 席 の 計 器 板 に 取 り 付 け ら れ て い る 。 航 法 装 置 は 地 上 の 各 種 の 施 設 か ら 送 ら れ て く る 電 波 を 受 け た り 機 上 の レ ー ダ ー を 使 っ て , 機 の 現 在 位 置 , 方 位 な ど の 情 報 を 知 ら せ る 。 ま た 加 速 度 計 と コ ン ピ ュ ー タ ー を 組 み 合 わ せ , 加 速 度 か ら 速 度 , 速 度 か ら 進 ん だ 距 離 と 方 向 を 算 出 し て , 現 在 位 置 を 正 確 に 知 ら せ る 慣 性 航 法 装 置 も 用 い ら れ て い る 。 通 信 装 置 は 地 上 あ る い は 他 機 と 交 信 を す る た め の も の で , 航 空 交 通 管 制 部 な ど か ら の 指 示 や 気 象 通 報 を 伝 達 す る 。 乗 員 は こ れ ら 各 種 の 情 報 に 基 づ き 飛 行 機 を 運 航 す る の で あ る が , 最 近 は デ ィ ジ タ ル 電 子 技 術 の 導 入 に よ っ て 各 種 の 情 報 量 を 多 色 C R T ︵ c a t h o d e r a y t u b e の 略 , い わ ゆ る ブ ラ ウ ン 管 ︶ に 数 字 , 文 字 , 記 号 , 図 形 な ど で 表 示 す る 方 式 が 実 用 に な り , 目 盛 と 指 針 に よ る 従 来 の 計 器 表 示 に 比 べ て 読 取 り が 容 易 で , か つ 精 度 が 高 め ら れ る よ う に な っ た 。 同 様 の 情 報 量 を 操 縦 者 前 方 の 風 防 ガ ラ ス に 写 し 出 し , 外 部 視 界 と い っ し ょ に 読 み 取 れ る よ う に し た ヘ ッ ド ア ッ プ デ ィ ス プ レ ー と い う 方 式 も あ り , 着 陸 進 入 時 や 射 撃 の と き 便 利 で あ る 。 ま た 最 近 は と く に 燃 料 節 約 な ど の 目 的 で 飛 行 管 理 シ ス テ ム ︵ F M S 。 f l i g h t m a n a g e m e n t s y s t e m の 略 ︶ も 実 用 化 さ れ て い る 。 こ れ は , 飛 行 機 の 性 能 に 影 響 す る 諸 情 報 ︵ 飛 行 機 の 重 量 , 飛 行 高 度 , 外 気 温 , 風 な ど ︶ に よ っ て , 例 え ば あ る 区 間 を 飛 ぶ の に 燃 料 が も っ と も 経 済 的 に な る 飛 行 速 度 , 経 路 な ど を 機 上 の コ ン ピ ュ ー タ ー で 計 算 し , そ の 信 号 で エ ン ジ ン の 出 力 制 御 , 飛 行 制 御 を 自 動 的 に 行 う と 同 時 に , 操 縦 者 の モ ニ タ ー 用 に , C R T で 必 要 な 情 報 を 提 供 す る シ ス テ ム で あ る 。 そ の ほ か 最 近 の 電 子 技 術 の 目 覚 ま し い 発 達 で 新 し い 装 置 , シ ス テ ム が 次 々 に 実 用 化 さ れ , 操 縦 室 周 辺 に 革 命 を 起 こ し て い る 。
→ 航 空 計 器
執 筆 者 ‥ 木 村 秀 政
世 界 の 航 空 宇 宙 工 業
飛 行 機 産 業 , 航 空 機 工 業 は ミ サ イ ル , 宇 宙 開 発 等 の 進 展 に よ り , 今 日 で は 広 く 航 空 宇 宙 工 業 と し て 包 括 的 に と ら え ら れ て い る 。 こ こ で は こ う し た 観 点 か ら 世 界 の 航 空 宇 宙 工 業 に つ い て 記 す 。 な お , 日 本 に つ い て は ︿ 航 空 宇 宙 工 業 ﹀ の 項 を 参 照 さ れ た い 。
