大恩は語らず 太宰治

 今日は、太宰治の「大恩は語らず」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 婦人公論のNさんが太宰治の家にやってきて「恩讐記といふテエマで數枚」書いて欲しいというのでした。本文こうです。

  手紙でお願ひしたら、あなたは、きつとお斷りになるだらうと思ひましたから、ですから、私がけふお宅へお願ひにあがつたのです。恩は、ともかく、讐あだなんて、あまり氣持のよいものでは無いのですから、テエマにあまり拘泥せず、子供の頃、誰かに毆られて、くやしかつたとか、そんな事でもお書きになつて下さつたら、いいのです。
 
 手紙だけだとどうしても伝わらないことを、わざわざ対面で話しに来た、というのが良いなあと思いました。軍部による発禁と廃刊が相次ぐ、昭和十五年の出来事でした。「大恩は語らず」と言うのですが、そこは他作で、太宰治が書きそうなところのような気もしました。
 

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追記 「忠臣藏だつて、考へてみると、へんなものですよ」というあたりで、ほんとにそうだなと、思いました。

追記2 現在、電子書籍のバージョンアップ改良版を制作中で、更新がすこしだけ、とどこおっております。また現在、photoshop2025をついに廃棄して最新版のPhotoshopを使用開始したため、このため、更新がすこしだけ、とどこおっております。

秋の瞳(57)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その57を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回の「怒り」という詩もこれも、八木重吉の代表的な作品のひとつなのではと思いました。もうひとつの詩は、八木重吉の家族のありさまと心情が垣間みえる、あたたかい詩に思いました。
 

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追記  「秋の瞳」は次回で完結です。こんなに長い期間、一つの詩集を読んだのは初めてでした。

防寒戸 中谷宇吉郎

 今日は、中谷宇吉郎の「防寒戸」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは戦後になってから、古い時代の北海道の家作りのことを回想した随筆です。科学者の中谷宇吉郎と建築家オー君の2人で防寒戸をしっかり備えた家を設計したのでした。「簡単に言えば、保温の原理を物理的に忠実に守ったというだけに過ぎない」のですが、じっさいに作って暮らしてみると、厳冬の寒さを防げるということでかなりの人気になって、いろいろな見学者が、中谷宇吉郎の家を見に来ることになった。建築家O君はこれでしっかり儲けて出世して「住宅会社の活躍と相まって、みるみるうちに、千八百軒建った」そうです。
 いま読んでみると想定外なのは、寒冷地では雨戸は凍りついてしまって厳しいのだけれども、ふすまのようにじつに簡単なモノでも、2重にするだけで防寒にかなりの効果がある、という科学者の指摘が面白かったです。
 これは現代でもじゅうぶん参考になる話しで、パスワードは2重にしたほうが良いとか、魅力的だけれども怪しい情報は、いったん寝かせてから二段階で再確認してみたほうが良いとか、いうように思いました。
 

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追記  今回は科学の話しと言うよりも、技術の話しだなと思いました。そういえば、論理哲学者のウィトゲンシュタインも技術に長けていて、自分で家を設計して建てたりしていたのでした。

幸福 中島敦

 今日は、中島敦の「南島譚 幸福」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは、パラオの、オルワンガル島という島での物語を描きだした小説で、大権力者ルバックと「極めて哀れな」主人公を描きだした物語で、結末がみごとでした。主人公の男が、徐々に幸福を見いだしてゆくさまに迫力がありました。
 

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追記  

※以下は物語の結末を含みます。クリックで表示されます。

 なんだか美しい構成の作品で、貧しい男がだんだんたくましい人間に変化してゆくところの描写がすごい創作昔話で、読み終えてから思わずもう一度、はじめから読みはじめてしまいました。寝床で充実した夢を見ることによって、現実の生きかたも充実しはじめてゆく……意識が変われば現実もいずれ変わってゆく、という男を描きだした物語でした。
 オルワンガル島というのは今は海底に没した架空の島で、このような、どんどん幸福になってゆく男というのは、現実には二度と現れなかったのだ、というように末尾に記されていました。考え方が良くなれば、だんだん現実も良くなってゆく……といった寓意のこもった昔話でした。奴隷と王様の入れ替わりを、荘子の「胡蝶の夢」のかたちで物語化した作品でした。

 
 

虞美人草(4)夏目漱石

 今日は、夏目漱石の「虞美人草」その4を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 哲学的な日記を書く「甲野さん」という男と、クレオパトラか清姫みたいになりたい「甲野藤尾」という女性の、この2人の関連性がまだあんまり描かれていないのですが、今回は甲野さんの哲学的な思考が記されてゆきます。また友人の小野さんという男がどのように生きているのかということも記されていました。
 本文こうです。

