葛原妙子 【くずはら たえこ】
明治40年2月5日〜昭和60年9月2日。鋭い感覚と奔放な想像力を基底に、豊饒な妖しさをたたえた、超現実主義的・幻想的な歌を作った。
代表歌集
- 「橙黄」 昭和25年
- 「原牛」 昭和34年
- 「葡萄木立」 昭和38年
- 「朱霊」 昭和45年
代表作品
早春のレモンに深くナイフ立つるをとめよ素晴らしき人生を得よ ︵﹃橙黄﹄昭和25︶ ・ 奔馬ひとつ冬のかすみの奥に消ゆわれのみが累々と子をもてりけり ︵﹃橙黄﹄昭和25︶ ・ マリヤの胸にくれなゐの乳頭を点じたるかなしみふかき絵を去りかねつ ︵﹃飛行﹄昭和29︶ ・ 噴水は疾風にたふれ噴きゐたり 凛り々りたりきらめける冬の浪費よ ︵﹃原牛﹄昭和35︶ 美しき球たまの透視をゆめむべくあぢさゐの花あまた咲きたり ︵﹃原牛﹄昭和35︶ 口中に一粒の葡萄を潰したりすなはちわが目ふと暗きかも ︵﹃葡萄木立﹄昭和38︶ ・ 晩夏光おとろへし夕 酢は立てり一本の壜の中にて ︵﹃葡萄木立﹄昭和38︶ ・ 飲食ののちに立つなる空壜のしばしばは遠き泪のごとし ︵﹃葡萄木立﹄昭和38︶ ・ 他界より眺めてあらばしづかなる的となるべきゆふぐれの水 ︵﹃朱霊﹄昭和45︶ ・ 疾風は歌声を攫さらふきれぎれに さんた、ま、りぁ、りぁ、りぁ ︵﹃朱霊﹄昭和45︶※1
※1 サンタ・マリアと歌われたはずの賛美歌が、疾風により千切れていく情景をうたった作品。
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