世 界 の 航 空 宇 宙 工 業 ︵ 共 産 圏 を 除 く ︶ の 売 上 げ の シ ェ ア ︵ 市 場 に 占 め る 割 合 ︶ を み る と , 1 9 8 0 年 代 の 初 め で ア メ リ カ が 約 7 0 % , 続 い て イ ギ リ ス , フ ラ ン ス , 西 ド イ ツ , さ ら に カ ナ ダ , イ タ リ ア , 日 本 と な る 。 ま た ア ル ゼ ン チ ン , ブ ラ ジ ル , イ ス ラ エ ル , イ ン ド ネ シ ア , 中 国 な ど で は , 航 空 機 工 業 は お も に 先 進 諸 国 か ら の 技 術 移 転 に よ っ て ス タ ー ト し , 技 術 先 端 産 業 の た め 工 業 化 の リ ー デ ィ ン グ 産 業 と し て , ま た 安 全 保 障 上 の 見 地 か ら 各 国 政 府 と も 育 成 に 力 を 入 れ て い る 。 そ の 結 果 , か な り の 数 の 航 空 機 を 輸 出 し て い る 国 や , 先 進 国 と 共 同 開 発 を 行 っ て い る 国 ︵ ブ ラ ジ ル は イ タ リ ア と , イ ン ド ネ シ ア は ス ペ イ ン と な ど ︶ も あ る 。 さ ら に イ ス ラ エ ル , イ ン ド , 中 国 で は 高 度 な 技 術 を 必 要 と す る ジ ェ ッ ト 戦 闘 機 の 開 発 を 独 自 に 行 っ て い る 。
ア メ リ カ
ア メ リ カ の 航 空 宇 宙 工 業 は 共 産 圏 を 除 き , 世 界 最 大 の 規 模 を も っ て い る 。 1 9 6 0 年 代 に は ア ポ ロ 計 画 と ベ ト ナ ム 戦 争 に よ る 緊 急 調 達 で 好 況 を 呈 し た が , 68 年 を ピ ー ク と し て , ベ ト ナ ム 和 平 に 伴 い 需 要 は 減 退 し て い っ た が , 78 年 こ ろ か ら 再 び 上 昇 に 転 じ た 。 売 上 高 の 対 G N P 比 率 で み る と , 1 9 6 8 年 の 3 . 4 % が 7 6 - 7 9 年 に は 1 . 8 % ま で 下 が り , 83 年 に は 2 . 3 % と な っ た 。 83 年 の 売 上 高 は 7 5 8 億 ド ル で , 内 訳 は 民 間 機 1 2 2 億 ド ル , 軍 用 機 2 9 0 億 ド ル , ミ サ イ ル 91 億 ド ル , 宇 宙 関 係 1 3 9 億 ド ル , そ の 他 1 1 6 億 ド ル で あ る 。 そ の 需 要 先 は 国 防 省 3 9 3 億 ド ル , N A S A な ど の 政 府 機 関 59 億 ド ル , 民 間 1 9 0 億 ド ル な ど と な っ て い る 。 ま た 航 空 宇 宙 製 品 の 輸 出 額 が 1 6 1 億 ド ル ︵ う ち , 民 間 向 け 1 0 6 億 ド ル , 軍 用 向 け 55 億 ド ル ︶ に 対 し 輸 入 は 35 億 ド ル で , 1 2 6 億 ド ル の 出 超 で あ る 。 同 時 期 の ア メ リ カ の 貿 易 収 支 が 6 0 7 億 ド ル の 入 超 で あ る こ と を 考 え る と , 航 空 宇 宙 工 業 は ア メ リ カ の 貿 易 バ ラ ン ス に 貢 献 し て い る と い え る 。
ま た ア メ リ カ の 航 空 宇 宙 工 業 は , 小 型 の 単 発 機 か ら 巨 大 な ジ ェ ッ ト 旅 客 機 や 超 音 速 軍 用 機 , さ ら に 大 型 ロ ケ ッ ト ま で を 大 量 に 生 産 で き る 能 力 を 備 え て い る 。 こ の 背 景 に は , 政 府 が 自 国 の 安 全 保 障 上 か ら も 自 由 陣 営 の リ ー ダ ー と し て も 性 能 の す ぐ れ た 航 空 宇 宙 製 品 を 開 発 し 生 産 す る 能 力 を 必 要 と 考 え て お り , こ の た め 国 防 省 に よ る 研 究 開 発 や 生 産 基 盤 に 対 す る 莫 大 な 投 資 と 併 せ て , 大 規 模 な 研 究 施 設 と 優 秀 な ス タ ッ フ を 有 す る N A S A に よ る 研 究 の 成 果 が 企 業 に 提 供 さ れ て い る こ と が あ る 。 上 記 の 理 由 に 加 え て , 国 内 に 大 き な 市 場 を も つ メ リ ッ ト も 無 視 で き な い 。 し か し , ワ イ ド ボ デ ィ 旅 客 機 の 分 野 で は ヨ ー ロ ッ パ の 国 際 協 同 会 社 の エ ア バ ス ・ イ ン ダ ス ト リ ー 社 A i r b u s I n d u s t r i e が 進 出 し て き て い る 。
