奇怪な客 正宗白鳥

 今日は、正宗白鳥の「奇怪な客」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 顔も見せないし、名前も名乗らない奇怪な客がある宿屋にやって来て、いちばん良い部屋に泊まってしまった。
 ほとんど新品のチョッキや服を屑籠に放り込んだり、なんとも解せないことをする、客なのでした。
 

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追記  一週間も泊まり込んで、金払いだけは良いのだが、宿主としては、あまりにも不気味なのでそろそろおいとましてほしいので「泊める、泊めない」という押し問答になってしまう。
 事情を聴くと、煩わされずに顔を隠して泊まりたいのだという。しかも男かと思ったら、お金持ちのご婦人だった。なにか家の事情があって、一人でホテルに長居しているらしい。物語の起承転結は無い、そのまま終わる話なんですが、奇怪な客とはまた異なる、いくつかの異様な事情が明記されてゆくのが興味深い小説でした。

 

秋の瞳(12)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その12を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 「そが」というのは「それの」という意味をもつ、古語なのだと思います。
 秋の瞳の、メインモチーフが描かれた詩作品でした。
 

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餅 岡本かの子

 今日は、岡本かの子の「餅」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 妻と夫の2人で、婚約したころの出来事をお正月に語りあう掌編小説でした。
 料理の技巧が稚拙だったところにかえって魅力を感じた、というのが話しの中心にありました。
 

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追記 とくになにも起きない静かな作品なんですが、懸詞のように言葉が積み重ねられていて韻律が整っているというのか、知的な文体の小説に思いました。
 

雪の女王 アンデルセン

 今日は、アンデルセンの「雪の女王」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 
 これは小学生が読むための童話で、7つの短編が連なった、連作になっています。おもに「雪の女王」と少年カイと少女ゲルダ、それから粉々にくだけた悪魔の鏡のことが描きだされる物語です。
  

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追記  少年カイの身体に、砕けた悪魔の鏡のかけらが入りこんでしまって、子どもたちを凍えさせる雪の女王とカイの2人が、結びついてしまい、カイとゲルダは離ればなれになって生きることになるのでした。ガラスのかけらをどうやってカイから取り出すのか……というところが終盤での物語の要点となっていました。
 悪そうなことをいつもしている山賊の娘が、ゲルダやカイと深く関わってゆくところが魅力的に思いました。やっと家にたどりついたのちの、終盤の10行がなんともみごとな、美しい童話でした。
 

細雪(60)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その60を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 京都観光をしてきた三姉妹たちだったのですが、日帰りの旅の途中で娘の悦子が、高熱を出して、そのご寝込んでしまった。医者によると猩紅熱であるというのでした。感染症ではあるのですが自宅で療養をすることになって、貞之助の書斎を病室につくりなおして、簡易的な隔離施設としたのでした。この「細雪」の序盤では、自宅で注射を打って体調管理をする、妖しい気配の姉妹のさまが描かれてきたわけで、コロナ禍での自宅療養の報告がさまざまにあった現代に読んでも、なんだかリアルに感じる日本小説に思いました。
 我欲を押し通さないという静かな性格の雪子が、消毒を重んじつつ、病身の悦子のお世話をすることになりました。10日から1か月ほどの看病が必要になって、東京に帰るはずだった雪子は、長いこと関西で暮らすことになりました。
 隣家の旧シュトルツ邸には、スイス人のボッシュ氏が暮らしはじめます。このスイス人は繊細な男のようで、幸子の家の犬が吠えたり、蓄音機が音楽を奏でることに、手紙にて、苦情を申し入れてくるので、ありました。
 動乱の時世に、静かで繊細な、とくになにも起きない生活のこまごました事情を書きつづけることに、特異性を感じる文学作品に思いました。
 今回は中国出身の「アンナ・メイ・ウォン」という女優にそっくりな、ボッシュ家の美しい奥様のことが記されています。
 戦後すぐに、欧米で広く読まれた氏の代表作だなあと、納得のゆく描写が続きました。細雪を全文読まないけれども、内容をちょっと知りたいという方は、今回の章を読むことをお勧めできると思います。
 悦子の病気が自己療養で治るところの描写が生々しくて、これが今回の、谷崎潤一郎ならではの、きわだつ悪趣味なのでは、という印象でした。
 この妙な家族の状況で、独り立ちしたい妙子が突然、1人で東京行きをすることを告げるのでした。話しを聞いてみると、人形作りや洋裁の技術で妙子が独立するためには、東京で洋服店を経営するのが良いはずという案があるのですが、その裏には、フィアンセ候補の板倉が、金策のためにそういう実現しそうにない計画を打ち立てて、親族から金を引き出す狙いがあるのではという考察がなされていました。長女の鶴子はこの計画を完全に否定するはずなんです。次女の幸子は、末っ子の妙子の幸福を願ってはいるのですが、今回はどうも助力が出来ずに、黙ってなりゆきを観察することになってしまいそうです。次回に続きます。
 

0000 - 細雪(60)谷崎潤一郎

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(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。『中巻三十五』は通し番号で『六十四』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
 

百姓日記 石川三四郎

 今日は、石川三四郎の「百姓日記」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはヨーロッパで単身、農業を営んだ、石川三四郎の農地開拓の記録です。ちょうど100年ほど前の大正15年の農作について記しています。とにかくあらゆる野菜や果実を育てようと奮闘し、フランスの町中の「人々が来て、私の畠を、農事試験場の様だと評した」と記しています。6年ほどで、トマトやイチゴやメロンや、人参や茄子や林檎を育てたのですが、なぜか米と落花生は失敗に終わったんだそうです。これはフランス独特の温暖な気候が影響しているのでしょうか。
 石川氏はもともとは農法の素人で、素人が短い期間で林檎を育てるのは難しいし、そもそもリンゴは実がなるまで8年くらいかかって小型な種類なら5年くらいかかるはずだと思うのですが、これもやっぱり温暖だったら成功したのでしょうか。石川さんは、農業を営むフランスのおばあさんと交流をしていろいろ学んで、おばあさんのことをこう絶賛しています。「生きた婆さんの直覚的判断は、生きた自然とぴつたり一致して共に真実の創造的芸術が行はれる」
 後半は日記調で、1年間の天候と農作の変転について記していました。「一月の酷寒、二月のしけ、三月の風、四月の細雨、五月の朝露、六月の善い収穫、七月の好い麦打ち、八月の三度の雨、それはソロモン王の位よりも尊い」という記載が印象に残りました。
 

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追記  豊かな風土と習俗の中でなら、農作は石川三四郎のようにみごとに成功するのでは、と思いました。