秋の瞳(18)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その18を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 リュウゼツランは、60年に1回しか開花しない、竜のような刺をもつ多肉植物で、もともとはメキシコで生きていた植物で、アガベとも呼ばれていて、これが日本に持ってこられて繁殖したもの、らしいです。その植物をながめて「かなしみの ほのほのごとく / さぶしさのほのほの ごとく」と竜舌蘭のことを描き、竜のうろこのごとき「みづ色」に「寂びの ひびき」をみいだす詩作品でした。
  

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鰻に呪われた男 岡本綺堂

 今日は、岡本綺堂の「鰻に呪われた男」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 プーシキンやディケンズやコナンドイルの文学を翻訳したことでも有名な岡本綺堂の、風雅な怪談です。
 ある温泉宿に、田宮という高齢の女性が現れて、不思議なことを語りはじめます。彼女が若かったころ、戦傷兵の二人が湯治にやってきて、釣りをしているところに遭遇します。まだ十代だった彼女は「負傷の軍人を見舞のためにUの温泉場へ出かけて行くなどということを、むしろ喜んでい」て、この二人の男と彼女はお話しをした。その時、なんとも妙なものを目撃してしまう。男はうなぎをすっと釣り上げて……。
 

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追記  このうなぎを釣って生のまますうっと飲みこんで食べてしまった男とは奇縁があって、偶然にも親類の勧めで婚姻に至ったのでした。結婚式を終えて新婚旅行をするときにも、うなぎが釣れた水辺の温泉宿を二人で訪れた。彼女は男に、どうしてここで、うなぎを生のまま食べてしまったのか、なんとなく聞きたくなって、聞いてしまった。すると男は驚いてこれを否定して、そのすぐあとにどこかに消えてしまった。それからこの奇怪な出来事の顛末が、仔細に語られてゆく、上品で日本的な怪談でした。

信号手 ディッケンズ

 今日は、ディッケンズの「信号手」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはディケンズの名作文学なんですが……今回のは内容が完全に怪談で、ある信号手が、蒸気機関車の引き起こす事件の謎を追っているうちに……。

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追記  ここからは完全にネタバレなので、未読の方はご注意願います。信号手は「下にいる人!」と呼んでくる人間を異様に警戒しています。なぜかと言いますと、この声を聞いたすぐあとに、事故があったのを見たことがあったからです。この「下にいる人」と呼ぶ者というのはじつは日本で言うところの「虫のしらせ」というやつで、幽霊がどうも、事故が起きることを知らせてきているようなのでした。
 こんな映画を見たらトラウマになるのではというような、みごとに展開してオチがつく恐怖譚でした。

細雪(66)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その66を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 結婚式に出かける人のような、華やかな衣装を着て、大富豪とのはじめてのお見合いをしにゆく、その電車の中での、描写が続きます。戦時中ですから、ぜいたくな着物は、世間的には駄目だったという時代にこういう描写を入れるのが谷崎文学の独自性なのではと思いました。
 雪子は25歳くらいかと思い込んで千ページくらい読んでしまったんですが、じっさいの雪子の年齢は三十三歳なんだそうです。雪子の見た目はもっと若く見えるということが幾度も記されています。
 雪子は1905年あたりの生まれで平均寿命も今より短いですし、はやめにお見合いして婚約者を決めておかないといけない。
 雪子の、目のふちのシミも心労か不調がかさなるとこれが濃くなることがある。当時の化粧ではまったく隠すことができない。これがあると病かなにかの暗い気配がただよってしまうので、お見合いではなんとも気になってしまう。仲人というか世話人役の幸子と夫は、こう考えています。
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  最初から今度の見合いに熱意を抱き得なかった夫婦は、ひとしお希望が持てないような暗い気持がするのを、なるべく顔に出さないようにしながらも、互にそれを読み取っていたのであった。quomark end - 細雪(66)谷崎潤一郎
 
 今日はお見合いと、蛍狩をするという予定なのでした。前回、中巻の最終話で婚約者と離別してしまった妙子だったんですが、今回は姉の婚姻のための旅に付き添うことに、なにかこう、家族の親睦を感じているようで、この「もうあの不幸な出来事が格別の創痍そういを心に留めていないらしく、元気になっていた」という記載の前後の、妙子の描写が、なんとも人間的な人物描写で、魅入られる場面であると思いました。
 「細雪」は静かな作風ですので、事変の迫力に圧倒されたり感動したりという場面は薄いのかと思うんですが、中巻の終わりと下巻の始まりの描写は、なんだか響いてくるものがあると思いました。
 名古屋ゆきの汽車が途中で、なんだか立ち往生してしまいます。理由はよく分からないのですが、「どかん」という音を立てて、とまってしまって動かなくなる。しょうがないので、汽車の中で持ってきたごちそうをみんなで食べることにした。次回に続きます。
 

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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
 

ねずみさんの失敗 村山籌子

 今日は、村山籌子の「ねずみさんの失敗」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはもう完全に幼子に向けて書かれた童話で、大人に読み聞かせをしてもらう作品なのかと思います。
 ネズミが「あぶらあげ」の匂いをかぎつけてあわただしく走り回り、あわてて残りものをもらいに行こうとする、コミカルな描写が魅力の作品でした。
 

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追記  本作は1931年に発表されたねずみの物語です。ネズミの物語をちょっと調べてみると、1928年にミッキーマウスが作られて、1940年にトムとジェリーがつくられています。古くは室町時代に「鼠の草子」というのがあってこれが古典では有名なのかなと思います。
 

「自然」を深めよ 和辻哲郎

 今日は、和辻哲郎の「自然を深めよ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 和辻哲郎といえば、仏教や神道の思想を研究した人かと思っていたのですが、こんかいは、日本の自然主義文学に関する問題を論じています。和辻氏によれば「自然主義は殻の固くなった理想を打ち砕くことに成功した。しかし代わりに与えられたものは、きわめて常識的な平俗な」ものだけを見出したのであって「昔から数知れぬ人々が腹のなかで心得ていた」ものを目の前で見せただけだった。
 では、芸術に於ける自然とは、いったいどういうものなのかを、ここから論じはじめています。
「生」と同義にさえ解せられる所の「ロダンが好んで用うる所の」「人生自然全体を包括」した「我々の感覚に訴えるすべての要素を含むとともに、またその奥に活躍している」つまり生命そのものを描きだす芸術というのが、自然主義の魅力である。
 近代日本に於ける自然主義文学の批判を行いつつ、自然の魅力を描き出せた芸術家としてロダンを複数回あげていました。では物語の描写で、どのように自然の魅力を描き出せるのかというと……。和辻哲郎は、とにかくドストエフスキーがこの近代作家たちから遠く隔たって抜きんでていて、ドストエフスキーこそが人間の自然を最も深く見極めた希有な作家であり、「人間の自然」を「異様な圧力を与え」つつ示しきったのが、「カラマーゾフの兄弟」をはじめとした氏の文学であると論じていました。ドストエフスキーの「母なる湿潤の大地」の描写を彷彿とさせる評論でした。
  

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