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陽子-陽子連鎖反応

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
陽子-陽子連鎖反応の概要 左上の反応では2個の陽子(赤)が反応し、陽電子(白)とニュートリノ(ν)を放出後、陽子と中性子(灰色)からなる重水素が形成される。次の反応では重水素と陽子が結合し、ガンマ線(γ)を放出してヘリウム3が生成する。最後の反応では2個のヘリウム3が結合し、陽子を2個放出してヘリウム4に至る。電子は反応に寄与しないため、省略されている。
Proton–proton II chain reaction
Proton–proton III chain reaction

-proton-proton chain reactionppppCNO0.7%[1][]

2109

1920

陽子-陽子連鎖反応

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12 1H 2H1()


0.42MeV

1140

2


13 () 

 
4 (4He) 3 (branch)  pp1, pp2, pp3 pp1 4232 pp2  pp3  pp1 4使7pp186%pp214%pp30.015%[2]

pp1 分枝

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pp1 分枝を通った場合、連鎖反応全体で26.7MeVのエネルギーを放出する。pp1 分枝は温度が1,000万-1,400万度の環境で優勢となる。1,000万度以下では陽子-陽子連鎖反応で 4He が作られることはほとんどない。

pp2 分枝

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pp2 分枝は温度が1,400万-2,300万度の環境で優勢となる。

7Be(ee)7Li* 反応で生成されるニュートリノの90%は0.861MeVのエネルギーを持ち、残りの10%は0.383MeVのエネルギーを持つ(いずれになるかはリチウム7が励起状態にあるか基底状態にあるかによって決まる)。

pp3 分枝

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pp3 分枝は温度が2,300万度以上の環境で優勢となる。

太陽のコアの温度はあまり高くないため、pp3 分枝は太陽の主要なエネルギー源ではないが、この pp3 分枝ではホウ素8ベリリウム8に変換する過程で最もエネルギーの高い (≤14.06 MeV) ニュートリノを発生する。このためこのニュートリノは太陽ニュートリノの検出実験において重要な役割を果たす。

pp4 (Hep) 分枝

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ごく稀に、ヘリウム3が陽子と直接融合してヘリウム4を生成する反応も起こりうる。この過程を pp4 分枝あるいは Hep 分枝と呼ぶ場合もある。この反応の確率は約10-5程度と非常に小さい。

エネルギー生成

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この連鎖反応で最終的に作られるヘリウム4原子核の質量を陽子4個の質量と比べると、元々陽子が持っていた質量の約0.7%が失われていることが分かる。この質量はエネルギーに変換され、個々の反応の過程でガンマ線とニュートリノの形で放出されている。

こうして生成されたエネルギーのうち、ガンマ線として放出されたエネルギーだけが電子や陽子と相互作用をして太陽内部を加熱する。この熱エネルギーによるガスの熱運動自己重力による収縮に拮抗し、太陽の形が保たれている。一方、この反応で放出されるニュートリノは物質とほとんど相互作用をしないため、太陽を重力収縮に抗して支える役割には寄与しない。

pep 反応

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反応の第1段階で2個の陽子から重水素が作られる際に、上記の通常の反応(pp 反応)の代わりにより確率の小さい pep (proton-electron-proton) 反応が起こる場合がある。

太陽では pep 反応が起こる確率は pp 反応の約 1/400 である[2]。しかし pep 反応で放出されるニュートリノはかなりエネルギーが高い。太陽ニュートリノのエネルギースペクトルを観測すると、pp 反応のニュートリノが0.42MeV以下のエネルギーを持つのに対して、pep 反応で生成されるニュートリノは1.44MeVの鋭いピークを持つ。

出典

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  1. ^ 尾崎、第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.4太陽のエネルギー源 p20 - 21
  2. ^ a b 尾崎、第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.5太陽ニュートリノの謎 p21 - 33

参考文献

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  • 尾崎洋二『宇宙科学入門』(第2版第1刷)東京大学出版会、2010年。ISBN 978-4-13-062719-1 

関連項目

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