はじめに お茶︵緑茶︶は私たちの暮らしの中で最も日本らしさを感じるものの一つである。 しかし、江戸時代末期から我が国でお茶の生産が飛躍的に伸び、現在でも極めて自給率の高い品目となっているのは、お茶が海外輸出向け品目として戦略的に生産が拡大されてきたからにほかならない。 開国と茶輸出 長い鎖国時代が終わり、日本がアメリカ合衆国をはじめとする国々と貿易を開始し、世界経済の中に組み込まれた当時、茶は生糸と並ぶ重要な輸出品目となった。 明治維新後、静岡県の牧之原台地の開墾などによって大幅な茶の増反が行われたのは、立地条件的な理由もあったが、当時、茶が有望な商品作物として期待されていたためである。 当時は茶の生産量など統計的な把握は困難だったと思われるが、データによれば、例えば明治一五年には生産量の実に八二%が輸出に供されていたことになる。 その輸出先は、大半がアメリカ合衆国であった。 当時の茶輸出