ヨ ー ロ ッ パ
ヨ ー ロ ッ パ の 航 空 工 業 は 第 2 次 大 戦 で 大 き な 被 害 を 受 け た が , ア メ リ カ の 軍 用 機 , ヘ リ コ プ タ ー , エ ン ジ ン な ど の ラ イ セ ン ス 生 産 な ど に よ り , そ の 立 直 し が な さ れ た 。 各 国 と も 政 府 の 強 力 な 施 策 の も と に , 航 空 機 工 業 の 実 力 が 向 上 し て き た が , 同 時 に 開 発 費 の 上 昇 , 市 場 の 確 保 , ア メ リ カ に 対 す る 対 抗 等 の た め , ヨ ー ロ ッ パ 内 で の 国 際 共 同 開 発 ・ 生 産 が 行 わ れ て い る 。 主 要 な 例 は , 民 間 機 で は 超 音 速 旅 客 機 コ ン コ ル ド ︵ イ ギ リ ス , フ ラ ン ス ︶ , 旅 客 機 F 2 8 ︵ オ ラ ン ダ , ド イ ツ , イ ギ リ ス ︶ , エ ア バ ス A 3 0 0 , A 3 1 0 ︵ フ ラ ン ス , ド イ ツ , イ ギ リ ス , ス ペ イ ン , オ ラ ン ダ , ベ ル ギ ー ︶ , コ ミ ュ ー タ ー 機 の A T R 4 2 ︵ フ ラ ン ス , イ タ リ ア ︶ 等 が あ り , 軍 用 機 で は ト ラ ン ザ ー ル 輸 送 機 ︵ フ ラ ン ス , ド イ ツ ︶ , ジ ャ ガ ー 攻 撃 / 練 習 機 ︵ イ ギ リ ス , フ ラ ン ス ︶ , ア ル フ ァ ジ ェ ッ ト 攻 撃 / 練 習 機 ︵ フ ラ ン ス , ド イ ツ ︶ , ト ー ネ ー ド 戦 闘 機 ︵ イ ギ リ ス , ド イ ツ , イ タ リ ア ︶ 等 が あ る 。
上 記 の う ち , コ ン コ ル ド は 16 機 の 生 産 で 航 空 会 社 へ の 引 渡 し 14 機 に す ぎ ず , 経 済 的 に は 失 敗 に 終 わ っ た が ア メ リ カ に 先 が け て 超 音 速 輸 送 機 を 開 発 し た と い う 実 績 は ヨ ー ロ ッ パ の 航 空 機 工 業 に 大 き な 自 信 と 誇 り を 与 え た 。 ま た 民 間 機 の 共 同 プ ロ ジ ェ ク ト で 最 も 成 功 を 収 め て い る の は エ ア バ ス ・ イ ン ダ ス ト リ ー 社 で あ る 。 1 9 7 0 年 12 月 に 設 立 さ れ , 1 9 8 0 年 代 半 ば の メ ン バ ー と そ の 責 任 分 担 率 は , フ ラ ン ス の ア エ ロ ス パ シ ア ル 社 3 7 . 9 % , ド イ ツ の ド イ ツ ・ エ ア バ ス 社 3 7 . 9 % , イ ギ リ ス の ブ リ テ ィ ッ シ ュ ・ エ ア ロ ス ペ ー ス 社 2 0 % , ス ペ イ ン の C A S A 社 4 . 2 % で あ る 。 こ の ほ か に オ ラ ン ダ の フ ォ ッ カ ー 社 と ベ ル ギ ー の ベ ル エ ア バ ス 社 が 協 力 メ ン バ ー と な っ て い る 。 1 9 8 0 年 代 半 ば , 1 9 8 0 年 代 半 ば 当 時 , ワ イ ド ボ デ ィ ・ 2 通 路 型 の A 3 0 0 ︵ 3 0 0 席 ク ラ ス 。 1 9 6 9 開 発 開 始 ︶ と A 3 1 0 ︵ 2 0 0 席 ク ラ ス 。 1 9 7 8 開 発 開 始 ︶ の 生 産 販 売 が 行 わ れ て い る 。 78 年 に は 2 通 路 型 旅 客 機 の 販 売 で , ボ ー イ ン グ 社 に 次 ぐ 世 界 第 2 位 の メ ー カ ー と な っ た 。
