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トランプ氏の支持者たちが抱える、計り知れない「怒り」とは(写真:AP/アフロ)
世界中を驚愕させたアメリカ大統領選の結果から、私たちは何を読み取ればいいのか。なぜ米国民は、トランプ氏を選ばざるを得なかったのか。
ビル・クリントン政権での労働長官をはじめ3つの政権につかえた経験をもち、﹁米国の良心﹂と言われるロバート・ライシュ氏︵カリフォルニア大学バークレー校教授︶は、米国の中間層には計り知れない﹁怒り﹂が渦巻いていると指摘する。選挙前後、テレビ番組にもたびたび出演している氏の見解は、現在の米国を理解するのみならず、先進国に共通する課題への解決策を私たちにもたらしてくれる。
そこで以下では、12月2日に発売予定の『最後の資本主義』(Saving Capitalism: For the Many, Not the Few)より、「はじめに」を一部編集の上、掲載する。
何が失われてしまったのか
読者はご記憶だろうか。学校の教師やパン職人やセールスマン、技能工が自分ひとりの収入で家を買い、車を2台持ち、子育てをしていた時代を。私はよく覚えている。1950年代、父エド・ライシュは近隣の街の目抜き通りに店舗を構えていて、工場で働く男たちの奥さん相手に婦人服を売っていた。父はそれで私たち家族が十分気持ちよく暮らせるだけの稼ぎを得ていた。我が家は裕福ではなかったが、一度たりとも貧しさを感じたことはなく、1950年代から1960年代にかけて我が家の生活水準は確実に上がっていった。あの頃はどの家でもそれが普通だったのだ。
第二次世界大戦から30年ほどかけて、米国ではどの国にも見られないような巨大な中間層が形成され、米国経済の規模が倍増するのと同じように平均的労働者の所得も倍増した。ところが直近の30年を見ると、経済規模が倍増したにもかかわらず、平均的米国人の所得はどうにも動かなかった。
第二次世界大戦後30年に及ぶ高度成長期には、大企業のCEOの所得は平均的労働者の20倍程度であったのが、今や実質的に労働者の200倍を超えている。往時には富裕層の上位1%の所得が米国総所得に占める割合は9~10%であったが、今では2割以上を占有するようになった。
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