今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その95を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
まだ結婚できていない妙子と雪子は……本家の大姉である鶴子と、どうも関わりたくないのでした。
家族の繁栄を正しく行ってきた大姉の鶴子は、この物語にほとんどまったく出てこなかったのですが、雪子を東京であずかって1年くらい一緒に暮らしたはずなんです。雪子はもう二度と鶴子のところでは暮らしたくないし、妙子も不貞男との問題で勘当されているところなので鶴子とは会いたくないのでした。
ひさしぶりに妹たちに再会した鶴子の態度は、どっしりしていて何にも動じておらず、大姉の風格があるのでした。ところが、この鶴子が別れぎわに、急に涙をぽろぽろとこぼしていたのに、誰もが驚いて、理由さえよく分からないという描写がありました。
いちおう状況としては、若いころは妹たちと自由に観劇したり遊んだり楽しく生きていたのに、大人になるとお家を守るために妹には厳しく応じるしかなくなり、さらには敗戦までずっと、時世が娯楽を禁じる風潮になるので、妹たちと気軽に遊ぶということがまったく実現しなくなってしまった、時代の流れで自由が失われてしまったことに、悲しさが込み上げたのでは、というように思いました。
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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
追記 今回は物語の最後の最後の核心部分が語られる急展開の章でした。これはもう読了後の人しか読んではいけないものだと思うのですが……百年前にしては自由闊達で恋愛結婚に邁進をするはずだった妙子はいろんなことがあって、窃盗と不倫を繰り返した奥畑啓坊とずるずる関係が続き、ついに妊娠をしてしまいます。その子供はいったい誰の子供なのかといいますと「三好と云う……バアテンダアしてる」男との子供なのだそうです。ぼくは、奥ゆかしい雪子というヒロインよりも、自由を求めて独立して生きて「地獄を見た」妙子の未来のほうがずっと気になってこの物語を読みすすめていたのですが、どうも可能性としては、窃盗犯で嫌がらせ男で不倫常習者の奥畑啓坊と結婚をしてしまう可能性が高まっているところだったんです。ところが妙子はこの啓坊からちゃんと離れるために、バーテンダーの三好と積極的に恋愛をして妊娠したということのようです。谷崎作品といえば波乱がある展開が常ですから、可能性としてはこの三好と妙子の婚姻も、前回のカメラマン米やんと妙子の婚約消滅のように、劇的な展開もあり得るのですが……米やんに死ぬほど嫌がらせをしていた啓坊とだけは結婚したら駄目だろうと、ずっと思ってはらはらして読んでいました。今回の新展開は寝耳に水で、いやついに不貞男の啓坊から離脱できるはず、というので嬉しく思ったのですが、身近な親戚からすると青ざめるような突然の告白なのでした。