宇 宙 の 分 野 で も 欧 州 宇 宙 局 E u r o p e a n S p a c e A g e n c y ︵ E S A ︶ が 1 9 7 5 年 に 発 足 し , ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 が 協 力 し て 宇 宙 関 係 の 基 礎 研 究 , 科 学 分 野 と 実 利 用 分 野 の 衛 星 等 の 研 究 開 発 を 実 施 し て い る 。 加 盟 国 は ベ ル ギ ー , デ ン マ ー ク , フ ラ ン ス , ド イ ツ , イ タ リ ア , オ ラ ン ダ , ス ペ イ ン , ス ウ ェ ー デ ン , ス イ ス , イ ギ リ ス お よ び ア イ ル ラ ン ド の 11 ヵ 国 で あ り , オ ー ス ト リ ア と ノ ル ウ ェ ー が 準 加 盟 国 と な っ て い る 。
ヨ ー ロ ッ パ で は 共 同 開 発 ・ 生 産 と 併 せ て 企 業 の 統 合 と 国 有 化 が 強 力 に 推 進 さ れ た 。 イ ギ リ ス で は 1 9 4 9 年 に は 機 体 33 社 , エ ン ジ ン 12 社 が あ っ た が , 主 要 な 航 空 機 メ ー カ ー は ブ リ テ ィ ッ シ ュ ・ エ ア ロ ス ペ ー ス 社 ︵ 5 0 % 国 有 ︶ , シ ョ ー ト 社 ︵ 1 0 0 % 国 有 ︶ , ヘ リ コ プ タ ー メ ー カ ー は , ウ ェ ス ト ラ ン ド 社 ︵ 民 間 ︶ , エ ン ジ ン メ ー カ ー は ロ ー ル ス ・ ロ イ ス 社 ︵ 1 0 0 % 国 有 ︶ と な っ て い る 。 フ ラ ン ス も 同 様 に 統 合 と 国 有 化 が 行 わ れ , 機 体 会 社 は ア エ ロ ス パ シ ア ル 社 ︵ 7 5 % 国 有 ︶ , ダ ッ ソ ー ・ ブ レ ゲ ー 社 ︵ 4 6 % 国 有 ︶ , エ ン ジ ン メ ー カ ー は S N E C M A 社 ︵ 9 0 % 国 有 ︶ お よ び チ ュ ル ボ メ カ 社 ︵ 民 間 ︶ と な っ て い る 。 ド イ ツ は 機 体 会 社 が M B B 社 と ド ル ニ エ 社 の 2 社 , エ ン ジ ン は M T U 1 社 と な っ て い る が , い ず れ も 民 間 会 社 で あ る 。 イ タ リ ア で は ア エ リ タ リ ア 社 と ア グ ス タ 社 に 統 合 さ れ て お り , 政 府 の 開 発 機 関 や 特 殊 会 社 を 通 じ て ア エ リ タ リ ア 社 の 1 0 0 % , ア グ ス タ 社 の 5 1 % の 株 式 を 国 が 保 有 し て い る 。
主 要 国 の 航 空 宇 宙 工 業 の 規 模 を 数 字 で み る と , イ ギ リ ス は 売 上 げ が 約 55 億 ポ ン ド で , う ち 約 34 億 ポ ン ド が 輸 出 ︵ 1 9 8 3 ︶ , フ ラ ン ス は 売 上 げ が 5 1 3 億 フ ラ ン で , う ち 3 2 1 億 フ ラ ン が 輸 出 ︵ 1 9 8 2 ︶ , 西 ド イ ツ は 売 上 げ が 1 2 7 億 マ ル ク で , う ち 64 億 マ ル ク が 輸 出 ︵ 1 9 8 2 ︶ , イ タ リ ア は 売 上 げ が 2 兆 9 0 0 0 億 リ ラ で , う ち 1 兆 9 0 0 0 億 リ ラ が 輸 出 ︵ 1 9 8 2 ︶ , と な っ て い る 。
カ ナ ダ
