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Collection: alexa_web_2009
椿の蔭をんな音なく来りけり白き布団を乾しにけるかも (『切火』大正4) 夕焼空焦げきはまれる下にして氷らんとする湖の静けさ (『切火』大正4) 幼な手に赤き銭ひとつやりたるはすべなかりける我が心かも (『切火』大正4)※1 高槻のこずゑにありて頬白のさへづる春となりにけるかも (『太虚集』大正13) みづうみの氷は解けてなほ寒し三日月の影波にうつろふ (『太虚集』大正13) 或る日わが庭のくるみに囀りし小雀来らず冴え返りつつ (『柿蔭集』大正15) 隣室に書よむ子らの声きけば心に沁みて生きたかりけり (『柿蔭集』大正15)※2 信濃路はいつ春にならん夕づく日入りてしまらく黄なる空のいろ (『柿蔭集』大正15) 信濃路に帰り来りてうれしけれ黄に透りたる漬菜の色は (『柿蔭集』大正15) 我が家の犬はいづこにゆきぬらむ今宵も思ひいでて眠れる (『柿蔭集』大正15)※3 (その他) ※1 故郷に家族を残し、単身上京する時の歌。自分の子供に小遣い(一銭銅貨)を渡している場面を描いている。 ※2 死期近い病の床にあった作者が、子供の声に勇気付けられる歌。 ※3 作者の生前最後の歌。