 小野さんは水底の藻であった。
 京都では孤堂こどう先生の世話になった。先生からかすりの着物をこしらえて貰った。年に二十円の月謝も出して貰った。書物も時々教わった。祇園ぎおんの桜をぐるぐるまわる事を知った。知恩院ちおんいん勅額ちょくがくを見上げて高いものだと悟った。御飯も一人前いちにんまえは食うようになった。水底の藻は土を離れてようやく浮かび出す。
 
 小野さんは考えずに進んで行く。進んで行ったら陛下から銀時計をたまわった。浮かび出した藻もは水面で白い花をもつ。根のない事には気がつかぬ。
 
 博士の傍には金時計が天からかかっている。時計の下には赤い柘榴石ガーネットが心臓のほのおとなって揺れている。そのわきに黒い眼の藤尾さんがほそい腕を出して手招てまねぎをしている。すべてが美くしいである。詩人の理想はこの画の中の人物となるにある。
 
 小野さんはもともとはいじめられっ子だったんですが、たいへん優れた学力と学識があって、これから学者になろうとしています。それで将来有望な小野さんにたいして、妖女伝説が好きな甲野藤尾という女性と、恩師の娘の小夜という女性の二人が近づいてきているという状態のようです。
 銀の鎖と、金の鎖というのが印象的に描かれているように思いました。

 作中のタンタラスというのはギリシャ神話のタンタロスのことです。

 

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「虞美人草」の一から十九まで、全文を読む。(原稿用紙換算584枚)
夏目漱石『夢十夜』を全文読む。   『草枕』を読む。
  

※AIがまとめた要約はこちら。クリックで表示されます。

第四章 あらすじ(AIがまとめて、人間が書き直しました)
 甲野の日記によれば、小野は「色を見て世を過ごす男」であり、「色の世界」に住んでいる。彼にとって世界は色で出来ており、形は色の残りものである。物の本当の姿や道理を論じるようなことに、小野はほとんど関わらない。小野はただ鮮やかな色だけを味わって生きている。
 小野は暗い境遇に生まれた。私生児だと言う者もあり、子供の頃からいじめられ、犬に吠えられ、父が亡くなって家も失った。水底の藻のように、ただ波のままに漂うだけの人生だった。しかし京都で孤堂先生に引き取られ、着物や学費を出してもらい、ようやく藻が水底から浮かび上がるように生きられるようになった。そして東京へ出ると、周りが秀才だと褒め、教授が有望だと言い、そのまま流れに乗って進み、ついには陛下から銀時計まで賜わった。根のない藻が水面で白い花を咲かせたように、彼は成功の色を鮮やかに見せている。
 普通、人は華やかな子供時代から次第に落ち着いた大人へと変わっていくものだ。しかし小野はその順序を逆にたどり、暗い土の中から明るい水辺へと、二十七年かけてやっと漂着してきた。東京に来たばかりの頃は、京都にいた頃のほのかな「紅」の色を恋しく思い、よく過去を振り返ったものだが、今ではその紅い点も遠く色あせ、彼は過去を見ることをしなくなった。今の彼はまるで薔薇のつぼみだ。未来を思い描けば、「博士」という金色の文字、天からぶら下がる金時計、赤い宝石の炎、そして黒い瞳の藤尾さんが手を招く、美しい絵が浮かぶ。しかし同時に、いくら近づいても水や果物が逃げていくタルタロスのように、すべてが壊れて消える不安な未来も思い描いてしまう。詩人である小野は、そうした明るい未来と暗い未来の間で揺れている。
 ある日、机の前で悪い未来のことを考えていると、お手伝いさんが孤堂先生からの手紙を届ける。表書きを見ただけで小野ははっとし、事実を知るのが怖くて、首を出したら打たれる亀のように封を切るのをためらう。しかし意を決して封を切ると、恩師が家を売り払い、娘の小夜を連れて東京へ引っ越してくるという知らせだった。小夜は以前東京で学校に通っていたので上京を望んでおり、琴だけは自分の希望で持ってくるという。先生は手紙の中で「小夜の将来については、おおむねあなたも同じ考えだろうと思うので、ここでは書きません。東京で会ってからよく話し合いましょう」と書いている。
 手紙を読み終えると、小野の目の前から美しい未来の絵は消え、代わりに手紙からは古びた過去の匂いが立ち上ってくる。彼はこれまで幸運にも過去に背を向けて未来だけを見て生きてこられた。しかし今、忘れようとした過去が、暗い夜に提灯の火が揺れるように、はっきりと自分に向かって迫ってくる。小野は部屋の中を落ち着かずに歩き回る。
 そこへ京都時代の友人である浅井がやって来る。浅井は「井上孤堂先生の小夜さんが東京へ来るんだってな。いよいよ結婚するんだろ」と何気なく尋ねる。小野は「いや、そこにはいろいろ深い事情があってね。向こうが一人で決めてしまっているらしいし」と、はっきりしない答えでごまかす。浅井が恩賜の時計を羨ましがりながら帰った後、小野は迷いながらも自分の足で甲野の家へと向かっていく。