カ ナ ダ の 航 空 宇 宙 工 業 は ア メ リ カ と 密 接 な 関 係 に あ り , 1 9 8 0 年 で は 輸 出 の 5 3 % , 輸 入 の 9 5 % が ア メ リ カ と の 取 引 で あ る 。 機 体 会 社 と し て は デ ・ ハ ビ ラ ン ド ・ カ ナ ダ 社 と カ ナ ダ エ ア 社 が あ る が , い ず れ も カ ナ ダ 政 府 の 航 空 機 産 業 振 興 政 策 に よ り 国 営 企 業 と な っ た 。 S T O L 輸 送 機 や ビ ジ ネ ス ジ ェ ッ ト 機 を 独 自 に 生 産 し て い る が , そ の ほ か に カ ナ ダ 国 防 軍 用 に ア メ リ カ 機 の ラ イ セ ン ス 生 産 や ア メ リ カ 企 業 の 下 請 生 産 を 行 っ て い る 。 ま た , プ ラ ッ ト ・ ア ン ド ・ ホ イ ッ ト ニ ー ・ カ ナ ダ 社 で は 小 型 ガ ス タ ー ビ ン エ ン ジ ン の 開 発 生 産 を 手 が け て い る 。 1 9 8 1 年 の 総 売 上 高 は 2 5 . 5 億 カ ナ ダ ・ ド ル で あ る 。
執 筆 者 ‥ 番 匠 敦 彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」 改訂新版 世界大百科事典について 情報
飛行機【ひこうき】
空 気 よ り 重 い 重 航 空 機 の う ち , 固 定 翼 を も ち , 推 進 装 置 で 前 進 す る こ と に よ り 揚 力 を 得 て 飛 行 す る も の 。 動 力 を も つ 点 で グ ラ イ ダ ー と , 固 定 翼 で あ る 点 で ヘ リ コ プ タ ー な ど と 区 別 さ れ る 。 1 9 0 3 年 米 国 の ラ イ ト 兄 弟 が , 12 馬 力 ガ ソ リ ン エ ン ジ ン 付 複 葉 機 で 飛 行 に 成 功 し た の が 飛 行 機 の 最 初 だ が , こ れ に 先 立 ち , 英 国 の ケ ー リ ー ら の 理 論 的 研 究 や 模 型 実 験 , ド イ ツ の リ リ エ ン タ ー ル の 2 0 0 0 回 を 越 え る グ ラ イ ダ ー 飛 行 な ど が , そ の 基 礎 を 築 い て い た 。 ラ イ ト 兄 弟 の 成 功 後 , 飛 行 機 の 研 究 は 主 と し て フ ラ ン ス を 中 心 に し た ヨ ー ロ ッ パ で 行 わ れ , 1 9 0 9 年 L . ブ レ リ オ は ド ー バ ー 海 峡 横 断 に 成 功 し た 。 第 1 次 大 戦 で 飛 行 機 技 術 は 大 幅 に 進 歩 , 時 速 2 5 0 k m の 戦 闘 機 や 大 型 の 爆 撃 機 も 実 用 化 さ れ , 戦 後 こ の 転 用 に よ る 旅 客 ・ 郵 便 物 の 定 期 輸 送 が 始 ま っ た 。 第 2 次 大 戦 は プ ロ ペ ラ 飛 行 機 を 技 術 的 に 最 高 度 ま で 発 達 さ せ た が , 大 戦 直 前 の 1 9 3 9 年 に は ド イ ツ で 最 初 の ジ ェ ッ ト 機 ハ イ ン ケ ル H e 1 7 8 が 初 飛 行 , 英 国 で も ホ イ ッ ト ル が 発 明 し た ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン ︵ 1 9 3 7 年 実 験 成 功 ︶ を 積 ん だ 試 作 機 を 飛 行 さ せ , 戦 後 の ジ ェ ッ ト 機 時 代 の 先 駆 と な っ た 。 今 日 で は マ ッ ハ 3 以 上 の 軍 用 機 が 実 用 化 , 大 型 旅 客 機 も マ ッ ハ 0 . 8 〜 0 . 9 と な り , S S T ︵ 超 音 速 輸 送 機 ︶ も 就 航 し て い る 。 ︹ 飛 行 の 原 理 と 性 能 ︺ 飛 行 機 の 翼 は 上 面 の 湾 曲 が 下 面 の 湾 曲 よ り 大 き い 断 面 形 状 に な っ て お り , 前 進 方 向 に 対 し て あ る 角 度 ︵ 迎 え 角 ︶ を も っ て い る 。 こ の よ う な 形 の 翼 が 空 気 中 を あ る 速 度 で 前 進 す る と , 気 流 に よ っ て 翼 に は 揚 力 が 生 じ る 。 水 平 飛 行 中 の 飛 行 機 は , 揚 力 が 重 量 と , 抗 力 が 推 力 と そ れ ぞ れ 等 し く 釣 り 合 っ て い る 。 