戦争はぼくをおとなにした 小川未明

 今日は、小川未明の「戦争はぼくをおとなにした」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 「ガラスのはまったかざまどに」「セルロイド」の可愛い人形が飾られている、というところから始まる、清吉という少年が主人公の、昭和の児童文学でした。戦争で家が焼けたことや、家族の幸福について思索する場面がありました。

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  幼子たちが見知らぬおばあさんに間違ったことをやってしまって、清吉は悲しんでしまったおばあさんを慰めるのでした。家を失い、戦争の被害をまのあたりにした清吉という少年の、平和と幸福への意志が記された、敗戦のあとに記された、幼子のための文学でした。

細雪(95)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その95を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 まだ結婚できていない妙子と雪子は……本家の大姉である鶴子と、どうも関わりたくないのでした。
 家族の繁栄を正しく行ってきた大姉の鶴子は、この物語にほとんどまったく出てこなかったのですが、雪子を東京であずかって1年くらい一緒に暮らしたはずなんです。雪子はもう二度と鶴子のところでは暮らしたくないし、妙子も不貞男との問題で勘当されているところなので鶴子とは会いたくないのでした。
 ひさしぶりに妹たちに再会した鶴子の態度は、どっしりしていて何にも動じておらず、大姉の風格があるのでした。ところが、この鶴子が別れぎわに、急に涙をぽろぽろとこぼしていたのに、誰もが驚いて、理由さえよく分からないという描写がありました。
 いちおう状況としては、若いころは妹たちと自由に観劇したり遊んだり楽しく生きていたのに、大人になるとお家を守るために妹には厳しく応じるしかなくなり、さらには敗戦までずっと、時世が娯楽を禁じる風潮になるので、妹たちと気軽に遊ぶということがまったく実現しなくなってしまった、時代の流れで自由が失われてしまったことに、悲しさが込み上げたのでは、というように思いました。

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(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
 
追記  今回は物語の最後の最後の核心部分が語られる急展開の章でした。これはもう読了後の人しか読んではいけないものだと思うのですが……百年前にしては自由闊達で恋愛結婚に邁進をするはずだった妙子はいろんなことがあって、窃盗と不倫を繰り返した奥畑啓坊とずるずる関係が続き、ついに妊娠をしてしまいます。その子供はいったい誰の子供なのかといいますと「三好と云う……バアテンダアしてる」男との子供なのだそうです。ぼくは、奥ゆかしい雪子というヒロインよりも、自由を求めて独立して生きて「地獄を見た」妙子の未来のほうがずっと気になってこの物語を読みすすめていたのですが、どうも可能性としては、窃盗犯で嫌がらせ男で不倫常習者の奥畑啓坊と結婚をしてしまう可能性が高まっているところだったんです。ところが妙子はこの啓坊からちゃんと離れるために、バーテンダーの三好と積極的に恋愛をして妊娠したということのようです。谷崎作品といえば波乱がある展開が常ですから、可能性としてはこの三好と妙子の婚姻も、前回のカメラマン米やんと妙子の婚約消滅のように、劇的な展開もあり得るのですが……米やんに死ぬほど嫌がらせをしていた啓坊とだけは結婚したら駄目だろうと、ずっと思ってはらはらして読んでいました。今回の新展開は寝耳に水で、いやついに不貞男の啓坊から離脱できるはず、というので嬉しく思ったのですが、身近な親戚からすると青ざめるような突然の告白なのでした。

 

睡蓮 横光利一

 今日は、横光利一の「睡蓮すいれん」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは横光利一にそっくりな「私」が「けやきや杉の森」に囲まれた下北沢の静かなところに家を建てて、さらにその数年後に近所づきあいがはじまった隣家の「高次郎氏」の一生を描きだした文学作品です。
 昭和初期の剣客であり刑務所の看守の仕事をしていた「堂々とした立派な風貌ふうぼうせいも高」い高次郎氏はどういう人物だったのか、そのことを淡々とした筆致で記している静かな小説でした。なんというか男から見てもすごい良い雰囲気の男が、急に自分の家の近くに住みはじめて、会うたびに気分が良いし、興味も惹かれる………………起承転結のみごとな小説でした。
 

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追記  表題の「睡蓮」というのは、刑務所の中にある池に植えられたもので、場所を選ばずに美しく成長する、この植物のについて氏が記していたものです。植物は自分の境遇というのを知らない。知らないまま動じることもなく生きるこの「自然の偉大さ」に打たれた、という氏の著述が印象に残りました。

不思議な国の話 室生犀星

 今日は、室生犀星の「不思議な国の話」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは静謐な怪談で……山の上にある「青い古い池」で、不思議なことをしてしまう「娘」と、蛇と蛙の、日本的な異変を描きだした物語です。
 

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追記  青い池と赤い蛙のことが怪しく描きだされます。娘の消失と、生類への憐れみがみごとに混じりあった怪談の名作、という印象でした。

秋の瞳(46)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その46を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
「皎々とのぼつてゆきたい」という作品がすてきな詩でした。「皎々」というのは白白と光りかがやくさま、という意味です。
  

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追記  作中のキーツというのは詩人のジョン・キーツのことです。

傲慢な眼 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「傲慢な眼」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはなんだかすごい短編で、他人を鋭くにらみつける不器用な画学生と、お金持ちの令嬢の2人の親交というか対立というか……2人の関わりが描きだされる昭和初期の文学でした。坂口安吾は激しい人間性を描きだすことが多いと思うのですが、今回は静かな展開の、素朴な物語でした。
 

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追記  あまりにもすてきな掌編だったので3回くりかえして読んでしまいました。大人びた女性が、中学生の男子と恋愛をするというのは当時も今もどうも破格なのでは、と思いました。