マルメロ
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マルメロ Cydonia oblonga | ||||||||||||||||||||||||||||||
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木になったマルメロ | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Cydonia oblonga Mill. (1768)[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
マルメロ セイヨウカリン | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
quince |
マルメロ︵榲桲[3][4]・木瓜[3]、葡: marmelo、学名: Cydonia oblonga︶は、バラ目バラ科マルメロ属に分類される落葉高木の1種。マルメロ属はマルメロの1属1種で構成されている。
ポルトガル語本来ではマルメロは果実の名で、樹はマルメレイロ (marmeleiro) という。英語名はクインス (quince)。別名﹁セイヨウカリン﹂[5]。果実はバラ科のカリンによく似ており[6]、栽培が盛んな長野県諏訪市など一部の地域では﹁かりん﹂と呼ばれる[7]。また、﹁木瓜﹂の字を当てられることもある[5]。しかし、セイヨウカリン、カリン、ボケ︵木瓜︶はいずれも別属である。なお、マルメロはヨーロッパ原産でもない。
ただしカリン属 (Pseudocydonia) とは、カナメモチ属 (Photinia) と共に非常に近縁である[1][8]。そのほか、セイヨウカリン属 (Mespilius)、ボケ属 (Chaenomeles)、リンゴ属 (Malus)、ナシ属 (Pyrus) などとも、詳細な系統関係は不明ではあるがバラ科の中では比較的近く、同じナシ亜連に含まれる。
花言葉は﹁幸福﹂﹁魅惑﹂[9]。
特徴[編集]
中央アジア原産[4]。日本へは、江戸時代にポルトガル船によって長崎へ伝来した[10]。マルメロは、カリンよりもやや涼しい場所が栽培適地である[10]。日本では主に長野県で栽培される[4]。 樹皮は灰褐色で縦筋があり滑らかで、成木になると次第に鱗片状に剥がれるが、まだら模様にはならない[4]。一年枝は赤褐色で、灰色の毛に覆われる[4]。葉は互生、長さは7 - 12センチメートル (cm) 、幅6 - 9 cmで白い細かな毛で覆われている。 花期は春︵4 - 5月︶で[4]カリンよりも遅く、葉が出た後に花が咲き、大きさは5 cm、色は白っぽいピンクで5枚の花弁がある[7]。 果実は偽果で、熟した果実は明るい黄橙色で洋ナシ型をしており[6]、長さ7 - 12 cm、幅6 - 9 cmである[注 1]。果実はカリンに似るが、未熟な果実は緑色で、表面は灰色から白色の軟毛で覆われている[4]。 冬芽は円錐形や卵形で、枝と同色である[4]。枝先に仮頂芽がつき、枝には側芽が互生する[4]。葉痕は三角形で、維管束痕が3個つく[4]。-
花
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果実
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果実(表面には綿毛が密生する)
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パンクラース・ベッサによる博物画
食用[編集]
果実は芳香があるが強い酸味があり、硬い繊維質と石細胞のため生食はできないが、カリンより果肉はやわらかく、同じ要領で果実酒[注 2]、蜂蜜漬けや砂糖漬け、ジャムなどが作れる[10][6]。成熟果の表面には軟毛が少し残っている場合があるので、よく落としてから切って調理する。
マーマレードは、マルメロの砂糖漬けが語源であるという︵ただし他に諸説あり︶。江戸時代、南蛮伝来のマルメロから作られたジャムを使った南蛮菓子﹁加勢以多﹂は、熊本藩主細川家御用達となり、朝廷や幕府にも献上された[10]。
脚注[編集]
(一)^ abcdPotter, D.; Eriksson, T.; Evans, R.C.; Oh, S.H.; Smedmark, J.E.E.; Morgan, D.R.; Kerr, M.; Robertson, K.R.; Arsenault, M.P.; Dickinson, T.A.; Campbell, C.S. (2007), “Phylogeny and classification of Rosaceae”, Plant Systematics and Evolution 266 (1–2): 5–43, doi:10.1007/s00606-007-0539-9
(二)^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cydonia oblonga Mill. マルメロ︵標準︶”. BG Plants 和名−学名インデックス︵YList︶. 2023年2月1日閲覧。
(三)^ ab“榲桲”. デジタル大辞泉︵コトバンク︶. 2021年8月9日閲覧。
(四)^ abcdefghij鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 167
(五)^ ab﹃広辞苑﹄﹁マルメロ﹂
(六)^ abc猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 ﹃かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典﹄成美堂出版、2012年7月10日、214頁。ISBN 978-4-415-30997-2。
(七)^ ab田中潔 2011, p. 90.
(八)^ C. S. Campbell, R. C. Evans, D. R. Morgan, T. A. Dickinson, and M. P. Arsenault (2007), “Phylogeny of subtribe Pyrinae (formerly the Maloideae, Rosaceae): Limited resolution of a complex evolutionary history”, Pl. Syst. Evol. 266: 119–145, doi:10.1007/s00606-007-0545-y
(九)^ “マルメロ︵西洋カリン︶の花言葉|種類、特徴、色別の花言葉”. LOVEGREEN(ラブグリーン) (2020年8月16日). 2023年1月20日閲覧。
(十)^ abcde田中潔 2011, p. 91.
参考文献[編集]
●鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文﹃樹皮と冬芽‥四季を通じて樹木を観察する 431種﹄誠文堂新光社︿ネイチャーウォチングガイドブック﹀、2014年10月10日、167頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
●田中潔﹃知っておきたい100の木‥日本の暮らしを支える樹木たち﹄主婦の友社︿主婦の友ベストBOOKS﹀、2011年7月31日。ISBN 978-4-07-278497-6。