■ 主要登場人物 
小野(優れた学者のたまご。惑っているところがある)
甲野さん(哲学的な日記を書く男)
 
甲野藤尾(妖艶な伝説にあこがれる美女)
小夜(井上孤堂の娘で、小野と結婚したい)

追記  漱石の本の中でいちばん、くりかえし読める本はこの「虞美人草」なのでは、というように思えてきました。小野さんがどうなるのか、というのがこの小説の中心にあるようです。
 

金の十字架の呪い チェスタトン

 今日は、チェスタトンの「金の十字架の呪い」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはブラウン師父が活躍する、謎解き物語の代表的な作品です。魚のかたちの絵が刻まれた十字架という世にもまれな財宝を狙う悪人との闘いを描きだした物語です。
 けっこう入り組んだ小説で、初見ではほとんど意味が分からないまま読み終えてしまったのですが、読み直してみると、すごいことが描かれていて……。
 

※以下は完全にネタバレですので、読後に真相を知りたい場合のみ、クリックして表示してほしく思います。

 本件は、推理小説やサスペンス小説の王道である、変装トリックのことが終盤に描かれます。
 殺されたウォルター牧師に変装し、人々の目の前に現れた真犯人が描かれるのは、全体45%の箇所です。
「幸いにも、牧師が彼自身この場に現われた、彼は灰色の頭髪の人の善さそうに見える紳士であった」
 これが事件を起こしたあとに変装した真犯人の姿なのでした。本文こうです。

  幸いにも、牧師が彼自身この場に現われた、彼は灰色の頭髪の人の善さそうに見える紳士であった。好古家同志として教授に親しみのある話しをしてる間、興味よりは、むしろ敵意を以てその同伴の彼の一行を見なすようには思われなかった。
「私はあなた方のうちどなたも迷信深くない事をのぞみます」彼は愉快気に言った。「まず最初に、私はこの仕事において吾々の熱心な頭にかかってる悪い前非やまたはいかなる呪いもないという事を、皆さんにお話しせねばなりません。礼拝堂の入口の上で見つけたラテン語の銘を私は今ちょうど訳している所です、そしてそれは三つの呪いがふくまれてるように思われます。すなわち、閉ざされた室に這入る事に対しての呪、第二は棺桶を開く事に対する二重の呪い。そしてそれの内部に発見された金の霊宝に触れる事に対しての三重のそして最もおそろしい呪いです。その最初の二つはもう既に私が受けたのです」と彼は微笑をもってつけ加えた。「しかし私はもし皆さんが幾分でも何かを見ようとなさるなり彼等の最初のと二番目をお受けになるだろうという事を気遣います。物語りに依りますると、呪詛は、長い間においてそしてまたなおもっと後の機会に、かなりぐずぐずした形式で現われます。私は皆さん方にとってどちらが幾分かの慰めであるかどうかは知りません」それからウォルター氏は元気のない慈悲深い態度でもう一度微笑した。
 
 牧師に変装をして微笑していろんな話しをしている……真相が分かってみると、百年前の小説にしてはずいぶん不気味な場面で、現代のサスペンス映画みたいだなと思いました。
 権力を悪用し、命や希少品といった重要なものを完全に奪い去ってしまう、名前の無い真犯人というのが立ち現れる、チェスタトンのミステリー小説でした。こんかいはブラウン師父の健闘も及ばず、真犯人の逮捕にまでは至らないのが、かえって小説の独自性を作りあげているように思いました。

 

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AIがまとめ、人間が書き直した物語の要約はこちら。クリックで表示されます。※物語の結末を含みます。

