予謀殺人 オースティン・フリーマン

 今日は、リチャード・オースティン・フリーマンの「予謀殺人」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは古典的な推理小説で、叙述トリックは存在しないんですが、理詰めで犯人を推論してゆくという物語でした。
 犯行の動機と場面描写が納得のゆく内容でした。こういう事件と捜査は、いろんなところで繰り返し起きてきたんだろうなあと思いました。物語の序盤……犯人のペンベリーは若いころから犯罪者で、いちど犯罪を辞めて商売で大成功して里帰りするんです。この男のもとに軽率な脅迫者がやってきて……。つづきは本文をご覧ください。
  

0000 - 予謀殺人 オースティン・フリーマン

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 
追記 ここからはネタバレなので、未読のかたは本文を先に読んでみてください。犯行現場と遺体の目撃者と、隠れ蓑に使った木と、犯人の匂いをしらべる警察犬の場面の描写に迫力がありました。濡れ衣で捕まった警察官エリスの冤罪をはらすんですけど、推理の中心には、細工された二本のナイフと、匂いと捜査を攪乱する動物の血や「じゃこうの香水」というのが、ありました。犯人の奸計がすみずみまで暴かれるのが印象に残りました。現実にはもっと泥くさい聞き込み捜査でなんとか冤罪が晴れるのでは、とか思うんですが。最後の最後の、犯人のその後のありかたの描写が、なんともかっこいい小説でした。さいきんhuluで「刑事コロンボ」を見ていて、オチが分かりきっている話でもじゅうぶん楽しめることがあるんだなあとか、思いました。
 

細雪(24) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その24を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 鶴子と雪子が東京に引っ越して、寄せ書きの手紙を受け取った雪子は、お礼の手紙を関西へ送りました。
 物語はとりあえず、幸子の一家を描写するんです。ぼくは細雪と言えば、もうすぐ結婚しそうな雪子と妙子の物語なんだと思っていたんですが、どうも幸子の一家についてもいろいろ書くようなんです。幸子の娘である悦ちゃんの言葉づかいが乱暴なんですけど、谷崎の人間観察が冴える描写に思いました。
 猫を可愛がったり、潔癖すぎて消毒ばかりやらせていたり、という女の家族が記されてゆきます。
 こんかい、家族の中で健康をどうやって維持するのかというのでちょっと対立が起きているところが描かれます。物語のいちばんはじめにも、ビタミン注射していました。健康が損なわれそうな1940年代前後の、飢餓の時代の切実さが、この物語に健康論が立ち現れる原因では、と思いました。
 幸子の夫の貞之助が、仕事で東京に出張します。それで雪子たちの暮らしぶりをはじめてじっくり見てゆくことになりました。東京に行っても雪子はおしとやかで、家族の手伝いをして、子どもたちのめんどうを見ているのだそうです。大戦の終盤の時代に、谷崎は「細雪」の雪子という女性について書いていた。「郷愁」というのが、恵まれた家族たちのなかで生じているという描写でした……。
 

0000 - 細雪(24) 谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約10秒)
 
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)

あとの祭り 山之口貘

 今日は、山之口貘の「あとの祭り」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 井戸端会議というと、会社でも学校でもよく生じることだと思うんですが、これは本物の井戸端での近所づきあいからはじまる、自分の生活を描きだした私小説です。狭い家の中で女房子どもが暮らしている中ではなかなか原稿が書けず、子どもたちを寝かしつけてからやっと夜に創作の仕事を始められる。ヘトヘトになって眠ると、ある日「ぼく」は突然、起こされてしまう。どうも泥棒が入ったようなんです。どうも深夜にどしん、という音が聞こえた。また夫がうなされて足をばたつかせたのかと思ったら、それがどうも泥棒の足音だったようです……。
 

0000 - あとの祭り 山之口貘

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 
追記  漱石の「門」を想起させる話しでした。漱石は奇妙な泥棒の挿話を書いたんですが、じつはじっさいに漱石は明治38年の春ごろに、ほんとに泥棒に入られて服をいろいろ盗まれたことがあったんだそうです。

ほんとにそのとおり! アンデルセン

 今日は、アンデルセンの「ほんとにそのとおり!」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは小学校低学年に読み聞かせするような童話だと思います。大人が読んでも、ほんとにそういうことは起きる! と思うような不思議な話でした。噂に尾ひれがつくどころではない、尾ひれから魚が生まれるくらいとんでもないことが……起きたりする物語でした。文体は児童用の童話そのものなんですが、現代の世界でも、今回アンデルセンが指摘していることがよく起きているように、思いました。
 

0000 - ほんとにそのとおり! アンデルセン

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
  

ゲーテ詩集(44)

 今日は「ゲーテ詩集」その44を配信します。縦書き表示で読めますよ。
 ゲーテが当時の恋人に書いた手紙のような、美しい夜の詩でした。
 これは十回読んでも新鮮に読めるのでは……と思いました。
 

0000 - ゲーテ詩集(44)

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約5頁 ロード時間/約10秒)
 
全文を読むにはこちらをクリック
 

奈々子 伊藤左千夫

 今日は、伊藤左千夫の「奈々子」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 伊藤左千夫は正岡子規と深い関わりのあった歌人です。ぼくは伊藤左千夫の小説を読むのは初めてなんですが、序盤は朗らかな親子の物語で、遊びの描写が生き生きとしてすてきで引き込まれました。起承転結がみごとな家族小説で……読了後にもういちど読み直してみると、金魚の不幸が大人たちの不注意さを暗示していて、物語上で重大な伏線になっているのだと思いました。後半は厳しい状況が描かれ、いったい何が起きたのか事態の検証が行われるんです。長らく栄えるのは、こういう人々なのではと思いました。明治の終わりに書かれた小説です。
 

0000 - 奈々子 伊藤左千夫

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)