斎藤史 【さいとう ふみ】
明治42年2月14日〜平成14年5月26日。象徴派女流の第一人者であり、斬新な比喩表現を用いた、奔放で軽やかな歌を作った。
代表歌集
- 「魚歌」 昭和15年
- 「うたのゆくへ」 昭和28年
- 「風に燃す」 昭和42年
- 「ひたくれないゐ」 昭和51年
代表作品
白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待たう ︵﹃魚歌﹄昭和15︶ ・ 岡に来て両腕に白い帆を張れば風はさかんな海賊のうた ︵﹃魚歌﹄昭和15︶ ・ たそがれの鼻唄よりも薔薇よりも悪事やさしく身に華やぎぬ ︵﹃魚歌﹄昭和15︶ ・ 濁流だ濁流だと叫び流れゆく末は泥土か夜明けか知らぬ ︵﹃魚歌﹄昭和15︶※1 ・ 暴力のかくうつくしき世に住みてひねもすうたふわが子守うた ︵﹃魚歌﹄昭和15︶※2 ・ 白きうさぎ雪の山より出でて来て殺されたれば眼を開き居り ︵﹃うたのゆくへ﹄昭和28︶ ・ 人も馬も渡らぬときの橋の景まこと純粋に橋かかり居る ︵﹃密閉部落﹄昭和34︶ ・ ぬばたまの黒羽蜻あき蛉つは水の上母に見えねば告ぐることなし ︵﹃風に燃す﹄昭和42︶※3 死の側より照て明らせばことにかがやきてひたくれなゐの生せいならずやも ︵﹃ひたくれなゐ﹄昭和51︶※4 恋よりもあくがれふかくありにしと告ぐべき 吟さまよへる風の一族 ︵﹃ひたくれなゐ﹄昭和51︶
※1 二・二六事件をうたった作品。作者は幼馴染の青年将校が首謀者の一人として処刑され、軍人であった父親は5年の禁固刑を受けている。 ※2 前出の歌と同様、二・二六事件をうたった作品。暴力が無批判に美化された時代を暗示している。 ※3 作者の母親は緑内障のため失明していた。 ※4 ﹁ひたくれなゐ︵直紅︶﹂は、全体が紅色であること。
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