 大西洋を航海中の巨船モラヴィア号の食堂で、六人の男女が小さな卓子テーブルを囲んでいた。ビザンティン研究の権威スマイル教授、女流旅行家ダイアナ・ウェルズ夫人、洒落た浪費家ポール・ターラント、イギリス人講師レオナルド・スミス、もう一人の無口な講師、そして「ブラウンという名で通っている小柄な英国の坊さん」がいた。彼は「非常に注意深く会話に聞き入っていた」。
 人々が立ち去った後、教授はブラウン師父だけに秘密を打ち明ける。その際、教授は彼に「あなたは今まで私が出逢った最も聡明なそしてまた最も潔白な方である」と言った。かつてギリシャの地下迷路で、教授は裏に魚の形をした標徴を持つ金の十字架を発見した。教授はその時、地下の薄明りの中で、古代のキリスト信者たちは「人間の足のはるか下に落ちて、薄明りと沈黙の陥没した世界に口をきかずに住み、そして暗くそして薄明な音響のない世界に動いて、ちょうど魚の様に見えたに違いない」という思いを抱いた。その地下で見えぬ声の主から「十字架を手放せ、さもなくば殺す」と脅された。以来、脅迫状が届き、敵はこの船中にもいるかもしれない。教授の話を聞いたブラウン師父は「彼はわしかもしれんな」と機嫌のいいさげすみを持って応じた。
 船着後、教授はブラウンを伴いサセックス州ダルハムの墓地へ向かう。到着すると、ターラント、夫人、スミスら同船者たちが皆集まっていた。そこへウォルター牧師が現れ、一行に呪いの伝説を語る。十三世紀の領主ギイ・ド・ギソルが馬欲しさに金の十字架を奪い、鍛冶屋を経てユダヤ人の金貸しに渡り、ついにそのユダヤ人が領主の子息によって「残酷に焼かれ」、十字架は元の墓へ戻されたという。牧師は一行を地下礼拝堂へ案内し、蝋燭を灯す。
 教授が石棺の中の黄金の十字架に触れた瞬間、支えの棒が外れ、巨大な蓋が落ちて教授は血を流して倒れる。師父ブラウンは「たおれた人の傍にひざまずいて、その様子を吟味しようとした」。その時、ターラントが教授を抱き上げる。するとブラウン師父は彼にささやく――「あんたは誰れかをつけとる探偵じゃ」。ターラントもそれを認める。ブラウンは既に航海中から彼の正体を見抜いていたのだ。
 騒ぎの後、牧師ウォルター氏が自殺したとの報せが入る。しかしブラウン師父は「なんてわしは馬鹿じゃろう!わしはもうとうにそれがわからんければならんのだった」とつぶやき、真犯人の変装トリックを暴露する。
 その暴露は、まず偽の呪いの伝説そのものを歴史的に論破することから始まる。ブラウン師父は言う。
「わしが信じないのは伝説じゃありませんのじゃ――それは歴史ですわい」「なぜならそれが歴史じゃないから」
 そして彼は、あの伝説が中世の現実を無視した虚構であることを、ユダヤ人の立場を例に挙げて証明する。
「そのユダヤ人はきっと領主の家来じゃなかったのじゃろう。ユダヤ人は神の下僕として特別な位置を持っておったのじゃ、殊に、ユダヤ人は彼の宗教のために焼き殺されるはずはなかったのじゃ」
「それは決して中世紀の物語りではなかったのですわい。それは誰れかが小説かまたは新聞から取った意見でつくり上げられたものじゃな」
 こうしてウォルター牧師に成りすました真犯人による偽の伝説を虚構と断じた上で、ブラウン師父は真犯人の手口を明確に語る。犯人は本物のウォルター牧師を殺害し、その黒い僧服を奪って、変装した。教授が触れた十字架の鎖(数珠)の残りを、棺の蓋の支え棒にぐるぐると巻きつける細工を施し、教授が触れた拍子に棒を外して蓋を落とし、事件をつくりあげたのである。そして犯人は死んだ牧師の死体を棺に隠し、自らが「牧師」に変装して太陽の光の下に現れ、最も丁寧な態度で一行を案内し、挨拶をしたのだ。
 犯人の行方は依然として不明だが、教授が回復すれば手がかりが得られるかもしれない。やがて意識を取り戻した教授は、ビザンティン風の夢を語る。幾度となくそれ等の模様は火の上に置かれて色のあせる金のようにあわくなって行き、暗い岩壁の上には「ピカピカ光る形が指で魚の燐光の中に掏い上げたように描かれてあった」――それは彼が最初に敵の声を聞いた時に見上げた標徴であった。
 かつて地下の暗闇で教授が語った「暗くそして薄明な音響のない世界に動いて、ちょうど魚のよう」であったキリスト信者たちの孤独を思う、ブラウン師父。当時の信者たちが戦争の被害に巻きこまれたことを述べつつ、最後にブラウン師父は静かにこう告げるのだった。
「魚は再び地下におしこめられるかもしれん、だがもう一度この明るい太陽の光りのもとに出て来るじゃろう。セント・アントニーが諧謔的に注意したように、ノアの大洪水に生き残るのははただ魚だけじゃ」

 ファシズムの悪性の問題についても描きだされていますが、チェスタトンは優生学を否定する文章も他日に書いていました。またヒトラーのナチスがユダヤ人を迫害しはじめたころに、この非道をいちはやく批判した文人でもあるのでした。