この記事はヘボコンAdvent Calendar 2017の1日目の記事です。
もくじ
- ヘボコンとは
- ロボットアニメへのオマージュ「ギガ・ヘボコン」
- 適切なタイヤはペナルティ「ヘボレース」
- 障害物というか土俵ごと倒壊する「障害物ヘボコン」
- ハードなコースがヘボの核心に迫る「ヘボスケ」
- リアル(だが出来の悪い)スプラトゥーン「ヘボコン・ペイントエディション」
- プカプカするだけ「水ヘボコン」
- ヘリクツから生まれた新競技「エア・ヘボコン」
- ヘボコンと多様性
ヘボコンとは
僕は3年前の2014年から、ヘボコンというイベントを主催しています。ヘボコンというのは略称で、﹁技術力の低い人限定ロボコン︵通称‥ヘボコン︶﹂がフルネーム。ロボットを作る技術や才能、根気や集中力を持たない人たちが、自作の自称・ロボット︵ガラクタやゴミ等とも呼ばれます︶を持ち寄り、むりやりロボット相撲をさせるロボットバトルイベントです。僕の本業であるデイリーポータルZの主催イベントという位置づけで開催しています。
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↑第1回のヘボコンの様子
ヘボコンは冗談で始めたイベントですが、その後、文化庁のメディア芸術祭で審査委員会推薦作品に入選したのをきっかけに世界に広がり、いまでは南極をのぞく全大陸、25カ国以上の国々で150を超える大会が開催されています。
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↑昨年行った、世界大会の様子
そんなヘボコンのオリジナルのかたちは、ロボット相撲大会です。﹁押し出したり倒したりしたら負け﹂というルールは、とにかく前進さえできれば勝敗を決められるため、まともに動かないポンコツが跋扈︵ばっこ︶するヘボコンにはピッタリの競技でした。しかし後に150以上のイベントが開催されるにあたり、様々な亜種というか、独自進化したヘボコンが登場しました。そんな派生版ヘボコンを紹介していこうというのがこの記事の趣旨です。
ロボットアニメへのオマージュ「ギガ・ヘボコン」
前段落で派生版が自然発生したように書きましたが、考えてみたら最初に変則イベントをやったのは自分でした。通常のヘボコンはロボットに幅・奥行きとも50cm以内というサイズ規定があるのですが、こちらは1m以上、さらにパイロットとして人が乗ってもよいというルールで開催しました。
人の乗ったマシンが体当たりでぶつかり合う様子はただでさえ圧巻。くわえて出場者の技術力の低さゆえに、ロボットは︵人が乗っていても︶すぐ倒れたりバラバラになったりするので、緊張感もひときわです。上の写真は決勝戦の様子です。
他にも巨大なおにぎり︵うどん︶や、
史上最大、3mのロボなども登場しました。
皆さんには紙にロボットの絵を印刷しただけに見えるかもしれません。でも、一応自走する車輪のついたこれを﹁ロボット﹂と呼ぶことを許容しないと、ヘボコンは成り立ちません。寛大な心で見てください。︵イベントレポートはこちら︶
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適切なタイヤはペナルティ「ヘボレース」
いっぽうで、僕以外のオーガナイザーが最初に考案したヘボコン亜種がこちら、ヘボ・レースです。主催者はローマでヘボコンを主催しているHebocon Romaチーム。
上のいい脱力具合のロゴはオーガナイザーの手によるものです。車に乗っている女性はイタリアの有名人とのこと。︵アニソンを歌っている歌手だと言っていたような…︶
ルールはいわゆるカーレースですが、ヘボコンに﹁ハイテクノロジーペナルティ︵高度な技術を使用するとペナルティを受ける︶﹂のルールがあるように、ヘボ・レースには﹁適切な車輪ペナルティ﹂というルールがありました。いわゆるゴムタイヤやおもちゃのタイヤなど、車輪として使うために作られたパーツを車輪として使うとペナルティをうけます。
車輪に空き缶を使ったり、車輪を使わず風船で浮かせて風で動かしたりしているのはそのためです。
なかでも、僕のお気に入りは法王カーです。本場の不謹慎ギャグ。
ちなみにローマのイベントとは関係なく、最近も日本の幼稚園でレース系のイベントを開催したという報告をもらっています。
未就学児の野性的なエンジニアリング。
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障害物というか土俵ごと倒壊する「障害物ヘボコン」
ハードなコースがヘボの核心に迫る「ヘボスケ」
急に悪口みたいな名前が出てきましたが、これはヘボコン版の﹁サスケ﹂です。要は障害物競走。滋賀県の成安造形大学の学祭で開催されました。