揚 力 が 重 量 よ り 大 き け れ ば 飛 行 機 は 上 昇 す る が , 揚 力 増 加 に つ れ て 抗 力 も 増 加 す る の で , 同 時 に 推 力 も 増 加 さ せ な け れ ば な ら な い 。 揚 力 は ほ ぼ 翼 の 面 積 と 飛 行 速 度 の 2 乗 に 比 例 す る か ら , 揚 力 と 重 力 が 釣 り あ っ て い る と き の 水 平 飛 行 中 の 速 度 は , 翼 面 積 で 重 量 を 割 っ た 値 ︵ 翼 面 荷 重 ︶ の 平 方 根 に 比 例 す る 。 高 速 機 ほ ど 翼 面 荷 重 が 大 き く , 重 量 の わ り に 面 積 の 小 さ い 翼 に な る わ け で , 翼 面 荷 重 は 高 速 ジ ェ ッ ト 機 で 5 0 0 k g / m 2 を 超 え る も の か ら , 軽 飛 行 機 で 1 0 0 k g / m 2 以 下 の も の ま で あ る 。 一 方 , 離 着 陸 時 の 速 度 は 低 い ほ ど 有 利 で あ る が , 揚 力 係 数 の 大 き な 翼 は 抗 力 も 大 き く な る の で , 速 度 性 能 の 要 求 と 矛 盾 し , こ の た め 必 要 時 だ け 揚 力 係 数 を 増 大 さ せ る フ ラ ッ プ , 境 界 層 制 御 装 置 な ど の 高 揚 力 装 置 が 使 わ れ る 。 抗 力 は 推 力 に , 揚 力 は 重 量 に 等 し い か ら , 揚 抗 比 ︵ 揚 力 と 抗 力 の 比 ︶ は そ の 飛 行 機 の 重 量 を 支 え る 速 度 で 水 平 飛 行 す る の に 要 す る 推 力 の 比 と み る こ と が で き , 同 重 量 の 飛 行 機 な ら 揚 抗 比 が 大 き い ほ ど 小 さ な 推 力 で 水 平 飛 行 が で き , し た が っ て 同 一 量 の 燃 料 で よ り 長 距 離 を 飛 ぶ こ と が で き る 。 揚 抗 比 を 大 き く す る 最 も 有 効 な 手 段 は , 翼 幅 に 対 す る 翼 弦 の 比 ︵ ア ス ペ ク ト 比 ︶ を 大 き く す る こ と で , 長 距 離 用 の 機 体 が 一 般 に 細 長 い 翼 を も っ て い る の は こ の 理 由 に よ る 。 ︹ 安 定 と 操 縦 ︺ 飛 行 機 の 運 動 は , 機 の 重 心 を 通 っ て 直 角 に 交 わ る 3 軸 ま わ り の 運 動 , す な わ ち 前 後 軸 ま わ り の 横 揺 れ ︵ ロ ー リ ン グ ︶ , 左 右 軸 ま わ り の 縦 揺 れ ︵ ピ ッ チ ン グ ︶ , 上 下 軸 ま わ り の 片 揺 れ ︵ ヨ ー イ ン グ ︶ に 分 解 で き る 。 縦 の 安 定 と 操 縦 に は 水 平 尾 翼 と 昇 降 舵 ( し ょ う こ う だ ) , 片 揺 れ に 対 す る 安 定 と 操 縦 に は 垂 直 尾 翼 と 方 向 舵 , ま た 横 揺 れ の 安 定 に は 上 反 角 , 操 縦 に は 補 助 翼 が あ る 。 こ れ ら に よ っ て 飛 行 機 は 安 定 を 保 ち , 一 定 の 姿 勢 で 飛 行 で き る 。 操 縦 者 は 昇 降 舵 に よ り 機 の 迎 え 角 を 加 減 し , エ ン ジ ン の 出 力 を 調 整 し て 上 昇 , 下 降 , 加 速 を 行 い , 方 向 舵 と 補 助 翼 に よ っ て 方 向 を 変 え る 。 ︹ 構 造 ︺ 最 近 の 飛 行 機 は ほ と ん ど が 超 ジ ュ ラ ル ミ ン , 超 々 ジ ュ ラ ル ミ ン な ど の 高 力 ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 製 で あ る 。 鍛 造 部 に は さ ら に 軽 量 な マ グ ネ シ ウ ム 合 金 も 使 わ れ , エ ン ジ ン 周 辺 な ど の 耐 熱 部 分 に は チ タ ン 合 金 そ の 他 の 耐 熱 合 金 が 使 わ れ て い る 。 