オラフ・ステープルドン
表示
オラフ・ステープルドン︵William Olaf Stapledon, 1886年5月10日 - 1950年9月6日︶は、イギリスの小説家、哲学者。壮大なスケールの作品で、後年のSF作家に大きな影響を与えた。
経歴[編集]
イギリスのリヴァプールの南のウィラルで生まれ、6歳までは父親の赴任先であるエジプトのポートサイドで過ごした。オックスフォード大学のベイリオル・カレッジで近代史を学ぶ。第一次世界大戦では救急部隊に所属。1920年にリヴァプール大学で哲学の博士号を取得、その後、英文学、哲学、心理学の講師を務めるなどした。1919年に従姉妹のアグネスと結婚。 1930年に発表した﹃最後にして最初の人類﹄で小説家として認められた。1948年にはポーランドで開かれた﹁平和のための世界識者会議﹂に出席。同年、英国惑星間協会でアーサー・C・クラークの招待を受け講演した。 1950年9月6日に、冠状動脈閉塞で死去した。 夫人との結婚前のラブレターの他、作家のH・G・ウェルズ、ナオミ・ミッチソン、ヴァージニア・ウルフ、アーサー・ケストラー、オルダス・ハクスリー、哲学者のバートランド・ラッセルらとの書簡も残されている。 2001年に、第1回コードウェイナー・スミス再発見賞を贈られた。作品[編集]
長編小説﹃最後にして最初の人類﹄は人類の20億年に渡る未来を描いた作品で、当時無名でありながらも高い評価を得た。ちなみにこの時まで、ステープルドンはほとんどSF小説を読んだことがなかったという。 続いて1937年に発表した﹃スターメイカー﹄は、さらに宇宙規模のスケールを拡大した幻視的な作品で、第一次大戦後の次の戦争の危機が忍び寄る時代を背景に、平和への思いとその観念的な解決を遠未来から俯瞰して見せ、そのあまりに冷たく美しいヴィジョンによりブライアン・オールディスによって﹁堪えがたいほど壮麗な作品﹂と評された。ホルヘ・ルイス・ボルヘスはスペイン語版の解説で、文学の新しい形態である﹁科学的な性格を持つ寓話あるいは空想譚﹂のうち、ポーはその両者に取り組み、ステープルドンは両者を結合させたと述べ、また﹁世界の複数性とその劇的な歴史の、蓋然性と信憑性を備えた表現でもある﹂と評している[1]。また物理学者フリーマン・ダイソンは、ダイソン球を始めとする宇宙文明に関するアイデアを﹃スターメイカー﹄から得たとしている。 他に代表的なSF小説として、現代に現われた超人類を描いた﹃オッド・ジョン﹄、人間と同等の知能を持った犬の物語﹃シリウス﹄がある。どの作品においても、人類の未来についての深い洞察が込められている。 存命中に最も売れた本は、素人向けの哲学の歴史と実践のための入門書"Philosophy and Living, 2 volumes"だという。作品リスト[編集]
小説 ●最後にして最初の人類 (Last and First Men) 1930年 ●(Last Men in London) 1932年 ●オッド・ジョン (Odd John) 1935年 ●スターメイカー (Star Maker) 1937年 ●(Darkness and the Light) 1942年 ●シリウス (Sirius) 1944年 ●(Death into Life) 1946年 ●(The Flames) 1947年 ●(A Man Divided) 1950年 評論など
●(A Modern Theory of Ethics: A study of the Relations of Ethics and Psychology) 1929年
●(Waking World) 1934年
●(Saints and Revolutionaries) 1939年
●(New Hope for Britain) 1939年
●(Philosophy and Living, 2 volumes) 1939年
●(Beyond the "Isms") 1942年
●(Youth and Tomorrow) 1946年
翻訳[編集]
●﹃オッド・ジョン﹄矢野徹訳、早川書房︿ハヤカワ・SF・シリーズ﹀、1967年。 ●﹃オッド・ジョン﹄矢野徹訳、早川書房︿ハヤカワ文庫SF﹀、1977年。ISBN 4-15-010221-X。 ●﹃エスパー島物語﹄矢野徹訳、水田秀穂絵、岩崎書店︿エスエフ世界の名作23﹀、1967年。上記の児童向け訳 ●﹃超人の島﹄矢野徹訳、水田秀穂絵、岩崎書店︿SFこども図書館23﹀、1976年2月。ISBN 4-265-92223-6。 ●﹁シリウス﹂中村能三訳﹃世界SF全集 第6巻﹄早川書房、1970年。ISBN 4-15-200006-6。 ●﹃シリウス﹄中村能三訳、早川書房︿ハヤカワ文庫SF﹀、1976年。ISBN 4-15-010191-4。 ●﹃スターメイカー﹄浜口稔訳、国書刊行会︿クラテール叢書14﹀、1990年5月。ISBN 4-336-03013-8。 ●﹃スターメイカー﹄浜口稔訳︵新装版︶、国書刊行会、2004年1月。ISBN 4-336-04621-2。 ●﹃スターメイカー﹄浜口稔訳、筑摩書房︿ちくま文庫﹀、2021年11月。ISBN 978-4-480-43565-1。改訳版 ●﹃最後にして最初の人類﹄浜口稔訳、国書刊行会、2004年2月。ISBN 4-336-04538-0。 ●﹃最後にして最初の人類﹄浜口稔訳、筑摩書房︿ちくま文庫﹀、2024年6月。ISBN 978-4-480-43954-3。改訳版 ●﹃火炎: ファンタシー﹄青野丸香訳、デザインエッグ社、2021年7月。ISBN 978-4815027759。映画化[編集]
●最後にして最初の人類 (映画)注[編集]
- ^ 内田兆史訳「オラフ・ステイプルドン『スターメイカー』」(『序文つき序文集』国書刊行会 2001年)
参考文献[編集]
外部リンク[編集]
- リヴァプール大学オラフ・ステープルドン・アーカイヴ1983年設立
- ウィリアム・オラフ・ステープルドン邦訳有