来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり　（『葛飾』昭和5）

蟇ないて唐招提寺春いづこ　（『葛飾』昭和5）

梨咲くと葛飾の野はとの曇り　（『葛飾』昭和5）

葛飾や桃の籬も水田べり　（『葛飾』昭和5）

高嶺星蚕飼の村は寝しづまり　（『葛飾』昭和5）※1

桑の葉の照るに堪へゆく帰省かな　（『葛飾』昭和5）

啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々　（『葛飾』昭和5）

馬酔木咲く金堂の扉にわが触れぬ　（『葛飾』昭和5）

冬菊のまとふはおのがひかりのみ　（『霜林』昭和25）

滝落ちて群青世界とどろけり　（『帰心』昭和29）




※1　「蚕飼」は繭をとるために蚕を飼うこと。

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