構 造 的 に は , 翼 や 胴 体 の 外 板 に も 内 部 の 桁 ( け た ) , 補 強 材 , 隔 壁 な ど と と も に 強 度 を 負 担 さ せ る モ ノ コ ッ ク 構 造 が ほ と ん ど で あ る 。 最 近 の 大 型 機 や 高 性 能 機 に は 外 板 と 補 強 材 を 一 体 に 削 り 出 す イ ン テ グ ラ ル 構 造 が 多 く 採 用 さ れ る よ う に な り , こ れ ら の 工 作 に は 特 殊 な 大 型 フ ラ イ ス 盤 や ス キ ン ミ ラ ー な ど が 使 わ れ て い る 。
→ 関 連 項 目 舵 | 軍 用 機 | 航 空 機 | 無 尾 翼 機
出典 株式会社平凡社 百科事典マイペディアについて 情報
飛行機 ひこうき airplane; aeroplane
固定翼をもち,プロペラまたはジェットによって推進される航空機の総称。 1903年アメリカ合衆国のライト兄弟 の動力飛行が成功して以来,飛行機は順調に発達し,現在は長距離の国際区間をはじめ国内でも主要な交通機関となっている。一般的な飛行機の構造は機体と動力装置からなり,機体は胴体,揚力を得るための主翼,飛行中の機体を安定させる尾翼,機体の体勢を制御する方向舵,昇降舵,補助翼などの操縦翼面,降着装置に大別され,これに動力装置を取り付けている。胴体内部には乗員,乗客,貨物,および操縦のための機器類が収容される。上下2枚の主翼をもつ複葉機は第1次世界大戦の中頃まで主流を占めていたが,現在では競技用や農薬散布に利用されるのみとなった。主翼が1枚の物は単葉機と呼ばれ,胴体と主翼の位置によって傘翼,高翼,中翼,低翼に分類される。現在はほとんど低翼単葉である。尾翼は普通水平尾翼と垂直尾翼からなり,それぞれの後縁に昇降舵と方向舵がつく。水平尾翼を垂直尾翼の上部に取り付けたT型尾翼もある。降着装置は陸上機が車輪,水上機がフロートや艇体をもつ。動力装置はプロペラとジェットに大別され,エンジンの種類によって前者はピストン機とターボプロップ機,後者はターボジェット機,ターボファン機に区別される。エンジンの種類にかかわらず,その数によって単発機,双発機,三発機,四発機などの区別がある。エンジンの取り付け位置は,プロペラ機では機首または主翼が普通。ジェット機では主翼前縁に突き出したナセルか主翼下面に吊り下げたポッドに収められる。また胴体の後部左右に取り付けたものもある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
飛行機 ひこうき
1909年(明治42)以来軍事的観点から導入が進められ,10年12月,日野熊蔵大尉つづいて徳川好敏大尉が代々木練兵場で日本人として最初の飛行に成功。14年(大正3)海軍が追浜に横須賀海軍航空隊を,陸軍は翌年所沢に航空大隊を開設。22年空母鳳翔竣工。民間では22年に定期航空路が開設,28年(昭和3)日本航空輸送が国策会社として設立された。この頃から自主設計による飛行機製作が進み,日中・太平洋戦争期に生産は急増したが,敗戦により生産・研究は禁止された。51年国内航空が,54年国際線が再開。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」 山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
飛行機 ひこうき airplane
人間を乗せて固定翼の揚力によって飛ぶ乗り物 1903年12月17日,アメリカのライト兄弟によって最初の飛行が成功し,第一次世界大戦では偵察を主として行う新兵器となった。大戦後には新空路の開拓が積極的に行われるようになり,定期輸送便も開かれて世界を短時間で結ぶことが可能になった。第二次世界大戦期になると,各国は戦闘機をはじめとする飛行機の開発を進め,プロペラ機の限界にまで到達した。そこで新たにジェット機が実用化され,戦後にはワイドボディの大型輸送機も登場した。
出典 旺文社世界史事典 三訂版 旺文社世界史事典 三訂版について 情報
飛行機
けん玉の技のひとつ。玉を持ち、けんを振り上げて半回転させ玉にさす。2000年、日本けん玉協会により「けん玉の技百選」に選定された。
