朝食を食べている子どもほど学力が高い。﹁朝食パワーで学力アップ!﹂。よく聞くところですが,両者の相関が疑似相関である可能性が高いことは,多くの人が見抜いているところでしょう。
最新の全国学力テストのデータから,小6児童のクロス表をつくると下表のようです。横軸が朝食の摂取頻度の群,縦軸は算数Bの正答率の四分位群を意味します。A層は上位4分の1・・・D層は下位4分の1の児童です。ここでは,正答率の個人分散が大きい算数Bの成績に注目しています。
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上の①は,当局の白書などによく載っている普通の帯グラフですが,これをみるととてもクリアーな傾向で,朝食摂取と学力の間には明瞭な相関,ひいては因果関係までがあるかのように思えますね。
しかし,下の②のモザイク図をみると,印象が変わります。調査対象児童のほとんどはa群であり,朝食を食べていないc群やd群の子どもはマイノリティーです。﹁朝食を食べない﹂と﹁正答率が低い﹂という特性は,家庭の貧困のような共通の地盤から出ているものと察せられます。ゆえに,両者の相関は﹁見かけ﹂のものであると。
食育啓発のポスターでは①のグラフが載っていることが多いのですが,私は②のほうを載せたほうがいいのではないかと思います。それが無理なら,せめて各群のN︵サンプル数︶を添えるべきかと。
師匠の松本良夫先生は,社会階層と非行親和性の関連を図示するにあたって,このモザイク図を使われています。たとえばブルーカラー層の子弟であっても,ブルーカラー多住地区とホワイトカラー多住地区では,意識や価値観を大きく異にするでしょう。こうした文脈効果に思いをはせる上でも,各群の量を表現するモザイク図は有効です。
何から何までモザイク図にする必要はありませんが,Nが大きく違っている場合は,この図法にしたほうがよいでしょう。朝食と学力の関連のデータは,この点を教えてくれるよい題材です。