コロ助を意識したのかしていないのかギリギリの線を突いてくるポスター。
コースはデコボコや単なる起伏から、回転するローラー、そして梱包材が敷き詰められた底なし沼︵底はある︶、猛獣︵ぬいぐるみ︶など。このコースを2体ずつ並走して先着で勝敗を決めます。
決勝は集団でのレース形式。動き回るルンバをかいくぐってゴールに向かいます。最終的にはルンバに巻き込まれたマシンがゴールに引きずり込まれ優勝。
ふだんの前進すらおぼつかないロボットからするとかなり無謀なコースに見えますが、そのぶん転んだり転がり落ちたりとひどい目にあうパターンのバリエーションが多く、技術力の低い人が作ったマシンのドジっ子ぶりを堪能できる競技であるともいえます。ある意味、ヘボコンの核心に迫る形態です。
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リアル(だが出来の悪い)スプラトゥーン「ヘボコン・ペイントエディション」
再びローマにもどります。ヘボ・レースを開催したのと同じオーガナイザーが、ヘボコン・ペイントエディションと題して、塗料を搭載したロボットを戦わせるヘボコンを考案しました。
スプラトゥーン︵当時は1︶の影響があるのではないかと思いますが定かではありません。とにかく出場ロボットは塗料をぶちまけて相手を攻撃し、
最終的に優勝者は、この塗料まみれになった土俵︵﹁絵﹂と呼ばれます︶を持ち帰ることができるらしいです。いらなさがすごい。
なお、実は逆輸入という形で、ペイントエディションを日本でも開催したことがあります。
このときはみんなが遠慮して薄い色水を使ったためにローマほど土俵に色が乗らず、また水浸しになった土俵は毎試合ごとに拭かざるをえず、﹁テーブルは水拭きするときれいになる﹂という当たり前の事実を目の当たりにすることとなりました。︵イベントレポートはこちら︶
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プカプカするだけ「水ヘボコン」
最後に僕が主催した派生ヘボコンをもう2つ。一つは水上で行う、水ヘボコンです。
踏ん張りのきかない水上では相撲はちょっと難しかろうということで、スタートからゴールまで、コインを落とさずに運ぶというレース形式のルールにしました。
しかし、ただ車輪さえつけておけば前進できる陸上と違って、水上ではポンコツはなかなか動かない。
おかげで﹁みんななんだかプカプカ浮いているのを眺めるだけ﹂という牧歌的な展開が多く見られました。
︵豊富な水資源を活かしてドライアイスを投入した知恵者︶
一方で、実装面では水中対応してない部品を全く気にせず水に沈める者が続出、男気を感じる大会でもありました。︵イベントレポートはこちら︶
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ヘリクツから生まれた新競技「エア・ヘボコン」
陸︵ヘボコン︶、海︵水ヘボコン︶、と来て最後に来たのは空。しかし技術力の低い人たちに空を飛ぶロボットを作ることは不可能なので、土俵ごと空にあげることにしました。
﹁人間の身長より高い位置は空である﹂という独自の定義に基づきます。
ちなみにルール的には、透明の板の上で普通のヘボコンをやるだけ。
ただ下から見てみると、本当に飛んでいるように見えなくもないのではないでしょうか。見えない人は心の目を鍛えよう。
空中戦に見えるかどうかは置いといたとしても、土俵を高い位置に置いたことで試合の様子が客席からよく見え、普通にいいセットでした。︵イベントレポートはこちら︶
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ヘボコンと多様性
まだあったような気もするけど、長くなってきたのでこのくらいにしておきます。
ふだんヘボコンの広がりを紹介するときは﹁25カ国で開催されてて…﹂というような説明をしていますが、単に数だけでなくこうした多様性が生まれてきているというのも、広がりのあかしと言えるかもしれません。
ヘボコンの面白さって、いろんな背景を持ったいろんな方向性でヘボいロボットが出てくるところ、つまり多様性なのではないかなと思っています。そういった場で、ロボットの多様性とはもう一つ上のレベルで、大会自体も多様化しているというのは面白い現象ですね。引き続きいろんな亜流が生まれるといいなと思います。
なお、ヘボコンの大会情報などはFacebookグループでお知らせしております。ぜひご参加ください!
Facebook‥DIYギャグ研究/ヘボコン
明日は2日目、pen_n_diceさんです。おたのしみに!