出典 小学館 デジタル大辞泉プラスについて 情報
世界大百科事典(旧版)内の 飛行機の言及
【航空】より
… こ の 運 航 は 第 1 次 世 界 大 戦 の 始 ま る 14 年 ま で 続 き , 3 万 4 0 0 0 人 を 運 ん だ 。
﹇ 空 気 よ り 重 い 航 空 機 の 登 場 ﹈
気 球 , 飛 行 船 の よ う な 空 気 よ り 軽 い 航 空 機 ― ― 軽 航 空 機 ― ― に 対 し , 翼 に 働 く 動 的 空 気 力 ( 揚 力 ) で 重 量 を 支 え て 飛 ぶ 空 気 よ り 重 い 航 空 機 ― ― 重 航 空 機 ― ― す な わ ち グ ラ イ ダ ー , 飛 行 機 , ヘ リ コ プ タ ー な ど は そ の 発 達 が 著 し く 遅 れ た 。 人 間 が 重 航 空 機 を 発 明 す る に 当 た っ て , ま ず 手 本 に し た の は 鳥 で あ る が , 鳥 は 複 雑 な 羽 ば た き 運 動 に よ っ て , 重 量 を 支 え る 揚 力 と 前 進 の た め の 推 進 力 を 同 時 に 発 生 さ せ て 飛 ん で い る 。 …
【航空機】より
… し か し , こ れ に 乗 り 組 め る 乗 員 , 乗 客 は 1 0 0 人 ほ ど で あ り , ま た 時 速 も 大 き な 空 気 抵 抗 を 受 け る た め 1 3 0 k m / h に と ど ま っ た 。 重 航 空 機 は , 翼 が 空 気 中 を あ る 速 さ で 進 む と き に , 翼 に 生 ず る 動 的 空 気 力 ( 揚 力 ) に よ っ て 機 体 の 重 量 を 支 え る も の で , 飛 行 機 や グ ラ イ ダ ー の よ う に 機 体 に 固 定 さ れ た 翼 を 用 い る 固 定 翼 機 と , ヘ リ コ プ タ ー や ジ ャ イ ロ プ レ ー ン の よ う に 軸 の ま わ り を 回 転 す る 回 転 翼 を 用 い る 回 転 翼 航 空 機 に 大 別 さ れ る 。 翼 に 生 ず る 揚 力 は 速 度 の 2 乗 に 比 例 す る の で , 速 度 が 速 く な れ ば , 機 体 の 比 重 が 空 気 の 比 重 よ り は る か に 大 き く な っ て も 飛 ぶ こ と が で き る 。 …
【航空機材料】より
… 窓 材 料 , 内 装 材 な ど , 部 分 に よ っ て 用 い ら れ る 材 料 に は さ ま ざ ま な も の が あ る が , こ こ で は 航 空 機 に と っ て 最 も 重 要 な 機 体 材 料 に つ い て 述 べ る こ と に す る 。 初 期 の 飛 行 機 は 木 で 骨 格 を 作 り , そ れ に 羽 布 を 張 っ て 作 ら れ て い た 。 良 質 な 木 材 は 軽 く , そ の 割 に 強 度 が 高 い た め , 部 材 に 加 わ る 荷 重 が 小 さ い 初 期 の 飛 行 機 で は , 木 を 使 用 す る と 適 度 の 太 さ の 部 材 で 必 要 な 強 度 を 得 る こ と が で き た 。 …
【交通】より
… 人 は い つ で も , ど こ へ で も 行 け る モ ビ リ テ ィ を 確 保 す る と , 次 に は で き る だ け 速 く , で き る だ け 快 適 に 移 動 す る こ と を 望 む よ う に な る 。 速 度 の 点 で 他 の 交 通 手 段 を 寄 せ つ け な い の が , 飛 行 機 で あ っ た 。 空 を 飛 ぶ 交 通 手 段 と し て は , 飛 行 機 が 実 用 化 さ れ る 前 に 飛 行 船 が 登 場 し た が , 1 9 3 7 年 の ヒ ン デ ン ブ ル ク 号 の 爆 発 を 最 後 に 大 陸 間 を 結 ぶ 輸 送 を 行 う 姿 は 見 ら れ な く な っ た 。 …
※「飛行機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」