田中一村
日本の画家
(アダン (映画)から転送)
生涯
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没後の再評価
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死去の直前、奄美在住だった友人の紹介で一村と会った写真家・田辺周一によると、田中は千葉にいた頃に写真を学んで造詣が深く、自ら撮影もしており、写実的な画風にも影響を与えていたとみられる。田辺は散逸しそうだった一村の遺品を預かり、現在まで保管。さらに2015年には、一村の写真集﹃海神の首飾り﹄︵リーブル出版︶を刊行した[5]。一村は、アンリ・ルソーからの影響が指摘されることもある。
没後にNHKの﹃日曜美術館﹄﹁黒潮の画譜~異端の画家・田中一村﹂︵1984年12月16日放映︶や﹃南日本新聞﹄に連載された﹁アダンの画帖~田中一村伝﹂でその独特の画風が注目を集め、全国巡回展が開催され、一躍脚光を浴びる。南を目指したことから、﹁日本のゴーギャン﹂などと呼ばれることもある[3]。評伝や画集も複数が刊行されているほか、以下のように記念美術館が開館したり、各地の美術館で展示会が開かれたりするようになっている。
●2001年 - 鹿児島県は奄美大島北部・笠利町︵現・奄美市︶の旧空港跡地にある﹁奄美パーク﹂の一角に﹁田中一村記念美術館﹂がオープンした︵館長・宮崎緑︶。
●2008年 - 生誕100年にあたり、奈良県高市郡明日香村の奈良県立万葉文化館[2]︵館長・中西進︶で﹁生誕100年記念特別展 田中一村展-原初へのまなざし-﹂が開催された︵10月18日~11月24日︶。入場者は25,000人。
●2010年 - 千葉市美術館で﹁田中一村 新たなる全貌﹂を開催︵8月21日~9月26日︶。一村ゆかりの地︵栃木、千葉、石川、鹿児島︶にある美術館が共同で取り組む初めての回顧展で、近年新たに発見された資料を多数含む約250点の出品作による、現時点で最大規模の展覧会となっている。入場者は61,166人。その後、鹿児島市立美術館︵10月5日~11月7日︶、田中一村記念美術館︵11月14日~12月14日︶に巡回。
●2012年 - 沖縄県立博物館・美術館で、本土復帰40周年記念﹁田中一村展~琉球弧で開花した美の世界﹂を開催︵3月30日~5月6日︶。同年、石川県立美術館では﹁孤高の画家・田中一村展﹂を開催︵7月28日~8月26日︶。 一村が1955年、石川県羽咋郡宝達志水町にある﹁やわらぎの郷﹂で制作した﹁聖徳太子殿天井画﹂の修復が完了したことに伴い企画された。
●2018年 - 岡田美術館が﹁田中一村の絵画-奄美を愛した孤高の画家﹂︵4月6日~9月24日︶、佐川美術館が﹁生誕110年 田中一村展﹂︵7月14日~9月17日︶を開催。
●2021年 - 千葉市美術館で﹁田中一村展 ― 千葉市美術館収蔵全作品﹂︵1月5日~2月28日︶[6]。
毎年9月11日の命日に﹁一村忌﹂が﹁一村終焉の家﹂で行われている。一村の絵﹃奄美の杜﹄は黒糖焼酎のラベルにもなっている。
代表的な作品
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現在確認されている作品数は下絵やスケッチを除いて約600点弱。そのうち160点余は田中一村記念美術館に所蔵され、寄託品も含めると450点を収蔵している。千葉市美術館も蒐集に努め、一村の支援者であった川村家から寄贈を受けるなどして所蔵作品が100点を超えるに至った[6]。
初期
編集- 白梅
- 牡丹図
- 倣蕪米
- 倣聾米
- 倣木米
- 倣鐡齋
- 農村春景
- 蕗の薹とメダカ
の図、ほか
千葉寺時代
編集1938年に千葉に移り、1958年に奄美大島に行くまでの作品。
- 白い花(1947年:青龍社展入選作)
- 花と軍鶏(1953年:襖絵)
- 能登四十九種薬草図[7]シリーズ(1955:石川県羽咋郡宝達志水町やわらぎの郷・聖徳太子殿天井絵)
- 千葉寺の春の作品
- ザクロ図
- 室戸岬、九里峡、由布風景
- ニンドウにオナガ(1956:奄美時代の絵を予感させる明るさと伸びやかさ)
奄美時代
編集映画
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田中一村の生涯を描く映画﹃アダン﹄が企画された。2006年5月20日公開。
●製作‥映画﹁アダン﹂を作る会、DHC
●エグゼグティブプロデューサー‥水野清
●監督‥五十嵐匠、脚本‥松山善三、原案‥中野惇夫、音楽‥安川午朗
●配給‥東京テアトル
●出演
●田中一村‥榎木孝明
●アダン‥木村文乃︵公募により本作でデビュー︶
●田中喜美子‥古手川祐子
●荒木泰雲‥村田雄浩
●住友先生‥加藤剛
●山上北斗‥中村嘉葎雄
書籍
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画集
●中野惇夫・大矢鞆音編﹃田中一村作品集﹄日本放送出版協会、2001年10月。ISBN 4140092912
