高野公彦 【たかの きみひこ】
昭和16年12月10日〜。宇宙的なひろがりを持った静謐かつ濃密な空間を、しっとりとした浪漫的情緒でうたう歌を作っている。
代表歌集
- 「汽車の光」昭和51年
- 「淡青」 昭和57年
- 「水木」 昭和59年
- 「水苑」 平成12年
代表作品
少年のわが身しん熱ねつをかなしむにあんずの花は夜も咲ひらきをり ︵﹃汽車の光﹄昭和51︶ 白き霧ながるる夜の草の園に自転車はほそきつばさ濡れたり ︵﹃汽車の光﹄昭和51︶ ・ みどりごは泣きつつ目ざむひえびえと北半球にあさがほひらき ︵﹃汽車の光﹄昭和51︶ ・ ことば、野にほろびてしづかなる秋を藁うつくしく陽に乾きたり ︵﹃汽車の光﹄昭和51︶ ・ 精霊ばつた草にのぼりて乾きたる乾けん坤こんを白き日がわたりをり ︵﹃汽車の光﹄昭和51︶※1 ふかぶかとあげひばり容れ淡たん青じやうの空は暗きまで光の器 ︵﹃淡青﹄昭和57︶ 雨月の夜蜜の暗さとなりにけり野沢凡兆その妻羽うこ紅う ︵﹃淡青﹄昭和57︶※2 青春はみづきの下をかよふ風あるいは遠い線路のかがやき ︵﹃水木﹄昭和59︶ ・ 風いでて波は止との自転車倒れゆけりかなたまばゆき速はや吸すひの海 ︵﹃水木﹄昭和59︶ 夜の暗あん渠きよみづおと涼しむらさきのあやめの記憶ある水の行く ︵﹃水行﹄平成3︶
※1 ﹁精霊︵しょうりょう︶ばつた﹂はバッタの一種で、キチキチバッタともいう。﹁乾坤﹂は天と地の意。 ※2 ﹁野沢凡兆﹂は芭蕉に師事した俳人で、波瀾、貧困の生を送ったことでも知られる。雨月の闇に一組の灰暗い男女を浮かび上がらせた作品。
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