貧乏線に終始して 小川未明

 今日は、小川未明の「貧乏線に終始して」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 近代作家の特徴として、文学で稼ぐことが難しいので、貧しさの労苦について純粋に書く作家が多かった、というのがあるのかと思います。小川未明は生前も没後もよく読まれた児童文学作家だと思うんですが、今回は作家の貧しかったころを振り返る随筆なんです。
 貧すれば鈍すというのか、資本不足の窮状で、家庭をぐらつかせてしまった実相が描きだされていて、物語の中に立ち現れ主人公を襲う窮状は、現実の小川未明とも通底していたんだなと思う作品でした。
 ドストエフスキーの罪と罰では、主人公ラスコーリニコフを苦悶させる、貧しさから生じてくる悪心というのが描かれたと思います。小川未明は、制度を悪用する者への批判を記しています。夭折した子どもたちのことを書き、「その日、その日、この社会には、どれ程、貧困のために、悩み、苦しみつゝある者があるであろうか」という記載が印象に残りました。
 苦を減じたい、と綴る小川未明の随筆でした。
 

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醤油仏 吉川英治

 今日は、吉川英治の「醤油仏」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 吉川英治と言えば、宮本武蔵や親鸞など歴史上の人物を大長編で描きだした作家だと思います。まだほとんど読めていないのでいつか読んでみたいのですが、こんかいは、江戸の深川の、日雇い労働者たちの、奇妙な集まりを描きだした中編小説を電子書籍化してみました。
 左次郎という19歳の少年が、病弱なのになぜかよく働いています。これを不審に思った親方(銅鑼屋の亀さん)が事情を聞いてみると、左次郎は鳥取藩池田家に仕える武士の息子だと分かります。彼は、養母の「お咲」と「一平」が「安南絵の壺」とともに関東で行方不明になった謎を追って、わざわざ鳥取から一人で、江戸にやって来て、けっきょくは日銭を稼ぐために働いているのだ、ということなのでした。
 いっぽうでその深川では大食いたちが、ありえないくらい多くのものをぜんぶ食えるのか、賭けをする勝負が流行して、食いすぎて倒れた者さえでてくる始末です。「伝公」という伝説的な大食い男が大金を稼いでいると知って、ある男が愚かにも危険な勝負に挑むのですが……。

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追記  「伝公」に大金を賭けて「醤油賭」の勝負に挑んだところ、伝公の解毒の裏技も通じずに、伝公は醤油の飲みすぎで倒れてしまうのでした。この伝説の男である伝公がじつは、「お咲」と「一平」の二人組であったことがのちに明らかになるのでした……。金を稼いでなんとか鳥取に帰ろうとしていたところ、稼ぎすぎて金に目が眩みすぎておかしくなった男女の物語でした。徳川家康が重大視していたという「過ぎたるはなお及ばざるが如し」という事態が描きだされた時代小説なのかなと思いました。

細雪(92)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その92を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 何度もお見合い相手を探してきてくれた井谷さんは、米国でちょっと修業をしてから東京で新たに美容院を始める予定なのでした。そのため東京で井谷さんの、駅での見送りで花束を贈ったり、別日の送別会に参加しようと、雪子や幸子たちは華やかな外出をするのでした。
 もうなんだか、ずいぶん落ちついた物語になっているのでした。これは1941年ごろを描いているのですが作中の設定上の時代よりも、作家の生きている敗戦後の、裕福で平和な家庭の現実のほうが、色濃く物語に反映されているのでは、と思いながら読みました。
 米国に行く井谷さんや、雪子や幸子はなんだかもうすっかり明るい雰囲気になっているのでした。
 細雪の中盤であったような不穏な気配というのがなぜか消え去ってしまっているのでした。
 

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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)

追記  お見合いをして破談になる、という不思議な時間と、敗戦後なのに戦中の暮らしをまだ続けて書くという妙な描写には、なにかしらの共通点があるのでは、と思えてくる細雪の下巻なのでした。
 

精神のへど 北條民雄

 今日は、北條民雄の「精神のへど」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 『いのちの初夜』を発表した北條民雄は、闘病と苦について描いた作家だと思うんですが、今回は、文学や哲学の批評をした短編です。
 序盤で、横光利一氏による『いのちの初夜』への寸評を引用しています。「作者がもし私であつたら、書かずに胸中に畳み込んでおいたであらう。……最悪の場合の心理は誰にでもあるものだが、それをそのまま飛びついて書くといふことは、科学にならず感傷になる」この横光氏の評に対する反論としてこう記しています。「横光氏よ、最悪の場合の心理のみが死ぬまで続いてゐる人間が存在するといふことを考へたことがありますか? いのちの初夜は私にとつて最悪の場合の心理でなく、実に最良の場合の心理であつた。」
 最悪と最良の区別がつきがたく、善悪の区別がつきがたい。フロオベルによれば狂っているかどうかの区別もつかないし、昼夜の区別さえつかないということがありえる。「ほんとを言ふと、私は近頃だんだん夜と昼との区別がつかなくなつて行くので困つてゐるんだ。ことわつて置くが、これは少しも譬へごとではない。いつたい夜と昼との区別が、諸君につくのか? 誰だつてこの区別をつけることは出来ないのだ。……」
 

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追記 禅問答をしようとしたのか、文学の哲学的な読解を試みたのか、詩意を書こうとしたのか、判別がつかない箇所のある随筆でした。
 

桑名の駅 中原中也

 今日は、中原中也の「桑名の駅」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 東京へ向かう鉄道に乗っていて、列車が遅延してしまって、名古屋の手前の桑名の駅でながく足留めになって、夜の駅をただじっと見つめる、中原中也のなんだかほっとする、つぶやきのような詩でした。
 

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秋の瞳(43)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その43を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 「わたしら二人 けふのさひわひのおほいさを」という一文が印象にのこる作品です。
 

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追記  八木重吉が、ストレートに愛を記した詩でした。「ちさい」と「おほい」という言葉が記された、詩らしい詩に思いました。