●旧版﹃田中一村作品集 NHK日曜美術館﹁黒潮の画譜﹂﹄ 日本放送出版協会、1985年8月。ISBN 978-4140091081
●大家鞆音監修・解説 ﹃田中一村作品集 増補改訂版﹄NHK出版、2013年12月。ISBN 978-4140093535
●大矢鞆音解説 ﹃もっと知りたい田中一村 生涯と作品﹄東京美術、2010年5月。ISBN 4808708760
●大矢鞆音監修 ﹃田中一村“南の琳派”への軌跡﹄平凡社﹁別冊太陽 日本のこころ﹂、2019年5月。ISBN 978-4582922745
評伝
●南日本新聞社編 ﹃田中一村伝 アダンの画帖﹄道の島社 1986年。
中野惇夫らが﹃南日本新聞﹄での連載記事を単行本化。
●新版﹃アダンの画帖 田中一村伝﹄南日本新聞社編、小学館 、1995年3月。ISBN 978-4093871495
●﹃日本のゴーギャン 田中一村伝﹄小学館文庫、1999年5月。ISBN 4094033815
●小林照幸﹃神を描いた男-田中一村﹄中央公論社、1996年。中公文庫、1999年。ISBN 4122034469
●加藤邦彦﹃田中一村の彼方へ-奄美からの光芒﹄三一書房、1997年10月。ISBN 4380972909
●湯原かの子﹃絵のなかの魂-評伝・田中一村﹄新潮社、2001年。新潮選書 2006年5月 ISBN 4106035650
●大矢鞆音﹃田中一村 豊穣の奄美﹄日本放送出版協会、2004年4月。ISBN 4140808608
●大矢鞆音﹃評伝 田中一村﹄生活の友社、2018年7月。ISBN 978-4908429194
●﹁新・田中一村﹂﹃南海日日新聞﹄連載‥2005年6月2日〜2013年4月17日
●大野芳﹃裸の天才画家 田中一村﹄平凡社、2020年2月。ISBN 4582838316
図録
●﹃奄美に描く 田中一村記念美術館収蔵作品﹄日本放送出版協会、2001年。
●﹃市制70周年記念 秋の特別企画展 田中一村の世界﹄とちぎ蔵の街美術館 、2006年10月。
●﹃生誕100年記念特別展 田中一村展-原初へのまなざし﹄奈良県立万葉文化館 、2008年10月。
●戸田禎佑﹁田中一村の変容﹂
●村田隆志﹁田中一村と近代南画-小室翠雲と松林桂月 双璧の間で﹂
●大矢鞆音﹁論考‥田中一村、団体展への挑戦-日展・院展出品を中心に﹂
●図録﹃田中一村 新たなる全貌﹄千葉市美術館 、2010年8月。
●小林忠﹁田中一村 精霊との交感﹂
●河野エリ﹁田中一村、奄美へのプロローグ﹂。
●松尾知子﹁田中一村の新たなる全貌を求めて 独歩の画家の画嚢をさぐる﹂
●山西健夫﹁田中一村 様式形成への模索﹂
●前村卓巨﹁﹁奄美時代﹂︵1958〜1977︶の田中一村について﹂
脚注
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(一)^ ab“田中一村記念美術館”. 2020年4月6日閲覧。
(二)^ “どんどんかごしまの旅 - 田中一村終焉の家”. 鹿児島県観光サイト﹁かごしまの旅﹂. 2020年4月6日閲覧。
(三)^ ab﹃読売新聞﹄朝刊2017年8月19日25面︵栃木版︶。
(四)^ 2冊の記念帖(vol.1) - 東京の小学生が見た1920年のローマ東京間飛行 - YouTube[1]︵2021年2月19日閲覧︶
(五)^ 田辺周一﹁田中一村 記憶の構図◇写真を愛した奄美の日本画家の足跡訪ねる◇﹃日本経済新聞﹄朝刊2018年5月1日︵文化面︶
(六)^ ab田中一村展 ― 千葉市美術館収蔵全作品︵2021年2月19日閲覧︶
(七)^ 従来48枚と紹介されることが多いが、天井は7行7列の格子状であり、聖徳太子厨子上の1枚﹁キランソウ図﹂が取り外され横に置かれていたためにおきた誤認である︵末吉守人﹁日本画家田中一村と聖徳太子殿天井画について﹂﹃石川県立美術館紀要﹄第16号、2006年3月31日、p.41︶。
(八)^ “﹁アダンの海辺﹂ 市美術館に委託 千葉ゆかりの画家 田中一村の代表作”. ﹃千葉日報﹄朝刊 (千葉日報社): p. 7. (2012年1月8日)
関連項目
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●木村文乃
●アンリ・ルソー
●田中一村終焉の家 - 1977年︵昭和52年︶9月1日から、死までの10日間を過ごした家。板張りの粗末なつくりだが、一村は﹁御殿﹂と呼んだ。
●奄美黒糖焼酎 - 龍郷町の町田酒造が一村、や、一村の絵をパッケージに使った奄美の杜を製造販売している。
●満福寺 (栃木市) 、一村の墓がある。
外部リンク
編集- 田中一村記念美術館
- 田中一村の世界 Isson World
- 田中一村超マニアックコース - ウェイバックマシン(2001年2月19日アーカイブ分)
- 一村終えんの家(小さなミュージアム)/西日本新聞 - ウェイバックマシン(2001年6月20日アーカイブ分)
- 田中一村終焉の家 奄美旅
- 田中一村記の遊印