参謀
軍隊の役職
概要
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軍隊において部隊の指揮系統は単一であるために、あらゆる決心は指揮官が単独で行う。しかしながら高級指揮官は軍事作戦を指揮統制するために処理すべき情報や作業が膨大なものとなる。これを組織的に解決するために参謀組織が情報収集、情報処理などの面で高級指揮官を補佐することとなる。そのために指揮官に対する発言権は認められていたとしても、部隊の指揮権は持たない。ただし、最上位においては参謀総長、幕僚長のように参謀が実質的最高司令官を兼ねているケース︵この場合文民統制の観点から名目的には最高司令官は元首等である︶も多い。
幕僚組織は全般的に高級指揮官︵陸軍を例にすると主に総軍総司令官・方面軍司令官・軍司令官・軍団司令官・師団長・旅団長といった戦略単位の上級部隊を率いる指揮官︶を司令部にて補佐する。
慣用句や比喩として、組織において参謀的な立場の人物や、上司・主君・リーダーに対する補佐的な仕事をつとめ、忠実でいざというときに頼りになる信頼のおける部下・家来のことを参謀︵参謀格、参謀役︶などといい、﹁懐刀﹂などとほぼ同義で使われる。
歴史
編集日本の参謀制度
編集「幕僚」も参照
自衛隊
編集自衛隊においては、参謀という言葉は用いられない。
日本軍
編集旧日本軍においては、幕僚の中でも特に作戦・用兵を担当する将校を「参謀」と呼称し、その他の幕僚と別扱いにした。
陸軍
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旧日本陸軍では、参謀総長︵陸軍三長官︶が長を務める参謀本部を筆頭に、部隊では参謀部は旅団以上に設置された。総司令部を擁する総軍参謀部の長は﹁総参謀長﹂と、方面軍以下の参謀部の長は﹁参謀長﹂と称した。
参謀は参謀本部管轄の陸軍大学校︵陸大︶で養成された。
著名な陸軍参謀として、
●児玉源太郎︵日露戦争時の満州軍総参謀長︶
●福島安正︵シベリア単騎横断実地調査を実施︶
●石原莞爾︵柳条湖事件の関東軍作戦主任参謀︶
●辻政信︵ノモンハン事件︶
●杉山元︵太平洋戦争開戦時の参謀総長︶
●栗林忠道︵香港攻略戦時の第23軍参謀長︶
●瀬島龍三︵大本営陸軍部作戦参謀︶
●八原博通︵沖縄戦における第32軍高級参謀︶
●堀栄三︵アメリカ軍の侵攻パターンを的確に予測し﹁マッカーサー参謀﹂と称された情報参謀︶
などが知られている。
海軍
編集世界の参謀制度
編集アメリカ合衆国
編集その他
編集- 軍隊組織を採用している救世軍では、教団事務局長にあたる役職名を「参謀総長」としている。
脚注
編集参考文献
編集- J.D.ニコラス空軍大佐、G.B.ピケット陸軍大佐、W.O.スピアーズ海軍大佐著、野中郁次郎、谷光太郎訳『統合軍参謀マニュアル』(白桃書房、昭和62年)ISBN 978-4561241409
- 松村劭『バトル・シミュレーション 戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方』(文藝春秋、2005年)