2011年7月7日3時1分
米韓両政府が5月、ソウルで生物兵器テロを想定した初の合同図上演習を実施したことがわかった。国際テロ組織による犯行との想定だが、生物兵器を保有する北朝鮮も意識したとみられる。関係者の間では日本も加えた3カ国の共同対応を求める声も出ている。
米国防総省や韓国国防省、在韓米軍などの関係者約100人が参加。韓国で炭疽(たんそ)菌入りの手紙が配達されたケースなど2通りのシナリオで、被害の拡大防止などを巡り演習をした。
米国は、韓国内の関係機関による総合的な体制づくりを急ぐよう要請。米韓協力体制の構築も求め、今後も定期的に演習を実施することで大筋合意した。
関係者によると、演習は米側の要請。米国では2001年に、米議会などに炭疽菌入りの郵便物が届く事件が発生し、以後、国内で生物兵器テロへの対応策を急いできた。
今回は、米軍が生物兵器テロを巡って他国と海外で実施する初の合同演習だという。関係者の一人は「海外にいる米国人をテロから守る演習」と説明。3万人近い在韓米軍など米国人の居住者が多いことを考慮したとみられるが、演習は軍が主体となっており、北朝鮮の生物兵器も意識した可能性が高い。
韓国国防省は北朝鮮が炭疽菌や天然痘、コレラなどの細菌を独自に生産する能力があると分析。在韓米軍兵士も04年ごろから、天然痘と炭疽菌のワクチン接種を受けているとされる。
関係者の間では、日本も含めた3カ国の合同演習を模索する声も出ている。
巨額の軍事費に苦しむオバマ米政権は、昨年2月に発表した「4年ごとの国防政策見直し」(QDR)で「米国は安定した国際社会の体制を一国では維持できない」と指摘。東アジア地域の安全保障上の脅威に対し、日韓が連携して対応するよう求めてきた。
日本政府も02年に始めた朝鮮半島有事のシミュレーションの中で、天然痘や炭疽菌などによる生物兵器テロを想定。天然痘のワクチンを大幅に増やすなどの措置を取ったことがある。(ソウル=牧野愛博)