本文
キャプテン翼の主題歌﹁燃えてヒーロー﹂は、﹁アイツの噂でチャンバも走る﹂という謎の歌詞で有名です︵試聴
︶。
﹁チャンバ﹂の解釈には諸説ありますが、なんといってもキャプテン翼の歌ですので、現実世界の作詞家の意図を考えるよりも、キャプテン翼ワールドの言語法則から意味を決定すべきだと思います。
さて、最近作﹁キャプテン翼 GOLDEN-23﹂にて、そんなチャンバ学における極めて重大な事件が起きました。
そう、ギロッポンです。
なぜデンマークのサッカー選手が﹁ギロッポン﹂を連呼するのか。
理由はまったく分かりませんが、とにかく、﹁キャプテン翼﹂というのは﹁六本木﹂を﹁ギロッポン﹂に変換するようなブラックボックスであるらしいのです。
すなわち、
![キャプテン翼 GOLDEN-23』 2巻130頁、3巻100・130頁、4巻16・101・102頁 ギロッポン発言まとめ](image/news/21_04_24_4_01.jpg)
ギロッポン | → | [キャプテン翼] | → | 六本木 |
チャンバ | → | [キャプテン翼] | → | バアちゃん |
美しい業界用語の流れが、ここにあります。
そもそも、﹁チャンバ=バアちゃん﹂説は、古来より有力な仮説のひとつでしたが、
強み:「アイツの噂を聞いたら、よぼよぼのババアだって走り出すぜ」と意味が自然に通る
弱み:いきなり業界用語が出てくるのはおかしい
……という感じだったところ、﹁キャプテン翼﹂の世界では、デンマーク人でもギロッポンだと判明したのです。
バアちゃん説の弱点は、ギロッポンによって克服されたと言えるでしょう。
ネットアイドルちゆは、﹁チャンバ=バアちゃん﹂説を応援しています。
補足
●まともな説としては、深沢七郎先生の小説の中に、1959年ごろの若者が﹁ババア﹂的な意味合いで﹁チャンバー﹂と言っている箇所があるそうで、それが現実に使われていた言葉なら、作詞の吉岡治さん︵1959年に25歳くらい︶が知っていても不思議はなさそうです。 ●古い若者言葉か、ヘンな業界用語か、単なるフィーリングか、いずれにしても、﹁サンバ﹂や﹁3羽﹂に音が似た言葉を超いいかげんに決めたら﹁チャンバ﹂になったという感じだとは思います。 ●︵※ポルトガル語で﹁記者﹂を意味する言葉だという説については、少なくともその辺の辞書には載っておらず、そういうスラングの存在を確認できる資料も出ていないので、いまのところ信憑性が低いです︶追記
解答編?
上の文章を更新した翌日、4月25日発売の﹃Sportiva﹄
が﹁キャプテン翼特集﹂でした。
そして、その中の﹁作詞家に電話インタビュー﹂というコーナーで、作詞者の吉岡治さんご本人に﹁チャンバ﹂の意図を質問していました。
──ずっと﹁蝶々サンバ﹂の意味を知りたかったのですが。
﹁当時人気だったモハメド・アリの言葉、<蝶のように舞い~>から蝶々。それとサッカーといえばブラジル、ブラジルといえばサンバ。それを合わせた造語なんですよ﹂
──なるほど! それでは﹁チャンバ﹂の意味は?
﹁バーチャンを業界用語風に言うと、チャンバ。つまり、噂を聞いたらバーチャンも元気になって走ってしまう、そういうことですね︵笑︶﹂
︵中略︶
﹁そもそもアニメの楽曲自体、あまりやったことがなかったもので。知人からの依頼だから引き受けたものの、企画書とアニメの写真を渡されただけ。あとは、このころラグビーをやっていたから、そのイメージを膨らませて書いたんですよ﹂
︵﹃Sportiva﹄ 2009年6月号69頁︶
……大方の予想通り超いいかげんですが、ともあれ、少なくとも本来の作詞意図としては、﹁チャンバ=バーチャン﹂が正解だったようです。