椎名林檎は今年デビュー10周年。 知らない人もいるかもしれないので,野暮を承知で紹介すると,椎名林檎は「歌舞伎町の女王」や「ここでキスして。」,「丸の内サディスティック」などのソロアーティストとしての活動のほか,東京事変というバンドの中心メンバーとしての活躍でも知られる女性アーティストだ。類まれなる才能を開花させ,その時代ごとに人々を魅了してきた彼女は,今年10周年を記念して「私と放電」というアルバムを発表した。シングルクリップ集であるこのアルバムの最初を飾るのが「すべりだい」。10年前のデビューシングル「幸福論」のカップリング曲だ。 この「すべりだい」は恋人との過去を思い出す若い女の子の気持ちが歌われている。別れへと導いたと思われる行動や感情のすれ違い,それらを悔いてももう時間は戻らない。そのような女の子の心が痛いほどよくわかる。そう,もし時間が戻るなら。だが,戻らないのならば,記憶が薄