朝日新聞デジタル：加治屋町編７　「英傑」語り継ぐ　地元の志 - 鹿児島

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明治維新１５０周年【いざなう維新】

加治屋町編７　「英傑」語り継ぐ　地元の志

加治屋町にある「偉人顕彰会館」の看板＝鹿児島市

偉人らの肖像画などが並ぶ「偉人顕彰会館」で、町内会作製の手ぬぐいを見せる西村さん＝鹿児島市

昨年８月にあった偉人祭＝あいご会提供

　幕末以降、多くの偉人が輩出した加治屋町。その歴史を紹介する「維新ふるさと館」が１９９４年に開館したが、地元ではそれ以前から、偉人を生んだ町を語り継ぐ取り組みが続いている。

　町内を歩いていると、色あせた看板が年季の入った分譲マンションの前に立っていた。「加治屋町町民館　偉人顕彰会館」と記されているが、入り口がどこかわからない。たまたま通りかかった人に声をかけると、「ご案内しましょう」。

　町内会長で、同館の館長でもある西村光行さん（７０）だった。生まれは旧吉田町だが、７歳から加治屋町で育ったという。

　駐車場を抜けて奥に進むと、マンションの１階が町民館になっていた。小さな階段を下りてドアを開けると、６０畳ほどの一室があった。壁には日の丸が掲げられ、左右には町内出身の西郷隆盛、大久保利通、村田新八、伊地知正治のほか、東郷平八郎や大山巌、牛島満など、明治から昭和の軍人など１６人の肖像画や写真などがずらりと並ぶ。生い立ちや業績について書かれた紙も添えられている。

　西村さんによると、「偉人が生まれた町を将来にわたって顕彰しよう」と、町民らが中心になってお金を集め、７６年に町民館としても使える顕彰会館をつくった。

　歴代の町内会長が館長を務め、西村さんは９代目。運営は町内会費や寄付などでまかなっている。

　偉人の姿を知ってもらおうと、１０年ほど前からは毎年夏に講演会を開催。西郷隆盛のひ孫、西郷の妻の父親の子孫らを招いている。さらに昨年は、１６人の偉人の名前を記したオリジナルの手ぬぐいを１千枚作製し、町内を中心に配った。

　顕彰会館はホームページもなく、年に数人が訪れるぐらいだが、西村さんは「加治屋町から出た偉人たちを語り継いでいくことは、地元の私たちの役目」と言い切る。

　維新ふるさと館の的場睦夫館長は「地元の人たちが伝えようとしている取り組みはありがたく、心強い。交流をさらに深めていきたい」と期待する。

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　さらに町内では、顕彰会館ができる前から、「偉人祭」という伝統行事も続けられている。

　毎年８月、偉人たちをまつるみこしを子どもたちが法被姿で担ぎ、威勢のいいかけ声とともに町内を練り歩く。地元の子ども会「あいご会」の父母ら４０人ほどが祭りに参加し、西村さん自身も小学生のときにみこしを担いだ。

　５人の子ども全員が祭りに参加したという町内の主婦、丸山まきこさん（４５）は「子どもたちが、西郷さん以外にも多くの偉人がこの町から生まれたことを知るきっかけになる」と話す。

　偉人祭では毎回、子どもたちが加治屋町について作文を書く。昨年、小学６年の女子児童はこうつづった。

　「西郷隆盛や大久保利通以外にもたくさんの偉人が加治屋町にいたことをみんなに教えたいです。私の誕生地加治屋町に、こんなにたくさんの偉人がいた事をほこりに思います。これからも加治屋町のすごいところを探し続けたいです」

（島崎周）